総評案 その1(仮)

2009年のKOTY(クソゲーオブザイヤー)は、5人の「四天王」が争う戦乱の時代であった。
なかでも、その戦を制したエロゲー業界からの刺客『戦極姫〜戦乱に舞う乙女達〜』は、
スレ住人たちの知らない異国から訪れた黒船であったといえるだろう。

クソゲー戦国時代が終わりを告げた1月26日、
久々に訪れた平穏に、スレ住民はいつしかこのような思いを抱いていた。

「さすがに、今年は四天王のように酷いクソゲーは出ないだろう」

だがそんな予感は、2009年の総評が決定した2日後、1月28日に早々と裏切られることになる。
本来であれば2009年末に発売され、年末の魔物として争うはずであった
日本一ソフトウェアのソフト『ラストリべリオン』(通称『ラスリべ』)の到来である。
タイトル通りRPGの基本に真っ向から反逆している『ラスリべ』は、発売前からどう見てもPSP以下のグラフィック、
面白そうに見えない物語、手抜きにしか見えないPVなどの不安要素によって本スレが過疎化、
購入者は勇者と呼ばれるほどという、いわゆる「見えている地雷」であった。
RPGとして重要な戦闘システムは、斬新だが無意味。
物理攻撃を当てつつ、多彩な魔法(火、水、銅、ミスリル、アダマン属性など多彩すぎて意味不明な属性も多い)を
当てていくという本来の仕様は、レベルアップによってパラメータが劇的に上がるため意味を成さない。
10か所近い部位を総当たりしながら弱点を探すといういやがらせのようなシステムも、物理攻撃で力押しをすればいい。
結局、攻略法は「レベルを上げて物理で殴ればいい」に集約されるのである。
あまりの理不尽さから「ランダム式シンボルエンカウント」と評されたシンボルエンカウントは、
どんなに距離があっても最短距離で追いかけてくるため、すぐに捕まってしまう。
しかも、戦闘に入るとこちらのレベルが高くない限りほぼ逃げられず、
苦労して倒しても復活時間がランダムのため、その場で復活して再戦闘に突入するなど油断がならない。
もちろん、戦闘後や逃亡後の無敵時間もない。
モンスターは色違いの使い回しが多く、ダンジョンの奥にいるボスもほとんどが色違いである。
後半のダンジョンに至っては、色違いすら放棄し、大きさも色も同じだが名前だけ違うモンスターまで平気で出てくる。
8体いるという隠しボスは、「プリニー」と「みかん」という2体の日本一のコラボキャラの名前違いでしかない。
「プリニー?」から「プリニー?」までがランダムで会話もなく出現するという手抜きっぷりには頭が下がる思いである。

最後の希望であるシナリオは、町も店も宿も無い世界で、棒読み英語音声で喋る10人以下の登場人物が、
世界の危機を救う起承転結無視&打ち切りENDの物語という、感情移入もクソもない中身であった。
しかも、RPGなのに10時間程度で終わるという短さである。

その酷さに攻略Wikiでは発売日直後から「他のゲームを買った方がいい」と呼ばれ、
海外レビューでは「存在自体が不要」とまで言われた『ラスリべ』。
年明け早々現れた魔物によって、その後もさまざまなガッカリゲーが物理で打ち払われた。
そのため、このソフトは「門番」と呼ばれてスレ住民に恐れられた。

そして、4月28日。2体目の魔物が現れた。
乙女ゲーという未知の国からやってきた『ラブルートゼロ Kisskiss☆ラビリンス』である。
これは、ケータイ雑誌マンガwakkerに掲載された、無料ケータイコミック「ラブルートゼロ」を題材にしたAVG。
主人公含めて魅力皆無のキャラクター、簡単すぎるキャラクター攻略、まったく必要のないRPG風の戦闘など、
やっぱり見えている地雷と言われていた。
AVGなのに、スキップ速度も遅くクイックセーブもないなど、10年以上前のシステムは、
整合性の取れていないシナリオと同人以下の絵と文章により、やる気を奪う。。
敵は1体ずつ、かつ1種類。ラスボスも雑魚の豪華版という適当なRPG部分は、
序盤でダメージがカンストするため「ひっさつわざ」を見ることもできない。
また、探索部分はランダムでイベントが発生するため、セーブ&ロード必須という不親切さである。
フラグ立てもおかしく、システムのせいで豪華な声優陣も台無しになっている。

なお、攻略対象キャラの一人である物理教師「西岡 輝政」が万能すぎるため、
ゲーム中の事件は彼によってすべて解決する。ほかのキャラに存在意義はない。
ちなみに、13か月にわたって、5回の延期を繰り返した本作は、ゲーム自体の出来もさることながら
製作元のディンプルが発売後に倒産したため、ゲーム制作どころではなかったのではないかと噂されている。

こうして出現した2体目の魔物と『ラスリべ』は、仁王像のごとく次々とガッカリゲーを門前払いしていった。
それに対抗すべく、前年度の覇者の続編『戦極姫2』と『人生ゲームハッピーファミリー』が登場したが、力及ばず門番の前に敗れ去る。

気がつけば、2010年は『ラスリべ』と『ラブルート』の一騎打ちとなっていた。
そして、一騎打ちを制したのは、……年明けから門番として活躍を続けた『ラスリべ』である。
受賞理由としては、バグなどのないストロングスタイルであったこと、
情報が出れば出るほどクソ要素が発覚し、ジャブのようにプレイヤーの心を打つという
ただ遊んでいてつまらない、すべてがかみ合わないクソゲーであったことが大きい。
ちなみに、日本一アメリカの社長は、、本ソフトを発売したこと自体が申し訳ない、
とインタビューに答えていたことも付け加えよう。

終わってみれば、今年はゲーム業界の主戦場が携帯ゲームに移行したことを示す穏やかな年であった。
そのなかでも、頭角を現した二強は、どんな時代でもクソゲーはなくならないということを示す結果であろう。
最後に『ラストリべリオン』を制作し、日本一を困らせた制作会社ヒットメーカーに一言添えたい。

ヒットメーカーってメーカー(日本一)をヒットするって意味じゃないですよね。