2016年 次点

概要

名称古き良き時代の冒険譚http://www.daidai-web.com/vita/fybo/fybo_index.html [外部リンク]
ジャンルシミュレーションRPG
対応機種PS4
発売元有限会社だいだい
開発元有限会社だいだい
発売日2016年12月15日
価格1944円(税込価額)(DL専用)
対象年齢CERO:A(全年齢対象)

参考動画

要点

主にPCゲームのローカライズを手がけてきた有限会社だいだいが突如PS4/Vitaのマルチプラットフォーム向けに発売した自社製SRPG。
高すぎる難易度を誇る最新のゲーム群に対抗して、初心者でも気軽に最後まで遊べるSRPGを目指して開発したとこのこと。
結果的には誰もがげんなりするような内容へと変貌した模様。

コンセプト

戦闘システム

SRPGのシステムと演出

ストーリーの問題

その他

選評

選評1

古き良き時代の冒険譚(ふるきよきじだいのぼうけんたん)

有限会社だいだい開発のシミュレーションRPG。
配信開始日は2016年12月15日。
PS4、PSVITAの2機種で同時配信され、価格は税込み1944円。

「全てのプレイヤーが途中で投げ出すことなく、『あぁ、おもしろかった』という思いを抱いたままでゲームを終えていただけるようにする」
という目標から生まれたシミュレーションRPG。
だが実態はテンポの悪さと撤退を中心としたやる気を削ぐ要素の嵐である。

このゲームは七人の王子女が次の王を決めるために王家の墓と呼ばれる地下迷宮の最深部へいち早く向かうのが目的。

王から三体のオトモ(ユニット)をもらい、早速地下に潜ると画面上にはフリーゲームで作られたかのようなマスゲーが表示される。

最初に連れて行くユニットを配置
移動値分で移動
最後に攻撃や回復を選択する

というSRPGの基本に沿ってバトルが流れていく。

SRPGパートのテンポは非情に悪く、一つ一つの動作で牛歩戦術を使ってくるのでかなりの疲労感になる。
更に追い打ちをかけるように通常戦闘とボスステージのマップと戦闘時に流れる計4種類の短調なBGMのような何かがずっと流れ、聞いているプレイヤーが頭痛を訴える程苦痛にさせる。
戦闘に入ると、プレイヤーは戦闘前サポートカードと呼ばれる戦闘支援を使用するか選択でき、選択した後にバトル開始のボタンと共に戦闘が始まる。

戦闘時のダメージ算出は【攻撃側の攻撃力-防御側の防御力】のみの非情にシンプルな計算。
魔法戦闘に持ち込まれた場合は【攻撃側の魔力-防御側の魔力】となっている。
ダメージの下限は1
尚、このゲームには命中率やクリティカルなどの要素はないので目の前で見えてる数字が全てである。
魔法アビリティでの戦闘では反撃不能、にもかかわらず敵側はなぜか攻撃力+5サポートカードを使うなど雑なAI調整。

このゲームの戦闘は基本1枚絵のみで、戦闘時のアニメ等は一切存在しない。

更にこのゲームは1階層ごとの敵の強さの上がり方が大味で、2,3階層レベルが上がらないと格差ができてしまう。
これを解消するために、このゲームでは戦闘時の経験値を持ち越して現在のステージの最初からやり直す【撤退】をし、
他ユニットのレベルが適正値になるまでひたすら作業を繰り返す。
このゲームが撤退ゲーと呼ばれる原因になっている。
撤退は会話中に最初に戦う姉が推奨しているので、恐らく正攻法。

3面ごとに王位継承争いで潜った兄弟たちとの戦闘。
この時の会話が非情に寒く、王になる目的も
6面兄「王になって自分みたいなバカなやつを作らないためにみんなに勉強させる」
9面姉「王になって無職になる」
12面兄「王になってモテたい」

など、滑った発言を連発してくる。

ある程度レベルが上がると一部のユニットが覚えるバフアビリティが強力。
【+5する】だけの単純な効果であるが、このバフは全て累積し、そして残り効果ターンを上書きして残り続ける。
前述の通り単純な数値の差が全てのこのゲームにおいてはかなり重要であり、アビリティを覚える中盤以降はバフ盛りゲーの側面も持つ。

半分の10ステージを超える辺りにもなると周りの敵配置やマップが複雑化、壁を挟んでメイジ等の魔法職ユニットを置くことも多くなる。
魔法職が覚えるファイアは全ての射程が2、壁を貫通して放ってくるのでこの配置はとても厄介。

更に後半になるに連れて敵のターン時に度々【Thinking...】の文字が右下に表示され、1ユニットごとに1~5秒近くの長考プレイをするようになり、
ただでさえ悪いテンポが更に悪くなる。

720 : なまえをいれてください2016/12/18(日) 00:45:35.19 ID:mgsdcseq
クリア後のスタッフロールはなく、いきなりタイトル画面に戻され新しい項目が2つ解禁される。
1つ目の【チャレンジモード】は会話省略しただけのストーリーモードで、3面に登場した姉と別のユニット3体で1からやっていくというもの。
特に別の話が展開するわけでもなく、存在する意味があるのか疑問である。

2つ目の【リザルト】は今までのクリア実績が5つ記録として残り、いつでも閲覧できるモード。この苦行を5回も連続でやるプレイヤーは果たして居るのだろうか。

1900円と一見お手頃な価格だが、これを買う資金があるなら歴代の古き良きゲームに回したほうが得策だろう。


選評2

古き良き時代の冒険譚・ストーリー、舞台について


あらすじは、とある王国での王位継承についての物語である。
王家の墓と呼ばれるダンジョンの最深部にいち早くたどり着いた王子女が次期国王に選ばれる。


以上である。


山場もなく、最後にどんでん返しが用意されているわけでもなく、ただ主人公ナトリが兄姉と戦い、最後は王に認められて終わるだけ。
しかも、王家の墓では王子女たちは肉体的に傷つかないという設定なのでとくに緊張感もなく、ただ淡々と話が進んでいき、終わる。
そもそも国の規模やら情勢の説明がほとんどないので、この王位継承とやらがどれほど重要なのかもいまいち伝わってこない。
兄妹仲は悪くなく異母設定なども皆無なため、こういった継承問題では半ばお約束的な確執からの戦闘発生などもなく、ただの馴れ合いでしかない。
加えて王子女の大半が不真面目な理由で参加しているため中身のない茶番を見せられている感覚に陥る。

以下、対戦する兄妹たちについて(ネタバレあり):

第六子 リン:最初に対戦する姉。チュートリアルも担当。
神官見習いなのでそもそも王位継承には興味がない。
ゲームクリア後のチャレンジで選択できるもうひと地の主人公…のはずだが、
そもそもチャレンジでは会話シーンが全くないので、全く掘り下げがない。ただの面倒見のいい人。以上


第五子 アルゴ:第二戦で戦うことになる兄。人から好かれるが頭が悪い。
国民が自分のようにバカにならないように教育を徹底したいという、この作品では比較的マシな理由で王位継承に挑んでいる。


第四子 ベリー:第三戦であたるニート姉。
働きたくないという理由で女王になりたい。ただそれだけ
このあたりからストーリーのノリもキャラの発言もどんどん寒くなってくる。


第三子 オクス:脳筋タイプっぽい第四戦の兄。
わりとまともかと思えば、王になって嫁を娶りたいだけ。
要するに女にもてたいとのことだが、ナトリに負けてしまい失望。
リンに別の次元の嫁を紹介してもらい、あやうく二元へと迷い込みそうになる

第二子 ネオン:派手好きで目立ちたがりな第五戦の姉。
毎晩ダンスパーティーを開くために女王になりたい。リンに「それでは太るよ」と諭されてナトリに王位継承権を譲る。
攻撃魔法を放つ際にやたらと長くて中二病な呪文を唱えたがる(ゲーム中にはファイア以外の攻撃魔法なない)


第一子 カル:第6戦目であたるメガネ兄。
最後の相手のはずだが、王位<研究(ゴミ収集)なので、そもそも王位継承には興味がない。
ナトリと戦う理由は王家の墓のメカニズムに興味があることと、負けたら相手の部屋のお掃除を条件としてるため
ちなみに、墓について彼からの解説などは一切出てこない。

国王マグナ: ラスボス。
長子ではなく、兄を差し置いて国王になった身であることが序盤で明かされるが、伏線でもなんでもないどうでもいい設定。
ドラ◯ラムを使ってナトリと対峙するが、なんでドラゴンに変身できるかとかの説明は一切なし。
王政については何の描写もないので、結局何のために王位継承しているのかすらよく分からない。


と、そもそもの王位継承の儀式からして色々とあやふやであり、参加者の動機もいい加減なものが多い。
後半に進むにつれ参加理由がどんどんヒドくなっていくので、物語の重みがますます無くなっていく。
「冒険譚」どころか、墓場での一家団欒を見せられている気分になる。

なお、プレイヤーが使用するユニットはかつて王国に貢献した勇者の魂が宿ったモンスターらしいが、その勇者たちの掘り下げはもちろん無い。

オクスのくだりでも触れられたが、二次嫁や次元の壁のようなスラングまで登場するため、世界観と著しい乖離が感じられる。
他にも遠距離でコミュニケーションをとるために「スマフォ・ストーン」なるアイテムが登場したりと、「古き良き」からかけ離れた設定を見せつけてくる。
ちなみに、最後はこのオクスとの次元の壁についての会話で締められる。

このように短いストーリーに色々と設定をねじ込んではいるものの、何一つしっかりと掘り下げていないどころか、
起承転結のうち「起」と「結」しかないようなお粗末さである。
しかも最後には「彼の治める国はどのようなものになるのでしょうか。それは皆さんのご想像にお任せします。」
という、まかさのぶん投げEND。

オチすらもまともに用意できず、「古き良き」というコンセプトすらもまともに守れていない作品と言わざるを得ない。