名称 | エア コンフリクト ベトナム | |
ジャンル | エアコンバット | |
対応機種 | PlayStation3 / Xbox360 | |
発売元 | ユービーアイソフト | |
開発元 | Games Farm | |
発売日 | 9月12日 | |
価格 | 7,329円 (税込) | |
対象年齢 | CERO:C(15歳以上対象) |
海外で製作されているエアコンバットゲーム「Air Conflicts」シリーズの最新作で、今作ではベトナム戦争が舞台。なお日本版の発売はシリーズで初となる。
物凄く扱い辛い操作性、無駄に鬱な誰得ストーリー、雰囲気ぶち壊しの陽気BGM、お粗末過ぎるAIの行動、雑で使い回しだらけのグラフィックと、粗だらけ。
なにより、この手のジャンルではあり得ない程にマップが狭く、つまらない癖に時間だけは掛かるお使い系ミッションがやたらと多い為、ひたすらストレスが溜まる。
日本版だけが先行発売されているのだが、ただでさえ国内での知名度が低い上この有様なので、発売直後からオンラインに人が全く居らず、対戦は不可能に近い。
スレでの呼称は「エアコン」、或いはベトナムの頭文字Vを付けて「エアコンV」。そのまま家電のエアコンがAAに用いられており、名前もそのまま「エアコンV」。
当ゲームの内容は、一人の米兵としてベトナム戦争の軌跡を追うというもの。
戦争開始から末期まで実際の出来事に沿って、戦闘機やヘリに乗って戦場を駆ける事になる。
ゲームクリア時には、ベトナム戦争の大きな流れについて理解できているぐらいに、
様々な戦況や歴史背景の説明を挟んでくれる。
しかし、このゲームでベトナム戦争について認識を高められるプレイヤーは果たしてどれほどいるのか、やや疑問である。
なぜならば、このゲームにはプレイヤーのストレスを徹底的に高めてくれる仕様が散見しており、
さながら新米兵士の精神的苦痛を実感できるような内容となっている。
まずは操作性。
戦闘機、ヘリとそれぞれ操作が異なっているのだが、
どちらもフライトシミュレート系ではかなり悪い部類に入る。△ボタンと□ボタンを加減速/上昇下降に割り当てられ、
左右のスティックの旋回、上昇下降(戦闘機)前進後退(ヘリ)との組み合わせはお世辞にもいいとは言えない。
実際に操作の難しい機体とは言えども、わざわざそんなところをゲームで再現する必要はない。
むしろ、各機体の回避行動(L1,R1)こそ忠実に再現しろと言いたくなる。
戦闘機は21世紀の技術力でもあるのか疑うぐらいのローリング性能を見せ、
ヘリに至っては重量を完全に無視した高速回避をやってのける。
おまけに鈍重なはずの爆撃機までもがローリング回避をみせ、さらには戦闘機同様に縦ローリングまでやってのけるのである。
これに付け加え、どんな体制でも爆撃モード(戦闘機、爆撃機限定、L3ボタン押し)に入れば即座に機体が水平状態になるため、
垂直落下で地面すれすれの状態でもL3ボタン一つで墜落が回避できるというとんでも飛行まで実現できる。
なお、「天井」は見た目よりも低く設定されているせいか、
ちょっとでも上昇なり手動で縦ローリングを試そうとすると自動的に水平体制に高速で戻される。
その際、画面が激しく切り替わるので乗り物酔いしやすい人は注意が必要である。
また、PSMoveにも対応はしているものの、そもそもの操作性の悪さと相まって、
Moveでのコントロールは絶望的である。チュートリアル開始2秒で墜落も十分ありえる。
操作性以外のゲーム部分にも問題は山積みである。
まず、ゲーム開始前に毎回20秒ほどのロードが入る。
とにかく長い割には実際のゲームフィールドは驚くほど単調であり、
エリア外警戒用の赤い壁に囲まれたそれはとてつもなく狭く感じられるだろう
(赤壁がないステージもあるが、こちらはもやはただの荒野レベル)。
戦闘機の場合はまだ役立つレーダーだがヘリ戦となると、とたんに役立たずになる。
ヘリのレーダーには一部の敵しか映らず、歩兵や対空砲は近づかなければ発見できない。
ところが、こちらが近づく前からガンガン撃たれ、こちらの弾は悪い操作性と視認性のためなかなか命中しない。
ミサイルやロケットを発射後、着弾までを弾の視点で確認できるが、グラフィックがお粗末なためどこに当たったのかがわかりにくい。
加えてどんなに近づこうとも全く見えない敵に撃たれることがよくある。
ドアガンタイプのヘリ(機関銃が備え付けてあるタイプ)の場合、ドアガンモード(L3ボタン)に入れば歩兵が発見できるのだが、
ヘリ右側のドアからの視点になるため毎回敵側にヘリの機体を回さなければならない。
その上このモードではヘリの操作が異なるため、操作性の悪さに拍車をかける。
なお、自動でヘリが動いてくれる強制ドアガンモードの場面もあるが、その際に表示される歩兵の固まりが人によっては蓮コラに見えるかもしれないので注意がいる。
(ドアガンモードはいわゆる「主観モード」と同じでおk)
パッケージ裏に書かれているように、部隊戦をシステムのウリとしているのだが、これ自体にも問題がある。
単独任務以外では戦闘機/ヘリがそれぞれの機種で部隊を編成し、R1を長押しする事でいつでも自由に操作機を変更できる。
直接戦闘に弱い爆撃機やドアガンなータイプのヘリに先行し、邪魔する敵を撃破してから爆撃や輸送を行うという戦略的なゲームプレイが可能となる。
・・・・はずなのだが、お粗末なAIがそれを許してくない。
というのも、操作していない機体は大方その場をグルグル飛ぶ以外なにもせず、
たとえ敵の集中砲火を浴びようともその場にたたずむのである。
加えて、護送機も操作機に絶対についてこないため、
?護送機から戦闘タイプの機体に変更
?目的地へと移動
?目的地付近の敵を一掃
?護送機に変更
?目的地に移動
という一連の操作が必要となってくる。
ヘリの操作性の悪さ、移動スピードの遅さも相まって、狭いはずのエリアが極端に広く感じる錯覚すら起こる始末である(もちろん、悪い意味で)
ステージによっては味方が一機でも落とされれば即ゲームオーバーになるケースもあり、
いちいち敵の索敵範囲外まで機体を運んでから別の機体を操縦しなければならない。
仮に落とされても、パイロットが「行方不明」扱いとなると、
後に発生する救出ミッションで生還させる事ができる。
こちらはマップ上に表示された複数のポイントに救助ヘリで向かい、正しい救助ポイントに着陸できれば救出成功となる。
ただし、表示ポイントは全てランダム、正解も毎回ランダムなので完全に運任せ。
さらに全ポイントには敵がぎっしり配置されており、上記のヘリ部隊の?〜?の動作が不可欠なので、
場合によっては一つのポイントしか回る事ができない。
仮にそれが不正解だった場合、もう一度全ポイントがリセットされた状態からのやり直しが確定し、
正解するまでの賽の河原状態が延々と繰り返される。
たまにポイントがエリア外なんかに表示されてたりもするが、もはやそれすらも些細な事だろう。
なぜなら部隊に配属されるパイロットの換えは主人公を除けばいくらでもおり、
パラメーターに個体差があれどもそもそもゲームにどれぐらい反映されるのかが疑問なので、
いちいち救い出す理由が見当たらない。
いちおう一人救出すると実績が解除されるが、後述する理由により実績のフルコンプは現状では不可能に近いので、
やるだけで無駄なのかもしれない。
また、このゲームには不確定ながらいくつかのバグと思わしき不具合が報告されている。
リトライ時に、死亡中の場面からリスタートし死亡ループにはまる、
(壁に激突し、壁の中から再スタート>爆発、敵の目の前に再配置>空中衝突で爆死、など)
エリア外に目的地や敵が配置される、などなど(再現性は低い模様)
こうしたゲーム性の悪さも演出でカバーできるのかというと、残念ながらそれすらも絶望的である。
まずグラフィックであるが、戦闘機やヘリの外装が比較的作り込まれているのに対し、
それ以外の要素が完全に時代遅れと言わざるを得ない。
狭いステージはペラペラのテクスチャーが至る所に貼付けられており、PS2レベルと言われても文句は言えないだろう。
にもかかわらず上述したようにエリアそのものが狭く、田んぼや家の造形などいたるところで使い回しが見受けられ、
同じ場所をぐるぐる飛ばされている感覚に陥る。(そのくせローディングは長い)
敵の造形も褒められたものではなく、人物に至ってはもはやPS1レベルではないかと疑えるほどにチープなコピペ具合になっている。
ラストミッション付近の一般市民を回収する任務では、銃弾飛び交う戦場で棒立ちする市民に失笑してしまうだろう。
ところが、このコピペの大群が四方八方から進行してくるのを阻止するミッションがあり、
背景と同化している歩兵を見つけるのは至難の業である。
しかもこの部隊戦が鍵となりそうなミッションに限ってヘリ単機での強制プレイとなっており、
複数の防衛ポイントを巡回しながら敵を殲滅しなければならない。
そしてこの時に限ってドアガンタイプではないので、歩兵にマーカーがつかず、
嫌がらせとばかりに関係のない兵器がマップに表示され攻撃を仕掛けてくる。
ほかにもグラフィックのお粗末さのせいでまともにプレイできないミッションは複数ある。
例えば沖合いで行方不明の特殊部隊員をヘリのアンカーで引き上げるものがあるが、どこにいるのか目視では確認しづらい。
泳いでいるイルカはきちんと用意してあるのに、まともに溺れている人物が描写できてない。
水面に触れればそのまま体力がガリガリ削られるため、救助対象を探すために水面に近づくのも一苦労する。
もはや敵はベトコンではなく、グラフィックではないかとさえ思えてくる。
このような苦痛を伴うゲームプレイを少しでも和らげてくれようとしているのか、
流れるBGMはカントリー風の明るい曲調となっている。
70~80年代の戦争映画にはよくある音楽なのだが、数が少ない上にどれも似通ったものが終止流れ続けるのですぐに聞き飽きる。
加えて重要な任務や最終ステージでも同じBGMが延々と使い回され、
よもやこれが最終ミッションだったとは・・・と驚いてしまうかもしれない。
もっとも、最後の動作がビルからヘリを飛ばすだけなので、BGM以前の問題かもしれない。
戦闘中も、イベントシーンを挟む度に画面が暗転し、度々プレイヤーのテンションをぶつ切りにする。
かと思えば、ミッションクリア時にはほとんどの場合とうとつに画面に文章を表示させ、エピローグであっさり終わらせてくる。
次のミッションではいきなり数年先に飛んだりと、プレイヤーは何度も置いてけぼりにされる。
ミッションの長さもバラバラで、何度もイベントシーンを挟んでは長すぎるヘリでのお使いを何回もやらされたかと思うと、
一カ所爆撃するだけで数分以内であっけなく終わってしまうものもある。恐ろしいまでもの水増しを感じるかもしれない。
ストーリー面でも、ベトナム戦争を米軍視点で追う時点で救いなんてものは当然ない。
だが、必要以上に主人公にとってのステレオタイプな鬱展開を繰り返すため、既視感のせいであっさり先の展開が読める。
軍人としての葛藤を家族との手紙のやり取りで再現しているつもりなのだろうが、
終盤は戦争の悲惨さよりも家庭内ブラックジョークでも見せられているかのような気がしてならない。
大まかなやり取りを要約すると:?軍人一家の主人公が妻子を残してベトナム戦争へ、夫を戦争でなくした母以外はみんな祝福ムード
?弟が兄に憧れて兵役につくも鬱になって死亡
?世論に迎合して妻と娘が夫を非難し出す>離婚届けを叩き付ける
?戦争終結>家族離散
?主人公、元帥まで上り詰めたのにガンを患って孤独死。
こんなやりとりを終止プレイヤーは単調なゲームプレイと作業ゲーの合間に見せられるので、テンションは下がり続ける。
途中でベトナム戦争で起きた悲惨な事例(戦争孤児を乗せた飛行機の墜落事故など)を見せる場面もあるのにはあるのだが、
そもそも陽気なBGMに乗せて見えないコピペ兵士を撃ちまくるゲームに命の重みを教えられるのは、いささか何かズレている気がする。
少なくとも、ラストに表示される「この作品をベトナム戦争で亡くなった全てのひとに捧ぐ」の一文に対し、
「こんなクソゲーを戦没者に捧げるな」と言いたくもなる。
最後にオンラインプレイについて言及しておきたいが、残念ながら現状では無理かもしれない。
なぜなら、休日の夕刻に一時間ほど部屋を作って待機しても誰ともマッチングする事はかなわず、
結局検証する事すらできなかったからだ。
発売して間もないにもかかわらず、マッチングがまったくできないのはプレイ人口が全くいないのか、
あるいはサーバーエラーなのかは定かではないが、今時オン要素が全く試せないのも驚きである。
実績解除のためのオンラインプレイが事実上できないため、上記で触れたように実績コンプはほぼ不可能である。
(海外での発売を機に再検証ができる事を望むが、隔離サーバーとなればもはや絶望的である)
日本先行発売と銘打ってフルプライスで日本で販売された「エアコンフリクトベトナム」。
ベトナム戦争の悲惨さを別の意味で存分に味わえるが、
恐らくは本来の目的とは大きくズレた内容になってしまったのではないか。
少なくもと、戦争の惨さよりもゲームとしてのダラしなさが先行してしまっている時点で、
色々と失敗しているとしか言いようがない。
こんなゲームに時間とお金を割くくらいなら、wikipediaでベトナム戦争の項目を熟読する方がよっぽ有意義だろう。
終わり