2019年 次点

概要

名称遊☆戯☆王デュエルモンスターズレガシー・オブ・ザ・デュエリスト:リンク・エボリューション
ジャンル対戦カードゲーム
対応機種Nintendo Switch
発売元任天堂
開発元KONAMI
発売日2019年04月25日
価 格3,000円(税別)(ダウンロード限定販売)
対象年齢CERO:B(12才以上対象)

参考動画

選評

選評1

2019年KOTY選評「遊☆戯☆王デュエルモンスターズ レガシー・オブ・ザ・デュエリスト:リンク・エボリューション」(コナミ)

日本未発売作品の『Yu-Gi-Oh! Legacy of the Duelist』に最新シリーズである遊戯王VRAINSのキャラクターとカードを追加しニンテンドースイッチに移植した作品
家庭用ゲーム機で遊戯王が発売されるのは前作以来実に4年ぶりであり
新しく制定されたルールやカードを使ってのデュエルが出来るようになると期待されていたが・・・


●概要
本作ではリンクモンスター、EXモンスターゾーンが追加された『新マスタールール』を採用している。前のマスタールール3に変更することはできない
カードプールは遊戯王TCGのHidden Summonersまでの日本・海外両方で発売済みのカードのみとなっている
今までのゲームシリーズに存在したアニメオリジナルカードは存在しない

遊戯王のアニメシリーズである『DM(初代)』・『GX』・『5D's』・『ZEXAL』・『ARC-V』・『VRAINS』の6作品を元としており、それぞれのストーリーをなぞってCPUとデュエルを行う
ただし現行シリーズである『VRAINS』にストーリーは無く、単に登場人物とデュエルをするだけである
シングルプレイでは劇中のキャラのデッキを基にしたストーリーデッキか自分で作ったプレイヤーデッキを使うか選ぶことができる、ストーリーデッキを使う分にはカードを集める必要はない
初期状態ではパックを買うことはできないが、ストーリーを進めることで新たなパックが追加されていく
シングルプレイのデュエル結果に応じてカードとゲーム内通貨が手に入りそれを用いてパックを購入できる

これ以外にも対人戦を行うマルチプレイやシールド・ドラフト戦を行うBATTLE PACKがある
シールド戦は専用のパックを通貨で購入し、引いたカードをデッキとしてプレイするモード
ドラフト戦は複数提示されたカードの中から1枚1枚を選んでいきデッキとしてプレイするモードである



●ゲームテンポの問題
本作をプレイしてまず目に付くのが全体的なテンポの悪さである
魔法・罠をセット(フィールドに伏せる)するだけで2秒、モンスターを召喚する(フィールドに出す)だけで5秒近くかかるなど全体的な操作が異様にもっさりしている。
融合召喚やリンク召喚などの特殊な召喚を行うとアニメを意識した演出が入るのだがどれも1回に6、7秒近くかかるうえにスキップ不能
特にリンク召喚は1ターンに複数回行うことも珍しくはないため、少し凝ったコンボをしようとするとかなりのストレスになる。
特に酷いのが「デッキをめくる」動作で、カードを1枚めくって戻すだけの動作で1枚につき約4秒かかる、これにより「3枚めくって1枚選ぶ」カードや「モンスター以外を引くまでめくり続ける」カードを使うと最低でも12秒近く待たされることになってしまう
ブラック・マジシャンのような一部の切り札モンスターは召喚時に専用ムービーが流れてデュエルを盛り上げてくれる。がムービースキップは一切できない。1回だけならまだしもデュエル中何度も召喚することになるモンスターですらいちいちムービーが入りテンポを著しく阻害している

●カードに関する問題
カード入手のためにはパックを買っていく必要があるのだが、全9000種類以上にも及ぶカードがありながらパックの種類が29個と少なく。その結果として1パックの収録カードが約300種類と膨大な数になってしまっている。
パックの値段は1つにつき400必要で、CPUとの1試合に勝利すると1200、負けても700前後の通貨をもらえる
さほど高いレートでは無いのだがそれでも特定のカードを引き当てようとすると稼ぎにかなりの時間を費やす必要がある。その結果CPU相手に即降参を繰り返すのが最も効率のいい稼ぎとなってしまっている
パックは劇中の登場人物を元にしているが、どのパックが何のカードを引けるかはほぼノーヒント。シンクロモンスター使いのパックからはシンクロモンスター関係のカード、水属性使いのパックからは水属性モンスターなどある程度予想を立てることはできるが。初代のキャラクターが最新カードであるリンクモンスターを収録しているなど攻略本がないと予測不可能なものもある。

複数枚のパックを一気に購入することはできず、A連打で1枚1枚剥いていく必要がある
さらに当たったカードが新しく手に入ったものなのかどうかを確認することはできず、カード枚数もいちいちデッキ編集画面までいかないと確認することができない
4枚目以降のダブりカードは特にポイントや通貨に変換されることもなくなかったことになる、当然カード生成や天井なんて気の利いた機能はない
1パックには8枚のカードが入っているがその中でレアカードは1枚のみ、何のカードがレアなのか見かけから判断することはできず実際に引くまでわからない

どうにかしてカードを集めたとしてもまだ問題が残っている
保存できるデッキの数が32枠までしかないのだ
一見するとこれで十分に思えるかもしれない。だが遊戯王のデッキはテーマごとに細分化されており、その数はこのゲームに収録されているだけでも300は軽く超える
そもそも140人近いキャラのデッキを再現しようにも1/3以下しかデッキ登録ができない
テーマによってデッキ内容もがらりと変わるため「キーカード数枚をその都度入れ替える」ことは難しく、枠が足りず消したデッキはまた1から40~75枚のカードを選び組み直す必要がある

デッキ編集画面にも少々問題がある
デッキ名およびカード検索時に漢字を使うことができない。
カードには全てルビが降られているが「星墜つる地に立つ閃珖(スターダスト・リ・スパーク)」「神の写し身との接触(エルシャドール・フュージョン)」などの難読カードをそのまま検索できず、読みを正しく覚える必要がある。
青眼の白龍やブラック・マジシャンのような人気カードにはイラスト違いのカードが複数存在するのだが、本作には一切収録されておらず切り替えることもできない。

遊戯王には禁止制限(リミットレギュレーション)というルールが存在し、強力なカードはデッキに1,2枚しか入れられない制限、準制限か使用禁止カードになっている
日本と海外ではカードプールに差があり、「日本では発売されているが海外にはない、あるいはその逆」のカードが複数存在し、それに合わせて日本と海外での禁止制限は別々に定められている
このゲームでは元が海外開発のためか、禁止制限が「日本の禁止制限の厳しい部分+海外の禁止制限の厳しい部分」というキメラルールになっており
インフレの影響で一線を退いた甲虫装機や影霊衣のようなデッキにも厳しい制限がかかってしまっている

オフラインだけで遊ぶのなら禁止制限は一切考えなくてもいいのだが
開き直っているのかストーリーで使える・戦えるデッキに禁止・制限カードがやたらと混入してしまっている
初期に出たキャラクターのデッキはカードパワーが弱いため、当時の強力なカードで補てんしている・・・と思いきや最新シリーズのキャラクターですら平気で制限カード(本来はデッキに1枚のみ)を複数積みしている
というかチュートリアルの時点で禁止カードの使用を強制してくる始末

そして対人戦で禁止制限を変える・無視することは一切できない
ランダムマッチやランクマッチなら当然であるが、フレンド同士のデュエルや本体を持ち寄ってのローカルマッチですら禁止制限に準拠しなければいけない
このため、キーカードが禁止・制限になっているデッキをフレンド間で楽しむようなことは出来ない

ストーリークリアかCPUのドロップとしてそのキャラクターのデッキレシピが貰えるのだが、半分以上がデフォルトで何らかの禁止制限に引っかかるお粗末なもの。
原作での切り札が禁止になってしまっているイシズやプレイメーカー、原作の時点で制限を完全無視していたレアハンターはともかく、発売時点で既に日本・海外両方で禁止・制限カードになっていた汎用カードを複数積んでいるデッキがほとんど。
挙句の果てに最初に支給されるデッキすら禁止制限を無視している。特にシンクロとペンデュラムの禁止カードはデッキと特別相性がいいわけでもなく単純なパワーカードでもない、なぜ存在しているのかわからないレベル。


●キャラゲーとしての問題
約3000円という低価格ゆえに仕方ないともいえるのだがキャラCGやキャラボイスは一切無い。カットインや掛け合いも無い。デュエル中のキャラクターはただ顔アイコンが表示されているだけである。前述のとおり切り札級モンスターには専用ムービーがあるのだが現行シリーズのメインキャラの切り札に無く、序盤で数回出ただけのカードに用意されているなど選考基準には少し謎がある。
ストーリーモードの掛け合いではセリフの位置がキャラクターの立ち位置によって変わる斬新な演出

例:
遊戯
さあ 城之内くんのターンだよ

城之内
う~ん・・・
本田
なにやってんだ城之内?

城之内
なんだ知らねえのかよデュエルモンスターズ


左にいるキャラのセリフは左寄り、右にいるキャラのセリフは右寄りと交互に目まぐるしく変わるためとても読みにくいだけの演出になってしまっている
ストーリーモードはアニメの展開を問題なくなぞっている・・・が初代は乃亜編、KCグランプリ編、記憶編がごっそりカットされてしまっており、アニメオリジナルキャラであるダーツがラスボスに見えてしまう
記憶編は元々カードゲームがメインではない章だが、バクラをラスボスとして出すなどやりようはあったはずである
というか2~3年に及ぶストーリーを無理やり圧縮したためか全体的に「ボスキャラが真の切り札を召喚しましたが絆パワーで勝利しました!やったね!」で終わるような薄いテキストになってしまっている

前述のとおりVRAINSのストーリーは無い、さらに登場人物も4人だけと他のシリーズと比べたら異常に少ない
発売当時すでにアニメVRAINSは二期終盤だというのに一期のストーリーすら無い
特にハブられたリボルバー、ソウルバーナー、ゴーストガールは人気キャラかつ使用カードの多くが収録され問題なくデッキを組めるはずなのだが・・・
特に主人公のライバルであり1,2期ともに活躍するリボルバーは最新収録パックが発売された3か月前に初登場したキャラクターであり、開発が間に合わなかったとは考えにくい
にも関わらず彼の部下であるハノイの騎士(戦闘員ポジションのモブ)は実装されている、ある意味印象深いキャラクターではあるのだが優先すべきことがあったのでは・・・

ストーリーモードは遊戯王の各作品の歴史を語り手目線で紹介していく、という形式になっているのだがこの語り手が遊戯王ともカードとも関係ない謎のオリジナルロボット
チュートリアル以外では語り手以上の自己主張はしてこないとはいえもう少し何とかならなかったのだろうか(語り手・ナレーターとしてならデスガイドというおあつらえ向きのキャラが既に存在する)

●その他

・AIがバカ、過去作に存在した「ブルーアイズを生贄にブルーアイズを出す海馬」が「ホーリーエンジェルを素材にホーリーエンジェルを出すブルーエンジェル」に進化してしまっている
それだけならまだアホで済むが「強力なモンスターを相手に5分以上長考する」「効果を無効にされたカードの効果を無意味に発動し続けてデュエルが進行しなくなる」という凶悪なコンボが発生する可能性がある

・BGMは悪くはないが盛り上がるようなものではない
デュエルが佳境に入ってBGMが変化するようなこともない

・同時発動したカードのチェーン順番を決めることができない
初心者であれば気にならないようなことであるが上級者同士の対戦となってくると地味に影響が大きい

・攻撃時、モンスターが攻撃可能か否かは直接カーソルを合わせないと見ることができない
攻撃可能のマークも地味に小さくて認識しにくい

●評価点

・ドーマ編のキャラやダークネス、ドン・サウザンドが実装されている
いずれも原作アニメでメインとなるキャラクターだが開発時期や使用カードの問題で中々実装されていなかった
ただし前述のとおりアニメオリジナルカードが無いため"それっぽい"だけのデッキになっているが

・ストーリーのレンタルデッキの内容はそこそこ凝っている
相手・自分ともに原作の展開を再現できるよう調整されている
(ブロック・スパイダーで相手の攻撃をしのぎカレイドスコーピオンで大量展開されたモンスターを一掃するなど)

・公式でシールド・ドラフト戦をプレイできる
遊戯王はコンボ前提のカードが多いため専用のパックを使わなければこういったデュエルはしにくかったことから。公式でこういったルールを遊べる作品は貴重である
(海外では昔シールド用パックが売られていたが国内では未発売)

・カード集めとテンポの悪ささえ我慢すればカードゲームとして成立はしている
(楽しめるかは別として)

●まとめ
全体的にやっつけ仕事が否めない内容であり、特にテンポとカード入手の苦行さは援護できるようなものではない
「新マスタールールで遊べる唯一の遊戯王」でさえなければ間違いなくクソゲーと言えるゲームである
「遊戯王OCG」のシミュレーションとして遊べることが売りの本作は、いつの間にか「遊戯王に限りなく近いもの」のシミュレーションになってしまった