[[2020年 次点]]

#contents

*概要 [#a6f645be]
|名称|ファイナルソード (FINAL SWORD)|[[&ref(https://img-eshop.cdn.nintendo.net/i/a0d6a1e8c034e0260d3cbe2019bfd17f55d1882aabe2cfb0a55f2030de937e75.jpg,300x170,画像);>https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000031029]]|
|ジャンル|アクションRPG|~|
|対応機種|NintendoSwitch|~|
|発売元|HUP Games Inc. (エイチユーピーゲームズ)|~|
|開発元|HUP Games Inc.|~|
|発売日|2020年07月02日|~|
|価 格|1890円(税込価格)、DL専用|~|
|対象年齢|CERO:B(12才以上対象)|~|
|参考|07月06日に配信停止後、2021年1月21日に「ファイナルソード DefinitiveEdition」として再配信|~|

-[[メーカー公式サイト>https://hupgames.wixsite.com/hupgames]]
*参考動画 [#l22006a4]

#youtube(defmDj00yQ8)

//*要点 

//**コンセプト など
//作品の情報

//-作品の情報


*選評 [#u6635348]

**選評1 [#r9db617b]
***初版 [#o0b00470]
[[要約版はこちら>https://docs.google.com/document/d/1g94Y7U7bffHdfp4QSyDlY6g3U_yPKRQFFE4EgE1ud1w/]]
 
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ファイナルソード 選評
この選評は7月12日、Ver1.0.0現在の仕様を基に執筆されています。

目次


・はじめに
1・主人公の操作、基本的な仕様の説明など
2・状態異常について
3・ザコモンスターについて
4・ボスモンスターについて
5・魔法の使い勝手詳細
6・ダンジョンについて
7・テキスト関連
8・その他細かいクソ要素
・まとめ、及びこのゲームの評価について



・はじめに
ファイナルソードは、2020年7月2日にHUP Gamesより発売されたオープンワールドアクションRPGゲームである。
プラットフォームはNintendo Switch、価格は1890円。DL専用ソフト。


発売前からしょぼすぎるグラフィック等で見えている地雷と称され、発売後もゼ○ダの伝説からのBGMパクリ疑惑など様々な形で話題となっていたが
その中身は叩けば叩くほど埃が出てきて、しかもその全てが発見する度に思わず誰かに話したくなる、非常にシュールかつ味わい深いクソゲーであった。
動画サイト等で見ると全体的な演出のしょぼさ、珍妙なテキスト等が目立っている印象を受けるかもしれないが
この選評では、実際にプレイしてみないと見えてきにくい部分を主に取り上げていこうと思う。
なお、筆者本人としてはそのような「一見しただけで分かる部分」「バグやパクリ騒動等」を一切取り上げなくとも十分にクソゲーとして語れると判断している。


※前提として、筆者は3Dアクション自体あまり触れたことがありません。
よって「お前が下手なだけ」と言われたらそれまで、という項目もあるかもしれません。その辺りはご容赦ください。



1・・・主人公の操作、基本的な仕様の説明など


基本動作
・弱攻撃…素早い攻撃で隙も少ない。判定が安定している?故か、初段から最後まで当たりやすい。三段目まで連携可能。リーチは極端に短い。
敵が怯むのが三段目のみなので、一段目と二段目は動きこそ素早いものの、実は敵からしたら反撃の的。隙が少ないのに隙だらけとはこれ如何に。とどめの一撃が最も有効か。
・強攻撃…動きが重く、隙が多い。なぜか一段目の判定が非常に小さい?為か、当たりにくい。
しかし二段目以降は判定が大きく、敵によって多段ヒットしやすく、二段目と四段目は怯む相手に当てると安定して怯ませる事が出来る印象。四段目まで連携可能。
四段目はかなり大きく踏み込むが、その勢いゆえにダンジョンでは床の無い箇所まで踏み込んでしまい、落下確定になる事も多い。
こちらも三段目までのリーチは極端に短い。
・回避…前転。出際無敵あり。終わり際に隙あり。敵は基本自機狙い以外の行動をしないので、特に雑魚はまずこれで攻撃を釣るのが基本。
・ガード…盾で攻撃を防ぐ。向いている方向しか防げない。敵は一匹なら回避すればよく、二匹以上なら防ごうとしても食らってしまうので筆者は序盤で封印した。敵によっては回避より役に立つかもしれない、その程度。
・剣を収める…名の通り。この状態で溜め攻撃を行うとランバッシュとなる。詳しくは後述。


スキル関連
使えるスキルは特定のボスを倒すと増えていき、メニュー画面で一定のゴールドを使用する事で解放可能。
溜め攻撃(後述)は解放すると強制的にそのスキルがセットされてしまうが、以前使っていた特定のスキルを使いたければ、メニュー画面でそのスキルにカーソルを合わせてAボタンを二回押せばいい。逆に言えば溜め攻撃は弱溜め攻撃と強溜め攻撃それぞれに一つずつしかセット出来ないとも言えるが、筆者はそれ自体はあまり問題にならなかった(後述)。


・バッシュ…溜め攻撃のこと。弱攻撃ボタンでのアクション、強攻撃ボタンでのアクションがある。共通しているのは威力が高いことと、モーション中に無敵があること。
溜め時間によって三段階に威力が変動し、ボスにはこれでないとろくにダメージが入らない。また、溜め中は移動速度が遅くなる。終わり際には無敵が切れており、外すと隙を晒してしまう。
溜め攻撃を放つとその分スタミナゲージ(かどうかは知らんが、便宜上スタミナと表記します)が減り、減ったスタミナ以上に溜めようとすると一定時間動けなくなってしまう。スタミナは時間と共に回復する。
正直使える技と使えない技が極端に分かれており、使い分けというよりは今一番使える技だけセットしておけばいい印象。
また、一段目まで溜めるとキャンセルが出来ない。スタミナが減っている場合、ボタンを離して発動するか、スタミナに引っかかり動けなくなるかのどちらかとなる。
・ランバッシュ…剣を収めた状態での溜め攻撃。最も大きな違いは溜めながらも移動速度に変化が無い事であり、実は相手によっては使いこなすと割と優秀。
・アクション…主に盾を構えた状態で出来る事が増えていく。ジャストガード、サイドステップ、バック転等があり、ものによってはそこから専用攻撃に移行することも可能。
しかし、ジャストガードは混戦だとむしろ隙だらけになる事が多い、バック転やサイドステップは回避のほうがいい、など、使い道を探してはみたものの特に存在しなかった。というかむしろ邪魔であった。
実際、筆者はひとつも使わずとも特に問題なく攻略できた。使いこなせるほどやりこむ人にもなると違うのだろうか。


魔法の使い方
まずメニュー画面で、覚えた魔法の中から使いたい魔法を十字キー各方向にセットする。
次にメニューを解除し、Rを押しながら十字キーを押すと、右上の魔法アイコンに使いたい魔法がセットされる。
右上にセットしたら、Rを押しながら狙いをつけ、Rを離すことで魔法発動となる。
Rを押している間は強制的にカメラが主観視点となり、画面中央に向けて発射される。
範囲魔法はRを押した瞬間離せばいいし、回復や移動の魔法はメニューから直接使えるようになっている。
魔法は使った後、再使用までに一定の時間を要する。強ければ強いほど、便利であればあるだけ、その時間は長くなる傾向にある。
正直直感的に操作しづらい。具体的には、魔法自体は役立つものも多いものの、使いたい魔法をとっさに選びにくく、狙いをつけにくい。使いにくさの詳細は別項にて。


その他
・どこでもセーブ可能。オートセーブもあるが、タイミングが謎すぎて筆者の調査の範疇では全く法則性を見出せなかった。一応事故の保険になるだけマシではあるのだが。
例を挙げるとダンジョンのあるポイント(詳細全く不明)を過ぎるといつの間にかセーブされているらしい。その割に、シナリオ上重要なボスを撃破したり、ダンジョンに入ったりしてもセーブされていない事がある。
・このゲームには落下死と溺死がある。とはいえ意地悪な箇所に穴があることはあまりないので、よほど道を外れない限り、普通に歩いていれば滅多に引っかかるものではない。
…はずなのだが、実際には常に気をつけていないといつどこで落ちるか分からない程の事故要素と化している。詳しくは後述。


基本的な仕様の説明は以上となる。
このように、システムだけ見ると意外なほど作り込まれている事が分かる。実際思い通りに動かせるようになって、思い通りに雑魚を狩れた時なんかは中々快感ではある。
ではなぜこのゲームをクソゲーと評価したのか?それは、諸々の仕様で「プレイヤーの腕前の範疇でどうにかなる一線を越えているシーンが多発する」為である。
一言で言えば、上手く敵と戦っていることを実感できる快適な時間を過ごしている中、突然理不尽でどうしようもない時間がやってくるゲームなのだ。
この理不尽さは常に唐突、かつそれなりの頻度でやってくる。ある程度楽しんでいる最中の突然の事故、ゆえに非常にストレスが溜まる。
下手すると即死であり、後述の凍結が合わさると下手しなくても即死の可能性がある。もちろん死ねばゲームオーバー、最終セーブからやり直しである。
中途半端に遊べるが故に先へ進めてしまい、後半になるにつれて理不尽な要素に出会う機会がどんどん増えていく。
この「遊べるからこそ、誰もがクソ要素に辿り着いてしまう」という点も本作の特徴であると言えるかもしれない。
一見遊べそうな作りは、それこそがクソストレスへの入り口、巧妙な罠であった。もしこれが作り手の意図通りなのであれば、本作はゲー謀と呼んでもよいのではないだろうか。


以下、ゲームの各仕様の説明と共に詳細を記す。
尚、特記の無い限り説明文イコール低評価点、問題点と捉えていただいて差し支えない。



2・・・状態異常について
まず大前提として、以下の二つを覚えた上で目を通して頂きたい。
ひとつ、状態異常は一部の敵の一部の攻撃に付随する。防ぐ装備などは存在しないため、食らいたくなければその攻撃を受けないようにする以外の手段がない。
ひとつ、状態異常の判定はなぜか食らい硬直中・ダウン復帰中・溜め攻撃の無敵時間を無視する。ダメージこそ受けないものの、状態異常のみきっちり受けるという謎の仕様。
この二つを理解した上で以下を読んで貰うと、凍結を一回食らう事がいかに致命的であるかを理解頂けるはずだ。


状態異常(正式名称が分からないので名前は便宜上のものとします)
・毒…スリップダメージを受ける。このゲームには解毒草を落とす敵が山ほどいるのですぐに治せば問題ないし、ダメージもゆっくり1ずつなのでそれほど脅威ではない。
なぜかマップ変更時のロード中やイベントシーン中でもHPが減っていき、その最中0になれば当然のようにゲームオーバーとなるが、このゲームでは些細なことであろう。


・凍結…理不尽極まりない状態異常。食らった瞬間から一定時間動くことが出来なくなる。この間はメニューも開けない。
特筆すべきは、凍結中に敵の攻撃を受けると凍結が解けるまでなぜか一発だけダメージが通ること、そして凍結した時のモーションがダウン中等の本来であれば無敵時間を纏っているはずの姿であっても凍結を食らうたびにやられ判定が復活してしまうことである。
さらには凍結時何の問題も無くても、凍結が解けた瞬間に食らいモーションに移行することもあり、その場合、そこに再び凍結効果のある攻撃を食らうとやはりループする。
結果として、凍結攻撃を受ける→近くの敵に一発殴られる→復帰→食らいモーション→凍結攻撃を受ける→近くの敵に一発殴られる→復帰→まだ食らいモーションの最中→凍結攻撃を…のループに非常に陥りやすい。
厄介なことに本格的に敵が凍結を駆使するようになるのはゲーム後半からであり、狙ったかのように一撃が重い雑魚の数が増えてきている時期だったりする。
経験値稼ぎのために戦っていたらカメラの範囲外から遠距離攻撃を食らい凍結し、そのまま殴られ続けてゲームオーバーというパターンを全く同じ敵に何度も繰り返す事も珍しくない。


・スロウ…主人公のモーションが重くなる。なぜか雑魚ボス問わず、結構たくさんの攻撃に付随している印象。特に後半は持っている敵が妙に多い。
地味ながらこれもかなり危険。凍結と違い、理不尽でない&アクション次第で無傷で済むだけゲームしてはいるのでマシではあるが。
食らいモーションやダウンからの復帰まで重くなるのが厄介で、復帰の瞬間に雑魚の一撃を貰うと防げない。スロウだとそれが起こりやすく、やはりただのストレス源となりやすい。



3・・・ザコモンスターについて


まず、経験値の入手バランスがかなり酷い。全体的に敵が猛烈に固い割に入手量が低い。
正確に言えば、序盤はそこまで敵も固くなく(弱いとは言っていない)、次の地域に行くとグングン入手経験値が上がっていくのでそれなりにレベル上げは楽しめるかもしれない。
しかし後半になればなるだけ敵はどんどん固く強くなり、敵から得られる経験値量と次のレベルまでに必要な経験値のバランスがおかしくなっていく。
特にレベル48を過ぎたあたりから次のレベルまでに必要な経験値量の増え方がおかしくなり、
ここまで6万強必要だったのが、なぜか1レベル上がるたびにそこから更に4万以上ずつ増えていき、その後も増加の一途を辿っていく。
確かにその辺りから雑魚の経験値も増えていくのだが、同時に出番が多くなるボスの量産型は特に固く、そして強く、
いつどこでやられるか分からない恐怖と戦いながらちまちまセーブしてちまちま回復しながら戦わなければならないため、非常にストレスが溜まる。


その代わりなのか、中盤以降のザコモンスターは全体的にいいものを落とすようになっており、倒せば倒すだけアイテムが手に入る。
特にMP回復アイテムは宝箱にあるアイテム以外ではモンスターを倒さないと手に入らない。
しかしながら、このゲームには魔法を使わないと倒せないボスがかなりの数おり、それらのボスと戦うときにMP回復アイテムを持っていないでMPが尽きると詰む。
「魔法を使えなくなると苦戦する」ボスがほとんどではあるが、一部は本当に「魔法が使えないと勝てない」のである。
MP回復アイテムはそこまでぽんぽん落としてくれるわけではないため、特に後半の長いダンジョンで計算なしに使っているとすぐに無くなってしまうと思われる。
完全な余談であるが、魔法でないと倒せないボスの中にはHPを減らすと急にこっちに来てくれなくなる奴がおり、最初から剣ではダメージを与えられないわけではない。
これらのボスは一時的に遠距離攻撃に切り替えているわけではなく、ある程度までHPを減らしたときから、全く近距離戦をしてくれなくなるのである。
剣と魔法を使い分けるゲームなのに突然片方を強制させるのはどういう感性なのだろうか。


雑魚戦で一番の問題点は猛烈なまでのリポップのスピードであろう。
たった一匹の処理にてこずっているだけで、いつの間にか二匹になり、三匹になっていて、結果どうしようもなくなるという事が非常に多い。
そして中盤以降特に増えるボスの量産型雑魚は攻撃力も耐久力も共に凄まじく、どうしてもヒットアンドアウェイで慎重に戦わなければならず、
結果、一度に大量の雑魚を相手にするシーンが頻発してしまう。
厄介なことにこれらボスの量産型は経験値がそのままであり、倒せれば美味しいのだが、耐久力が非常に高く、構っている間に大量の雑魚が湧いてしまい…というパターンに陥りやすい。
対策として使える魔法も後半になると存在しないわけではないのだが、このゲームはMP回復アイテムが貴重であり、
また上記のMP回復アイテムとの兼ね合いからボス戦への備えとして、あまり魔法を乱発してMPを減らしたくないという心理が働くので、筆者はとっさに使うのもいちいち心にブレーキが掛かってしまった。
二匹以上の雑魚を相手にして一度でも回避に専念し始めてしまったら溜め攻撃を入れる隙すらほぼ無くなると言える場面も多く、
結果、最も有効な対策は、ダンジョン攻略の際はレベル上げや強制戦闘をこなしたら適度に回復に戻り、ボス部屋まで一切戦わずに無視して駆け抜ける事に行き着くだろうと思われる。
そこまでしなくてもクリアできるダンジョンが大半ではあるが、終盤は全くの無補給で進むのは無理に等しいと筆者は感じた。



4・・・ボスモンスターについて


全体的に、とても耐久力が高く、攻撃チャンスが少ない。そして、攻撃力はもっと高い。
少し食らうと即ピンチになってしまう割に、ダウンからの復帰直後を平気で狙ってくる、もしくはダウン中に広範囲ブレスを重ねてくるボスがとても多い。きちんと回復していないとメニューすら開けず死ぬこともしばしば。
序盤こそ適正まで、及び適正以上にレベルを上げると途端に楽になる極端なバランスに思えるが、中盤以降、適正レベルが段々と意味を失っていく。
適正レベル以上にしたところで、ごり押しではまず勝てないどころか、的確に弱点を突かなければダメージすらろくに与えられないバランスになっている。
後半になると攻撃に凍結効果が混じるボスまで出てくる始末である。しかも何故か凍結が解けたくらいのタイミングで凍結効果のある攻撃を入れてくる事が結構な数ある。筆者はとあるボスに幾度となく理不尽な敗北を味わった。


中盤以降のボス戦で勝つために必要なことは、ざっくり言うと行動パターンを把握して的確に攻撃及び回避する事と弱点を見つけることであるが、
そうすると多少楽になる…のではなく、正確には「行動パターンを把握して的確に攻撃及び回避しながら弱点を攻めないとまず勝てない」、という方が正しい。
またこのゲームにはどういうわけか遅延行為が大好きなボスが多く、
ザコモンスターの項に記したとおり、突然長時間に渡って遠距離攻撃しかしなくなるボスも結構な数存在する。
そういう行為に至るボスの攻撃に限って遠距離攻撃の回避が妙にシビアだったりするのも気が抜けない。
具体的には、飛んでくるのを見てからではまず回避不能な飛び道具を放つことが妙に多い。
予備動作に反応して回避ボタンを押せばなんとか避けられるのだが、少なくとも初心者はカメラを常に敵方向に向けておくだけでも苦労するはずだ。


ここまで読んで頂くとプレイヤーの腕前とやりこみ次第で突破可能なやり応えのあるゲームと捉える諸氏もいるだろう。実際そのようなボスも多い。
だが最悪なのは、好戦的な雑魚がかなりのスピードで無限湧きする中戦わなければならないボスが存在することである。
このゲームは自機狙い以外の攻撃及び行動パターンの雑魚がほぼ存在しない為、雑魚はどいつもこいつもプレイヤーに向けて突っ込んでくる。そして何故か、ボス戦で湧く雑魚には足が速いものが多い。
そんな中で前述の遠距離攻撃を的確に回避することは可能か?残念ながら戦略や操作精度で対応するには限界があると言わざるを得ない。
凍結やスロウの使い手がいると、その一瞬の隙から長時間拘束、下手すると瞬殺の可能性すらあるのだ。
少なくとも筆者の腕前では「理 不 尽」以外の言葉が出てこなかった。


上述のように、ボスとの戦いではもどかしさとストレスが最大の敵であり、
もういやだ、早く倒したいから最大の一撃を叩き込まないと…と思ってしまうと結果的にこちらが甚大な被害を受ける元となってしまうパターンにハマる事が非常に多い。
このゲームのボス戦で最も求められる戦い方は、非常に回避の難しい攻撃をしてくる相手に回避重視でちまちまと地道に戦う事なのである。
仮にもアクションRPGを名乗りながら、目玉であるはずの強敵との戦いで爽快感を得る事が極めて困難というのはどうなのだろうか。
実際感想を辿ると、「やっと○○倒した!強かったー!!」という意見より「もう嫌だ」「クソボス」「二度と戦いたくない」という方が圧倒的に目立った。



5・・・魔法の使い勝手詳細


最初に書いた通り筆者はこの手の3Dアクションゲームをやった事がないので他のゲームとは比べられないことを前提に書くが、
結論から言って、ほぼ必須な割に非常に扱いにくい、という印象を受けた。


このゲームでは魔法を覚えるために特定の宝箱を開く必要がある。
最初のうちこそ魔法士(原文ママ)に宝箱の位置を教えてもらえるものの、途中からは完全にノーヒント。
しかもノーヒントで置かれている魔法にも重要・優秀なものが多い。
ダンジョンの間違った道の先にある行き止まりにある宝箱の中というお決まりのパターンでさえ探すのは中々面倒であるが、
最悪なのは、フィールドにぽーんと置かれているパターンである。
実際筆者はレベル上げがてらかなり様々な所を見逃さないように歩きながらプレイしていたものの、いくつかの魔法はとうとう見つけられずにエンディングを迎えた。


肝心の使い勝手であるが、魔法の効果自体はそこまで悪くはないだろう。使わなくても攻略できるものの、あれば確かに攻略が楽になる、そんな場面も多い。しかしながら、極端に操作がしにくい。
基本操作の項の通り、使いたい魔法をメニューでセットし、Rを押しながらセットを呼び出して、十字キーで切り替えて使う、だけならそこまで複雑な操作とは言えない。
しかしこの操作を、戦闘中あの魔法が使いたい!となった瞬間に
「Rを押すと強制される主観視点で、左スティックで大量の数の雑魚の凄まじい攻撃を避けながら、使いたい魔法のセットされている十字キーを押して、当てたい敵の方向を向いて、Rを離す」
事をとっさに出来るかと言われれば、筆者は最後まで慣れることが出来なかった。
結局魔法のセットに戸惑っているうちにカメラ範囲外から敵の一撃を貰い、そこを起点にズルズルとハメ殺しにあう…なんて事も一度や二度ではなかった。
なお説明が遅れたが、魔法を使用する為にRで構えている間は回避が出来なくなる。


前項目にある通り、一部ボスは魔法でしか攻撃できなくなる事があるのにMP回復アイテムは自由に入手できないのも問題点であろう。
とはいえ相当に戦わないとレベルが上がらないバランスである為に、勝手にいいアイテムがどんどん溜まっていくのも事実であり、
もしかしたらそれを見越してあえてそういうバランスにしたのかもしれない。
だからといって、道中でMP回復アイテムを計算なしに使うと間違いなく詰むボスがいる事を擁護できるかと言われればNOではないだろうか。



6・・・ダンジョンについて


ほとんどのダンジョンは、長く、広く、強制戦闘が多い。
道なりに進む→強制戦闘が開始される→部屋のガーディアン的なちょっと強めの雑魚を倒す→道なりに進む…の繰り返しとなる。
当然というべきか、強制戦闘の始まる部屋でも雑魚は延々湧き続ける。
大体のダンジョンで上記の同じ流れを繰り返すことになるのだが、
後半になるにつれて厄介な雑魚の数が増していく分、強敵相手に雑魚にちょっかいを出されてそこを起点に理不尽なハメ殺しに合う、という展開も増えていく。
また、ほとんどのダンジョンは床が抜けており、落下死の危険と隣り合わせの中戦う事となる。
そんなに落ちるものか?と思われるかもしれないが、小部屋はともかく、道中で戦おうとするとなぜか道はどこもかしこもやたらと狭いため、
強攻撃四段目、バッシュ強2、回避…等の役立つ技の移動力もあいまって、特に慣れていないうちは驚くほど即死の可能性が高い。
酷い場合は強制戦闘を強いられる部屋の一部に円形の穴が開いていることも。


分かれ道の先が行き止まりだった場合ほぼ例外なく宝箱が置かれており、ここは純粋なこのゲームの評価点と言っていい箇所であろう。
しかし中には魔法、しかもよりによって移動魔法が入っている宝箱があり、それを知ってしまうと「このゲームで宝箱は絶対逃せない」という意識が高まってしまい、
結果、だだっ広いダンジョンを無駄に歩かされるハメになってしまった。
一応の補足として、強制戦闘は一度その部屋の戦闘をこなしたら同じ部屋で二度行うことは無いので、その点は安心してほしい。



7・・・テキスト関連


既に話題になっているが、このゲーム、稚拙な翻訳ゆえか珍妙な日本語と文章で会話するシーンがとにかく多い。
特筆すべきは、そのほぼ全てが「全くもって意味不明」ではなく、「特に問題ない」と「言いたいことは分かるが語順がおかしいorまるで会話になっていない」のどちらかで構成されていることであろう。
その為常にプレイヤーが油断した頃に突然向こうからネタがやってくるかのような感覚を覚える。
正直、ネタ目的で購入した人の何割かはこれのおかげで続けられているのではないだろうかと思えるほどその塩梅は絶妙であり、
苦行である雑魚ボス戦を繰り返してテキストを全く意識しなくなった、つまり忘れた頃に非常にシュールな会話や演出がどこでも襲い掛かってくる可能性があるのである。
これがこのゲームの評価や、続けるための活力?に繋がっているのはある程度間違いないと思われる。
また極一部であるが、翻訳が稚拙という問題ではない箇所、具体的にはセリフの取り違えとしか思えない箇所が存在した事も記しておく。


特に終盤に出会う、「神聖な木」との会話は突っ込み所の嵐である。
以下、詳細を記す。


「待っていました…
『はい?誰をですか?
「あなたを…待っていました…
『僕をですか?僕の事を知ってるんですか?
「わかりません。ただ、あなたは100年ぶりに生まれた伝説の勇者です。
『ははは…そうなんですか。
「あなたは悪に打ち勝つ唯一の存在のようです。
『責任重大ですね…
「心配しないでください。私が手伝ってあげます。
『悪の根源はどこですか?
「北の方角の深い火山に1000年間眠っていた
「ドラゴンがその悪の源です。
『やっぱりドラゴンだったんですね。1000年間眠っていたドラゴンがなぜ今…
「必然的にいまあなたが生まれたんですね。
「ドラゴンと戦うためには必ず
「ドラゴンの剣とドラゴンの盾を持たなければなりません。
「その武器以外ではどんな武器もドラゴンの相手にはなりません。
『その武器はどこにあるんですか?
「ドラゴンの剣はこの雪の山に眠っています。
「ドラゴンの盾がある場所は…
「人間の力では行けない場所ですが…
「私がその場所まで送ってあげます。
「先にどこに行くかを選ぶのは勇者様です。
「最後に私があなたの為に装備を差し上げます。
「人間がこの場所に現れたのは初めてだけど
「ここは人間ごときがくる場所ではない。



8・・・その他細かいクソ要素


・当たり判定が主人公も敵も不明瞭。
明らかに全身食らい判定になっていそうな敵にも強攻撃一段目はスカったり当たったりする等、法則がまるで分からない。
それでも主人公側の攻撃はずっと操作する事もあり、なんとなくどの敵にどの技が当たりやすく有効か等感覚的に分かっていくものだが、
モンスター側の攻撃はそれこそ判定が千差万別で、似たようなモーションの似たような攻撃なのに同じ箇所にいて食らったり食らわなかったりする。
ある敵が腕を振り下ろした時に明らかに主人公と重なっているのに食らわないことがあれば、ある敵の棍棒は明らかに振り下ろす前に食らっていたりするので、
引き付けて回避しようとして早めのタイミングで食らう、早めの回避を心掛けて終わり際のタイミングで食らう、等、なんで今の当たったんだ?となる事が全編通してとても多い。
ボス敵はもっと意味不明で、特に飛び道具、魔法、光弾、ブレス系の攻撃は見た目より判定が大きかったり小さかったりすぐ消えたりやたらと残ったりするので、
それに気付かず見た目に食らわなそうな側に回避ばかりしていると、当たったり当たらなかったりするので判定が運だと思い込んでしまいやすい。実際運なのではと思える攻撃もあるのだが。


・アイテムはそれぞれ20個まで持てるが、買うときに持てる上限は10個までとなる。
どういう意味かというとたとえば薬草を9個持っているときに店で購入しようとすると、薬草は1個以上売ってくれないのである。11個目を狙うにはドロップや宝箱からの入手しかない。
全く意味不明な仕様であり、実際に初見のボス相手等には特にHP回復アイテムは20個あっても足りない事などしばしばであり、何のためにこのような仕様にしたのか理解に苦しむ。
確かにモンスターを倒していれば11個目以降も割とすぐに溜まるが、じゃあ売らなくていいよねとはならないと思うのだが。
ちなみに道具屋の言い分は「これは在庫がありません」である。


・なぜかフィールド地図の位置が妙に分かりづらい。
具体的には、一枚目は最初の村の空き家の中、二枚目は砂漠のど真ん中、三枚目はキングダム地方のフィールド宝箱の中である。
一枚目はともかく、二枚目と三枚目は中途半端な位置にあり、特に三枚目は草むらの中に巧妙に隠されているので、非常に分かりづらい。実際見つけられなかった人も多い。筆者はノーヒントでは無理であった。
そもそもフィールド地図など標準装備、及びイベントで手に入れるのが当然ではないかと思うのだが、それは昨今の親切なゲームに毒されすぎだというファイナルな警鐘なのだろうか。


・メニューボタン(+)を押すと即座にメニュー画面が開くのだが、この世界の時間は一瞬経ってから止まるらしく、
やばい!回復だ!と思ってメニューを開いた時に敵側、特に光弾やブレスのような動く攻撃判定はコンマ数秒ほど動ける猶予があり、
ギリギリの所でメニューを開いた結果敵の攻撃を食らってしまうことがあるのだ。
地味ながら相当なクソ要素であり、この一瞬の差が命取りになる事もあり、実際にこの時間でダメージを受けると非常にストレスが溜まる。
なお、メニュー画面はダウン硬直中や凍結時は開けない。ここでも凍結優遇である。
また細かいクソ要素として、このゲームでは魔法以外のあらゆる入力に十字キーを使わせないという奇妙な仕様があり、
メニュー画面などそれこそ十字キーを使って入力したいのに、なぜか左スティックでしか選べないのも慣れるまでに時間を要した。
一応こちらに有利な仕様?もあり、魔法は連続で使おうとすると一定の待ち時間を要するのだがその時間はメニューを開いていても進む。溜め攻撃に必要なスタミナも同様。
フル活用すると一部のボスの攻略がかなり楽になるが、これが本来想定していた挙動か否かは不明である。


・物を調べたり会話したり出来る判定が妙にシビアで、きちんと相手の目の前に立たないと会話が出来ないし、宝箱も真正面からでないと開けられない。
特にダンジョンで崖際に置いてある宝箱を調べようとして回避が暴発して奈落の底へ、という死に方は最早テンプレと化している。


・移動魔法と脱出魔法、どちらも演出がチープ。
移動魔法は空を飛んでいると思われるが画面上では上方向へスライドしているようにしか見えず、脱出魔法はその場をクルクル回るだけの代物。PS2時代でももう少し頑張っていた印象があるほど。
もっとも、クソ要素というよりは見る度にツッコみたくなる箇所と指すべきかもしれない。
脱出したいイコール消耗している筈なので、ギリギリまで戦って疲れたプレイヤーの心に爽やかかつ生温い風を吹かす事には成功していると言えなくもないか。


・グラフィックだけではなく、演出力も全体的に不足している。
全編通しておかしな箇所は山ほど見受けられるものの、特にお姫様を助ける時、崩れる寺院の中で動けないお姫様に向けて主人公が
「じっとしていてください。私がそちらに行きます。
と抜かした直後に二人ともその場でテレポートしたのは前述の演出と重なり、とてもシュールな印象を受けた。


誤植らしきものも多い。以下一例。
・防御スペルカードというアイテムの説明文に、攻撃力を一時的に10%上げると表示される。尚、実際には防御力が上がっている模様ではあるが。
・次の目的地と推奨レベルが示される冒険手帳に、ドラゴンの盾の欄に「ドラゴンの剣を必ず手に入れよう。」とあり、ドラゴンの剣の欄に「ドラゴンの盾を必ず手に入れよう。」とある。
・前述の神聖な木が最後に突然「ここは人間ごときが~」と態度を豹変させる理由は、その後のとあるボスが全く同じ台詞を吐くのを見るに取り違えたものと推測される。
・その他、有名になった「当然んじゃろ…!!」等、拾っていたらキリがない。



・まとめ、及びこのゲームの評価について
パッと見の印象こそ案外悪くないのではと思える感があり、実際に意外と面白いと思える箇所も少なくないものの、進めれば進めるだけ歪な作りが嫌でも目に付く出来になっている。
中途半端に進めたくなる出来であるからこそ、どこかで必ず裏切りに合うその塩梅は、ある意味見事である。


クソゲーである事は疑いの余地なしだが…一方で、興味深いことに実際にプレイした人の感想を辿ると、文句を言いながらも真剣に憤っている人、途中で投げ出す人はとても少ないという印象を受けた。
プレイヤーも動画勢と呼ばれる側の人も皆一様に口にする魔法の言葉?に、「頑張って作ろうとした感は窺える」というものがあり、実際筆者もそう思いながらプレイしていた。
前述の理不尽極まりない諸々の仕様も、手抜きや調整不足故に出来上がってしまったものではなく、
あまりの作り手のセンスの無さゆえ、高難度という概念をユーザーの求める高難度と取り違えてしまったゆえの悲劇である公算が高いのである。
他にもこの選評では言及を控えたが、グラフィックの荒さに加え、まさかのクソデカレベルアップくんの再来等の珍妙なセンスも見逃せない重要なポイント。
落下死ひとつ取っても主人公のリアクション、ボイス、GAME OVERのフォント、そこで流れる音楽、どれも笑わせようと思って入れたわけではない(はず)にも関わらず
「こんな死に方しました」という落下死のパターンを動画にするだけでネタとして紹介したくなり、実際に発信することで多くの人を笑顔にしてしまう辺りがこのゲームの破壊力の高さを物語っていると言えよう。
これらは作り手が狙ったわけでは決してなく、真面目かつ真剣にゲームの良さを追及したゆえの出来の筈なのに、結果だけ見るとこのようになってしまったという事が見ていてなんとなく分かるからこそ、
このゲームを見た人やった人全てに「ああ、本当はこうしたかったんだろうな…」という哀れみの目を向ける猶予を与えてしまうのである。
要するに、ゲームそのものの評価をしようとする過程でなぜか作り手のセンスに感情移入してしまうのだ。これは非常に珍しい現象である。


このように、遊べば遊ぶだけ本来の遊び方とは違った本作の魅力もといネタが次々見えてくるのも本作の特徴であり、
はじめにの項に挙げた「シュールかつ味わい深いクソゲー」という文章には、このようなスルメゲーとしての意味も込めた。
そしてここで、何度か主張している「中途半端に遊べるがゆえのクソ」という要素が大きな意味を含む事になる。
本作はこれら謎の魅力ゆえ、途中で投げ出したくなりにくい、やめたらもったいない気がするという心理が働きやすく、
結果、「まごうことなきクソゲーなのに、最後までプレイヤーを離さない」という矛盾を成立させることに成功している。
つまり、多くのプレイヤーが最後までゲームを進められてしまい、結果として、誰もが等しくゲーム内の全てのクソ要素に触れることが出来てしまうゲームなのである。
それに付随して、本稿では言及を避けたがエンディングにもツッコミ所がある。
具体的には、感動させようとしている事は伝わるものの、実際に画面に映る主人公の落下モーションが非常にシュールであり、
確かなクソゲーであるにも関わらず、最後の最後まで「酷いもの」を「見せてもらった」という不思議な感情を抱いたままゲームを終えることが出来てしまう。


「いいものを作ろうとしたんだろうけど結果なぜかこうなった」という面はデスクリムゾンを、
「ツッコミ所が多すぎて超絶苦痛なのに、なぜか率先してそれを探したくなる謎の魅力」は戦極姫を、
「理不尽要素からくるストレスゆえの悲鳴を上げながらもなぜか最後までやってしまう」プレイヤー心理は鬼帝を、
「バグも仕様もいちいち笑える要素が多く、プレイヤーから一見さんまで皆一様に興味を抱いてしまう」点はダメジャーを、それぞれ彷彿とさせる。
本作は、令和という時代に生まれた、かつて愛されたクソゲー達のハイブリッドだったのである。


ファイナルソードとは、現代に蘇った負のブラックホールと呼べる作品であった。





ゲーム内容の選評は以上です
以下、「何故ファイナルソードをKOTYに推そうと思ったか」を中心とした、個人的な所感となります
ここから先を選評として扱うか、残すか等の判断は住人の皆様に任せようと思います
これを書いた主な理由はファイナルソードがKOTY2020としては弱いのではないか?という7月上旬に目立っていた意見に真っ向から反論するためです
(正直読んで貰えればいいやって気分で殴り書きしたものなので、感情論は選評として不適切だと言われたら取り下げる気満々なのであまり深く考えず流し読みしてください)





・所感
筆者はこのゲームを7月上旬現在の基準でKOTY2020大賞に相応しいゲームであると確信を持ち、今回選評にしたためさせて頂いた。
その最大の理由は、このゲームが「感情を共有したくなる」クソゲーであるからだ。


昨今のKOTYは、製作者のやる気を問う程の手抜きが見え見えのゲー無、バグだらけでまともに遊べない等を武器にした
「薄い」「つまらない」「不快感」がトレンドかのごとく話題をかっさらってきたと言える。
すなわち、プレイした側も見た人も「これはひどいね…」以上の感情を抱きようがないのである。


だがファイナルソードは違う。
購入した人たちは個人差はあれど、皆文句を言いながら、やりたくないと言いながら、もうこのボスやだと言いながら、
何かしらのネタを見つけては、それが笑えるネタであろうが純粋に酷いものであろうが関係なく、嬉々として画像や動画で周りの人たちに発信し続けている。
それらを見た人もまた、皆文句を言いながら、酷いゲームだと罵りながらも、一切の不快感を抱かず、
「まだ何かありそうだ…」「次は一体何が起きるのだろう」と、期待の目を向けてしまうのだ。
発信するプレイヤーも、ネタゲー好きで自ら漁る側も、果ては興味本位で見に行くだけ、偶然目にしただけ、これら一見さんまで、
「これはひどいwww」「やってみたいwww」という感情を皆が一様に抱ける、そんなゲームは果たしてここ数年で何本あっただろうか。


やる側も見る側も、満場一致で笑顔になれるクソゲー。
プレイしている人は、これはネタになるぞと気付いた箇所を逃さず「発信」する。
それを見にきた人と、皆でシュールな笑いを「共有」出来る。
まだこのゲームを知らない人達に、こんなクソゲーがあるんだぜと「紹介」するだけの魅力がある。
一度見たら忘れられないインパクトを誇る変な語録やシュールな描写のおかげで、知る人にも知らぬ人にも「語りやすい」。
このようなゲームが令和となった今この時代に出てきた事は奇跡に等しく、まさにKOTYという戦場において強烈に存在感を示していると感じた。
であればその存在は決して忘れてはならない、残すべき存在、語り継ぐべき存在、に相応しいと言えるのではないだろうか。
よって私はこのゲームを、2020年で「最も感情を共有したくなるクソゲー」として、ここにその証を残し、末永く語り継いでいきたい。
この思いが、筆者に筆を取らせた。


ファイナルソードは、2020年7月現在、確かに最も語り継ぐに相応しいクソゲーであった。
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ファイナルソード 追加選評
この選評は9月中旬現在、Ver1.3の仕様を基に執筆されています。

目次


◆前回選評の誤りの訂正
◆1・アップデートによる修正点の検証結果
◆2・グラフィック関連
◆3・前選評でのモンスターの強さと理不尽要素に関する加筆
◆4・その他、新たに発見した細かいクソ要素
◆5・ゲームとしての評価点
◆まとめ



◆前回選評の誤りの訂正
この選評は前選評をお読み頂いている事を前提に執筆しているため、単語やゲームの仕様等既に説明済みの事柄には特に説明を設けないことをご了承ください。
その上で、前選評にいくつか誤りを見つけましたため、最初に訂正させていただきます。必ず目を通してください。


・主人公の操作、基本的な仕様の説明などより
バッシュについて、一段目まで溜めるとキャンセルが利かないとあるが、正しくは溜めている最中でも回避ボタンでキャンセル可能。
何気に溜め攻撃が弱ならY、強ならXで行うのに対し、回避はABどちらでも出来るという親指に優しい仕様。


・ザコモンスターについてより
必要経験値が急激に増えるのは48あたりと証したが、正しくは51→52になる所から。
また経験値の入手バランスについてだが、検証の結果ここをクソ要素と捉えるか否かに個人差があるのではないかという疑問を抱いた。詳しくは評価点の項目にて。


・その他細かいクソ要素より
魔法以外に十字キーが利く場面が無くメニュー画面では左スティックでしか操作を受け付けないとあるが、なぜか携帯モード時タッチパネル対応という驚きの仕様を発見した。具体的には、選択肢、メニュー画面、果てはセット済みの魔法を選ぶ所まで確認した。
しかしだからといって操作しやすいかといえばもちろんそんなことは全くなく、そもそもタッチパネル対応などとはどこにも書いていないため意図的に探さないとまず見つからない。


・まとめより
本作は誰もが等しくゲーム内の全てのクソ要素に触れることが出来てしまうというのは誤りである。
多くのプレイヤーを最後まで離さない謎の魅力があるのは間違いないが、たった一周で本作の抱える問題点をすべて見つけることはとても出来ないからだ。これに関して正しくは、とてつもない数の多面性を持ったクソゲーであり、プレイした人によって問題点への感想が異なるというのが適切と思われる。
それによって抱くものは賛否両論などという一言で表す事は出来ない非常に捻じ曲がった感情であり、これこそが「つまらなくはないんだけど…」「面白い部分も無くはないんだけど…」という評価を生み出している。詳しくは本稿にて。



◆1・・・アップデートによる修正点の検証結果
※アップデートによる変更点には、前選評提出時である1.0.0以降に確認したものを全て記しております。


結論から言うと、いわゆる改悪点やバグパッチらしき挙動はひとつも確認されなかった。が、筆者が今回最も主張したいクソ要素があり、これこそがこの追加選評を執筆する事を決めた直接の要因である。
ここでは検証結果をみっつの項目に分けて記すが、その1とその2は直接の問題点という訳ではないものの、この二項目に目を通して貰う事でその3からは本作が手抜きやデバッグ不足により生み出されたものではなく、純粋な力不足のみで出来上がってしまったのだろうということが透けて見える、大変興味深い事柄であると認識出来るはずだ。
デスクリムゾンのように一応真摯に受け止めている事自体は確かに伝わる面を見るに、決して企業態度が悪い等の場外戦要素ではないという事はお断りを入れておく。以下、検証の詳細を記す。


●検証結果その1~まともな修正編~
・防御スペルカードというアイテムの攻撃力をアップするという表記が防御力に直された。
・冒険手帳のドラゴンの剣の欄、ドラゴンの盾の欄の文章を修正。
・エンディング後タイトル画面に戻った際、そのまますぐにロードすると回避以外で動けなくなる現象の修正。以前は一旦ゲームを終了する必要があった。
・バグの修正。しかしその直されたバグは、奇しくも普通にプレイしている限りはまず出会うことがないものばかりであった…。ここでは詳細は割愛。


●検証結果その2~なぜ直さなかった編~
修正が確認されたのは以上である。この時点で嫌な予感がしたという諸氏、それはきっと正しい。


まず、メニューやシステム画面等で時間を止めていてもスタミナゲージと魔法を再使用出来るようになるまでの時間がなぜか回復していく現象、及びメニュー画面を開くと即座に時間が止まる筈なのになぜか敵側だけほんのわずかに動ける猶予がある遅延現象の修正がされていない。毒によるスリップダメージがロード中やイベント中でも加算される現象も同様。
また攻撃判定がおかしい事、凍結関連、状態異常が回避以外の無敵時間を無視してくる仕様、ザコの異様な発生速度など、前選評に記した問題点はほぼそのまま残っているといって間違いない。
後者の仕様?はともかく、バグめいた挙動である毒及びメニュー関連はいつどこでも常に起こっており、どう見ても直すべき現象であるのだが、開発者的には出会うかどうか分からないバグの方が優先して修正すべき事象だったのだろうか。


バグめいた挙動といえば、前選評で記さなかったものからもう一つ。
このゲームではイベントが起こる際に時折ムービーらしきものが挿入され、その際はテキストが自動で進みこちらの操作を受け付けなくなるのだが、ムービーが入る際に近くにモンスターがいる可能性がある場面がゲーム全体で二箇所ほどあり、敵が近くにいる状態でムービーに移行するとなぜかモンスターだけ自由に動き続ける。
その結果どうなるかといえば動かすことが不可能な中、ボコボコと攻撃を受ける音と主人公の苦しむ声がムービーの最中に聞こえてくる。そしてHPがゼロになると、ムービー中であろうが当たり前のようにゲームオーバーとなってしまう。
その片割れである「リヴァイアサン」との戦闘後にマグマの海が引いていくシーンでは、このボス自体が無限湧きするザコを処理しながら戦う上にザコの中にはこちらの攻撃が魔法以外届かない位置に発生するものまでいる都合上、この現象がとても起こりやすく、ラストダンジョンなのでザコの攻撃力も高い。リヴァイアサン自体が強敵なのもあって、ここでこの現象が起きてしまってゲームオーバーになった時のストレスは生半可なものではない。
そしてこの現象、現在修正されていない。このようなそこそこリアルな確率で起こり得る不具合になぜ目を向けないのだろうか。テストプレイをすれば何人かに一人は必ず気が付く現象であると確信を持てる程度の発生率なのだが。
余談だがリヴァイアサン撃破後のムービーはかなり引いた位置から映し出されるのだが、この現象に気がつくとマグマが引いていく中々の迫力を誇る場面の中、画面の隅の方で豆粒のように小さな主人公が無抵抗のままザコに袋叩きにされている姿を目撃してしまう事になり、なんとも言えない感情を抱いてしまう事になる。


また大小さまざまで拾っていたらキリがないとまで記した誤植についてだが、一言で言えば直ったのは上記のみであった。稚拙な翻訳はまだいいにしろ、「当然んじゃろ」「も追う一度いってみたいな」「問題を起こしたものは生きては出ててこれない。」等は世界観への没入を阻害しかねない事柄である。
さらなる事象として、このゲームにはスマホ版があり、そちらも精力的にアップデートが行われているのだが、前選評に記した神聖な木が最後の一言で急に態度を一変させるのはやはりミスだったようで修正が確認されている。ところがこのスマホ版での修正が入った後に2回もアップデートされている筈のSwitch版では、依然として「ここは人間ごときがくる場所ではない。」と抜かす。恐らく今後修正されるとは思うが、チェック不足も甚だしいと言わざるを得ない。


ところで本作を長時間プレイした筆者としては、メニュー画面を開く際の敵側が一瞬動ける現象(以下『メニューの遅延』)が直されていないことがとても残念に思えた。特に後半、敵の攻撃力がザコでも相当なものになって以降はこの一撃が命取りになりかねないため、地味ながら死活問題なのである。
作り手の様々なやり方から鑑みるに、筆者は「メニューの遅延関連に開発者が本当に気付いてないという可能性も否定できない」と思っていたのだが、なんとその後の検証でそれを知らないという事があり得ないと確信を持てる驚愕の事実が判明した。


●検証結果その3~直し方がクソゲー編~
ここからが本題である。


本来、メニュー画面は食らい硬直中、ダウン中、ダウンからの復帰中、凍結中は開くことが出来ないのだが、メニューの遅延とダメージが重なると『メニューを開いた瞬間にダメージを受けて食らい硬直が発生する』という現象が起きる。
この現象は特に意識していなくても、少なくともゲームをプレイしていればクリアまでに誰もが一度は体験してしまう程度には発生する可能性があるのだが、以前はこの状態であってもアイテムやメニュー画面から直接使える魔法を問題なく使うことが可能であった。
ところがここに修正?が入った結果、この状態ではアイテムや魔法を使えなくなった。しかもご丁寧に、「体が動かないためアイテムは使えません」という文章まで追加されている。
戦闘中にピンチを迎えてしまい緊急にメニューを開くということは十中八九回復か逃走用の移動魔法が目的であり、そもそもメニューの遅延がなければ本来そのダメージ、つまり食らい硬直はまだ受けていない筈であり、なぜ遅延現象そのものにメスを入れずに遅延の結果起こりうる現象を丁寧に説明するに留めたのかは全くもって不明。


それに付随したのか、『メニューの遅延時に敵に攻撃されると、そのダメージはメニューを閉じた後に入るようになった』という謎の変化も確認した。
確かにこれも修正と言えば修正の範疇ではあるのだが、ダメージを受けているイコール硬直が発生しており、アイテムを使う手段がない。よってこの修正、受けるダメージが遅れてやってくるだけであり、ゲームをプレイするうえで何の意味もない。これがトドメとなった日には悲惨であり、実際起こりえなくもない。


不可解な修正はもう一点存在する。
毒によるスリップダメージはなぜか画面切り替え時やイベント中であっても進んでいき、その最中HPがゼロになると問答無用でゲームオーバーとなる挙動はやはり不具合であったらしく、イベント中はどんなにダメージが進んでもHPが0残る(?)よう修正されたのを確認した。
わざわざ言うまでもないかもしれないが、当然、そもそもイベント中に毒のダメージを受け続ける事そのものがおかしいのであり、このような修正に留めた理由は皆目検討がつかない。
一応イベントが終わった直後にメニューを開き最速で回復すればゲームオーバーにならずに済むが、毒を解除するに留めるとHP0で元気に動き回れるという奇妙な現象が起こる。


と、以上この三点、特にわざわざシステムメッセージが追加されている所を見れば分かる通り、製作者は明らかにこれらの現象を認識した上で対策を講じている模様。
だがその結果はとても正しい修正と呼べるものではない。繰り返すが根本的な疑問として、メニュー及び毒関連の不具合としか思えない挙動を認識しているのならなぜ根底から原因を排除しないのかは常人の思考の域を超えている。ここまで来ると冗談抜きで「直さないんじゃなくて、直せないのでは?」という疑惑すら抱いてしまう結果となった。
皮肉にも、アップデートにより技術力のなさや珍妙なセンスを自ら証明し、検証人に確信を抱かせる結果となってしまったと言える。一体このゲームはどこまで我々ユーザーの感覚とズレているのか。もしかしたら今後、更なる意味不明なアップデートが来るのかもしれず、悪い意味で目が離せない。


この検証結果をまとめるとこうなる。
仕事自体はしているだろう。別にバグ追加パッチな訳ではない。色々な箇所に目を通している。ユーザーの意見を真摯に受け止めた上でのアップデートである事はよく伝わる。
なのにクソ。筆者の調査の範疇では、新たなバグ発生の確認等は全くなかった。単純に、直し方に「そうじゃないだろ」とツッコんでしまうのである。
かつてとある麻雀ゲームは問題点を修正するはずのアップデートをした結果、麻雀ゲームの皮を被った何かへと更なる変貌を遂げてしまった。某ナントカレジェンズは、直そうとはしていながらも最後に特大級のバグを入れた挙句放置した。某ツクーレナイは、問題だらけのチュートリアルを認知した結果としてまさかのチュートリアルごと全削除という暴挙に至った。
修正パッチが必ずしも良い方向に転がるとは限らないのはこれらの例を見ても明白だが、本作のアップデートには「確実に以前よりは良くなっている。悪いこと自体は何もしていない。なのに直し方がクソなせいでクソ要素に見えてしまう」という決定的な違いがあるのだ。


『直そうとしているのは分かるし何も悪いものは混入していないのに、直し方がどこかおかしいだけでこのゲームは今後もきっと良くならないと謎の不安(期待)を抱かせるだけのクソ要素として語れるものに昇華させた』という現象は、基本的に企業態度などの場外戦が重視されない、及びアップデート後は初期がどんなにダメなゲームであったとしても最終的な状態を見ての評価となるKOTYでの評価基準において新たな一面を見せてくれた非常に興味深い一例であると筆者は考えている。



◆2・・・グラフィック関連


まずお断りとして、このゲームのグラフィックにはアセットストアの素材が大量に使われているが、世の中にお金を払って購入できる商品として出回っている(現状「いた」)以上はプレイしてそこにあるもののみ見て評価するのが当然であると思う。
よってこの項目では、アセット関連を評価基準から除外して考えさせて頂いた事を前提に目を通して貰いたい。


オープニングでまず最初に映る主人公の家からしてとてつもない不安を感じるのはまだいいとして、本作のグラフィック関連で最も強く主張したいのは統一性の無さによる違和感である。
まず背景だが、とにかく表現力の差が激しい印象を受ける。具体的には、岩や建物、山、壁は近くで見るとドットが妙に荒い等確かに酷いもののまだ形が整っているだけいいとして、草木の表現がまるで出来ていない。
草は緑色で染まった何かを乱雑に丸めて放置しただけのような代物であり、木は幹が妙に細く、枝や葉は一切動かない。一部の木には、よく見ると枝がなく幹から葉が生えているものまである。それらが同じフィールドに存在しているので、違和感が凄まじい。
最初のダンジョンである妖精の森の一番奥では、木に生えている葉の色が黄色かったりピンクだったりして幻想的な世界観をかもし出しているつもりなのだろうが、そのうちピンクの葉の方は実際に見てみると木にピンク色のだらんとしたワカメか何かを被せたように見えてしまうのは何度見ても非常にシュールである。このゲームの評価を全く知らない人の初見なら、グロテスクという感情すら抱くかもしれないほど。


人間はといえば、誰も彼も表情が変わらないわ体型はおかしいわでツッコミ所の嵐。最初の村で目にする母親は体の具合が悪く寝たきりになっているのだが、その姿勢からして首が妙な方向に曲がっており、足はスカートの中から出ているのではなくスカートのようなものの一番下に足首だけを付けている事が丸分かりで、視点を変えてみると足首だけで下半身が存在していないようにしか見えないのは最早ホラーの領域である。
その割にモンスターは全体的にまあまあ見れるモデルが多い。モンスターには食らった時に苦痛に歪む表情がある等、人間より遥かにマシ。最初のスライムのような敵には愛嬌があるし、ゴブリンやオーク等、中々「らしい」モデリングであった。
それだけに、やはりフィールドと街での世界観の乖離は相当なものがある。比較的自然なモンスターに不自然な草木。不自然な人間と、そこそこマシな建物。
中でも一国の姫ともあろう者がなぜかキャバクラ嬢の格好にしか見えないのは、本気でお姫様とはこういうものだと認識した上でこの容姿にしたのかと逆に興味深く観察してしまった。この見た目の姫に何の前触れもなく結婚を迫られた主人公の反応が「はい!?!?!?!?!?!?!」だったのも納得であろう。
なおエンディングでこの姫は選択肢次第で目を見開いたまま主人公にキスする。よりによってその顔がバッチリ映し出されており、大変不気味である。


フルプライスのゲームに比べると見劣りする3Dやドット絵の低価格のインディーズゲームを見て、グラフィックが古臭いからと低評価点として扱う人はまずいないだろう。そこには古き良きあの頃の良さや、グラフィックの滑らかさに頼らない表現力や魅せ方、何よりゲームとしての面白さが確かに存在しているからだ。
ではなぜ本作のグラフィックばかりが古臭い、おかしい、変などと批判されるのか?その答えがこの項目で多少なりとも見えてきたなら幸いである。



◆3・・・前選評でのモンスターの強さと理不尽要素に対する加筆


前選評ではザコボス共に、難しさへの説明を理不尽な仕様が後押ししている事を主張する文章にしたが、それが若干抽象的であったので、今回は実際のモンスターとの戦闘を例にして、もう少し詳しく踏み込んでいきたいと思う。
理不尽という言葉だけを見ると調整不足ゆえの事故である印象を抱いた方もいるかもしれないが、実際にプレイしてみると制作者側が明らかに分かった上で殺しに来ている事を嫌でも最初から体験出来る作りになっている事がわかる。
この項目は、それらが結果的に作用したと思われる『ゲーム初心者への配慮のなさ』も可能な限り伝わるよう、前半二項目は序盤の敵との戦いを中心に執筆した。
それを読み終えた頃、「これくらいならゲームに慣れれば意外とどうにかなるんじゃない?」と思い始めてきた所にやはり襲いかかる数多の理不尽要素を忘れてしまわない為にも、後半は特におかしなモンスターについて詳しく記した。
そして最後のあるボスモンスターについては、このゲームのあらゆるボス戦の感想においてどんなに探しても擁護意見がひとつも見つからなかった稀有な例である。


●序盤から初心者に優しくない仕様が出迎える高難度
普通のプレイヤーは剣と魔法の世界で主人公を自由に動かして戦えるゲームで最初に出会った一番弱いであろう敵の存在を認知した時、まず何を考えるかと言えば「とりあえずあいつ殴ってみるか」ではないだろうか。
しかしそこはファイナルソード。このゲームは、それすらろくに許してくれない出来であった。


というのも、始めてみると最弱のザコである「ブルージェリーム(以下「スライム」)」を思い通りに殴れないのである。
まず正面から向かってみると当然向こうも攻撃を出してくるのだが、その攻撃の判定の大きさと予備動作の無さがとても最初のザコの範疇ではない。先手を取ることが確実に不可能なレベルのスピードで正確に体当たりしてくるのである。
ならばと後ろから近寄ろうものにも、本作のザコは例外なく視界が360°あるようで、どちらから近づこうが結果は同じ。振り向く時間が加算されるくらい。
前選評に記したとおり、こちらの攻撃のリーチは大変短く、仮に当てたところで弱攻撃強攻撃共に一段目は怯ませることが出来ず、まだ有効な溜め攻撃も開放されておらず、スライム自体は至極単純な動きながら初心者が相手にするには自力で導き出さねばならないものが多すぎるのだ。


答え自体は単純明快で相手の攻撃を釣ってかわした隙に殴るだけなのだが、逆に言えばそれに気付くまで先にダメージを入れることはまず不可能。
スライムと共に出てくるウルフは動きが中々素早く、移動だけで攻撃をかわすには限界があるため、最初の時点で回避には無敵があることに自力で気付けなければ誇張抜きでレベルを1上げるだけでも凄まじいストレスが溜まってしまう。
本当のゲーム初心者は、操作説明画面をじっくり見たところで「回避モーションに無敵はあるのかな?」等とそもそも考えるだろうか。
そうこうしているうちにスライムが2匹になり、3匹になって以下略。とても最序盤のもてなしではない。


そして一番最初のボス、「トロル」の強さが尋常ではない。
具体的には、いくらアクションRPGだから敵の攻撃をかわすのも腕の見せ所だとはいえ、一撃が重過ぎるのである。そのパワーは一発でHP100ちょっとの所に30前後は当たり前のレベル。
さすがに最初だけあってそれだけ回避が簡単に出来る攻撃が揃っているという事でもあるのだが、一発かわした所に近付いて攻撃ボタン連打モードに入ってしまうと即座に反撃を受けてしまう。
さらに、HPを半分ほど減らすと行動パターンが変化して走りながら攻撃を仕掛けてくるのだが、この攻撃が想定しているより判定が大きく、少しでも攻撃を欲張るとあっという間にやられてしまう。そしてトロルは意外と早い。
要するに最初のボスからして既にきびきびとかわしながらちまちま攻撃する地道な戦闘を強いられるバランスなのだが、そんな事にゲーム初心者が自力で気付ける筈もない。殴ろう、早く倒そう、今度は負けないぞ…という考えを初っ端から全力で潰しにかかっている。
あろうことかこのようなボスが地図に記される目的地までまっすぐ歩けば誰でもレベル1で辿りつけてしまうのは自由度が高いで済ませていいのだろうか。なお、冒険手帳の一部に推奨レベルが書いてあるなどという説明はどこにもない。
ただしこのトロルは初心者でもまだ抜け道が無い訳でもなく、レベルを上げて武器を新丁すれば一撃で結構なダメージが入るため、デタラメに攻撃を入れて敵の攻撃を食らいながらも薬草でごり押し、でも一応勝てなくはない。
恐らくはここだけプレイした時に「レベルを上げれば急に楽になるクソバランス」という感想が湧くのではないだろうか。中盤以降、スベ理論ではまず抜けられないのは前選評に記した通りである。


ではこのトロルを抜ければこのゲームに挑める資格を得た証拠かと言えばそうは問屋が卸さない。まだ門前払いすら越えていない事をすぐに思い知らされるのだ。
真に恐ろしいのは、この直後に向かう事になる最初のダンジョン、レベルにしてまだ二桁にも満たない時点で襲いかかる遠距離から攻撃出来る飛び道具持ち(重要)のザコによる接近戦(超重要)の容赦の無さであった。


●遠距離攻撃を行うザコの近距離戦での驚異的な強さから逃れられない最初のダンジョン
※ここで言う【遠距離攻撃を行うザコ】とは、出現後にその場から動かずに自機を狙って口から弾を出し続ける人型ではない敵の事を指します


ここでは、最初のダンジョンである妖精の森に出てくる、「マントラップ(以下「花」)」が異様に倒しにくい事を解説する。


このゲームのザコは全体的に、攻撃と攻撃の間に多少の休憩時間があり、連続で攻撃を出してくる事はない。
二連撃以上があったとしても、それはその敵の固有の攻撃パターンである事がほとんどであり、要するに『二回攻撃判定の出る行動を一回取る』毎にきちんとこちらが攻撃出来るだけの隙は入る。
攻撃と攻撃の間隔の無さ、こちらが溜める隙もない素早さに驚いたのはラストダンジョンで出会った一部のモンスターだけである。


ところが、動かずにその場から遠距離攻撃をしてくる敵の攻撃にはその間隔がない。
遠距離攻撃を行う敵に近寄るとその敵は近距離攻撃に切り替えてくるのだが、その攻撃が苛烈極まりない。
上記のマントラップ=花は遠くにいる時は毒のあるゆっくりした動きの弾を出してくるにとどまっているのだが、攻撃しようと近付くと、恐ろしい勢いで何度も噛み付いてくるのである。
この噛み付き、やたらと判定が大きいため、真正面から近付いて攻撃しようとすると、確実に反撃を受ける。
それだけならスライムの項にも示した通りだが、この花は動かないため、どうしてもこちらから近付き、こちらから攻撃する必要があるのだ。
相手の攻撃を釣って回避で避けた隙に攻撃しようとしても精々一発当てられればいい方で、繰り返すが弱攻撃も強攻撃も一段目には相手をのけぞらせる効果はなく、そのくせ隙は大きいため、やはり反撃確定。
動かないくせに倒しにくいからといって無理矢理近付いて攻撃ボタン連打モードに入ろうものなら、とてつもない反撃を食らう事になる。初心者が陥りがちな思考をしっかりと潰してくれる。
筆者も初見では対応の手段がどうしても見付からず、出てくる度に無理矢理攻撃して倒していたが、あっという間に薬草が尽きた。


あろうことかこのような超強敵が最初のダンジョンでは行く手を阻む強制戦闘のガーディアンとなっており、倒さないと絶対に先に進む事は出来ない。
前選評に記した通りこのゲームのダンジョンには分かれ道が多く、間違った道の行き止まりには高確率で宝箱が置いてあるのだが、この花はその分かれ道のどちら側も守っているという隙のなさである。必ずしも花がいる側が正しい道とは限らないのだ。
さらにはダンジョンの後半ではマントラップブラックという強化版が早くも登場。
こちらは更にHPと攻撃力が上がっており、適正レベルと思われる7~9程度で挑むと、きちんと装備を整えてここに来るまでに手に入る能力アップのアイテムを全部使っていたとしても、こちらのHP130~140に対して40前後のダメージを与えてくるため、なんとたったの4発ほど攻撃を受ければ確実に沈んでしまう。
繰り返すが、こいつは序盤も序盤のザコモンスター。まだ操作にろくに慣れていないプレイヤーも山ほど存在するはず。なのにこの強さである。個人的にはトロルよりも築いた初心者の屍の数は多いと思っている。


ではゲームに慣れ、パターンを掴めば楽勝かと言えばそうでもない。
確かに割と楽に勝つための手段はいくつか存在しており、その例として溜め攻撃の当てれば怯む敵は必ず怯む仕様と無敵を使ってヒットアンドアウェイで戦うという手段があるのだが、最早説明するまでもなく不明瞭な判定のせいでこちらの攻撃が外れる事がある、というか頻発する。厄介な事に、最序盤で使えるバッシュは判定やリーチ等、使い勝手があまりよろしくない。
さらに、この花と対峙している時にも他のザコはガンガン発生し、どんどんプレイヤーに突っ込んでくる事を忘れてはならない。
この花、強化版も含めるとこのダンジョンだけで10匹ほど倒す必要があるのだが、初見で何人のプレイヤーがここでファイナルソードというゲームの洗礼を受けたかは想像に難くない。
幸いなのは前述した通りこの花は進行を妨げるガーディアンなため、倒せばその位置の花は二度と現れない事であるが、裏を返せば必ず倒さなくてはいけないという事であり、結果として初心者は確実にちまちまセーブしながら定期的に村に戻って使い果たした薬草を補給しつつ少しずつ進まなくてはならない戦法を強いられるため、最初のダンジョンにして非常にストレスが溜まる事は間違いない。


この花を退治し、妖精の森をクリア出来て、初めて門前払いを突破出来たと言える。
しかし所詮は門前払い。ここまでに得たプレイヤースキルだけで進める程甘くない。というかここまでは正攻法でも問題なく越えられるだけマシな方である。この後も、とにかく全編において厳しめのバランスが続く。そのくせ理不尽要素はガンガン増えていく。


●マントラップの持つ強さを更にグレードアップしたザコの謎の優遇
中盤からラストダンジョンまで定期的に出てくる大きな竜の首のような敵「ドラゴンウォーム」属は遠距離攻撃の口から出してくる光弾の速度が相当速く、狙いは距離を離していても正確無比。上記の花と違い、光弾を出す間隔も狭く、バンバン吐いてくる。
懐に入ると、全身を鞭のようにしならせて攻撃してくるのだが、花よりも身体が大きい都合上、この攻撃の判定がとんでもなく大きい。それでいて非常に行動が素早く、さらにこの系統は全員妙に耐久力が高い。初見では間違いなく苦戦する。
しかし、ここまで来れたプレイヤーなら攻略法を導き出す事は実は割と容易と言える。ここまでに回避やバッシュの無敵を活用していない事はほぼ有り得ないからだ。相手の攻撃に合わせて溜め攻撃を当てられれば、十分撃破は可能であろう。
ではこいつはそこまで驚異ではないのかと言えばそんな訳がない。あくまでその対処法は、一対一の戦いが前提なためである。こいつの真骨頂は他のザコとの連携にこそある。
目の前の敵を処理していたらカメラ外でこっそりこいつが現れていて、全く存在に気付かぬまま一撃を貰う事も多い。ランダムに発生するザコとは思えない程容赦がない。
こいつは進行を妨げるガーディアンとして出る事はないので戦いたくなければ逃げればいいのだが、他のザコと対峙している時にカメラ外でこっそりこいつが現れていて以下略。


しかし、戦わずに逃げる事も許されない場面が多い。こいつは妙に優遇されている。
最初のドラゴンウォームが現れる砂漠地帯では街に着くと炎の魔法を得られる宝箱の位置を教えて貰えるのだが、その宝箱を守るのはなんとこいつ三体という圧巻の布陣。
この三体、妙に離れているが、一番離れた個体同士もカバーし合える程度の絶妙な距離であり、動かないのでおびき寄せる事も出来ず、一匹ずつ倒す事すら困難。当然のように他のザコも湧く中での戦闘となる。
この系統に共通する傾向として、そこまで攻撃力が高いわけではないので瞬殺されるという事は少ないのだが、裏を返せば対処法が分からないと長時間苦しむという事でもあり、知らないうちにHPが減っていてメニューを開く暇も無くゲームオーバーとなる可能性も高い。
挙げ句の果てに、雪国~雪山でのボス戦では強化版が無限湧きするザコとしても登場。しかも三戦連続で。さらに、そのうち「グリフィン」「サイクロプス」との戦闘では、雪国地方の様々なザコがランダムに出るのではなく、なぜかこいつしか現れないようになっている。ここまで来るとプレイヤーを苦しめる為に作られたのかと疑うレベルである。
なお、雪国地方から雪山までに現れるこいつの光弾には凍結の効果がある。雪山では、非常に攻撃力とHPが高いボスの量産型と共に現れるようになる。カメラ外からこいつの遠距離攻撃を受けて凍結→ボス量産型の一撃を貰う→凍結→一撃を貰う→凍結→一撃を貰う、というわずか3コンボでHPMAXから沈んだプレイヤーは何人いるだろうか。恐らくここが本作で一番ゲームオーバーになりやすいポイントであろう。
凍結と比べればマシだが、ラストダンジョンで出てくるさらなる強化版の吐く弾にはスロウの効果がある。さらにここではこいつはマグマの中から出てくるのだが、このマグマに主人公が入ると溺死(!?)してしまうため、魔法でしか攻撃出来ない位置から間髪入れずにこちらを狙いまくってくるのだ。
なお、前述したリヴァイアサンの戦闘で出てくるザコの中にはこいつが紛れている。邪魔すぎる。


●ラスボスは色々な意味でファイナルソードらしい存在
まず、威厳のある態度と姿形に対して前口上がおかしい。

「くだらん人間がここまで来るなんて…
「お前たち人間どもは皆私に支配されるのだ。
「私が直接お前を地獄に送ってやろう。

とのことだが、見れば分かる通り最初の一言だけなぜか主人公にビビっているように見えるのは、ついにラスボスかと気合いを入れる身からするといきなり出鼻を挫かれる思いがした。「人間ごときがここまで来るとはな」にするだけで大分マシになるのでは、とは素人である筆者でも瞬時にツッコんでしまった。
次に、とんでもなく強い。少し前に戦う、同じドラゴン型のボスである「ワイバーン」と比べればブレスに凍結の効果が無いだけまだマシとも言えるが、その分攻撃パターンは豊富、耐久力は凄まじい、口から出す攻撃は全体的に判定が明らかに見た目より長く残る、遅延行為大好きなくせにとてつもない攻撃力で全く油断出来ない、後ろに逃げたい攻撃が定期的に来るのに周りと中央の床が抜けている…と、ザコによる邪魔以外の『ファイナルソードらしい難しさ』を全部詰めたような超強敵である。
そのあまりに歪な強さゆえに緊張感満載の超長期戦となるこの戦いは撃破した時の解放感がとても大きく、動画サイトでの生配信は確実に視聴者と配信者が一体となり、非常に盛り上がる印象を受けた。まさに感情を共有したくなるクソゲーの真骨頂とでも言うべき怪我の功名であろう。
そしてクソゲーのお約束か、クリア後にセーブされる訳でもないのにラスボスが経験値と金を持っている。経験値10000はまだ分からなくもないが、なぜか金を97424もくれたのは全く意味が分からず失笑してしまった。調節すれば、撃破の瞬間にLEVEL Upの文字を映す事も可能。
余談ながらラスボスの攻撃パターンには身体に噛み付いて大きく振り回すというジュラ○ックパークのような迫力満点のモーションがあるのだが、その時の主人公のポーズがバンザイにしか見えない点、無表情で全く痛がっている様子が見られない点、振り回すというよりはそのままゆらゆら揺れるという表現が似合う点、最終的にそのままのポーズであまり大きく動かずに空を舞い、やたらとゆっくり落下する姿はよく見ると非常にシュールである。


このように、このゲームの難度は前選評に記した理不尽さだけでなく、全編通してゲームそのものが本気でプレイヤーを殺しに来ている事がはっきり伝わる、意図的な高難度に理不尽な仕様がガッチリ噛み合った結果生まれた、中々に歪な高難度なのである。
結果として、プレイ中はザコを狩る快感や達成感が全くない訳でもなく、ストレスの塊かと言えばギリギリそうでもなく、成長要素はあるし魔法や溜め攻撃を使いこなして難所を抜ける瞬間は確かに面白くなくはない気がするけど、でもやっぱり理不尽すぎてどう考えてもクソゲー…という不思議な評価が生まれてしまうのだ。
そう、このゲームの戦闘はつまらないのではなく、おかしいのである。ひどいゲーム=クソゲーが必ずしも全方面においてつまらないと評価される訳ではないという事を身をもって示した貴重な一例であり、まさにタイトル通り英雄の誕生と言えるのではないだろうか。
…と言えば聞こえはいいが、やはりつまらないものはつまらない。まるで達成感がなく、誰もが二度とやりたくないという感想を抱く箇所は確実に存在していた。それこそが、次項に記すボスモンスターである。


●擁護のしようがない満場一致のクソボスについて
筆者は今までプレイしてきたアクションゲームにおいて、ここまでプレイヤーの技術が結果に反映されないボス敵を見た事がない。それくらいの衝撃を受けた敵なので、今回個別に紹介させて頂きたく思う。


その名を「アンデッズ」というが、まずこのネーミングの時点で色々不思議な感覚に包まれるのはグッとこらえてほしい。
このボスは地面から湧き出てくる死者との集団戦であり、始まると氷の湖から25体程度の個体が湧き上がり、その後も倒しても倒しても常に25体程度になるように次々補充され、130体ほどを倒すことでクリアとなる。
ボス自体の行動パターンはまるでザコのようであり、ゆっくり一直線に主人公に向かってきて攻撃してくるだけ。耐久力は周辺のザコと比べても低い程。一応移動スピードや攻撃力、耐久力に若干の差はあるようだが、基本的な動作に大きな個体差はない。


では何が問題なのかというと、集団リンチである。
全員が同じ行動パターンということは常に敵同士が大量に固まってしまうという事であり、こちらから攻撃を仕掛ける際に打ちもらした敵は必ず近くに何体かおり、確実に反撃を仕掛けてくるのだが、その反撃を一撃貰ったが最後、敗北が確定する可能性と常に隣り合わせなのである。
具体的には食らい硬直ならまだしも、ダウンだと危ない。何故ならダウンしたという事はその場から数秒間動けないという事で、そのわずかな時間で取り囲まれ、アンデッズ総出でとんでもない勢いで360°全方面からひたすら武器を叩きつけられるのだ。
その絵面はあまりに凄まじく、初見こそ爆笑してしまえるものだが、どんなに時間が経っても脱出できない事実に気が付いたあたりで血の気が引いてしまう。動けず、脱出できず、メニューも開けないその先に待っているのは、ゲームオーバーに他ならないためである。ハメという言葉を物理的に体現するその姿は敵ながらあっぱれであるが、こんなゲームに実装しないでほしい。
一応運良く攻撃により集団から抜け出せる方向へ吹っ飛ぶことがあったり、層の薄そうな方角に硬直が解ける瞬間を狙ってひたすら回避ボタンを連打していればこれまた抜け出せる事もあるが、それらは全て運で決まるといって過言ではない。筆者は最も長くて3分以上ハメられ続けた。
なお説明が遅れたが、筆者の調査の範疇では敵の攻撃を食らったときの硬直がダウンか否かには法則を見出せなかった。ゴーレムの殴りでもダウンしない事もあれば、スライムの体当たりでダウンする事もある。


このハメを結果的に手助けしてしまっている決定的な仕様がある。
強攻撃では一体倒すのにすら時間が掛かるので、敵に突っ込むタイプの溜め攻撃で無敵も利用して確実に一撃でまとめて何匹か同時に倒し、即座に逃げる…という戦法が有効なのだが、ここで『敵の死体の判定が残り続ける』という仕様が絶妙に邪魔してくる。倒しすぎる&踏み込みすぎると、倒した敵が逃げ道を塞ぐ事があるのだ。敵の死体は数秒間は消えないため、その間に攻撃を貰いダウンしてしまうと以下略。


そして一番の問題点。なんとこの戦闘、三回繰り返されるのである。
この三連戦、引き返すことも可能だが、引き返すと再び一戦目から始まる。要するに、休憩や補給すら一切許されないのだ。
結果として倒さなくてはいけない個体数はおおよそ390体にものぼり、その時間ひたすらハメられない事を祈りながら単純作業を繰り返すことになるため、非常にストレスが溜まる。
何を思ってこのような仕様にしたのか一切不明な点のみで構成されたようなボスであり、筆者が調べた限り本作のボス敵に対する感想は一部に高難度でやり甲斐があるという意見も確かに存在するのだが、こいつはあまりの不快感ゆえにかそのような発言が全く確認できなかった。実はここまで擁護意見が存在しないのは、極一部でカルト的な人気を誇る本作において非常に珍しい現象なのである。それだけ満場一致で皆苦しんでいるのだ。


直前のイベントで確実にファイアウォールという自分の周囲に円形に炎を巻き起こす魔法を習得しており、恐らくは囲まれた時にはこれを使って切り抜ける事が公式の想定している攻略法であると思われる。
しかしこれにも問題があり、MP回復アイテムが貴重なので、計算なしにアイテム及びファイアウォールを使っていると三連戦では確実にMPがもたない。これ一発ではギリギリ倒れない個体が混じっているのも嫌らしい。
もう一点、囲まれた時の緊急回避として使おうとすると魔法を使う際のモーションが終わる前に一撃貰ってしまい時既に遅しである場合が多い割に、敵集団に突っ込んで自ら当てに行くと大体判定が出る前に反撃を貰う。要するに先制攻撃として使おうが緊急回避として使おうがよほどいいタイミングで使わない限りデメリットがあるのだ。
反撃とはいえたった一撃ではあるが、その一撃からダウンした結果変な形でコンボが繋がってしまい、集団リンチへと移行する可能性と四六時中付き合わなければならないのは言うまでもない。
余談だが筆者はこのボスと何度も戦っているうち、まとめて倒す事に一応成功する度に頭の中で「もしかしたら製作者は、あのブロックくずしの『一気に壊した時の爽快感がヤミツキに!』と同じ感性でこいつら作ったんじゃないだろうか…」という疑念が渦巻くようになっていた。


筆者は検証の為、及び少しでも早く終わらせる為にわざと推奨レベルより低めの段階でボスに挑んだりしてみたが、こいつら相手にそれをしたら防御力の低さゆえにハメられた時に確実に沈んでしまうようになり、突破難易度が異次元と化してしまった。
選評主調べではアンデッズの攻撃力は一番高い個体で125であるため、防御力アップのアイテムを探しまくった上で適正レベルを大きく越えて防御力を120程度にしておけば取り囲まれても死ぬまで殴られ続ける事は少ないと思えたが、果たしてこれくらいしか有効な対策は無いと断じてもよさそうなボスがプレイヤーの技術次第でダメージを抑える事が可能なアクションRPGの面白さに繋がっているのだろうか。


以上から、こいつとの戦いではとんでもない緊張感とストレスが四六時中つきまとう事となり、一撃貰う度にヒヤヒヤしてしまい、それでいて大量撃破に爽快感がある訳では全くないという、ゲームの評価を下げるためだけに存在していると言っても過言ではない。
本作の中でも特に悪意のみで構成された敵であり、純粋につまらない・苦痛・二度とやりたくないといった負の感情を最大限に呼び起こす場面と言える。ここを越えたら越えたで直後が雪国の凍結祭りなのも十分問題なのだが、そちらの方が一応アクション次第で被害を抑えられるだけマシだと言い切っていい。


モンスターとの戦いについての記述は以上である。
もちろんここに記したのはほんの一部に過ぎず、他にもおかしなザコボスは山ほど存在している。ヘルウォーム、ジニーキング、ワイバーンといった名前を出せば、分かる人には分かるだろう。
それらについて記述すると長くなりすぎてしまうので詳細は省くが、確かなことは上記のモンスターと比べてもぶっちぎりで評価が低いのがアンデッズであるという事だ。



◆4・・・その他、新たに発見した細かいクソ要素


●溜め攻撃のモーションは、ほとんどが一部敵の攻撃からの流用。
いちいち取り上げる程のクソ要素ではないのだが、筆者はこれも流用か、あれも流用じゃないかと見付ける度になんだか嬉しくなったので一応記しておきたい。
リ○クの回転斬りのようなモーションで突っ込んでくる敵の存在を認知した時は、まさか主人公がそれを使えるようになるとは誰も思わなかったのではないだろうか。


●このゲームにも親切にモンスターとの戦い方を教えてくれるモブが存在している。その人いわく、

「モンスターを攻撃しようととびかかるとき
「いきなり攻撃せずに一旦避けろ
「そしたら攻撃するスキができるぞ。

とのこと。
しかしこれを教えて貰う頃にはレベル25は越えている場合がほとんどであり、プレイ時間にして初見だと10時間に迫る程度は進めている筈で、あまりに助言が今更すぎる。最初の村にこそいてほしかった存在なのは言うまでもない。
ちなみにこの後もいくつかプレイする上で有益な情報を教えてくれるが、どれもこれも最初に教えて欲しい事ばかり。
最終的には「お前、もう俺より上手く戦えるみたいだぞ」等と抜かす始末。お前と話した時点で既に俺のが強いわとツッコんで欲しいのか。


その他あまりにおかしな点がありすぎてとても書ききれないため、有名な単語だけ記しておくので興味をお持ちの方は是非自らの目で確かめて頂きたい。
・2階の家クリムおじさん
・デーモンタックル
・動く床
・あぶよ魔方陣
・ふぅ…
・あたらしい(主人公のデフォルト名の可能性)



◆5・・・ゲームとしての純粋な評価点


この選評はあくまで本作をKOTYに推すものであるが、これを読んだ方々に可能な限り正確に評価して頂く為にも評価出来る部分はいくつか挙げさせて貰おうと思う。
何度か言っている通り、確かに遊べる部分は存在する。もちろん、それすらも中途半端に遊べるがゆえのプレイヤーを離さないブラックホールと化していると筆者は判断しているので、純粋な評価点と言えるかは難しい。


●確かにアクションRPGとしては高難度かつ理不尽要素だらけではあるが、ゲームとして破綻してはいない。『絶対に勝てない』場面は実は意外と少なく、工夫次第で十分クリア可能な範疇である。
一応プレイヤーの腕前に付随してどんどんザコやボスの対処が上手くなっていくゲームなので、周回プレイをすると間違いなく以前より難所の突破が楽になるなど、良い意味でもスルメゲーと言える。
…同時に、だからこそ避けるに避けられない理不尽要素が新たに次から次へと見えてくるとも言える。本作は『遊べてしまう要素があるからこそ、多くの人が沢山のクソ要素を体感する事が出来てしまう』という評価から決して逃れられない。こんな所までデスクリムゾンとリンクしている。
あと一撃入れれば勝てる相手にグラフィック上どう見ても当てているのに当たっておらず反撃を受ける、等の要素には残念ながら上手くなればなるだけ出会う機会も増えていくだろう。
そもそも、どんなに上手くなってもカメラ外から凍結を以下略。避けられないクソ要素が非常に多い事は、評価する上で忘れてはならない。絶対に勝てない部分は無いが、瞬時に負けが確定する場面は異常に多いゲームなのだから。


●歩けば歩くだけ必ず強くなれるオープンワールドらしい作り。
モンスターと戦って経験値やお金を稼げるのはもちろんのこと、フィールドにもダンジョンにも宝箱の数がとても多いのはゲーマー魂を刺激する。さらに宝箱の中身はそこそこの確率でステータス永続アップ系のアイテムであるのも評価点。
このゲームはアルテリオス計算式かつ1レベル上がった時の能力の伸びが小さめで、攻撃力や防御力は1~4程度ずつしか伸びない。成長の際の数値にランダム要素は存在していない。そのため能力アップのアイテムがあちこちに結構な数落ちているのは相当な意味を持つ。
種は1ポイント、実は3ポイント上昇させる事が可能。MPは種だと2、実だと5伸びる。
「防御の実」で防御力を3上げればダメージが3減る訳で、クリアレベルでもHPが300程度のゲームではとても貴重である。
取り逃すとキツいとも言えるが、フィールドの隅やダンジョンの行き止まり等あちこちに落ちているので全部見付けるのは難しいが全部取り逃す事もまずない。
ちなみにどの程度違うのかとわざとひとつも種・木の実系アイテムを使わない縛りプレイをしてみた所、同じレベルで同じ箇所を抜けるには体感的にもハッキリ分かる程度にはキツくなった。全く拾わないのは、本当の意味での縛りプレイの領域となってしまう可能性すらあるほど。しっかりと集めていれば、最終的に全能力値が30ポイント程度、レベルに換算して10前後の戦力差になるようだ。…それは少し多すぎる気もするのだが。


このような作りになっている事を認識すると、前選評に記した『経験値の入手バランスがおかしい』という記述に疑問を抱く形となる。
筆者の深読みに過ぎない可能性を考慮した上で記すが、本作は世界を余すことなく歩きつくす事を前提にバランスが調整されているという可能性は所々で感じた。確かにザコのくれる経験値量は渋めではあるが、それは真っ直ぐに目的地を目指した場合であり、時には現在地に迷いながらフィールドもダンジョンも片っ端から踏破しながら進んでいくと自然と戦いも多くなり、しっかり稼ぎながら歩けば勝手に推奨レベル手前くらいにはなっているのだ。
それでいて上記の能力アップのアイテムもどんどん見つかるので、もしかしたらファミコン時代のドラ○エのように自分の目で世界を目の当たりにする事を見越してこのような経験値バランスにしたのかもしれない。そう考えると、なぜかフィールド地図の落ちている場所が妙に分かりづらい事にも一応の納得がいくのではないだろうか。
しかしこの推測が正しいと仮定しても、惜しむらくはそれが目的地を親切に地図上で記してくれる事やダンジョンがオートマッピング制である事、これらゲームデザインと致命的に噛み合っていない事である。もっとも、それ以前にこの世界を歩きつくしたいと思うプレイヤーが何人いるか怪しいという根本的な疑問もあるのだが。なぜなら大半のプレイヤーは、十中八九「さっさと終わらせたい」という感情のもと進めている為である。


●モブのセリフは定期的に変わる。しかも結構細かい。
大体ひとつの村につき、進行に応じて2~3パターンはあると見て間違いない。キングダム等の何度も訪れる施設ではさらに多い。
もっとも、大半のモブはろくな事を喋らないのであまり意味はない…のだが、変な翻訳目当てに話し掛けて面白いセリフを見つけて遊ぶ、要するにクソゲーハンター的には大変評価したい箇所であった。
とはいえ、こういう細かい箇所が地味ながらよく出来ているからこそ「頑張って作ろうとした感は所々に窺える」という客観的な評価に繋がるのも事実。作り込みが足りないゲームなのではなく、ズレた事に気付かぬまま作り込んでしまったのではないだろうか。


●音楽は悪くない。こちらもアセットではあるが、そこは考慮せず記述する。
街やイベントで流れる曲はまあまあ綺麗だし、地味にボス戦には二曲用意されているのも良い所。
だがゲームの大半、フィールドとダンジョンでほとんど音楽が流れないゲームなので評価点にするには苦しいかもしれない。
エンディング曲も数世代前の良作RPGっぽさは出ている。もっとも、そのエンディングで主人公が火山に落ちていくモーションはまるでスカイダイビング体感施設で遊んでいる人のようであり、助かる時はその姿のままクルクル回転しながら上方向にスライドしていくという、そのあまりにシュールなビジュアルを目にしながら音楽を心に残す余裕がある人はいるのだろうか。
なおパクリ疑惑については割愛。


●シナリオには特に問題はない。
展開や目的はコロコロ変わるような気がするが、どちらかと言えば数世代前のRPGのようなミニクエストの寄せ集めといった印象を受ける。
一応目の前の目的自体は必ず記されるため、「いつの間にそんな話になったんだ?」という印象を受ける事は筆者は少なかった。
何の伏線も無しに主人公が100年振りに誕生した勇者である事が判明するのはさすがに超展開と言えるが、上述の理由によりそこにツッコむ人はあまり多くないようだ。


●進行に支障が出るレベルの致命的なバグには通常通りの進行をしている限りはまず出会わない。
確かにSNSや動画サイト等では日々様々なバグが発見されており、現在まで専門に研究する人も多数出る始末ではあるが、少なくとも筆者は意図的に狙おうとしない限りはバグやエラー落ち等で不快な気分になる事はなかった。
あえて言えばオートセーブのタイミングが落下死した瞬間と重なる事があり、そうなるとロードする度になぜか空中で始まり即座に落下死してしまうようになってそのデータが使い物にならなくなるのは残念ではあるが、発生頻度は少なめ。一応、タイトル画面からロードを選び、ひとつ前のデータを選択すれば復帰可能。


どちらかと言えばこのゲームのバグは初代○ケモンやマ○オ64のような狙わなければまず起こらない特殊なタイミングでの操作によって起こるものが非常に多いだけであり、そちらはむしろ意外性のある攻略に応用されたりシュールすぎる描写で見る人の興味を惹き付けたりと、魅力を増やす結果に繋がっている場合が多い印象を受けた。
繰り返すが、アップデートにより出会おうとしなければ出会えない魅力的なバグは修正され、そのくせ理不尽要素や当たり判定、意味不明な仕様、発生率が高く直すべき不具合などにはなぜか弄った形跡が全く見られない。どうも仕様面では本当にこれが完成形らしい。



◆まとめ
このゲームの何がおかしいのかを一言で言えば、古臭いではなく、“違和感”と表記するのが正しいのだろう。「なんでやねん」「そうじゃねーだろ」と誰もがツッコむであろう箇所は無限に存在している。
ゲーム全編通して何かがおかしい演出、稚拙な翻訳、妙にかわいいフォント、クソデカLEVEL Up、これもそもそも何故pだけ小文字なのか、人間と背景とモンスターそれぞれのグラフィックに統一感が無い等、とにかくありとあらゆる要素に違和感がつきまとい、四六時中不思議な感覚と付き合いながらゲームを進める事になる。
しかもその感覚は初見プレイ時に誰もが抱くものはほんの一部に過ぎず、二周目プレイ、やりこみ、バグ技研究、果てはクソゲーハンターによる検証でさえ、時間を費やせば費やすだけおかしな点が次から次へと見えてきてしまう。
特に「アップデートによる修正自体はしているのに、所々修正の仕方がおかしい」事は特筆に値するのではないだろうか。やはり本作を評価するにあたっては、どんなに意識しないようにしてもいつの間にか作り手のセンスへのツッコミへと切り替わってしまうようだ。
この度の検証プレイは五周目になるが、筆者が本作に抱く違和感に慣れる日はとうとう訪れないまま、今回の検証を終えた。


確かに致命的に酷い部分はあまりない。驚異的な一撃必殺のクソ要素こそ持たないかもしれない。
だが、その手数は凄まじいものがある。ほとんど全編に渡って襲いかかってくるのはもちろん、そのほぼ全てが不快感と笑いの共存を狙ったようなものばかり。この奇跡の塩梅の正体は何なのだろうか。
そして何より、とにかくクソ要素を語りやすい。分かっている人同士であれば確実に盛り上がれるし、全く知らない人にも一目見てもらえば即座にその不思議な感情を共有してもらえるだけの力がある場面が非常に多い。
どこまで掘り進めてもまだ何かが眠っていそうな無限の可能性。ゲームとしての唯一無二の存在感。これ以上のものはそうそう無いと言えるだろう。


最後になるが、今後のアップデートでどんなに変更や修正が入ろうが、今回の検証の結果として、仕様上これで完成しているという疑惑はいよいよ拭えないので、このゲームが今後良作に転じる、凡ゲーに落ち着く、笑えない要素だけが残った不快なクソゲーになる…という事は絶対に有り得ないと断言し、KOTY2020に相応しい作品であると改めて主張させて頂きたい。
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