[[2015年 総評]]~ [[2015年 次点]]~ #contents //このページは、2015年度KOTY総評の案を集めるページです。総評の審議に役立てば幸いです。 //書き方テンプレートは編集ページにコメントアウトで掲載します。 ///////////////////////////////////////////////// /////総評案テンプレートver1.00////// //*総評案xx (大賞ソフト名) ←総評案の番号と大賞になるソフトを記載してください //#aapro{{ //本文1行目 //本文2行目 //… //本文最終行 //}} ///////////////////////////////////////////////// *総評案1 (アジト×タツノコレジェンズ) (2/28 22:00時点の投稿状態です。スレでの指摘については後日反映します) #aapro{{ 2014年のKOTY(クソゲーオブザイヤー)は、 二大巨頭の睨み合いに割って入ったヒーローが、劇的な勝利を収めた。 『仮面ライダー サモンライド!』……。 歴代ノミネート作の魂を宿し、見るものを魅了する稀代の「劇場型クソゲー」である。 そして、そんなヒーローの姿にかつての強敵(とも)たちの面影を見出しながら、 我々は、かつて思い悩んだ自らの在り方について確かな答えを得ていた。 誰よりもクソゲーのことを深く知ろうとする我々だからこそ、 誰よりもクソゲーのことを愛することができる。 クソゲーを語ることは、間違っていなかったのだ、と。 高騰する開発費、日々減るゲームの発売本数……。、 この修羅道がこの先で途絶えぬ保障など、どこにもない。 それでももう、立ち止まることはないだろう。 この世の不幸を集めて、どこかで寂しく咲いているであろう徒花を探して、 我々は2015年の旅に出た。 *** 2015年、最初に発見されたクソゲーは、あまりにも「意外」であった。 うずたかく積み上げられたカルマの塔、 PS4/Xbox One用ダウンロードソフト、『テトリスアルティメット』(以下「テトリヌ」)。 本作の情報がスレに飛び込んできたとき、誰もが耳を疑った。 というのも、あの「テトリス」だ。 現在、テトリスは発明者を擁する版権管理会社によって仕様が定められており、道を踏み外しようもない。 本来的にクソゲーになりようがないジャンルなのである。 だが、「百聞は一プレイに如かず」。 実際に本作をプレイし、数々の検証報告をもとに討議した結論は、 「本作はテトリスではなく突き抜けた何か、いわば、『テトリヌ』である」というものであった。 本作が脚光を浴びた要因の一つは、その【究極すぎる難度】にある。 テトリスというものは、プレイし続けると徐々にゲームスピードが速くなる。 そのこと自体は一般にも知られていよう。 だが、本作の場合、あまりにも速くなりすぎて光の速度を超えてしまうのか、 時折、≪時間が飛ぶ≫という怪現象が起きる。 ラインを消去したと思ったら、次のブロックが下に着いていた……。 ブロックを置いたと思ったら、いつの間にか、次のブロックも同時に置かれていた……。 何を言っているかわからないかもしれないが、誤解や錯覚では断じてない。 秒間60コマの録画でビデオ判定された結果、これらのバグが起きている決定的瞬間が確認されたのである。 これまでにも高難度のテトリスは存在した。 テトリスという単純なゲームを難しくするためにメーカーは工夫を凝らし、プレイヤーもそれに真摯に応じてきた。 だが本作のように、プレイヤーが頑張れば頑張るほどゲームの動作が怪しくなり、 バグによって半強制的にゲームオーバーに追いやられるという超難度には、誰も納得しないだろう。 【ユニークな演出】もまた味わい深い。 まず≪グラフィック≫の面から見ていこう。 次世代機らしさを意識したのか、ラインを揃えると光輝く壮大なエフェクトが付く。 それは大変結構なことなのだが、問題は、あまりに壮大過ぎてしばらく光が収まらないことである。 まぶしく輝く光の海に次のブロックがボチャンと飛び込んでいく様子は、鬱陶しいことこの上ない。 続いて≪サウンド≫に関して。 BGMはテトリス定番のロシア民謡のアレンジだが、モードごとに完全固定であり、ゲーム全体を通しても全3曲。 一番長く聞くことになる耐久モードでは、悲壮と言おうか、陰鬱と言おうか、とにかく神妙なアレンジが施されている。 少し積みあがると「ドクン、ドクン……」と鳴り響く謎の心拍音や、一挙手一投足に残響がつく迫真のSEと相まって、 人によっては「火サスか何か?」、「テトリス殺人事件かな?」といった感想を抱きかねない異様な雰囲気を醸し出している。 問題点はまだまだ積み上がる。 続いて、【カオスなコンピュータ対戦】について説明しよう。 本作の最強AIは、≪インチキ臭い超高速な操作≫によって軽快なプレイングを見せつける。 その速さたるや、なんと、高橋名人の全盛期を軽く超える秒間20連打。 ただし、その操作速度に追いつくだけの思考回路は搭載してもらえなかったらしく、4分と持たずに自滅する。 けたたましい操作音を立てながら一人で自爆していく様子には、真夏のセミのような儚い命を感じずにはいられない。 また、本作のAIにはもう一つ、決定的な特徴がある。 テトリス史上初と思われる、≪試合放棄≫を実装しているのである。 本作ではプレイヤーと3つのAIで4人対戦できるのであるが、AIが1つでも負けると、 なぜか他2つのAIも操作を投げ出してしまうことがある。 糸が切れたようにぷっつりと操作をやめ、ただじっと自殺を待つ光景は、見るものに強烈な印象を与えるものになっている。 最後に、本作をKOTYの壇上に押し上げた最も決定的な要因は、 【史上最低クォリティのオンラインモード】である。 まず、国内Xbox One版ではそもそもオンラインモードをプレイすることすらあたわず、 「対戦開始まであと23時間」といった挑発的な指示が画面に表示される。 一方、PS4版では多少プレイ人口が多いのか、繋がるには繋がるのであるが、 そこに待っていたのはまた地獄……いや、地獄のそのまた最下層にあるコキュートスそのものであった。 その光景を克明に描き出した事件があるので、一部始終を紹介しよう。 それは2015年7月13日、「ニコニコ生放送」にて、本作の販売元メーカー公式チャンネルにて起こった。 何を血迷ったのか、オンラインバグ未修正の本作のプロモーションを、 メーカー自ら、全世界同時中継で配信してしまったのである。 司会進行を務めるお笑い芸人とメーカーの女性スタッフ、対戦テトリスの名人の3人で行われた本番組……。 のちに語り草となる、≪クソゲー公式生実況≫である。 冒頭15分、どう見ても相手側のテトリスが上端まで積み上がっているのに死なない「ゾンビ」現象が起きる。 見てはいけない光景を前に凍り付く三人。 「違うんですこれ! これ違うんです……違うんです……! 一戦目でぇぇぇ……!」 そんな女性スタッフの悲鳴をよそに、その後も仕切り直しのたびにゾンビ現象が発生し、 お通夜ムードの中で淡々とした死体蹴りが行われる。 「勝ったんですけど、ずっとできるんですね……あっ、ウィニングランみたいな」 続いて、ブロックの挙動も次第に異臭を放ち始める。 消えたはずのラインが高速で明滅し、ネオン広告のごとく強烈な存在感を放ち続ける「エレクトリカルパレード」や、 消えたはずのラインが「消えたかな? いや、どうかな?」とでも言いたげに消滅と復活を高速で繰り返す「踏み台昇降」が発生。 そんな中、今度はゾンビ現象とは逆に、相手側がまだ積み上がっていないのにいきなり決着してしまう。 一同しばし絶句の後、渾身のフォローが絞り出される。 「セコンドの方、タオル投げましたかね……」 対戦テトリスのルールに「TKO(テクニカルノックアウト)」が書き加えられた歴史的瞬間であった。 なお、最終試合も案の定、ゾンビ現象が発生して悲痛な空気になりかけたが、 テトリス名人が盤面を使ってアートを描くことで場を和ませ、事なきを得たことを記しておこう。 補足すると、本作以外のゲームでも、生放送中に予期せぬバグが発生する例はままあるかと思われる。 だが、本作のように17試合中15試合で何かが起きるというのは他に類を見ない異常事態であり、 なおかつ、1時間にわたって濃密な羞恥プレイが行われたことは特筆に値するだろう。 この事件、バグを直しきれなかった開発陣に最大の過失があったことは言うまでもない。 だが、よりによってそれを全世界生中継の場で発露させる神のいたずらは、あまりにも、あまりにも容赦ないと言えよう。 ともあれ、この奇跡の光景が2015年のクソゲー界を象徴するベストシーンであったことは間違いない。 「一体全体、テトリスをどう作ったらクソゲーになるんだよ」という驚嘆の声とともに、 本作は無事、恥の殿堂に奉納されたのであった。 *** 「不作」と言う言葉がある。 期待したほどクソゲーが出なかったことを指す、不謹慎な言葉だ。 2015年、11月を迎えた時点で名乗りを上げていたのは、『テトリヌ』一本であった。 本数だけを見れば、例年と比べて少ないと言えるだろう。 『テトリヌ』自身は申し分のない器を持っていたものの、独り相撲では盛り上がりに欠けるのは否めない。 だが、一体、なぜ平和を嘆く必要があるのだろうか。 とある勇者の言葉を借りれば、「クソゲーなんて一本も出ないのが一番良い」のである。 しかしながら、本当に「不作」だろうか? おかしい……何かがおかしい。 空でもなく、海でもなく、どこからともなく感じる圧倒的な存在感。 (誰も知らないだけ……誰も気づいていないだけ……) どこからともなく、声が聞こえてくる。 気が付くと、足下の大地が低く唸り始めていた。 底知れぬ瘴気の主は、我々の立つこの大地の下に、闇の根城を築き上げていたのだ。 *** 11月凶日、地鳴りとともに大地から現れた巨大な影。 空にそびえる鬼岩城。 Xbox One専用ソフト、『アジト×タツノコレジェンズ』(以下、「アジノコ」)である。 『アジト』と言えば、「秘密基地作成シミュレーション」というジャンルを確立したPS時代の名シリーズ。 その名のとおり、秘密基地を地下に建設し、怪人やヒーローを思うがままに配置し、敵陣営と戦うゲームである。 そんな『アジト』1作目の版権を買い取り、再販やリメイクをしていたメーカーが、次世代機での完全新作を発表した。 さらに、今回は「ガッチャマン」、「ヤッターマン」等で有名なタツノコプロとコラボし、参戦ユニット数は60を超えると言う。 旧作ファンの間では否が応にも期待が高まるばかりであった。 だが、3ヶ月の発売延期を経て世に出たそれは、 【モノを売るというレベルではない何か】だった。 まずは≪バグ≫。 発売前日から、 「戦闘中にセーブするとロード時にクラッシュします」、 「オンラインモードを選択するとクラッシュします」といった爆弾発言が公式サイトに載せられていたが、 問題はそこではなかった。 ゲームを始めるとのっけから、操作を一つ間違えただけで進行不能になるチュートリアルが鎮座し、 それを抜けると地中に潜り込んで爆走するマッハ号や戦闘機などのサイケな光景が眼前に広がる。 そんなバグ祭りの中でも、「魔のエレベーター」と呼ばれる一連の現象はひときわセンセーショナルなものであった。 巨大ロボを発進させると、それに連動して、諜報員を乗せたエレベーターが上下いずれかの方向に突き抜けていくのである。 こうして空の彼方、あるいは、地球の奥深くマントルに向かって射出されたエレベーターは、永遠に帰ってこない。 消えた諜報員を呼び戻すと、誰も歩いていない基地の中に謎の足音が響き渡るのは怨念のなせる業だろうか。 そして、バグの地雷原を抜けた先では、 誰の目にも明らかな≪未完成≫が待っている。 1か月で100億円稼げるバブリーな金銭感覚に、落とし穴を設置するだけで完勝できてしまう戦闘バランス。 基地建設ではリアルな工事現場さながらの騒音が発生し、階段を人が行き来するたびに耳をつんざく足音が響き渡る。 一種類しかないBGM選択メニュー、しゃべらないキャラクターなど、プレイすればするほどに絶望しか見えてこない。 そして何より、まともなセーブ機能がなく、 基地を建設してもフリーズや進行不能バグ一つで数時間のプレイが消し飛んでしまう。 この状態では評価もへったくれもない。とにかく、パッチでの修正を待つほかないだろう。 なお、あまりの惨状に、ダウンロード版は発売1日で配信停止されたことを補記しておこう。 *** かくして待つこと3週間後、 約束の日から一日遅れて修正パッチが配信された。 かゆいところに手が届くようで余計かゆくなる微妙な出来のパッチであったが、そこは目を瞑ろう。 大事なのは、かろうじて評価できる程度には動作するようになったことである。 『アジノコ』第二形態。 そこに待っていたのは、さらなる絶望であった。 本作を手に取ったプレイヤーが度肝を抜かれるであろうポイントは、 【やり過ぎの次元をはるかに超えたコスト削減】だ。 本作では、「どこに金をかけたのか全くわからない」というレベルの高度な倹約が行われている。 それを可能にした最大の要因は、 なりふり構わない≪原作ディスリスペクト≫である。 最初に、キャラゲーとしての評価点を述べよう。 それぞれのタツノコキャラに対して、米粒ほどの大きさのドット絵が用意されている。 以上である。 その他については全面的に、版権元に顔向けできない出来だと断言してよい。 例えば、顔グラフィックについては当時のアニメのキャプチャを切り抜いただけであり、 特典ムービーについては、アニメ本編からほんの数秒ずつ抜粋しただけの無声動画だ。 また、版権モノと言えばどこまで原作のキャストを呼べるかという点に注目が集まるが、 本作ではほぼ全員、アニメ声優の専門学校から動員したアルバイトである。 ちなみに、これらの姿勢に対して版権提供者側がどう思っているかについては、 本作の存在がタツノコプロの公式サイトでガン無視されていることから察するべきであろう。 では、キャラゲー以外の要素はどうなのかというと、 ほぼ全て≪旧作素材のパッチワーク≫である。 例えば、公式サイト上で「こだわりのドット絵」と喧伝するグラフィックについて見てみよう。 よく見ると基地パーツは1997年に作られたPS版『アジト1』の素材を拡大して手直ししただけであり、 アイコンにいたってはほぼ全て、同作からコピペして2,3倍に引き延ばしただけだ。 このほか、キャラクターや兵器のデータ、説明文、ボイスなど、旧作データを全面的につぎはぎ流用。 その使い方も、旧作ヒロインの死に際ボイスがザコ怪人の断末魔に使われていたりと、 シリーズ初プレイでも気づくレベルの雑コラ加減になっている。 続いて、ゲーム内容を詳しく検討していこう。 「秘密基地作成SLG」である本作には、大きく分けて「戦闘」と「基地経営」の2つのフェーズがある。 先に戦闘フェーズについて述べると、 本作には、こちらが相手の基地に攻め入る「侵攻戦」と、相手がこちらの基地に殴りこんでくる「防衛戦」がある。 このうち【侵攻戦】は、AIの機嫌次第で全て決まる≪祈りゲー≫である。 本作のゲームバランスは「タツノコ>それ以外」であり、戦闘はタツノコキャラ頼みになる。 だが、そんな期待をよそに、本作のAIは空き部屋を見つけると爆弾を置いてさっさと帰還してしまう。 配備するまで十数日かかったタツノコキャラが、何度送り出しても、肝心の戦闘を放棄して帰ってきてしまうのである。 他にも、AIの奇行に悩まされることは枚挙にいとまがない。 出撃命令を出すと全員一斉に目的地の逆方向に歩き出し、一人ずつ行き止まりにぶち当たってから水平反転する様子や、 ほかに通路があるのに最短経路のエレベーターの前に全員集合し、何日も行列を作る様子を見るにつけ、 タツノコではなくアホの子なのではないかという疑念がわくことだろう。 もう一方の【防衛戦】はと言うと、≪消化試合≫である。 第一に、一部のタツノコ関連ロボが強すぎて、相手が基地に侵入する前に9割方焼き尽くしてしまう。 せっかく手の込んだ基地を作っても、これでは徒労というものだ。 第二に、よしんば基地の中に入られてしまっても、「空しい必勝法」が待ち構えている。 本作では戦闘員など作らなくても、白衣の研究員で人間バリケードを作れば数の暴力でリンチできてしまう。 また、敵のAIも味方同様アホの子であり、エレベーター前でお行儀よく行列を作るのだが、 このとき後ろから襲ってしまえば無抵抗のまま撲殺することが可能だ。 このように、本作における戦闘は、守るも攻めるも、砂を噛むような味気ない仕上がりになっている。 次に基地経営フェーズについて述べると、端的に言えば、 「作業ゲー」と「ヌルゲー」、「待ちゲー」と「連打ゲー」とをコンクリートミキサーにかけてぶちまけた、 【地獄の100時間耐久ルーチンワーク】になっている。 まず、≪作業ゲー≫かつ≪ヌルゲー≫であることを説明しよう。 本作にはミッションが30個用意されているが、プレイ開始から全面クリアまでやることがほとんど変わらない。 攻略法が確立した瞬間に、徹頭徹尾それを繰り返すだけの平坦な作業になってしまう。 続いて、≪待ちゲー≫。 本作では何か行動するたび、結果が出るまでの時間を待つことになる。 1ミッションあたりの時間は3,4時間ほどであるが、何もすることがない時間がおよそ半分に相当する。 残りの半分の時間は何かと言うと、≪連打ゲー≫だ。 本作のUIは非常に出来が悪く、100人以上いる構成員を一人ずつ選択しなければならない。 何も考えずに十字キーと決定ボタンを連打することになる時間が、何度となく発生するのである。 以上のとおり、本作は一般につまらないとされる4つの要素が不可分に絡み合っており、 クリアまでの100時間以上にわたって、何ら創造性のないルーチンワークを強いられることになる。 終わりのない単純労働によって徐々に精神を削られ、疲弊していくその様子は、言うなれば「タツノコ絶望工場」。 あまりの苦行ぶりに、パッチからたった3ヶ月で、ソフト本スレの住人は一人残らず息絶えたのであった。 ただ、ここで脱落したプレイヤーはある意味で幸運だったのかもしれない。 ここからの先の真の地獄を知らずに済んだのだから。 本作の検証も終わりが見えてきた中、勇者の口から不意に、不吉な一言が発せられる。 「こんな時期に新パッチ来たんだが……」 今思えばこれが、長い長いラストバトルの幕開けであった。 *** 突然の知らせにスレ住人は総毛立った。 まさか、さらに凶悪になるのか? いや、今度こそ、良い方に生まれ変わるはずだ。 祈りにも似た気持ちで待った結果、土埃の中から現れたのは、 なおいっそう禍々しく変貌した大魔王の姿であった。 『アジノコ』第三形態、 最後の審判である。 このパッチの修正箇所はいくつかある。 動作の安定性が改善され、キャラクターのHPが表示されるようになり、音声素材も何点か追加された。 だが、それと同時に、ある一つの特大バグが混入してしまった。 「セーブデータが、毎回、リセットされる」。 ゲームを一度終了し、再開するたびに、100%の再現率で、 育てたはずのデータが、跡形もなく消えているのである。 本作では、「ミッションの進行度」と「入手したタツノコキャラ」のデータとが分けて管理されている。 このうち、進行度は全く変わらないまま、手持ちのタツノコキャラが忽然と姿を消すのが今回のバグの概要だ。 RPGに例えれば、 「シナリオが進んだ状態でセーブ&ロードすると、毎回、装備やレベルだけが初期データにリセットされる」 という事態に等しい。 『アジノコ』第三形態に挑んだ勇者は、震える声でこう紡ぐ。 これは、【賽の河原】のようだ、と。 石を積むたび、地獄の鬼があざ笑うかのようにやってきて、一つ残らず崩していくのだ、と。 このバグが起きてから、本作のゲーム性は激変した。 もともと「地獄の100時間耐久ルーチンワーク」だったものが、 「初期データ縛り」か、「ぶっ通しプレイ縛り」かの2択を強要するようになったのである。 前者を選ぼうにも、本作のゲームバランスは先に述べた通り「タツノコ>それ以外」であり、 タツノコキャラなしで進めるのは絶望的である。 一方で後者を選べば、数十日かけて進めたデータが、ただ一度のフリーズや進行不能バグによっていとも簡単に水泡に帰してしまう。 とどのつまり、どちらに進んでも、死、あるのみである。 (知らなかったのか……? 大魔王からは逃げられない……) そんな幻聴さえ聞こえてくるような、かつてない絶対的な絶望が辺りを包み込んでいた。 最後のパッチ配信から三か月経過した現在、この「賽の河原」バグは未だ修正されていない。 本作が数多の問題点を修正し、皆に笑顔で受け入れられる「第四形態」に変わる日を願ってやまない。 *** さて、以上2つが本年のノミネート作である。 役者がそろったところで本年の大賞発表をしよう。 不作かとも思われた2015年……。 現れた両雄は、いつもであれば何作かに分かたれるはずの不幸のエッセンスを集約し、 見たこともないほどの巨大な存在に結実していた。 神のいたずらさえも味方につけ、笑いの奇跡を引き起こした≪究極≫の光の戦士『テトリヌ』か、 人の手によって禍々しく進化を遂げ、プレイヤーの嘆き悲しみを歴史に刻んだ≪伝説≫の大魔王『アジノコ』か。 いずれも、これまでの大賞作品に勝るとも劣らない、当代きっての英傑である。 光と影、苦と楽……。 正反対の方向に大きく振り切った最強者たちの激突。 純粋なるエネルギーとエネルギーのぶつかり合いが、激しく火花を散らし、 あらゆるものを飲み込んで破滅させていく。 万物創成の様相をなしたこの新たなる神話の戦いを制し、新世界の領主として名乗りを上げたのは…… 『アジト×タツノコレジェンズ』である。 本作の勝利を決定づけたもの…… それは、「質と量の両面で最高峰を成す、規格外のクソさ」である。 いわゆるクソゲーには、大きく分けて2つの類型がある。 一つは、クソ要素の数が多いもの、すなわち量で勝負の「バラエティ」型だ。 もう一つは、飛び抜けて大きなクソ要素を持つもの、すなわち質で勝負の「インパクト」型だ。 これまでのノミネート作品を振り返っても、概ねどちらかの傾向に分類できると言えるだろう。 その点を踏まえて2015年のノミネート2作品を比較してみよう。 『テトリヌ』はと言えば、テトリスとして最低限プレイできることがプラス評価の材料になる一方で、 「試合放棄AI」や「史上最低クォリティのオンライン」などの離れ業によって大きく逆方向に打ち返した、 インパクト型の白眉であると言える。 他方で、『アジノコ』はどうだろう。 1回目のパッチ時点では、「魔のエレベーター」のインパクトはあったものの回避可能であり、 それよりも、どこを切っても隙の無いバラエティ型としての強さが際立っていると言えるだろう。 だが、第三形態になったことで『アジノコ』は劇的な変貌を遂げた。 不可避的にセーブデータが初期化される「賽の河原」バグと、 それに連なる「クソゲーなのに縛りプレイ強要」という、 クソゲー史においても記録的な、特大のクソ要素を手に入れてしまったのである。 言うなれば、本作はただでさえ打率10割のバッターでありながら、 それに加えて場外ホームランを飛ばしてしまった。 このような規格外の存在を前にしては、どんなクソゲーも道を譲らざるを得まい。 それにつけてもクソゲー史に残るインパクトを誇る作品が2015年に二つ集結してしまったとは、 『テトリヌ』の不運が悔やまれてならない。 一方で、『アジノコ』はXbox系列ハードの作品としてはKOTY史上初の受賞となる。 奇しくも、パッチによる進化という共通項を持つ同門の『ジャンライン』の雪辱を見事に果たしたと言えよう。 新たな絶対王者の誕生を、心から祝福したい。 *** タツノコプロと言えば、タイムボカンシリーズに登場する「三悪」の存在がつとに有名である。 目先の欲望から悪だくみに走り、毎度人々を困らせるものの、すぐに露見して手痛いしっぺ返しを食らう。 そんな、永遠の憎まれ役。 だが、三悪がいたからこそ、ヒーローたちの物語は輝いていた。 影があってこそ映える光であり、悪があってこそ引き立つ正義なのである。 思えば、クソゲーもまた、三悪に相通ずるところがあるのではなかろうか。 クソゲーそのものは、買った人々を不幸にする忌むべき存在である。 だが、クソゲーを通じて人は、憤りを機知に昇華し、苦しみをおどけに転じることができる。 そうして、クソゲーの周りには結局、誰も憎むことのない、笑顔に満ちた世界が形作られるのだ。 この不思議な逆説に、我々はいつも心惹かれてきた。 だからこそ我々は、 クソゲーが生まれることを悲しみながらも、 心のどこかでクソゲーを待ち望んでしまうのかもしれない。 「負けない。くじけない。何度もよみがえる」。 クソゲーにはこれからも、三悪のようなしたたかな存在であり続けてほしい。 それはそれとして、今回の強敵(とも)と手合わせした率直な感想を、 往年の名作にしてタツノコプロの代表作「ヤッターマン」の決め台詞から拝借することで、本年の締めくくりとしたい。 「ヤッター、ヤッター……やってられんわ!!!!」 }}