名称 | Piaキャロットへようこそ!!4 〜夏の恋活〜 | |
ジャンル | ファミレス恋活ADV+SLG | |
対応機種 | Xbox 360 | |
発売元 | PIACCI | |
開発元 | PIACCI/カクテル・ソフト | |
発売日 | 2011年2月24日 | |
価格 | 通常版:6,980円(税込7,329円) | |
対象年齢 | CERO C(15歳以上対象) |
『誰得』
当ゲームを語る上で、このフレーズは重要である。
2011年2月24日、誰からも期待されていないゲームが産まれていた事を知っている人はいるだろうか?
そのゲームソフトの名は「piaキャロットへようこそ!!4 〜夏の恋活〜」。
PCエロゲ発展期から根強いファンが存在した「piaキャロットへようこそ!!」シリーズの
ナンバリングタイトル4作目をXbox360に移植した物体である。
移植元のエロゲからして内容についての不満が上がっていたが、
「普通にプレイができて、エロCGが見られるだけマシ」な修羅の国においては
いわゆる『クソゲー』判定を得られる事は叶わなかった。
一部ファンからも「4なんて存在してない」と存在すら否定された本作にとって、
コンシューマ移植は汚名挽回(誤表記ではない)を狙ったものだったのだろう。
まず恋愛ADVとしてはどうだろうか?
各キャラのシナリオは良く言えば王道、悪く言えば陳腐極まりない出来であり、
最初から最後まで既視感に悩まされる展開となっている。
特に盛り上がったり感情移入してしまうような場面も無いため、
自分としては当ゲーム最大の問題点はこの「シナリオのつまらなさ」だと思っているのだが、
あくまでもこれは主観であり、未プレイ者にはプレイしてもらう以外にこのつまらなさを
説明するのは非常に難しいので、客観的に見てもおかしい点だけを記述しておこう。
・アルバイトなのに…
オープニングからして既に、単なるバイトであるはずのキャラが何故か人事権を行使する。
また、「アルバイト自身にその日の仕事内容を選択させている」という店長の言葉通り、
バイト側は好き勝手に1日の仕事を選ぶことができる。特に指示や命令は無い。
仕事内容によってパラメーターが変化するので、育成の自由度を高めるためにこういった設定にしたのだろうが、
もうちょっと、こう、なんとかならんかったのか。
・唐突な展開、あからさまなHシーンカット
恋愛ゲームと言えば、攻略対象と少しずつ心を通わせていく描写があるものだ。
だが、当ゲームにはその部分の描写・説明が非常に乏しく、
気付けばヒロインと付き合っていたり、知らないうちにヒロインを孕ませていたりする。
「あ、ここでHシーンに移行するのね」と実に分かりやすいポイントで暗転し、
PC版にあったのであろうHシーンを単純にすっ飛ばす。
かと思えば、一部キスシーンのエロいボイスはそのまま残っていたりする。
・ヤリ捨て御免
当ゲームでは最終的に主人公のパラメーターが一定値に達していない場合、バッドエンドに突入する。
これはあくまでも「パラメーターの現在値」が条件となっているため、
ここまでいくら女の子と仲良くなっていてもバッドエンドになってしまう。
付き合っていても、キスしていても、Hまでしていても(該当シーンはカットされているが)、
主人公は「何も思い出を残す事はできなかった。この店で過ごした一ヶ月間は何だったんだ。」と
自分勝手なモノローグを残してゲームは終わる。
…シナリオ部分の酷さの一端だけでも理解していただけたなら幸いである。
次に演出部分のクソ要素について説明しよう。
まず、画面サイズを無理矢理ワイドに準拠させた弊害か、
一部キャラは顔が日付カレンダーの裏に隠れてしまったり、画面外に見切れてしまっている。
他にも、3種類の中から選択できるファミレスの制服がゲームをロードする度にデフォルト仕様に戻ってしまったり、
フルボイスのはずが一部キャラはボイスが再生されない箇所があるなどの手抜きが目立つ。
セリフとボイスの内容が食い違っているという要素もしっかり完備している。
OPはやたら音量の高いBGMが流れるくせに、EDのBGMは極小音量と、調整不足も甚だしい。
あるキャラに至っては、クリア後にCGモードを確認してみると、
本編中に一度も見た事がないCGが何故か登録されているという有様だ。
キャラグラフィックそのものについての評価も低いのだが、
これについても主観の問題なので「そういった声もある」という表現に留めておこう。
まだまだ、このゲームの問題点はこれだけではない。
オートプレイにしてもボタン操作を要求してくる箇所があったり、
既読スキップも、「未読箇所もスキップされた。」「読んだ場所なのにスキップされない。」
「未読の場所まで進んだと思ったら、ボイスが再生されなくなった」という現象が発生する。
シナリオのつまらなさだけならいざ知らず、まず普通にプレイすらさせてくれないとは…!
この手の細かな手抜きに加えて、当ゲームには強大なバグが存在している。
「謎の処理落ち・フリーズバグ」である。
これはゲーム中に何の前触れもなく発生し、突然動作が鈍重になったり、そのままフリーズしたりする。
詳細な発生条件や回避法は不明であり、プレイヤーはこのバグに怯えながらつまらないシナリオを読み進める事を強要されるのである。
処理落ちは、画面が止まるまで酷くなってからしばらくすると元に戻る事もあるため、フリーズとの見分けが付かず、
セーブ地点からやり直すのが面倒くさいなら、プレイヤーには「一縷の望みに賭けて止まった画面を見続ける」という選択肢もある。
…それもそれで苦痛である事に変わりはないが…。
これに対処するにはセーブをこまめに行うしかないのだが、当ゲームに「クイックセーブ」などというシステムは存在せず、
先程「ゲーム中に何の前触れもなく」と書いたとおり、タイトル画面やデータロード直後、
挙句の果てにはセーブ中にまで発生する事もあり、本体の電源を入れた時点から一切の油断はできないのだ。
問題点が多すぎてゲームそのものの不親切な点(主人公のパラメータや攻略キャラのデータが朝・夜の行動選択時にしか確認できない、
バックログ保存量が少ない、PC版からシナリオが削除されたキャラが居る)についてはもう瑣末な事と言うしかない。
良い点を挙げようとすれば実績解除が簡単だという事はあるものの、なぜか「プロローグを見た」の実績がプロローグが終わっても解除されず、
ゲーム本編に入って少し進行してから解除されるという微妙に首を傾げざるをえない点もある。
…念のためにもう一度言っておくが、当選評の筆者自身は
「バグとかそれ以前にまず純粋につまらない点が最大のクソ要素」と思っている。
シナリオも大概だが、育成(アルバイト)パートも単調で面白味に欠け、
10〜20年前のゲームを何の工夫も無くそのまま焼きなおしただけのように見える。
PC版はエロ要素があったし、そもそも上記のような強烈なバグは搭載されていなかった。
それでもファンからの好意的な評価がそれほど見られないあたりからして内容は「推して知るべし」であった。
当ゲームはそんな物からエロを単純削除し、代わりにバグを追加するという本当の意味での『誰得』ゲーである。
どれだけ売れたのかと調べてはみたが、初週売上本数は「不明」であり、
風の噂で「1000本以上、2000本未満」くらいは売れたんじゃないかというソース不明の話を聞きはしたものの、
その程度の売り上げで開発資金は回収できたのだろうか…。
少なくとも、このゲームを購入する理由は一切無い。
どうしても内容について知りたいのであれば、普通のエロがあるPC版を購入するか、
そうでなければチャンピオンREDいちごでコミカライズされた漫画を買った方がマシである。
特に後者はシナリオを絞って掘り下げることで原作シナリオの薄さ・つまらなさの問題を解決しようと試みている上に、雑誌の特性上乳首までは解禁されている。
つまらなく、エロすら無い当ゲームは存在価値が無いと言わざるを得ないだろう。
今年度のKOTY作品を見ると、その全てが「ファンが激怒のシリーズ物」であるが、
当ゲームはPC版の時点で既に「ファンが激怒」していたため、このXbox360版についてはファンは激怒していない。
冷めた目で「え?移植すんの?誰が買うんだよ」と呟くのみである。
長くなってきたので、王道かつ陳腐かつつまらないストーリー本編に倣って、
既視感のある一文を持って「piaキャロットへようこそ!!4 〜夏の恋活〜」の選評を締めくくりたいと思う。
クソゲーオブザイヤーへようこそ!!
※
余談ではあるが、来年にはPSPに移植されるという話である…。
公式サイトはそのほとんどがXbox360版からのコピペであり、やる気が一切感じられない。