2009年 次点

概要

名称戦極姫~戦乱に舞う乙女達~~
ジャンル本格戦国シミュレーション恋愛アドベンチャー
対応機種プレイステーション2
発売・開発元システムソフト・アルファー
発売日2009年11月12日
価格通常版:7,140円、限定版:9,240円(ともに税込)
対象年齢CERO:C(15才以上対象)

公式サイト [外部リンク]

要点

PCギャルゲーの移植だが、城に配置していたキャラが消滅したり、所持金がおかしくなったりとバグ満載。ジャンライン・カルド級のバグにもみえるが…

以下、バグとか不具合とか

PS2版シナリオで起こるものを除き、携帯機(PSP)でも同様の現象が起こる模様。

選評

選評案1

年末には魔物が現れるという。それはここ数年で常識となりつつある。
その先駆けとなるは、システムソフト・アルファーが放つ「戦極姫~戦乱に舞う乙女達~」なのであろうか?

この作品はPC版からこちらへと渡り歩いてきた豪の者である。
すでにPC版でも数え切れぬ武名(バグ、クソゲー評価)を欲しいままにし、
なおかつそれをこの世に再び送り出すのは、あのシステムソフト・アルファーである。
ならばこの戦極姫、魔物へと成り果て、ユーザーに襲い掛かる事は必然なのか?

このゲームはかつてこの日本で、己の信念、野望のために戦いを繰り返した戦国時代を舞台にしている。
その名立たる戦国武将を女性へと置き換えた、いわゆるギャルゲー、キャラゲーなどという部類に属する。
だが、国を富ませ兵を強くし領土を広げていく、いわゆる戦略SLGという側面も持ち合わせている。
いうなれば、表の顔がギャルゲー、裏の顔が戦略SLGといったところだろうか。

まずは表の顔、ギャルゲーとしての面である。
このゲームの一番の売りである萌えキャラ、CGなどはそれぞれ好みがあるだろうが、概ね好評価である。
移植にあたり、主題歌のFullバージョン収録、PS2版PSP版でそれぞれ新キャラを追加し、
新キャラ、それにより追加されたシナリオ共に一定の評価を受けている。
システム面の話になるが、PC版では出来なかった、いらない武将の解雇が出来るようになったことも小さな進歩だ。

安心して欲しい、ここまでだ。もうここまでだ。ここから先はない。見えない。見えないのだ、光が。これ以上。
ここから先の闇は到底人間一人の手に余る。すべての闇を見渡すことは不可能である。
ごく一部の発見された暗闇の一部、極々一部しか語れないことを、まず謝罪させてもらいたい。

システムインターフェースの不便さ、セーブ、ロードの遅さ、セーブ中に画面が突然上下に揺れる、
SLGパートの文字、数字が読みづらい、軍資金が突然増える、軍備フェイズを飛び越えていきなり政略フェイズに入る
オートモードにするとボイスが無くなる、兵士を51人以上にしようとすると兵士増えないのに金と住民感情とCPが減る
これらはほんの暗がりである。本当の暗闇はまだ、先に。
●反逆の住民
戦国時代ものの戦略SLGでは、ほぼデフォルトになっているであろう徴兵すると治安、住民感情などが低下するというシステム。
大体この徴兵制度は、徴兵する兵の数に応じて住民感情が減少する。徴兵数が少なければ変動は少なく、多ければ変動も多い。
当然のごとくこの作品でも使っている、おそらくバグというアレンジを加えて。
このゲームでの徴兵は、その変動幅というものの定石に一石を投じている。

簡単に言おう、最低数の徴兵をしただけで、住民感情が5,60から1に変動したりする。当然住民の一揆という名の反逆が始まる。
だが考えてみて欲しい、このゲームの徴兵はある意味利にかなっているのだ。
千人のゴロツキが戦に持ってかれた時と、百人の心優しく有能な働き手が無理やり家族から奪われていった時の事を。
このゲームの住人は泣き寝入りなどしないのだ。従えなければ反抗するのである。即座に。
人間の価値は平等ではない。その事を忘れてはいけない。

●真・釣り野伏
釣り野伏という戦国時代の作戦をご存知であろうか?
九州の戦国大名島津義久が使ったとされている戦法であり、戦国物の戦略SLGでは結構お目にかかるものである。
野戦で軍を三隊に分け、そのうち二隊をあらかじめ左右に伏せさせ、まず中央の部隊のみが敵に正面から当たり、敗走を装いながら後退する。
これが「釣り」であり、敵が追撃するために前進すると、左右両側から伏兵に襲わせる。
これが「野伏せ」であり、このとき敗走を装っていた中央の部隊が反転し逆襲に転じることで三面包囲が完成する。
これを約400年後にバグを加え完成したのが真・釣り野伏である。
しかも釣り野伏が野戦であるのに対し真・釣り野伏はなんとそれを城で行う。
こちらがまず敵城を攻める、激戦の後、多くの損害を出しながらも、敵武将が退却して落城する。
だか、安心してはならない、勝利に酔いしれるとこができるのはほんのつかの間の事だ。
何故かその落城した城にいた武将が即座ににそっくりそのまま自軍側に侵攻してくる。
直前の合戦でかなり減らした兵力は、全員の武将がこちらが侵攻する前の兵数へとすでに整え直されている。
かくして、主力が出払った自軍の城はあっけなく落とされ、激戦によって疲弊した我が軍の主力部隊はやがて壊滅するであろう。

これは、どんな被害を受けていても部隊が壊滅する前に退却すれば兵数が元に戻るというバグを利用した高等戦術である。素人にはお勧めできない。
だが、敵側にしか出来ないと思っていたが、そんなことはなかったぜ。こちらもやろうと思えば出来る。
「肉を切らせて骨を断つ」を実践してくるのだ、こちらはそれに答えて、骨を切らせてでも相手を仕留めなくてはならない。
なんと、武士らしい戦いであろう事か。感動すら覚える。

●死の先にあるもの
戦国時代と武士に付き物なのは切腹だ。
当然のごとく落城したりすれば敵は腹を切る。なんと潔い散り際であろうか。

否。そうではない。それはあきらめた負け犬達の戯言でしかない。
本当に貫きたい信念があるのならば、死すら何事でもあるものか。
心強き者は死してなお蘇る。何故か自領土に。イベントに。

だが、ここから先は暗闇が深すぎる。全てを理解するのにはまだ時間が足りない。現段階では一例を上げるのみとしておこう。

曰く、死んだはずの武将が元配下を従え復活した。
曰く、切腹した敵武将が統一祝いのためにわざわざ城まで駆けつけてくれました。

まだまだこれは氷山の一角でしかないだろう、これからさらに事実が解明されることへの恐れを抱くことは当然だろう。
まさかこの作品は、人が死の先について想像すること自体が間違っているとでもいいたいのだろうか?怖い。

この選評を書くにあたり戦極姫スレの住人の様子をのぞいて見ました。

「ただ、いっさいは過ぎていきます。」

これは、太宰治の人間失格の中の一文です。その言葉が思い浮かびました。
騒ぐでもなくただ事実を踏まえ、淡々とバグについて話す人、どうということはなしと受け流す人、
バグについて騒ぐ人、荒らし、それら全てを内包し、ただ、そこにいました。
彼らは人間失格です。もはや菩薩です。
彼らのようになれば、このなんともいえない心の内は静まるのでしょうか?それはわかりません。
わかっているのは、この作品が何か賞を貰おうが貰うまいが特に彼らは気にしない事でしょう。
そんな強い心を持ちたいと願いながらこの選評を終わらせたいと思います。

選評案2

ついに年末の魔物が動き出した。
十八禁PC版からの移植作、「戦極姫~戦乱に舞う乙女達~」。
見た目は女体化した戦国武将たちとキャッキャウフフしながら天下を取る軟派なADV&SLG。
しかしその本質は、普通の戦略SLGではまず味わえない天下統一の苦しみを教えてくれるソフトであった。

・徴兵
徴兵を行えば住民感情が下がるという、どの戦国系SLGでもありがちなこのシステムは当然戦極姫にも搭載されている。
だがその桁が違う。兵数の最小単位である100人徴兵しただけで住民度が20以上急落。
ちょっと多めに徴兵した日には住民感情は1になりあっという間に一揆連発国と成り果ててしまう。
この問題は国の石高が一定値を越えると発生する。
このため地域の石高が自動的に大上昇する豊作イベントが発生すると途端に数カ国での徴兵が不可能となってしまい、
ラッキーイベントであるはずの豊作を恐れなければならない事態となっている。

なおCPUは一揆など知ったこっちゃないとばかりに毎ターンかなりの数の徴兵をする。
苦労して減らした敵兵を瞬間回復された時のやるせなさは言葉に現しがたい。

・お家再興
滅ぼされた大名の残党が復活の機会を狙うのは戦国の習い。戦極姫の世界にもそれはあった。
自分の領土内で突如としてかつて滅ぼした大名の家臣が現れ、大名家を復活させるのだ。
しかも「全国情報だと敵勢力になっているのに攻め込めない」「復活した城に味方武将がいると行動不能になる」
といったおまけつきである。
滅ぼされた大名の怨念がこのようなバグを発生させているのだろうか。

もっとも復活した大名家はそれで満足したのか、何をすることもなく城に居座り続けるだけなのだが。

・後方奇襲
敵城を落とした、といって安心してはならない。
「勝って兜の緒を締めよ」とばかりに、落とした城にいた敵軍が味方の後方の城に攻めてくることがあるのだ。
しかも直前の戦闘で減らしたはずの兵力を全回復して。
攻められる城はたいてい味方が出払った直後なため、あっけなく落とされ逆にこっちが敵国で孤立してしまうことが多い。
三国の諸葛孔明もびっくりな奇襲という名の理不尽バグである。

・引き抜き
敵武将を味方にする「引き抜き」は、クリアに欠かせないコマンドである。
普通にプレイしていると中盤以降、敵がこっちの倍以上の兵力で攻めてくることがざらにある。
まともに正面からやり合うと大打撃を受けてあっという間にジリ貧になってしまうため、
敵主力武将を上手く引き抜かなければはっきり言ってクリアは不可能という難易度である。
この引き抜きの成否は乱数によって決まるため、一度成功する乱数調整を行ってしまえば、
シナリオ内で忠義を称えられている本田忠勝だろうが誰だろうが一発で引き抜けてしまう。
逆に言うなら、調整失敗すれば忠義が1の武将でも引き抜けない。
何度も何度も同じデータをロードし乱数調整を行っていると、
竹中半兵衛を味方にするため雨の日も風の日も口説き続けた木下藤吉郎の気持がしみじみと実感できるものだ。

・鉄砲
戦国時代最新の武器である火縄銃。その性能は本ソフトでも存分に発揮されている。
武将に配備した兵数以上の鉄砲を与えると、攻城戦でどれだけ固い敵城も一撃で落城させてしまうことができるのだ。

また野戦になった場合でも上記のバグにより徴兵がしにくいため、
なるべく損害を減らそうと自分の兵数も減る「突撃」は行わず離れたところから鉄砲だけを撃つことが多い。
CPUも基本的に鉄砲を撃つだけなので「両軍が延々鉄砲を撃ち合って終わり」という超射撃戦が大半となる。
まさに戦の中心にいる兵器と呼ぶにふさわしい。

・イベント
かくも苦難の道に溢れる天下統一の道。
心の安らぎを求めてお気に入りの女性武将といちゃつきたいところだが、そこにも問題が待っている。
ADVパートのボリュームが少ないのだ。
半分ぐらいの女性武将はイベント一回だけ。メインヒロインはそれなりの量があるが、それでも2時間前後。
クリアまでの時間が十数時間、へたすれば二十時間を越えることを考えるとあまりにも短い。
このため天下の半分も統一しないうちにイベントは全て見終わってしまう。
後はEDまで彼女たちと会うことは無く、ひたすら黙々とSLGパートを続ける道が待っている。
「女などにうつつをぬかしていて天下が取れますか!」という彼女たちからの無言の叱咤激励であろうか。
これだけの苦難に満ちた戦極姫の世界。
他にも「やたらと長いセーブ時間」「上下に揺れるセーブ画面」「突然大増加する資金」
「イベントシーンで文字化け」「武将の立ち絵が一瞬別キャラになる」
「最上家で同じイベントが二回発生する」「切腹したはずの信玄が次のターンのイベントに出現」
といった不便な仕様やちょっとプレイしただけで発見できる細かいバグには事欠かない。
もはや女の子に萌えるのが目的だったのか、有料デバッグやるのが目的だったのか分からなくなってくる。

まさに「クソゲー界の天下を取らん!」と言わんばかりの問題作である。