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総評

クソゲーを語ることによって、我々に一体何ができるのだろうか。

2013年のKOTY(クソゲーオブザイヤー)は、『HIP』による哀しき勝利の舞の中で幕を閉じた。
我々は、一人の少女が静かに破滅していく様を、ただじっと見ているほかなかった。

一度生まれてしまったクソゲーに対して、我々はその命を救うすべを持っていない。

ならばせめて「かたりべ」となって、この悲劇を後世に伝えていこう。
彼女が生きた証を、この世に繋ぎとめるために。
そして、たとえ叶わぬ願いだとしても、もう二度と同じ過ちが繰り返されぬように。

そんな、あえかな決意とともに、2014年のKOTYはスタートした。

***

前年の総評審議を終えたばかりの3月、突如としてスレに空襲警報が鳴り響いた。
そんな……まさか……口々にあがる戸惑いの声。とうについえたはずの悪魔の野望が、空を覆いつくす。

PS3専用、戦略シミュレーション、
大戦略PERFECT~戦場の覇者~』(通称「大戦略P」)。

「大戦略」と言えば「システムソフト・アルファー(SSα)」の看板シリーズであり、
そこにPERFECTの名を冠する本作は、いわば「決定版の決定版」。
二度の大賞を輩出した暴君の、侵攻開始である。

本作は、2010年に発売された同名のPSPソフトをリメイクしたものだ。
このPSP版、「特定のユニットに触れただけで本体の電源が落ちる」などの致命的なバグを多数抱えており、
携帯機KOTY史上最も危険な戦いと語り継がれる2010年において、大賞の『鬼帝』を最後まで苦しめた曰くつきの逸品である。
あまりの完成度の低さゆえか、リメイクは2年3ヶ月に渡って10回もの延期を繰り返す難産となったが、
その甲斐はあり、致命的なバグのほとんどは姿を消している。
だがそれはSSαの巧妙な罠だった。
バグというアクを丹念に取り除く一方で、クソゲーとしての本来の味わいを、丁寧に煮詰めていたのである。

まずは簡単に【SSαゲーとしての基本スペック】を見ていこう。
例によって、アイコンやパラメータの大半が理解不能だ。
チュートリアルはほぼ役に立たず、索引のない説明書を片手に自力で暗号解読するハメになる。
敵AIも近作のご多分に漏れず、クソである。
公式サイトでは「まるで人間と対戦しているかのような歯ごたえのあるプレイ」と豪語しているが、
その実、歩兵が戦闘機を通せんぼしようとして失敗したり、何度迎撃されても丸腰でヘリが突っ込んできたりの大惨事。
一体どんな人間を想定しているのか、逆に興味が湧く仕上がりになっている。
言うまでもないが、戦闘グラフィックも安心のSSαクォリティ。
「色付きのつまようじ」と評される砲撃、プレハブ小屋と化した司令部などの造型センスに加えて、
ディテールの再現性にも難があり、斜め45度の射出口から水平に飛び出す地対地ミサイルなどのシュールな光景が見られる。
これまた公式サイトで「ハードウェアの機能を最大限に生かしたフル3D表現」などと謳っているが、
こんなものがPS3の限界だと吹聴されてはハード開発者も激怒だろう。

続いて、本作独自の部分に触れよう。
『大戦略P』の目玉は、【触るたびにストレスがたまる操作性】である。
敵味方の判別がしにくいカオスなマップ画面、衛星中継のごとく常に一拍遅れるキーレスポンス、
マトリョーシカのようにウィンドウがどんどん増えていくが、キャンセルボタンがいちいち違う不親切なUI。
行動フェーズでは、必要な情報の大部分が裏返しのカードのごとく伏せられており、
一つ一つのアイコンを入念にクリックして情報を覚えていくという、記憶力テストのような作業を強いられる。
今作では通常のプレイモード以外にマップや兵器を自作するモードもあるが、ここにも逃げ場はない。
セーブデータを踏むたびに5秒フリーズし、5桁の数値を入力するのに30秒以上かかる追い打ちが待っている。
だが、これらに増して最大の問題点は、何をするにも「カーソル移動すらまともにさせてもらえない」点だろう。
本作では「カーソルを一気に動かそうとすると約1秒止まる」、という異様に長いラグ(入力遅延)が実装されている。
マップを何度となく往復する戦略ゲーにとって、これは字面以上の致命傷だ。
数百数十のユニットを探し、進軍させるその1回1回において不可解な一時停止を強要し、プレイヤーを苛立たせるのである。
このラグを回避する方法は二つある。
一つ。1マスずつ進めればラグは発生しないので、親指の痛みに耐えながら約4000マスのマップを十字キー連打で往復する。
もう一つ。常に何らかのボタンを押しっぱなしにすると、なぜか十字キーのラグが消える。
だが、後者は説明書に記述がなく、通常プレイでは気付かないような怪しい挙動であり、
そもそも「バグ技めいたテクニックを使わないとまともに操作できないゲーム」など、前代未聞である。

戦極姫』は完成度の低さで、『太平洋の嵐』は苦痛きわまるゲーム性で……。
これまでSSαが生んだ大賞作はそれぞれ、根本からプレイヤーを寄せ付けない代物であった。
だが、『大戦略P』はそれらを改善してプレイにギリギリ堪えるようにし、
その代わり、操作性というただ一点を最凶最悪にした。
それはあまりにも地味で、
だが、あまりにも効果的。
言うなれば、人が生きている限り必ず吸う空気に毒を仕込むようなものであり、
このゲームを操作している限り、「秒速」で押し寄せるストレスから逃れようがないのだ。
この完璧な戦略の前に、スレ住人はなすすべもなく相次いで投降していくこととなった。

***

まさかの大本命の奇襲に、スレ住人は絶望の淵に立たされた。
この門番ではあまりにも強すぎる。今回のノミネートは1本で終わるのではないか、と。
だが、その時すでに、スレ住人たちの背後に音もなく忍び寄る赤い影があった。

XBox 360ライブアーケード(XBLA)向けFPS、
Takedown: Red Sabre』(通称「赤サブレ」)。

本作の生まれは、「Kickstarter」というサイト。 [外部リンク]
自らの夢を全世界に向けてプレゼンテーションし、資金提供を募る場所である。
このサイトにおいて本作の制作者は、「考える人のシューター(銃撃戦ゲーム)を作りたい」、と提起した。
いわく、焦らずに考え、慎重に狙いを定め、首尾よく作戦を練るプレイヤーこそが報われるべきだ、と。
かつては多種多様なシューターが存在していたが、みんなどこへ行ったのか。
回復する体力、順序固定のミッション、映画的な演出などの「お約束」が多くなり、今日ではすっかり画一化されてしまっている。
そこで今こそ古典に立ち返り、リアルで、タクティカル(戦術的)なシューターを作ってみたいのだ、と。
この力強いビジョンに対して5423人が賛同し、金額にして22万ドルもの巨費が集まった。
夢物語の行き着く先が、とわに醒めない悪夢だったとも知らずに……。

『赤サブレ』の最大の特徴は、戦術もへったくれもない【敵の超人的な性能】だ。
かすかな物音からこちらの存在を察知し、足音もなく背後から脳天ぶち抜きの一発。
真っ暗闇でも裸眼でこちらを見つけ出し、700m先からまたも脳天に一発。
「何発撃っても死なない敵がたまにいる」、
「背後から長距離狙撃を試みたら、振り向きざまの一発で射殺された」といった証言もあり、
もはやゴルゴ13も裸足で逃げ出すレベルである。
こんな、超人軍団に蹂躙されるだけの人間狩りのどこに「タクティカル」な要素が存在するのだろうか。
全5ステージという短さにも関わらず、スレ住人が誰一人として全面クリアを達成できなかった、と言えば、
戦術などでは太刀打ちできない圧倒的な難度の一端が伝わるだろう。

敵味方問わず【クソみたいな知能】もまた、戦術要素の崩壊に一役買っている。
本作の敵の行動パターンはズバリ、「サバイバルゲームごっこする小学生」そのものだ。
例えば、すぐそばで発砲しても棒立ちし続ける子に、銃を下ろしてこちらに突撃する「無鉄砲」な子。
敵を発見すると背を向け、「何も見てないよ、気のせい気のせい」とばかりに知らんぷりする子もいれば、
「うわー、敵だ敵だー」と舞い上がって、その場をぐるぐる回る子もいる。
こちらを見るなり逃げる子もおり、それどころか、逃げたことを忘れて戻ってくる忘れん坊もいる有様だ。
一見すると個性豊かな子どもたちで賑わう教室のようだが、
残念ながらここは戦場であり、見た目も全員大人なのでただ不気味なだけである。
他方で味方サイドのNPCも、勝手に先行して犬死にしたり、救出対象をうっかり殺したりする問題児ぶりを見せる。
彼らに通じる命令は「全員ついてこい」と「全員待ってろ」の二通りしかなく、文字通り手の施しようがない。
なお、余談ではあるが製作者の言い訳も小学生並みであり、不可解な仕様について質問が来るたびに、
「これはリアルでハードコアなゲームにするための故意の仕様だ」*1
という意味不明なコピペ回答を繰り返していた。

マルチプレイでは【バカゲーとしての側面】も垣間見える。
黒ずくめの特殊部隊がダックスフントのような足取りでトコトコ歩き回り、
敵からのヘッドショット一発で次々とぐったりしていく光景には、小動物的な愛くるしさを感じずにはいられない。
ステージに並ぶ死体は、「潰れたブリッジ」、「ダイイング人文字」といった具合のアバンギャルドなポーズで事切れている。
また、このゲームの登場人物は全員ニュータイプであり、プレイヤーを無視して謎の交信を始めることがある。
その最たる例が
「自キャラが壁越しに人質を発見し、さらにそれを壁越しに察知した敵キャラが速やかに人質を射殺する」
という現象だろう。本当に何が何だかわからずにゲームオーバーになるため、見ている側はもはや笑うしかない。
だが、そういった不出来に悪態をつけるのも最初のうちだけである。
ステージが進むにつれ、四方から脳天を撃ち抜かれる絶望感に言葉少なになっていく。

発売からほどなくして、購入者は気づいたという。
本作の目指した「タクティカル」な要素とは、資金集めから始まる鮮やかな売り逃げ戦術にあったのだと。
先行発売のPC版では発売直後から返金を求める運動が勃発し、早々に90%オフの投げ売りも開始。
当初掲げた高邁な理念は、リアルでハードコアな現実の前に粉々に砕け散ったのであった。

***

さて、ここで一つ、解説を挟んでおこう。
据置機のクソゲーオブザイヤーでは、大賞を狙える者以外が新たに門を叩くことは許されない。
我々が求めているのは単純な賑わいではなく、選りすぐりのクソゲーたちによる血湧き肉躍る大決戦だ。
そのため、最初に有力視されたソフトを「門番」と呼び、以降の挑戦者たちに対する腕試し役を任せている。

しかるに、本年の門番2本はあまりにも強すぎた。
SSαゲーの粋を集めた「戦略の冒涜者」、『大戦略P』と、
KOTY史上最悪の難度を誇る「戦術の破壊者」、『赤サブレ』。
二大巨頭の存在はかつての冷戦構造さながらの緊張を生み、第三勢力が割って入ることを許さない。
戦局は完全に停滞してしまった。

……本当にこのまま終わってしまうのだろうか?

もう一波乱、欲しい。
誰か、この煮え切らない膠着を打開する者はいないのか?
最後の最後に現れて、全てを解決して去っていく痛快な存在。
そう、「ヒーロー」のような……。

そんな空想にスレ住人がふけっていたある日、稲光が走った。

約束されたダークヒーローが、今回もやってきたのだ。

***

12月4日、黒雲に厚く覆われた天を破り、稲妻のごとき跳び蹴りで割り込んできた年末の魔物……。

その名は、PS3/WiiU対応ソフト、
仮面ライダー サモンライド!』(以下、「サモンライド」)。

前年覇者を擁する「バンダイナムコゲームス」が、
Wii版『プロゴルファー猿』を開発した「エイティング」とともに送り出した逸品だ。
本作の舞台は現実世界ではなく、妖精の国「クリスタルワールド」。
「怪人によって侵略された異世界を救うために、仮面ライダーが召喚されてきた」、という設定であり、
「ライドゲート」と呼ばれる土俵のようなデバイスの上にフィギュアやチップを置くと、画面にキャラが現れる。
ゲームジャンルとしてはミッションクリア型の無双形式だ。
と、商品説明を聞く分にはそれなりに力の入った意欲作であるように感じさせるが、
実際に購入者が目の当たりにしたのは、仮面ライダーゲームの歴史を塗り替える記念碑的な大失敗作であった。

第一に、このゲームと切っても切り離せないのは、【据置機史上最強レベルの課金体制】だ。
まず大前提として、≪ライダー課金≫について説明しておこう。
本作ではフィギュアがないと仮面ライダーを操作することができないのだが、
ゲーム本体に付属するのはたった3種類。すなわちデフォルトではライダーが3人しか操作できない。
同社の一つ前の作品では24人が追加料金不要で使えたのに、だ。
ライダーを追加するには諸々「抱き合わせ」のセットを買わねばならず、1つあたりの定価が1728円。
しかも、そこで手に入れたライダーの強化形態や必殺技は他のセットに紐付けられているという「泣き別れ」仕様。
食玩やガシャポンなどでもライダーを切り売りしており、定価で全員揃えるには最低でも21036円かかる。
釘を刺しておくが、これは「基本無料」のゲームではない。定価9234円のゲームである。
そして、これらの追加購入をプレイヤーにしつこく迫ってくるのが、
ゲーム本編の凶悪なまでの≪高難度≫
このゲームではフィギュアの所持数=残機数なのだが、本作の敵は実に大人げないやり方で命をつけ狙う。
画面外からレーザーが飛んできて死亡、密閉空間で死ぬまでお手玉、ボスの攻撃2発で蒸発、といった調子だ。
ステージ中の回復手段はほとんどない上に、レベル上限まで育てても一瞬のミスで死ぬため、
フィギュアを買い足すことで事故に備えておくほかない。
また、ステージには有料のライダーでないと開けない扉が大量に配置されており、
その先にあるアイテムを集めなければラスボスには歯が立たない [外部リンク]ことも付記しておこう。
一般に、ゲームにおける有料コンテンツは当人が満足感を得るために買うものであり、本質的に必須なものではない。
だが、『サモンライド』におけるライダーの追加購入は、多くのプレイヤーにとって「クリアまでの必要経費」になっている。
『仮面ライダー龍騎』のキャッチコピーを借りれば、「多々買わなければ生き残れない!」のである。

第二に、【不条理感あふれる世界観】について解説する。
まず、本作はキャラゲーでありながら、
ストーリーにおいて「仮面ライダーを完全にハブにする」という革命的な手法を取っている。
ライダーたちにはシナリオ上の発言が一切与えられず、選択肢すらゼロ。音声はもとより、字幕すら一字たりとも無い。
彼らに許された発言は、必殺技の決めゼリフや、「フンッ」「ハッ」「ダァッ」と言った掛け声のみだ。
敵陣営に至ってはさらに扱いが悲惨であり、
かつてヒーローとして活躍した仮面ライダーが、量産型の雑魚敵として登場する。
繰り返すが、原作で味方だったライダーや主人公の別形態がクローン化され、ショッカー戦闘員などに交じって大量に出現する。
「橘さん! 何故増えてるんです!?」と叫びたくもなるが、その答えは最後まで明かされない。
一応グラフィック自体はそれなりによくできているが、それもそのはず、9割以上が既存作品からの流用だ。
「ちょうどいいところに3Dモデルがあったから配置してみました」とでも言わんばかりの豪快さには、感服するほかあるまい。
かたや、ライダーをかくも冷遇してまでねじ込んだオリジナル要素はと言うと、ミソッカス以下の存在価値しかない。
「クリスタルワールド」の住人は、全編を通じて計3名。
何やら存亡の危機が訪れているのだと熱弁されるが、どう見ても手遅れである。
その3名だが、一言も喋らないライダーをよそに、物語の本筋を放り投げたまま雑談にふけるばかり。
「僕は故郷でガキ大将だったんだ」、「わしは鷲じゃなくてフクロウだホー!」など、心底どうでもいい話を毎回聞かされる。
あまつさえ、「うん! 問題ないね!」という音声に対して字幕が「***ERROR!***」と表示されていたり、 [外部リンク]
「この扉はあのライダーがあれば通れるよ!」と、スキップ不可の20秒の販促ムービーとともにお布施を促したりと、
かなりレベルの高いストレス因子と化している。

第三に、様々な要素が織りなすハーモニーとしての【ゴールの見えない苦痛】について触れておこう。
本作ではマップのパターンが異様に少なく、コピペしたかのようにほぼ同じ地形を持つステージが延々と続く。
出現する敵やボスも序盤からあまり変わらず、何度も何度も同じ光景を見ているうちに無限ループのような感覚に陥ってくる。
加えて前述の通り、ストーリーは無意味な雑談が続くばかりで、一向に進まない。
こうして何の終着点も見えないまま難度だけが徐々に上がっていき、
後半になるにつれて追加ライダーを購入しながら理不尽な難度に抗い続けることになる。
その体験は、例えるならば「血を吐きながら続ける20mシャトルラン」。
めげずに完走しようとしても、
画面切り替えのたびに発生する数十秒のローディング、「水中戦」と揶揄される処理落ちの前ではプレイヤーの心はボロボロだ。
人によってはフリーズやデータ破損に何度も見舞われたという報告もあり、そのダメージは計り知れない。
そして、こうした苦行の末にようやく迎えたEDでは、戦いが当分終わらないことを一方的に宣告される。
「残った怪人たちをやっつけるのに、これからも手を貸してくれよな!」などと頼まれるが、
謹んでお断り申し上げます、というのが大多数のプレイヤーの本音だろう。

なお、一点補足しておきたいことがある。
このゲームは幼児向けだ、子どもが楽しんでいるのであればいいはずだ、といった擁護に対しての話だ。
まず、本作の対象年齢は12歳以上である。実際、中盤以降の悪意に満ちた難度は全く幼児向けでない。
だがそれ以前に、
『サモンライド』を通じて子どもたちが仮面ライダーを知ってしまうことの意味を、もう一度考え直していただきたい。
我々が子どものころ見た仮面ライダーは、
お金ではなく信念のために戦い、ふとしたことで心を痛める等身大の青年たちのドラマであった。
断じて、本作のように、金で買われたライダーが、何の葛藤もなく仲間殺しに明け暮れる地獄変ではなかったはずである。
こんなゲームで遊ばせるくらいなら、ライドゲートの上で一緒に紙相撲した方がいくらかマシであると、声を大にして言いたい。

***

さて、以上3つのノミネート作品の中から、本年の大賞を発表しよう。

『大戦略P』、『赤サブレ』、『サモンライド』……。

KOTY史上最も過酷な厳選を勝ち抜いたビッグスリーによる、ハルマゲドンが幕を開けた。
挨拶代わりの核弾頭に、鳴り響く機銃の嵐。
炎に包まれる街並み、火花を散らす影と影と影。
鳴動する大地、ほとばしる雷の群れ、噴き上がるマグマの海。
全てを破壊し尽くす大決戦が終結したその時、雄々しく響いた勝ちどきの主は……

仮面ライダー サモンライド!』である。

本作には一点、他の2作品にはない、過去にも例を見ない独創的なきらめきがあった。
それは、「検証が進むにつれて、幾重もの変貌を遂げた点」である。
発売前から『プロゴルファー猿』顔負けの≪プロモーション詐欺≫の臭い [外部リンク]を漂わせていた本作であったが、
発売後に検証が本格化すると、その個性を何度も大爆発させることとなった。
冒頭から、ライダーが一切物語に絡まず、何の説明もなく味方ライダーが襲ってくる≪クソキャラゲー≫の側面を存分に発揮し、
中盤以降は、終わりが見えない中で使い回しのステージを堂々巡りする≪ゲー霧≫へと変化。
ラスボス戦は、初期ユニットで倒すのは至難を極める≪無理ゲー≫になっており、
クリア後の追加ステージでは、投資によって無理ゲーに立ち向かう≪マネーゲーム≫が開始する。
そして、これらの理不尽に対抗するために検証者の間で攻略情報が共有された結果、
経験値やスキルの無限増殖、擬似マルチプレイ、空中散歩 [外部リンク]などのバグ技が次々と発見される≪バグゲー≫として開花。
ついには永続無敵のチートバグ [外部リンク]までもが開発され、
検証者の努力すら全部なかったことにする、文字通りの≪ゲー無≫と化してしまった。
その後もボーナスステージとばかりに叩けば叩くほど埃が乱舞し、魑魅魍魎のネタ要素が続々と噴出。
前作からそのままコピペしたと思われる大量の未使用データが発掘される一方で、
空中散歩バグで暗黒空間を走り続けるとなぜかキャラが顔面崩壊し、バラバラになっていく [外部リンク]、通称「暗黒マラソン」が発明された。
この通り、本作は日ごとに進化することで、スレ住人を翻弄し、魅了し続けたのである。

これまでのKOTYノミネート作品にも、複数の分野で強みを持つものは存在した。
SSαゲーとして多方面の基本要素を兼ね備えた『大戦略P』や、難ゲーとバカゲーの要素を併せ持つ『赤サブレ』もしかりである。
だが、それらは最初からある程度全貌が見えており、印象が何度も変わることはなかったと言える。
それに対して『サモンライド』は、検証が進むごとに変身ヒーローの「フォームチェンジ」さながらに大きく姿を変えた。
しかも、そのどれもが一本のクソゲーとして成立し得る戦闘力を誇っており、歴代のKOTYノミネート作を彷彿させるものだ。
過去作のクソ要素が一つ一つ鮮やかに浮かび上がるその様は、大いにスレ住人を沸き立たせ、
同時に、これまで歩んできた足跡を辿る充実感を与えてくれた。
本作はまさに、過去10年の狂宴を振り返る総決算としてふさわしい、奇跡の「お祭りクソゲー」であると言えよう。

***

悲しいニュースがあった。
2014年4月、遠くアメリカで、在庫処分のために埋められたと噂されていたATARI 2600版『E.T.』が実際に発掘された。
むごたらしい数十万の子殺しは、都市伝説ではなく、真実であったわけだ。
その半年後、日本では、2010年の大賞作『ラストリベリオン』を開発した「ヒットメーカー」社が人知れず解散してしまった。
クソゲーとは、かくも悲しきものだ。
世間から石を投げられ、生みの親からも唾棄され、関わる者に呪いをもたらす。

だが、忘れてはならない。クソゲーもまた、望んでこの世に生を受けるのではないのである。

冒頭の問いに立ち返ろう。
クソゲーを語ることによって、我々に一体何ができるのだろうか。
審議を終えた今、わかったことが一つだけある。
それは、我々はクソゲーを心から愛することができる、ということだ。
『サモンライド』の中にかつての強敵たちの面影を見出しながら、我々はどこか優しい気持ちになっていた。
あんなにも苦しめられたはずの、あんなにも恨めしかったゲームたちが、
まるで旧友と再会するかのように、いとおしく思い返されたのだ。
たとえゲームに裏切られ、傷ついたとしても、
一息ついてそれをネタにしてしまえば、憎しみは奇妙な愛着に変わる。
誰からも愛されない悲しい命を、我々は愛することができる。
そのことがクソゲーにとってわずかな救いになるのであれば、今度こそ胸を張って言おう。

クソゲーを、語ろう。

くずかごの底で常闇に怯える、まだ見ぬ友の手を取るために。

***

最後に。
2年連続で大賞作を紡ぎ出したバンダイナムコゲームスは、2015年4月をもって社名変更することを発表した。
新たな船出を心から祝いたい。だが同時に、我々は切に願っている。
彼らが、これまでに生み出した悲しい命の数々を、決して忘れてしまわないことを。
そんな思いを込めて、にこやかに発破をかけておきたい。
今回不運に見舞われた平成ライダーたちの中から『仮面ライダーW』の口上を借りて、
スレ住人一同から次の言葉を贈る。

「さ ぁ、 お 前 の ク ソ ゲ ー を 数 え ろ !」

https://koty.wiki/image/game/SummonRide.png


*1 原文は"This is intentional design due to the realistic and hardcore nature of the game."