特撮ヒーロー「宇宙刑事シリーズ」。80年代特撮の金字塔と呼ばれながらも、「スーパーヒーロー作戦」でバンプレオリキャラの宣伝の片棒を担がされるなど、ゲーム界ではなんとも不遇な扱いを受けていた彼らが、単独でゲーム化されることになった。
その情報が出てから1万と2千年…とまではいかないが、数年と数ヵ月。ようやくタイトルが正式発表された。「宇宙刑事魂」。ジャンルは「魂アクション」。そしてキャッチコピーは「魂を揺さぶる数々のモード!」。
さてその発売は…2006年。そう、バンナムから幾多のクソキャラゲーが発売された年であった。
02年から大味な仮面ライダーゲームを毎年世に出しているデジフロイドが開発担当という点が一抹の不安を感じさせたものの、オリジナルの敵役として「日本一の魔女役者」曽我町子氏が出演することと、発売を前に急逝された為に本作が遺作となったことが、「曽我さんのためにも必ず買う!」と数知れぬ特撮ファンに決意をさせた。
そしてその出来は…本作の2スレ目のタイトル「あばよ勇気、よろしく涙」が全てを物語っていた。
本作を一言で表すなら、内容が「薄い」…というより、「無い」であろう。特番のギャバンの髪の毛並みの皆無ぶりであった。
発売前に雑誌等で明かされた情報には、一応嘘は無かった。というより、雑誌に書かれた情報が内容のほぼ全てで、なんの深みもなかった。ストーリーモードはギャバン編とオリジナル編のみでシャリバン・シャイダー編はなく、両作の敵キャラもラスボスと戦闘員しか出てこない。ギャバン編もたった7話しかない上に、そのうち1話は寿司の取り合いをするという謎のミニゲームだけで片付けられている有様だ。
オリジナル編では原作の3大ボスが復活するという触れ込みであったが、「復活が不完全だった」という噴飯物の理由で3体とも生首だけで登場し、しかも揃って1面だけで全滅してしまった。製作者こそ生首を晒せと特撮ファンたちは激怒した。
敵戦闘機が現れると逃げ回ることしかできなくなるギャバンや岩をエッホエッホと担いで走るシャリバン、「変身したら人質を殺す」と脅されていながらあっさり変身して助けてしまうシャイダーの姿には、魂を揺さぶられるを通り越して抜かれる脱力ぶりだ。本作にはレイダーの呪いでもかかっているのだろうか?
1人プレイしかできない上に怪人は使用できないフリーバトルモードに至っては、存在理由自体が不〜思議し〜ぎ摩〜訶不思〜議である。
その出来に呆れ果てたのか、我らが3大刑事も飛び蹴りと同時にあさっての方向に飛んで行ってしまった。
…とはいえ、キャラゲー(特にバンダイの)にクソゲーが多いことなど、今に始まったことではない。本作は「曽我氏の遺作を汚した」という特撮ファンの怒りは買ったものの、06年に出た数多くのクソキャラゲーの1つとして、人々の記憶から消えて行こうとしていた。あのバンナムとデジフロの組み合わせだ、良ゲーになるわけがない。いつものことじゃないか、と。
半年後の11月30日、同じデジフロがまさかの神キャラゲー「仮面ライダーカブト」を世に出すその日までは…。