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2011年総評案?

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このページは、2011年度KOTY総評の案を集めるページです。総評の審議に役立てば幸いです。
書き方テンプレートは編集ページにコメントアウトで掲載します。

総評案20 (code_18)

「クソゲーは 忘れた頃に やってくる」

クソゲーオブザイヤー2011。
昨年9月下旬から事実上始まった2011据え置きKOTYの3ヶ月+αの死闘を、ここに記す。

11月23日。
D3パブリッシャー制作、PS3/Xbox360「街ingメーカー4」というソフトが発売された。
街を開発していく本作、しかし建てた建物は眺めることしか出来ず、住民とはろくな会話も出来ない。
BGMも2種類であり、10分に1度入るポイントを使って建物を建て、あとは待つ・・・という、異常に虚無感あふれるゲームスタイルである。
クリアーまで6時間程度、その内の殆どは待ち時間だ。
虚無、という言葉が似合う、ゲームなのかも疑わしい、限りなく無に近いクソゲーである。

同日。
アクワイア制作、PS3「グラディエーターバーサス」というソフトも発売された。
真の敵は敵ではなく、魔法を誤射してくる味方NPCであることの時点で、まず方向性が違う気すら感じ取れる。
ちなみに魔法はアップデートで大幅強化され、事実上NPCは味方ですらなくなった。なおAIはアプデで改善されていない。
ただし戦闘はゴリ押しで大概解決する。味方に気をつければ。
また武器強化のための宝石は出現率が低く、DLCもあるものの中身はランダムという、まさかのガチャガチャ方式。
そしてキャラ枠拡張やアイテム枠拡張にもDLCという、何故削ったとしか言いようがない課金要素も搭載している。
アクション性のクソさにDLCを加え、現代のゲーム事情を見事に反映したクソゲーとなった。

12月8日。
バンダイナムコゲームス制作、PS3/Xbox360「ドラゴンボール アルティメットブラスト」が発売される。
アニメーションは綺麗だ。しかし、褒めるべきはそこしか存在しない。
ムービー付きのクイックタイムイベントの存在により、戦闘は非常に冗長になり、
更にそのイベントには完全運任せの2択選択肢が常に付きまとう。
その場面以外の戦闘シーンでは基本ボタン連打。アクション性が聞いて呆れる。
微妙なキャラ人選とそれに依る歯抜けストーリーも、クソの要因となっている。
アクションゲームにアクション要素を撤廃させた、潔いキャラゲーのクソゲーであった。

これらが話題になって少し後。
1月27日発売、アクワイア制作、PS3(PSN専売)「ウィザードリィ 囚われし亡霊の街」が話題に上った。
特筆すべきは最終シナリオ3の理不尽さ。ほぼ能力が頭打ちになったプレイヤー陣の前に、能力が伸び続け恐ろしく強くなったモンスターがお出迎えする。
プレイヤーたちは能力もほぼ打ちとめになっており、死なないためにはお金で経験値を買えることを利用し、一撃で死なない程度にHPを高めるくらいしか対処法がない。
とはいえこれで、敵に勝てるようになるためには途方もない時間を要する。裏技未使用でも使用時でも。
しかしラスボスは何故か弱く、エンカウント回避アイテムを手に入れるかDLCで買うかすればエンディングは可能である。
ただここまで本末転倒な仕様となっているゲームを、クソゲーと呼ばずして何と呼べようか。

そして話題になったもう一つの作品。
9月1日発売、タカラトミー制作、Wii「人生ゲームハッピーファミリー ご当地ネタ増量仕上げ」である。
昨年一昨年とノミネートされたWiiの人生ゲーム。それらと基本のクソ仕様は殆ど変わらない。
ご当地イベントが増えたとはいえ、それもほぼ無内容のイベントが増えたようなもの。
通常イベントも種類が異様に少なく、1プレイだけで数度同じイベントを堪能できる。
これのどこにフルプライスで発売できる要素があるのだろうか。
昨年とクソさは左程変わらぬものの、変わらないことが問題視される、クソゲーであった。


残りは2本の恋愛アドベンチャーゲーム。
まずは上記の5本と同じく、次点となる2月24日発売、PIACCI制作、Xbox360「Piaキャロットへようこそ!!4 夏の恋活」を紹介する。
そもそも原作でもエロしか取り柄がない、とこき下ろされた作品である。それにエロを抜いたらどうなるか。結果は見えたようなものである。
基本設定は場当たり的、特に事件性のないイベントの連続、そしてエロシーンは取り除かれ、その間にある関係の進展も飛ばされる。
盛り上がりもしないシナリオにシーンカットという超展開を組み合わせれば、誰得というシナリオが誕生する。
SLGパートもあるものの、BAD判定にしか利用されないステータスを、適当に上げるだけ、というイベントも何もない適当仕様。こちらも誰得。
処理落ち、フリーズも前触れ無く発生。セーブを増やすと極端に重くなる、バックログが不便、スキップも挙動が悪いなど、システム面もまともにできていない。
これこそ誰得要素を積み重ねて創り上げた、誰も得しないクソゲーである。


そしてもう一本、9月29日に発売された、サイバーフロント制作、Xbox360(、PSP)「code_18」を紹介する。
こちらはタイムリープものADVであり、シナリオは5人分、固定で進行する。
ちなみにルートマップやクイックセーブなどはなく(PSP版にはなぜかある)、最悪やり直しも困難にさせる。BADENDが唐突に訪れるのも影響している。
しかし1〜4人目までには、数個の伏線を除き、ストーリー中核はほとんど進展を見せない。進展してもそれは謎な理論を展開する主人公を見れるだけだが。
しかも最終シナリオの選択肢は3回、「聞く」「聞かない」のみである(全て前者を選ばないとBAD)。もはや選択の必要すらない選択肢である。
システム面は誤字脱字、名前欄に謎の@マーク、画像とシナリオ文の不整合など、ADVの基本中の基本もできていない。
誰が学校の学園祭のコスプレ喫茶で制服を着るのだろう。何でスカイタワーにいる筈の2人の背景は淺草寺なのだろう。
テキスト上はメガネを外してキスをするのに画像では外れていない。天候が回復したのに雨。
大して盛り上がりもしないシナリオに、これらのミスが水をさして最低なADVと化している。
シナリオをゲームの基本で台無しにさせた、基本以下のクソゲーである。


そして今年のクソゲーオブザイヤー2011、大賞はこの「code_18」である。
そもそも微妙なシナリオを基本的なミスでその微妙すらも台無しにさせ、苦笑も生まないゲームに創り上げたことは、ある意味尊敬できる。
「絶対にやってはいけないミス」を平然とやってのける姿勢にも感服する。
ストーリーの酷さ、というと主観が入ってしまうことが多いが、これに関しては不具合とバグをあわせて、客観的に見てもクソシナリオを作り出した。
その点、いつかの伝説、四八(仮)に通じるものもあるのかもしれない。
ADVの根幹、ADVの命とも言えるシナリオをこういった形で完全に崩壊させ、見事大賞に輝く次第となった。


今年は7本のクソゲーが9月29日、このゲームの発売以降次々と話題に上がり、混戦模様となった今年のKOTY。
大賞決定作業も非常に難航することとなった。
来年はどんなクソゲーが生まれるのであろうか。期待をせずに、待っておくとしよう。


それでは最後、code_18の主人公が冒頭で放つ一言をお借りして、今年のKOTY、締めくくらせていただく。

「C18がKOTY大賞を獲得した。よし、次は四-八だ!」

総評案21 (Wizardry 囚われし亡霊の街)

・・ ・・七英雄の伝説・・ ・・

数多くのクソゲーマーを倒し、小売も殺し、その後ワゴンへ消えた……

『メジャー』『奈落』『大奥記』『ジャンライン』『ヌギャー』『猿』『メジャー2』

いつの日か、彼らは戻ってきて再びスレ住人を絶望させるのだという……
スレが乱れる度に、人々は伝説を語り、恐れ慄いた。
しかし平穏が訪れると伝説は忘れられていった……

クソゲーの興亡は繰り返す。
2008年の七英雄が見せた圧倒的な力の時代が終わり、分裂と闘争の時代が始まった。

2009年は「修羅の国」と呼ばれ恐れられた、エロゲー業界からの使者である
『戦極姫』の圧倒的なバグの奔流によってスレは蹂躙される。

2010年は褒める事ができる要素がまったくない、といわれた圧倒的な力で年頭より君臨した
『ラストリベリオン』の超ストロングスタイルによりスレは屈服した。

そして2011年、スレは未曾有の大飢饉に襲われ、七英雄の名は再び語られ始めた
そして、彼らは来た――――

――ここに過去最大の密度となり激戦となった、2011年据え置き版KOTYの総評を記す。



年始から続く大飢饉に喘いでいたスレ。住人たちは初の選評無しという状況を目の当たりにして困惑していた。10月中旬、
そんなスレに慈雨の如く一つの選評がやってきた。
「サイバーフロント」の「恋愛アドベンチャー」

『code_18』(スレ内呼称:C18)だ。

本作は名作ADVとして名高い『Ever17』をはじめとする「infinity」シリーズの最新作である。だが、過去作のスタッフは
ほぼ関わっていない、かろうじて関わっていたプロデューサーも当時はデバッグだった、という事でシリーズファンから
その出来を危惧されていた。
そしてその危惧は見事に的中する。「infinity」シリーズは近未来が舞台で閉鎖空間からの脱出をテーマにしたADVなのだが
なぜか「恋愛アドベンチャー」となっていたのだ。しかも各ヒロインのルートどころか分岐というものが基本的に存在せず、
選択肢によって変わるものは正解かBADENDだけという有様だった。本作はある事件を防ぐ為に何度も同じ時間に戻るという
いわゆる「ループもの」だが、何周しても主人公はヒロインといちゃいちゃするだけであった。最終周にようやく事件解決
に向けて働くが、その姿は8月31日に悪戦苦闘する小学生を思わせた。
ミステリ要素として「code」(未来からのメール)という要素もあったが、これが送られてくるのもほぼ最終周だ。
肝心のシナリオの出来も無残の一言。不整合の山で矛盾点がポロポロ出てくる。さらに度し難い事にBADENDに気付かずセーブ
すると何の説明も無く、1周目からやり直しにされてしまうのだ。
しかし本作の本領はそんな事にはなかった。おびただしいまでの誤字脱字脱文や、背景・立ち絵指定ミス、更にはボイス・
効果音の設定ミスの嵐にあったのだ。それによって致命的な演出ミスも多く発生、もちろんクライマックスシーンでももれなく
発生してプレイヤーの精神を蝕んでいった。「電車の音が電車から降りても鳴り止まない」「天候が回復したのに雨が降り
続いている」というのは序の口、「あるルートのENDシーンの一枚絵がサブリミナル効果」というのもあった。
中でもスレ住人を唖然とさせたのが「スカイタワーにいたのに脈略もなく浅草寺にワープ」してしまうというシーンだ。
もちろん登場人物はここをスカイタワーだと言い張り、話を続けていた。
前述のプロデューサーは「code_18はInfinityシリーズの入門編」と発言していたが、よもや「我々のゲーム製作入門編」
という意味だと誰が予想できただろうか。ちなみにこのプロデューサー、発売日と同時に自身のツイッターを非公開にして
行方をくらませたという。
クオリティの低さ、不具合、制作陣のごたごた、と全方位にクソなこの作品は、伝説のクソゲー『四八(仮)』(しじゅうはち)
の志を継ぐものと認められ、『C18』(しーじゅうはち)と呼ばれるようになった。


『C18』の襲来によってようやく動き出したKOTYスレであったが、スレ住人は意外と平和そうにしていた。なにしろ12月に
なろうとしているのに、話題作が未だに一つきりなのだ。「今年はこれで決まりかな?」などとスレ住人たちは笑いあって
いた。
そして地獄の12月に突入する。KOTYにおいて使い古されている言葉ではあるが「年末には魔物が潜む」
今年に至っては「潜んでいた」どころではなかった、数多のクソゲーたちが百鬼夜行の如く顕れ出たのだ。
まず、現れたのがSIMPLEシリーズで有名な「D3 PUBLISHER」から発売された「街づくりシミュレーション」

『街ingメーカー4』(スレ内呼称:待、待ing)である。

自分の街を作るsim系箱庭ゲームの中でも、「住人と交流するADV要素」という長所が売りの「街ingメーカー」シリーズの
最新作だ。しかしその実態はあらゆる要素がボリュームダウンした「ゲー無」であった。
街づくりの要であるパーツ数は激減。工場の種類は少なく、漁場や農場は存在すらも消えてしまった。郵便局やお墓、交番
も建てれず、歯科や外科・内科病院も建てることができない。学校はというと小中高大の差は無く「総合学園」のみ。
作る事ができる施設に関しても、色、バリエーションに違いが無くなり、結果街には同じ色と形の建物が整然と立ち並ぶ事
になる。ゲーム中の音楽は昼と夜の2種類のみ、天候や季節という概念も無く、地形も一種類だけ。
シリーズの売りであった「住人と交流するADV要素」も大幅に劣化。街の住人は「家に帰ります」「寿司に行きます」「最近
部下の目が冷たい」「スマホって一度もったら手放せないね」としか言わないお人形と化してしまった。
そして、このゲームの白眉とされているのが「待ち」システムである。
本作は建物を建てるにはポイントが必要であり、ポイントはゲーム内で一日毎(リアル10分程度)に貰える仕組みだ。
前作ではポイントがもらえるまでの時間で住人と交流していたのだが、本作では大幅な要素のカットにより「やる事がなく
なってしまった」のである。プレイヤーはこうなると、ゲームを放置してポイントが溜まるまで「待つ」か別の事をやるしか
無くなるのである。このゲームはクリアまでわずか5〜6時間、しかも殆どが待ち時間という新たなゲー無の境地を開き、スレ
住人たちを驚かせた。


スレ住人に休む間も与えずKOTYのコロセウムに名乗りを上げたのは、「アクワイア」の「マルチ対戦格闘アクション」

『グラディエーターバーサス』(スレ内呼称:剣投資)だ。

古代ローマ帝国の剣闘士奴隷をモチーフにした「剣闘士」シリーズの最新作である。電撃Playstationのバイヤーズガイドが
滅多に出さない「評価D」という評価を贈っており、入場前から圧倒的な威圧感を放っていた。
本作はミッションクリア形式、「3vs3」の乱戦バトルで進行するのだが、シリーズのキモだった「パリィ(攻撃はじき)」や
「ドッジ(寸前回避)」の操作体系を削除し、舞台設定を古代ローマ帝国から中世風の剣と魔法のファンタジーに変更し、
「魔法」という要素を追加したのだ。これによってシリーズの評価点だった一見地味だが奥深い駆け引きが要求されるバトル
バランスは完全に崩壊した。
味方AIも不評で「ぽこぽこ仲間が魔法を誤射する」「コンボの最中に割り込んできて、コンボを中断させる」「1対1で戦って
いるところに他の敵を連れてくる」と悲鳴が相次いだ。
それならばとオンラインで他プレイヤーと攻略しようとしても、発売当初から過疎になっておりマトモにプレイできない。
結果、オフラインでのストレスフルなごり押しゲーになりがちになってしまう。
公式PVで「10000種類以上の容姿」と謳われているキャラクリエイトは、実際には種族以外は、首から上のパーツが数種類
ずつ選べるだけ。どんな計算をしても10000には遠く及ばない。そもそもキャラクターメイキングできるゲームで10000通り
しかバリエーションが無いといっている時点で失笑されるレベルではある。
そしてこの作品の最大の特徴である極悪なDLC(有料ダウンロードコンテンツ)での搾取体制だ。
2人より多く自キャラを持ちたければ課金が必要、
異様に小さいアイテム保持数を拡張するには課金が必要、
デフォルト3種類以外の顔パーツを使いたければ課金が必要、
ステータスやスキルの再設定もDLC扱いで、課金が必要、
武器の強化に必要な宝石を楽に手に入れたければ課金が必要……
公式サイトで「ライバルに差をつけろ!」などと課金合戦を煽っているが、あまりに熱心すぎてウィルスバスターが本作発売
前の公式サイトに対して「オンライン詐欺に関係している兆候があります」と反応してしまった。
そもそも本来どれも「無料で出来て当たり前」のことである。マイナスからゼロにするのに多額の金銭を要求する阿漕な姿勢
を称えられ、本作は『剣投資』という称号を授けられた。

「偽」りだらけの『剣投資』「飾」って眺めるだけの『待』「誤」りだらけの『C18』
すわ、2011年はクソゲーたちによる三国志演義の開演か!?と色めきたつスレ住人。しかし、集まったクソゲーたちの闘気に
誘われ、金色に輝くオーラを纏うクソゲーが武闘場へ足を踏み入れた。
「バンダイナムコゲームス」の「3D対戦アクション」

『ドラゴンボール アルティメットブラスト』(スレ内呼称:UB)の登場だ。

説明不要、鳥山明による超人気コミック「ドラゴンボール」のゲーム化作品である。偉大な原作の人気に支えられ、近年では
堅実な出来のゲーム化作品が続いていた。だが外見の美しさを以て、内容の無さを覆い隠すことは出来なかった。本格的な
原作再現で人気を集める「レイジングブラスト」シリーズの流れを汲む本作であるが、何と今回大幅にシステムを単純化させて
しまい、格闘ゲームではない何かになってしまったのだ。『UB』には他の格闘ゲームのようにプレイヤーに技術を要求する部分
がほぼ無く、「QTE(クイックタイムイベント)」がその代わりを務める。しかしこの「QTE」、ほとんどが単に運任せの「二択」
で勝敗を決めるもので、戦闘時の攻撃、移動、必殺技、つまりはほぼ全てのタイミングで発生するのだ。
つまり、どういうことになるのか?
ユーザーは延々とムービー付きじゃんけんを見せられるハメになるのだ。そしてプレイヤーの介入できる部分が極端に少ないので、
駆け引きや腕を磨くといった格闘ゲームの楽しさを味わう事ができなくなってしまった。しかも演出、モーションは全キャラ共通
で「キャラの個性」も何もあったものではない。
「ストーリーモード」は退屈極まりなく、主要キャラの一部がリストラされ、シナリオがスカスカの歯抜け状態になってしまって
いる。 自作キャラを作成し活躍させられる「アバターモード」も存在するが、キャラクリエーションの自由度が非常に低く体型
は3種のみ、性別は男のみという有様。修行の内容が苦行でしかない、やることといえば単調な上記の戦闘を繰り返すことのみ、
と非常に残念な出来栄えである。オンライン対戦も可能だが、ラグや回線切断が頻繁に発生してマトモにプレイできない、といった
ダメっぷりである。


そして年末、クリスマス。「こんな日に乳繰り合う悪い子はいねがーッ!!」とばかりに、1月に発売されてからほぼ1年もの間
眠っていた巨凶がついに覚醒した。「アクワイア」の「3DダンジョンRPG」

『ウィザードリィ 囚われし亡霊の街』(スレ内呼称:亡霊)である。

「ウィザードリィ」といえば30年の歴史を持ち、「ウルティマ」や「ローグ」と並んでコンピュータRPGの原点、古典と言われ、
後のゲームに多大な影響を与えた傑作である。本作はシリーズ再興を掲げた「Wizardry Renaissance」というプロジェクトの最新作
である。当初、注目されていた「レベル99を超えると命中値がオーバーフローして0になる」不具合やセーブ不能バグ等はパッチ
によって緩和されたのだが、選評によってとんでもない伏兵であった事が明らかとなったのだ。
それは「圧倒的なバランス崩壊」によってもたらされた。
本作はシナリオ1、2、3に分かれているのが特徴だが、序盤といえるシナリオ1からすでに腐臭を放っていた。通常エンカウントの
雑魚敵に圧倒的な速度と力でプレイヤー側が何も出来ずに惨殺されてしまう事態が発生するのだ。しかもプレイヤー側の努力で
克服できるとおもいきや、シナリオを進めていくに従ってその差は広がっていくのだ。
終盤であるシナリオ3ではその差は絶望的なものになる。シナリオ3に突入すると味方キャラのレベル上限が100以上になるのだが、
プレイヤーキャラクターの能力がレベル99までに頭打ちになるのに対し、モンスターの能力は信じ難いほどに上昇してしまう。
結果シナリオのラスト3フロアでは「エンカウント=全滅」という方程式が成立する凄まじい戦力差になる。
なぜこんなことになってしまったのか? 実はこのゲーム、同社のレベル99までしかないゲームのデータを流用しているらしいのだ。
「レベルを上げて物理で殴ればいい」とは、あの『ラストリベリオン』のプレイヤーが生み出した金言であるが、まさかプレイヤー
側が殴られる側になろうとは…。


クソゲーたちの暴虐はまだ終わらない。
年の瀬迫る大晦日、閉じられようとしていたKOTYの門をこじ開け修羅の国より来訪者がやってきた。

「PIACCI」が放つ「ファミレス恋活ADV+SLG」

『Piaキャロットへようこそ!!4 〜夏の恋活〜』(スレ内呼称:pia4、Pアフォ)だ。
ちなみに「恋活」と書いて「バイト」と読む。
ファミリーレストランを舞台に同僚の女の子と仲良くなる「Piaキャロットへようこそ!!」シリーズの最新作だ。
元々、18禁PCゲームで移植元の評価も「エロ以外壊滅的」と評される代物だったが移植に伴い、売りであったエロ部分を抜いてしま
い、正に誰も望んでいない作品となってしまった。しかも抜かれていたのはそれだけではなく一部ヒロインの攻略ルートも廃止と
なってしまった。追加されたものといえば、何の前触れもなく発生する処理落ち、フリーズバグくらいのものであろう。
当初駄ゲー止まりという声も聞かれたが、選評者による血を吐くような手記が発表されるとたちまち声はかき消された。手記には
130KB、小説一巻分に匹敵する文が認められており、各ヒロインルートの放つ強烈な毒電波とまったく感情移入できない主人公に
より、次第に心壊れていく選評者の様子が鮮明に描かれていた。(余談ではあるが、この総評の容量は約20KBである)
本来、いわゆるエロゲーがコンシューマに移植されるにあたり、エロシーンの除去と代替シーンの挿入は必須といえる。だが本作は
エロシーンは抜いたが、代替シーンは用意しておらず、シナリオに抜けが多々発生してしまった。そして「いつの間にかヒロインを
妊娠させていた」「格ゲーをしていたら彼女ができた」というサイコホラー染みた展開を見せた。
プレイヤーの分身である主人公も、嫌がるヒロインの自宅のチャイムを毎日鳴らし続けるストーカー行為や、一旦諦めた陸上をまた
再開したいと言いながら一向に走らない「走る走る詐欺」を延々と繰り返したり、実妹や従姉といった血縁者と躊躇無く肉体関係を
もったりと、まったく同調できない行動を繰り返す。
ゲームの一日は
朝SLG:勉強・鍛錬・休養の他、女の子に会いに行く事ができる。
仕事SLG:ただの育成。
仕事帰り会話イベント:その日出勤している女の子に話しかける事ができる。
夜SLG:勉強・鍛錬・休養の他、女の子に会いに行く事ができる。
という流れになっている。
しかし、育成部分のパラメータ上げは盛大な徒労で、パラメータによって変わるものは各ヒロインルートの
エンディング成否判定のみなのだ。
この成否判定に失敗してしまったら、いくらヒロインと関係を進めていてもまったくの無駄になり問答無用で
全ルートで同一のBADENDに突入してしまう…。

主人公「お前、この一ヶ月どうだった?」
実妹「バイト楽しかったよ。私も成長できたし。」
主人公「ふーん。ほんとこの一ヶ月はなんだったんだろ。よくわかんね。」
実妹「またこようね!」
主人公「そうだな、またバイトしにくるかぁ!」

ヒロインとどんな事をしようとも、たとえ目の前にいる実妹と肉体関係をもっていても、主人公はこう言い放つのである。
「不快極まりない主人公」「不可解なシナリオ」「稚拙な仕様」と全方位にクソなこの作品は「C18」と並び2大クソADVとして
スレに君臨した。


1月、総評の作成に取り掛かろうとしていたスレに、1つのクソゲーが姿を現した。
実は9月に発売されていたのだが、ヒーローは遅れてやってくる。
2007年より5年連続でユーザーにクソを投げつけた、強豪「タカラトミー」の「わいわいボードゲーム」

『人生ゲーム ハッピーファミリー ご当地ネタ増量仕上げ』(スレ内呼称:誤当地)
人生ゲームとしては3年連続の登場だ。

本作は前年のノミネート作、『人生ゲーム ハッピーファミリー』のマイナーチェンジ版である。
「基本MAPやBGMの種類は全1種」
「ミニゲームや特殊マスが無い」
「看板キャラ、天使と悪魔が不在」
「プレイヤーキャラは設定変更不能の10人」
「投げやり感溢れる+種類が少なすぎるイベント」
「行動が支離滅裂で、ルールを理解するどころではないAI」
と、前作の不満要素はもちろん完備。不可解な事に、人生ゲームの要素ではなく地方ネタイベントを追加しており、完全に増量する
ところを間違えている事、また追加されたイベントも「○○おいしい」といったいいかげんなものが多い為、「誤当地」と呼ばれる
ようになった。

選評が来た当初は、「酷いとはいえ、イベントが増えている」という評価が多かったが、検証者によって実際に多人数プレイされた
結果が報告が届くと、その評価は大きく修正されていった。
新事実として統計をとった結果、確率処理に多大な偏りがあることが発覚し「特定のプレイヤーにペナルティが集中する」という、
多人数プレイにあるまじき友情破壊仕様が明らかになった。
そして、
「能動的にプレイヤーが動ける要素がない」
「ご当地ネタが何の脈絡もなく割り込んできて苦痛」
「ステータス1種変化するごとにアニメーションが入る、非常にテンポが悪い」
「つまらなすぎて途中で相方が寝てしまった」
ついには「人間関係にヒビが入った」という報告まで寄せられた。
友情破壊自体はこの種のパーティゲームの宿命ともいえるが『誤当地』の場合、「ゲームが白熱した結果」
ではなく、罪深い事に「ゲームを凍りつかせる要素が多発した結果」なのだ。
前述の全ての要素が絡み合い、プレイヤーを不快にさせるのだ。言うなれば、「パーティゲーム」と「ゲー無」
そして「クソ仕様」、これらの負のエッセンスが組み合わさることで、どす黒い感情だけが増幅されていく
「クソスパイラル」が誕生したのである。
前々作『人生ゲーム(Wiiware版)』のように「15ターン目に強制的にゲーム終了」という「救済措置」も無い。
ひたすら「クソスパイラル」と戦っていかねばならないのだ。


以上、7本のクソゲーがノミネートされた。
今年のKOTY選出は困難を極めた。例年は荒れる事があっても二強、多くてもせいぜい三つ巴であった。
しかし今年は7作全てが大賞となるポテンシャルをもち実力は拮抗、いずれも一歩も引かなかった。
しかも12月に選評が大量に来たこともあり、検証作業も難航した。1月は検証作業の月だったといってもよい。
当スレの勇敢なる検証班(クソゲーハンター)が出撃、数多の犠牲を元に審議は進められた。
ある作品で評価点が見つかったと思えば、またある作品でクソ要素が新たに発掘され再評価されるという具合で紆余曲折、
有力作品は二転三転、議論は丁々発止となり、2月までもつれ込んだ。
そんな中、「動かざることクソゲーの如し」とそのゲー無性ゆえに常に不動であった『待』の存在は特筆に値する。



それでは2011年据え置き版KOTY大賞を発表しよう。

『ウィザードリィ 囚われし亡霊の街』である。

前述の通り、今年の七英雄はいずれ劣らぬ猛者ばかりであった。しかも、様々なクソ要素をもった彩り豊かな作品が揃った。
しかし「純然なストレスの総量」という視点で各ノミネート作を見てみると、『亡霊』は頭1つ飛び抜けていた。

そもそも「wiz」というゲーム、現在良く見られるいわゆる「JRPG」と呼ばれるゲームに要求される要素、つまり
美しいグラフィックも、重厚なシナリオも、魅力的なキャラも、よく練られた世界観も、何ももっていない。
そのようなハナから求められていないのが「Wiz」である。
では「wizの楽しさ」とは何なのか? モンスターを倒して経験値や強力なレアアイテムを入手し、キャラを強化してさらに
強力なモンスターを倒すというゲームスタイル、いわゆる「ハック&スラッシュ」を体現したゲームなのだ。このシンプルさ
故に強く根源的な楽しさで、30年もの間ユーザーを魅了してきたのだ。
皆さんは覚えているだろうか?プレイを始めた時には歯が立たなかったあのモンスターを倒した感動を。
皆さんは覚えているだろうか?夢に見た、あのアイテムを入手した時の感動を。
皆さんは覚えているだろうか?苦しかった道のりを踏破した時の、あの達成感を。
シナリオ1から始まるデスロードを、ユーザーは歯を食いしばって歩いていったのだ。あの感動を再び味わう為に。
しかし、エンカウント直後の全滅という理不尽を100時間、人によっては200〜300時間もの間耐えた先にあったものは、終末的な
バランスを誇るシナリオ3であり、DLCで呆気なく手に入れる最強クラスのアイテムであり、最善手を打っても斃せない雑魚敵と
あっさり倒せてしまうラスボスであった。
求めていた楽しさを根こそぎ奪う絶望、数百時間にもわたる苦痛。それらが合わさる「純然なストレスの総量」は比肩するもの
が無かったのである。

終わってみれば2011年は過去最大級の祭りとなった。気付かれた方も多いだろうが、今年のノミネート作は奇しくも
全て「シリーズ物」であった。皆、ゲームの面白さが評価された作品の後継者なのだ。
今年のノミネート作は本来であれば全て、良ゲーとして名を馳せるポテンシャルをもっていたと断言する。
しかし安易な仕様改変やバランスとりによって、旧作のノウハウを捨て去ってしまった作品ばかりであった。
現在ゲーム業界では、開発費の高騰、ゲーム離れによる市場縮小といった逆風が吹いている。
力を失った製作者は冒険する余裕を無くし、携帯機やモバイルゲームといった安価な制作環境や、すでに評価を
受けている作品の続編タイトルに目を向けている。
しかし、どのような作品を作るにしても、先人が積み上げてきたノウハウを疎かにしたものが素晴らしい作品
になる道理が無い。先人たちのノウハウを継承するにしても、打破するにしても、自分たちが乗り越えなければならない
モノをしっかり見据えねば先には進めないのだ。七英雄はそんなゲーム業界の表す闇だったのかもしれない。
願わくばこの闇を払い、全てのゲームに携わる人々に平安が訪れますように…。

最後に今年、課金性の特大クソを2度もユーザーに投げつけた「アクワイア」に対し、あらん限りの呪詛を込めた一言を
もって2011年据え置き版KOTYの締めの言葉としたい。

「お前ら、アクワイヤじゃねぇ、アクドイワだッ!!」

総評案22(人生ゲーム ハッピーファミリー ご当地ネタ増量仕上げ)

前年王者『ラストリベリオン』は、KOTY(クソゲーオブザイヤー)に新たな歴史を刻んだ。
据え置き機ゲーム業界を「重厚長大主義」が支配し、意欲作が生まれにくくなっていた閉塞感……
そんな中で、颯爽と現れた次世代機の新星は、
「物理」の力で挑戦者を全て打ち祓い、KOTY史上初めての先行逃げ切りを達成する。
次々と門前払いを続けるその雄姿は頼もしくもあり、
一方で、ある種の不安をスレ住人達に植えつけていった。

「クソゲーが来なくなった時、我々はどうなるのだろうか」

果たして、その予感は現実となった。
2011年3月11日、日本を未曾有の大震災が襲った。
人々が深い悲嘆に包まれ、「自粛」ムードが広がる中で、
ゲーム業界もまた、本来の輝きを失っていたのかも知れない。
長い長い停滞が、KOTYスレに訪れることとなった。

雲間から光が差し込み、ようやく稲穂が実り始めたのは、実に10月のことである。
サイバーフロントによる恋愛ADV『code_18』(「c18」)。
神ゲーとして名高い『Ever17』を擁する「infinity」シリーズの最新作である。
だが、「c18(しーじゅうはち)」という不吉な略称ゆえに呪われる運命にあったのか、
発売当日に本スレでは購入者の悲鳴がこだまし、それを尻目にプロデューサーは雲隠れした。
まず、シナリオの大筋を解説すると、作中で時間が循環している設定の「ループもの」である。
しかし、あろうことか周回ごとに攻略対象を完全固定しており、さかのぼっての攻略は不可。
BADエンドの分岐に気づかず上書きセーブした場合、問答無用で1周目からやり直しを強いられる。
だが、本作の悪評を決定づけた最大の原因は、各場面を台無しにする演出ミスにある。
ひとたび電車に乗るとヒロインの家の中に移動しても轟音が鳴り続けたり、
感動の場面でキャラの顔が見切れているのはまだ序の口。
脱力モノの誤字脱字脱文のオンパレードに加えて、テキストとCGの不一致すら放置されており、
「真っ暗なお化け屋敷」は昼間の明るい教室で、
「文化祭のメイドコスプレ喫茶」の衣装はどう見ても普段の学校制服。
挙句の果てに、「スカイタワー」の展望台で展開されるクライマックスシーンでは、
何の脈絡もなく背景だけが「浅草寺」になり、呆気に取られるプレイヤーを置いてそのまま進行する。
プロデューサーは以前、「code_18はInfinityシリーズの入門編」と発言していたが、
よもや彼ら自身の(ゲーム制作における)入門編を指していたとは誰が予想できただろうか。

こうしてひと粒の収穫を分かち合うスレ住人たちであったが、この時はまだ誰も知る由もなかった。
立ち込める冬枯れの銀杏の香りに紛れて、
去年姿を見せなかった「年末の魔物」どもがこちらの様子を伺っていたことを……。

12月も近づこうとした時、突如KOTYスレを襲う黒い影が現れた。
D3 PUBLISHERから発売された『街ingメーカー4』(「待」)である。
「街ingメーカー」は、本作で4作目となる人気シリーズ。
その特徴は何と言っても、「街の人々と会話して、意見を取り入れながら街を発展させていく」
という独自のジャンルを開拓したことにある。
だが本作は、前作まで各建物に入れたはずの主人公がなぜか出入禁止状態になっており、
街の人々は揃いも揃って「家に帰る」「仕事に行く」など、心底どうでもいい内容しか喋らない。
肝心の街づくりパートも、7140円のフルプライスを微塵も感じさせない仕上がりである。
ゲーム本編のBGMは昼と夜の2種類しかなく、建築可能な物件の種類も前作から激減。
学校は小中高大のどれでもない謎の「総合学園」と有料DLCの「伝統ある学園」のみで、
郵便局や交番など、最低限の社会インフラを司る施設すら存在しない。
街を開発するには「ポイント」が必要であるが、中盤以降は一、二個の物件を建てるだけで枯渇。
ゲーム内時間で一昼夜、実時間で10分が経過するまでポイントは振り込まれず、その間じっと待たなければいけない。
クリアまではたった6時間であるが、その大半は上記の「待ち」時間であり、空虚を極めることとなる。
いつしか本作は「街」づくりゲームではなく、『待』と呼ばれる何かとして扱われるようになった。

それと同日、コロッセオに殴り込んできた狂戦士がいた。
アクワイアの『グラディエーターバーサス』(「剣投資」)。
対戦格闘アクション「剣闘士」シリーズの最新作である。
電撃プレイステーションで『四八(仮)』と同じ最低ランクの評価を獲得した本作であるが、
まずプレイヤーが目の当たりにするのは、キャラクター作成機能の前代未聞のショボさである。
公式PVが謳う「10000種類以上の容姿」は、実際には、種族ごとに首から上のパーツが数種類ずつ選べるだけ。
それもゲーム中は完全に兜に隠れるため、実質的なバリエーションはわずか3通り(「種族」)と肌の色しかない。
ゲームの内容はミッションクリア形式の乱戦バトルだが、
ステージの使い回し感が激しく、ラスト二回にいたってはほぼ同じ。
旧作で人気の操作体系を完全削除したため、
序盤は連打しかすることがなく、中盤以降もゴリ押しで同じ行動の繰り返しである。
一緒に闘うことになる味方NPCは三歳児並の知能であり、隙あらばパーティアタックやコンボ妨害を仕掛けてくるが、
敵CPUも頭が弱く、壁際に追い込むとほぼ無抵抗で一方的に殴ることが可能であり、イジメのような光景が延々と続く。
オンラインでの協力プレイや対人戦に楽しみを見出そうにも、発売数日後から絶賛過疎状態という有様である。
また、本作を彩る最大の特徴は、あこぎな有料DLC(ダウンロードコンテンツ)である。
2人より多く自キャラを持ちたければ課金が必要、
異様に小さいアイテム保持数を拡張するには課金が必要、
デフォルト3種類以外の顔パーツを使いたければ課金が必要……
公式サイトで「ライバルに差をつけろ!」などと課金合戦を煽っているが、どれも「出来て当然」のことである。
アイテム強化のDLCは今流行りの「ガチャ方式」であり、パチンコのごとく射幸心を煽ることにも余念がない。
ともあれ、その商魂を讃えて、本作は誰からともなく『剣投資』と呼ばれるようになる。
かのウィルスバスターは本作の公式サイトを
「オンライン詐欺に関係している兆候があります」と喝破したが、とんだ慧眼であったと言えよう。

こうして温まってきた武舞台に、凄まじい「気」と共に飛来する存在があった。
バンダイナムコの格闘ゲーム『ドラゴンボール アルティメットブラスト』(「UB」)である。
本格的な原作再現で人気を集める「レイジングブラスト」シリーズの流れを汲む本作であるが、
何を思ったか、キャラゲーの核であるキャラ数を40人近く大幅削減。
悟飯(青年版)の代わりにキュイがいるなど、無駄にこだわった人選にも疑問符が付く。
大量リストラのしわ寄せはストーリーモードにも如実に現れており、
ベジータが死ぬ名場面では息子(トランクス)が声のみの友情出演という惨状。
人手不足を見かねたか、フリーザ戦で悟空が一人二役する奇妙なバグまで発見されることとなった。
さて、本作の肝を平たく言うと、「ムービー(QTE)中に二択のボタンでジャンケン勝負」である。
一見してわかる通り、格ゲーではなくただの「運ゲー」でしかない要素であるが、本作ではこの頻度が異常に高く、
通常攻撃、受け身、間合いの変更、必殺技……と、あらゆる局面でジャンケン、ジャンケン、ボタン連打の嵐。
演出もまた全キャラほぼ共通であり、キャラの少なさと相まってプレイヤーを瞬時に飽きさせる。
オンライン対戦も異常なまでにエラーが多発し、最後まで闘えるのは体感で5割以下である。
オリジナルキャラが作れるアバターモードは、そもそも選べるパーツが異様に少なく、
必殺技を覚えるための長時間の「修行」プログラムにも大量のスカが混入している「心折設計」。
その修行の中身も大半がジャンケンであり、フルコンプには単純計算で80時間の耐久ジャンケンを強いられる。
ともあれ、本作は幼児すら満足しかねる稚拙なゲーム性と苦行仕様で、偉大なるDBゲーム史に泥を塗ったのであった。

「魔物」たちの熱線に当てられたか、上半期の不発弾も突如誘爆を起こした。
『剣投資』を送り込んだアクワイアによるPS3向けDL販売専用ソフト、『ウィザードリィ 囚われし亡霊の街』(「亡霊」)。
古典RPGの金字塔である「ウィザードリィ(Wiz)」の再興を期して制作された作品である。
「コンピュータRPGが我々に与えてくれた、あの緊張感、高揚、悲壮感・・・それを現在の技術で蘇らせたい」
製作者たちがそう語った各要素について、以下に紹介していこう。
まず《緊張感》である。
Wizの魅力を端的に言えば「隣り合わせの灰と青春」。
全滅やキャラ消滅の恐怖と戦いながら、探索や宝探しを続けていくスリルである。
だが、本作で新たに「プレイ中に一切セーブ不能になるバグ」の恐怖が追加されるとは一体誰が予想できただろうか。
次に《悲壮感》。
発売数ヶ月後の新章配信と同時に、本スレには断末魔の叫びが一斉に響くこととなる。
そこではゲームバランスを無視してモンスターの能力だけが単純に倍加されており、
エンカウント・即・全滅の罰ゲーム状態となっていたのである。
クリアする方法自体は、「無いわけではない」。
普通にやれば適正レベル到達に数百時間かかるが、バグで増やした金で経験値を買う作業に徹すれば10時間。
エンカウント回避のDLCを購入したり、数歩ごとにセーブ&ロードを繰り返してひたすら敵を避けても良い。
だがこの一件で、制作会社がろくにテストプレイすらしていないという疑惑が決定的となり、
不出来なシステム、お使いだらけの単調なシナリオに耐えてきたプレイヤーもついに心折れる事態となった。
そして最後に《高揚》……であるが、
本作は少なくとも、ここにいる一部の好事家たちには熱狂的に歓迎されたと言えよう。
発売元はアクワイア。『剣投資』に続き、本年2作目のノミネートである。

そして、とどめとばかりに修羅の国の猛者も群雄割拠の風雲に乗じた。
『Piaキャロットへようこそ!!4 〜夏の恋活(バイト)〜』(「Pia4」)。
F&Cから出た同名のアダルトPCゲームを、PIACCIがXbox 360に移植したものである。
「Piaキャロ」シリーズと言えば過去に映画化も果たした一大ブランドであるが、
本作及び原作を一言で言えば「没落貴族」。
ヒラメ顔と化した旧作ヒロインや、サバンナにしか見えない「陸上競技場」の背景など、
中韓丸投げアニメのごとく崩壊しきった作画が哀愁を誘う。
不定期に起きるフリーズや、既読スキップ周りの不具合もある。
だが、本作の一番の問題点はシナリオである。
もともとエロの「つなぎ」でしかなかった代物から18禁部分を強引に削り取った結果、
ほぼ全てのキャラのシナリオが意味不明な超展開になってしまったのである。
その混沌ぶりたるや、「行間を読め」などという言葉で片付けられるものではなく、
「格ゲーをしていただけなのに、気付いたら彼女ヅラされていた」
「気付いたら従姉を妊娠させていた」
「気付いたら実妹と一線を越えていた」
と、身に覚えのない事実を次々と突きつけられるサイコホラーと化している。
素のシナリオはと言うと、主人公である「羽瀬川太一」が極めて不快指数の高い人物であり、
嫌がるヒロインの自宅のチャイムを毎日鳴らし続けるストーカー行為や、
一旦諦めた陸上をまた再開したいと言いながら一向に走らない「走る走る詐欺」に延々と付き合わされる。
また、恋愛ADVパートと並行して育成SLGパートもあるが、異様にシビアなバランスの割に、
セーブ&ロード画面の開閉で数十秒固まるもっさり感がプレイヤーを苦しめる。
パラメータはシナリオ本編に何の変化も与えないが、最後の最後で1つでも不足していると唐突に共通BADエンド。
その内容にも絶句せざるを得ない。
「この一ヶ月はなんだったんだろう(要約)」と、主人公が妹に吐き捨てて帰るのであるが、
たとえヒロイン(目の前にいる実妹含む)を攻略完了していようが完全放置であり、要するに「ヤリ捨て」である。
前述のストーカー行為も合わせて、主人公のクズっぷりはかの伊藤誠氏や鳴海孝之氏に肉薄していると言えよう。
より詳しくは、本作に特攻した勇者による130キロ恋活(バイト)に及ぶ渾身のプレイ手記を、ぜひ参照して頂きたい。

さて、役者が揃ったところで審議に入ろうという時に、一通の意外な選評がKOTYスレに訪れることとなる。
それによれば2008年KOTYの覇者であり、KOTYの常連でもある古豪「タカラトミー」が、
前年の審議に対する「申し開き」とも取れるソフトを発売していたのだという。
KOTYに対する再審議要求と言えば『四八(仮)』に対する支離滅裂な擁護で知られる「党首」が思い起こされるが、
一度決めた大賞は決して覆されることはなく、また、議論され尽くした結果に対して生半な反論は何の意味もなさない。
だが、タカラトミーのやり方は一味違った。
なんと、前回ノミネートの「人生2」のマイナーチェンジ版を、そのまま2011年KOTYに送ってきたのである。

それが『人生ゲーム ハッピーファミリー ご当地ネタ増量仕上げ』(「誤当地」)である。
本作で5年目に突入したタカラトミーの連続ノミネート記録に敬意を表し、全力で検証を行うこととしよう。
まず本作は、申し訳程度の「ご当地」ネタが追加された以外に前作からの変更点が絶無である。
すなわち、プレイヤーが使えるのは基本的に、容姿と名前が固定された男女計10人のキャラだけであり、
生まれる子どもは男親の顔に女親の髪型を混ぜただけのオカマや、全く同じ組み合わせのクローンを量産。
イベント数は相変わらず極少のままであり、同じ子どもが麻疹にかかる様子を1プレイで何度も何度も見ることとなる。
また、新たな検証の結果、前回解き明かされなかったクソ要素がいくつも日の目を見ることになった。
ゴール付近では一発逆転のギャンブルがあるが、「とりあえず賭ければ当たる」上に「それだけで全て決まる」代物。
そもそもゴールしても総資産の発表など存在せず、何のためにゲームをしてきたのか全くわからない。
では今回新たに追加された分のご当地ネタはと言うと、クソである。
「長野県民はカラオケで必ず県歌を歌う」、「熊野筆はくしゃみを出すのに便利」など、地元民激怒の内容を混入。
日本各地の地元住人についても、2,3種類の汎用アバターを全力で使い回して横着しており、
鹿児島に出てくる「100歳超えのおじいさん」はどう見ても若いサラリーマンである。
こうして、クソゲーにさらなるクソ要素を盛り付けて、なおかつフルプライスで再販売するという前代未聞の蛮行……
もとい前人未到の偉業はスレ住民を震撼させ、本作は見事に再評価を勝ち取ったのであった。

以上、ノミネート7作品の紹介を終えたところで、大賞の審議に移ろう。
翻って見るに、今回の7作品は、それぞれが自らの得意分野において一撃必殺級の個性を持っていたと言える。
『Pia4』は歴戦のスレ住人たちをして「真面目にプレイした際の苦痛度では『四八』より上」とまで評せしめ、
クソ課金ゲーの地平を開いた『剣投資』、史上稀に見るクソ死にゲーである『亡霊』もまた威圧感を放っていた。
だが、それぞれのベクトルが違いすぎるゆえに、全てを同じ土俵に置こうとすれば不公平が生まれてしまう。
そこで今回は敢えて状況を限定せず、
「各々が個性を最大限に発揮した時、どれが最もクソゲーであるか」を競うこととしよう。
すなわち、ルール無制限の最強決定戦である。

各々が最強の武器を持った作品群が各々の武器で殴り合い、血煙舞う戦場と化した2011年。
最後まで生き残り、見事栄冠を手にしたのは……
『人生ゲーム ハッピーファミリー 御当地ネタ増量仕上げ』である。
なぜ前作からさほど変わらない本作が勝利したのか、疑問に思う諸氏もいることだろう。
一つには前述の通り、ご当地要素の追加とスレ住人の再検証によって評価が大きく下方修正された事情がある。
だが、それ以上の決定打となったのは、前作において見過ごされていた最大のクソ要素である。
曰く「クソゲーすぎて場が凍りついた」、「夫婦仲が険悪になった」、「友情ブレイクした」……
そう、このゲームの真価は「多人数プレイ」において発揮され、被害は自分のみならず周囲にも及ぶのである。
前作『人生2』は、虚無だった元祖『人生』に多少のゲーム内容が加わることで「改善」したと評価されていた。
だが、『誤当地』の再検証においてその考えは覆された。
本作では、パーティプレイ可能になったことで「桃鉄」などに付き物の友情破壊やイラつきの危険が生まれた一方で、
それを埋め合わせる爽快なゲーム性は一切「無」く、圧倒的な手抜き感と極少イベントのループ地獄がプレイヤーを襲う。
極めつきに、統計学的な検証によって確率処理がバグっていることが発覚し、
それまで数件報告されていた「特定の人にペナルティが集中する」という、最悪の友情破壊仕様の存在が確定した。
言うなれば、「パーティゲーム」と「ゲー無」の負のエッセンスが組み合わさることで、
どす黒い感情だけが螺旋的に高まっていく「クソのキメラ」となっていたのである。
「クソゲーとは何か」……
その答えは、時代や状況によって移ろうものであるが、今回はまさにコペルニクス的転回を見た。
これまで、クソゲープレイとは、忍耐する事と見つけられてきた。
すなわち、クソゲーハンターたるものは、孤独のうちに苦痛と闘う存在であった。
だが、『誤当地』の全てを紐解くためには一人プレイではなく、罪もない周囲の一般人を巻き込む必要がある。
そうなれば、友情や愛情をも犠牲にすることとなり、こちらの人生までもがクソゲー化してしまう。
かくして歴戦のスレ住人たちは「アキレス腱」を突かれることとなった。
「このゲームだけは決してプレイしてはいけない」
8年目を数えるKOTYスレ住人をして、そう思わせる新次元の恐怖が本作にはあったのである。

もしもクソゲーが最後まで現れなかったら……。
そんな諦念が長く尾を引いていた一年であったが、終わってみれば杞憂であった。
最初のノミネートからわずか2ヶ月半で7作品が集結する、カンブリア爆発さながらの事態である。
『c18』、『待』、『剣投資』、『UB』、『亡霊』、『Pia4』、そして『誤当地』。
これらは全てが「シリーズもの」のゲームであり、ファンを深く失望させたことから「七つの大罪」などと呼ばれた。
方針転換をしようとして完全に失敗してしまった作品、そもそも何故出したのかわからない作品もある。
だが、諸々の逆境の中でゲームの発売を断行したその勇気については、素直に讃えるべきであろう
まずゲームがなければ、それを取り巻く悲喜交々も存在しないのである。
そして、この世に生まれ落ちた全てのゲームは、それぞれ還る場所がある。
ゲームはゲーマーに、クソゲーはクソゲーハンターに……
失敗しても我々に背中を預けることで、臆せずなおいっそうの挑戦を続けて頂きたい。
願わくは、本年もゲーム業界全ての活力がますます栄えるよう、祈るばかりである。

最後に、2011年の土壇場に垣間見たクソゲー界の底力をここに讃え、この文章の結びと代えたい。

「クソゲーは滅びぬ、何度でも蘇るさ」

総評案23(人生ゲーム ハッピーファミリー ご当地ネタ増量仕上げ)

2011年のKOTYは、ついに恐れていたものが来てしまった。
クソゲー日照りである。
長引く不景気、据え置き機の開発費高騰。そして言うまでもない3月の震災。
もはや据え置き機でKOTY級のクソゲーを出している余裕など、どこのメーカーにもなかったのだ。
今年はついに大賞なしの総評が書かれるかもしれない。
喜びと失望がないまぜの複雑な気持ちで、スレ住人たちはそんな事を思うのだった。
……勿論、それはとんでもない誤りだったわけだが。


この平穏を破る最初のクソゲーが現れたのは、もう10月に入ろうという秋の日。
サイバーフロントから発売された『code_18』は、神ゲーとして名高い『Ever17』の「infinity」シリーズ最新作だったが、過去作のスタッフはほとんど関わっていないため、シリーズファンたちはどうせ地雷だと諦めていた。
だが、それでも購入した彼らが目にしたのは、想像を遙かに超えた出来損ないゲームであった。

誤字脱字は当たり前、文章とグラフィックは全然違う、既読スキップは未読部分も飛ばす、電車の音が降りてさらに回想シーンに入っても鳴り続ける、などなど……。
「背景は部室なのにヒロインが教室の机の裏に隠れた後、会議室の机の後ろから様子を伺う」とか、もう何が何だか意味がわからない。
1つ1つは大きな粗とは言えなくても、とにかく数が多いのだ。弱いジャブでもマシンガンのごとく雨あられと浴びせられればKO級の威力になる。
こんな突っ込みどころ百連発状態では、真面目にゲームをする気も失せてしまうだろう。
それに数が多いという事は、どこにでもある、という事でもある。
そう、大事な大事なクライマックスでもこの手のミスが発生するのだ。

「障害になってた悪天候がやっと回復した! これでライブが出来る!」というシーンでは、画面で大雨が降り続いている。
タワーの上でヒロインと二人きりのシーンも、何の脈絡もなく背景が浅草寺に変わってしまう。その後タワーから沈む夕日を眺めるロマンチックな展開だというのに、背景は浅草寺のままご丁寧にも赤く染まるのだ。
これでは感動させるはずが、笑いしか浮かんでこない。
恋愛アドベンチャーというジャンルでは、シナリオと萌えさえ良質なら他がひどくても割と許されてしまうのだが、もはや物語面は絶望的である。
そもそも元々のシナリオからして「ヒロイン5人中4人は基本プロットがほぼ同じで、しかもメインシナリオにほとんど関係しない」
「高所に行く必要が出来ると、持ってる機械で飛行すれば済むのにわざわざ遠くのタワーへ向かう主人公(そこでクライマックスシーンなので、つまりクライマックスがほぼ無意味)」と、既に残念すぎる内容なのだ。
この台無しストーリーから萌えに逃げようとしたプレイヤーも、「眼鏡っ娘が眼鏡を外してキスをする」「学園祭でコスプレ喫茶」などのシチュエーションで期待させられたのに、
眼鏡かけっぱなしの一枚絵、コスプレのはずが全員制服のまま登場、と手ひどい裏切りを食らう羽目になった。
ちなみに数少ない過去作スタッフであるプロデューサーは元デバッガーである。お前はプロデュースの前にやる事があるだろう、と誰もが突っ込まずにはいられない。

攻略ヒロインが選べずゲーム周回数で完全固定なので、下手な場所でセーブしてバッドエンド突入したら1周目からやり直さなければならない仕様などもあり、さすが「C十八(しーじゅうはち)」という、どこかの伝説級クソゲーを連想させる略称は伊達ではなかったという事か。
ちなみにタイトルになったcodeと呼ばれる18通のメッセージは、プロローグに2通来た他は最終シナリオに突入しないと送られてこないし、同様のメッセージなのに何故かcode扱いでない物もあったりして、どう見ても持て余している。
終盤に9連続でcodeが届き、そのたびに実績がぽこんぽこんと連続解除されるさまはある意味一見の価値があるかもしれない。まぁ調子に乗ってボタン連打するとフリーズしてしまうのだが。

さらに11月23日には『街ingメーカー4』(インディソフト)や『グラディエーターバーサス』(アクワイア)が発売された。
気になるソフトの発売日が重なると、財布の中身がが寂しい人はさてどちらを買うべきかと大いに悩む事になるのだが。安心してほしい、どちらも文句なしのクソゲーである。

まず『街ingメーカー4』。
このシリーズは街作りシミュレーションなのだが、この手のジャンルによくある都市計画の要素を廃した代わりに、一人一人個性のある住民と親交を深めるADV要素を取り入れた差別化が好評であった。
のだが、今作ではそのADV要素をばっさりカットしてしまう。
かといって都市計画も、その他の要素も加えない。
残ったのは、建物を「建てる」「潰す」「眺める」、ただそれだけだ。

建造に必要なポイントはゲーム内の24時に支給されるが、時間の早送りが一切出来ないので実時間10分ほど待たされる。(しかも建物配置中は時間が停止する親切設計)
高レベルの建造物は1戸でほぼポイントを使い切るので、ゲーム後半は「ポイントを貰う→1戸建てる→10分待つ」だけのゲームとなる。
待ち時間に町を眺めてもいいが、昼夜以外の変化はないのですぐ飽きる。建物屋上に出現する星を7段ジャンプで取りに行けばポイントが手に入るが、24時支給の1/10以下のショボい量なのであまり意味がない。
最終的にはこの10分は、マンガタイムかテレビタイムかになるだろう。
ゲームクリアまで5〜6時間程度と短いのに、その大半は待っている時間という、待つ事こそがゲームであると言わんばかりの大胆なゲームシステム。
なるほど『待ingメーカー』とはよく名付けたものである。

『グラディエーターバーサス』はマニアックなバトルの剣闘士アクションとして知る人ぞ知る人気シリーズだったが、今作は「防具をひたすら攻撃して無効化する→防具のないそこをひたすら攻撃する」、
つまり同じ部位を延々ごり押し連打で攻撃するのが有効で、ミッションも代わり映えがしない物ばかりという、古代ローマならブーイング必至のしょっぱい戦いが延々繰り広げられる。

基本は3対3のバトルだが、味方AIが魔法をどんどん誤射してくるので、それで体勢を崩したりコンボ止められたりでやられる事もしばしば。
仲間に頼らず装備強化でパワーアップしようにも、まず敵が落とした装備を手に入れるために金を払う必要がある。
その装備から強化に使う宝石を取り外すが、それにも金を払う。
宝石をランクアップさせるには沢山の宝石と、やはり金が必要。
そうしてランクを上げた宝石を、強化したい装備に取り付けるが勿論金が(ry
金や宝石を集めるためにミッションを何度も繰り返さなければならないが、前述の通り退屈な上に、ムービースキップが出来ないので無駄に時間がかかる。
あまりのマゾさに「DLCの宝石パックを売るためにこんな仕様にしたのでは」と疑われる始末。
その宝石DLCで6000円分240個買っても最も必要なルビーの高ランク品が出なかったという報告、容姿のバリエーションが少なく「組み合わせ一万通り以上」という宣伝はどうも計算が合わない、
などの事から詐欺臭を感じたのはユーザーだけではなかったようで、公式サイトにアクセスするとウィルスバスターが「オンライン詐欺に関係している兆候があります」とメッセージを出す有様だった。

集結するクソゲーZ戦士たちを見て、オラも仲間に入れてくれとばかりに現れたのは、『ドラゴンボール アルティメットブラスト』(バンダイナムコゲームス)だ。
国民的人気マンガが原作なので購買層が幅広いであろうこのシリーズ、その誰もが面白く遊べるようにと思ったのかシステムを前作より大幅に単純化。
だが勢い余って、対戦アクションゲームだったはずが2択じゃんけんゲームになり、誰もが面白くなくなってしまった。

ムービーは綺麗だが、ちょっと攻撃したり移動したり必殺技を撃ったりのたびにムービーが出て、どのボタンを押すかの2択じゃんけん。テンポが非常に悪いし、プレイヤーの操作する事も少ない。
じゃんけんなので腕を磨く部分もほとんどなく、ボタンさえ押せればチンパンジーでも勝てそうなゲーム性だ。
綺麗というムービーも、演出が全キャラ共通なのですぐに見飽きてしまう。
原作物なのにキャラごとの個性がムービーに出てないのはもちろん問題だが、そもそもキャラの人選もおかしく、主要キャラが抜けてマイナーキャラが入っていたりする。おかげでストーリーモードは歯抜け感が激しい。
いまいちなストーリーをスキップしようとしても、「スタートでメニューを出してボタンを押すと1人分のセリフをスキップ」という驚くほど面倒な仕様。

ストーリーモードでは隠し要素を開放するためのドラゴンボール探しも出来るが、ドラゴンレーダーがないキャラだとマップをしらみつぶしに探すしかない。
ドラゴンボールはマップ内に何個あるかはわからず、複数の場合も0の場合もある。
ちなみにストーリー数は50近く、ドラゴンボール入手の際に戦闘が必要な場合もあり、気が遠くなるような時間がかかる。
オリジナルキャラも作れるが、作成パターンは無限大と言いつつ、サイヤ人男限定なのでグラディエーターに匹敵するバリエーションのなさ。
必殺技やスキルを覚えさせようとするなら師匠と修行をしなければならないが、20人いるどの師匠のどの修行で覚えられるかはやってみるまでわからない、
修行の数をこなさないと師匠を変えられないので技を覚えた後も不要な修行をさせられる、とこれまた無駄に時間がかかる。
もはやこのゲームこそがプレイヤーに課せられた修行なのかと思ってしまうほどだ。
こんな超戦士を送り出しておきながら、PVで堂々と「オラたちに現金分けてくれ!」などと叫ぶのだから、さすがはまったくこりない悪びれないバンナムクオリティーである。

この活気づいた状況に、今までひっそり埋もれていた亡霊たちも目を覚ました。
『ウィザードリィ 囚われし亡霊の街』(アクワイア)は、戦闘でレベルアップやレアアイテムを得てキャラを強くしていくハック&スラッシュの草分けとも言えるウィザードリィの新作である。
発症するとセーブが出来なくなるという、レアアイテム入手後に食らったら激痛のバグによって一時は話題になったものの、こまめなセーブをしていればダメージが少ないのでKOTYという程ではない、とされていた。
しかし3部作であるシナリオの3つ目に人々が到達する頃には、セーブバグなど序の口に過ぎなかった事が明らかになる。
それは恐ろしいまでのバランス崩壊。
元々難易度の高いシリーズではあったが、もはやそんな次元の話ではない。

シナリオ2までは99に抑えられていた敵味方のレベルがシナリオ3で開放されるのだが、プレイヤー側の能力値は上限が低いため早々に頭打ちになり、レベルを上げてもHPくらいしか上がらない。
だが敵側はレベルに応じてどんどん能力値が上がっていくため、終盤ではステータス差がとんでもない事になる。
そんな状況で敵とエンカウントしたらどうなるか。圧倒的な素早さで先制され、圧倒的な火力で1ターンキルされるのみである。
頑張ってHPを水増ししても1ターンキルが2ターンキルに変わるだけ。即死や気絶の全体魔法が飛んできたら、能力値差からかほぼ効くので、せっかくのHP増加も無意味に終わる。
もはや生き残るには、エンカウント阻止のアイテムを使うしかない。ハック&スラッシュなのに敵と戦闘してはいけないという、意味不明な事態になってしまうのだ。
金で経験値が買えるので、それを利用してレベルを極限まで上げればさすがになんとか勝負にはなるのだが、そこまでの金を稼ぐには裏技を使っても1キャラ辺り10時間はかかる。

防具が紙同然なので回避率が重要になるが、回避高い装備は女性専用なので男性の存在価値はない。
HPも素早さもない種族は当然使い物にならない。
1ターンでほとんど片がつくので、使用スキルの発動が次ターンになる職業は役立たず……とキャラメイクも楽しめない。
最強クラスの装備が早めに店売りされたりDLCでの購入が出来たりするし、アイテムリストに入手不可能な物を入れてしまいコンプ不可だったりと、アイテム集めの楽しさも妨害される。
伝統のウィザードリィブランド復活を目論んだはずが、この出来では蘇生失敗で「*はいになった*」と言わざるを得ないだろう。

『Piaキャロットへようこそ!!4 〜夏の恋活〜』(PIACCI)も埋もれていたクソゲーの1つだ。ちなみに「恋活」は「バイト」と読む。
1年以上前に出たエロゲーの移植で、しかも「エロ以外はクソゲー」と言われていたゲームである。
コンシューマー機に移植するからには当然エロ部分は削除するわけで、「エロ以外はクソゲー」から「エロ」を引けば……答えは明らかだろう。
こうした移植ではエロ部分を抜いた代わりにイベントを補填したり、攻略キャラを増やしたりするのが普通だが、このゲームはHシーンをただカットしただけ。
そこに親密イベントがあったとしても何もフォローがないので、PCの操作を教えるとか遊びに行ってゲームをするとかその程度の事しかしてないのに、知らない内に恋愛感情が芽生えていた事になっている。
さらには、いつの間にか肉体関係を結んだ事になってたりする。
恋愛アドベンチャーなのに恋愛部分すっ飛ばし。
しかも攻略キャラが増えるどころか、逆に減っている。
公式サイトにはコンシューマー版で使っている絵の大半が公開されている事もあり、18歳以上ならエロゲー版を選ばない理由が見当たらない。

勿論クソ移植だから即クソゲーというわけではない。先述の通り、恋愛アドベンチャーはシナリオと萌えさえ良ければ何とかなる。
が、シナリオは恋愛部分すっ飛ばしな上に、そもそも中身が薄い。
起こる出来事がちょっと喧嘩したとか皿を割ったとかその程度で盛り上がりに欠け、珍しく事件だと思えば「溺れる幼女を助けたら見直してくれた」「トラックに轢かれそうで危ない!」など既視感ありまくり。
斬新な展開と言えば、ヒロインに相談された悩みを解決したのが主人公でない別のキャラ、というくらいか。全く誰得すぎる展開だが。

グラフィックのクオリティーもいまいちで「キャラの半分はできるだけテキストウィンドウから上を見たくない」などと言われる始末。
(陸上競技場に木が茂っていてサバンナにしか見えないなど、背景もひどい)
男嫌いなどの個性があっても掘り下げられる事はなく、それどころか一瞬だけ出てきてはすぐ忘れ去られる設定ばかり、と萌えについても落第である。

このゲーム、実は主人公のパラメーターを上げるシミュレーションの要素もある。のだが、途中のシナリオには何の影響もなく、エンディングの時点でグッドかバッドか分岐するだけの存在である。
仕事によって上がる数値が違うが、どれも満遍なく上がる職種をずっと選んでいるだけでほぼ問題ない。
ただしうっかりグッドエンドの規定値を下回ると、そこまでシナリオが理想的に進んでおり、肉体関係になったヒロインが目の前にいても、
「この一ヶ月は何だったんだろう。働いた思い出くらいしかない」などと言い放つ鬼畜野郎に大変身である。

他にも、自由移動できる場所は19ヶ所もあるが半分以上はゲーム全体を通して一度もイベントが発生しないとか、
セーブファイル数が増えるとセーブ画面を開くのが異様に遅くなるがゲーム中にセーブファイルを消す手段がないとか、
アドベンチャーゲームのくせに処理落ちが発生するとか、クソ要素は盛りだくさん。
全シナリオをクリアーした者の怒りに満ちたレポートは、実に130キロ恋活(バイト)、文豪夏目漱石の「坊ちゃん」をも超える文字数だったとか。

そして最後にやってきたのがご存じタカラトミーの、これまたご存じなあのシリーズ。『人生ゲーム ハッピーファミリー ご当地ネタ増量仕上げ』である。
もうKOTY3年連続登場の常連であり、内容的には前作とほとんど同じなので説明するのも面倒くさいが、キャラが少ないマップが少ないBGMが少ないイベントが少なくてダブる上につまらない、
メインマップからミニマップに飛ぶとイベントはさらにダブるし頻繁に入る能力上昇アニメがテンポ悪くイライラ、最後のギャンブルだけで大きく稼げるので途中経過にあまり意味がない、などなど。
まぁ詳しく知りたければ2010年の選評を見てほしい。

タイトルにもある新要素のご当地ネタは、通常のイベント同様につまらないしやっぱり頻繁にダブるので、ちっとも盛り上がらない。
さらに「長野ではカラオケで県歌を必ず歌う」など誤情報が混じってるので、豆知識としても役に立たない。
つまり新要素は全くプラスになっていない。
プレイ人数が増えるほどイベントはダブりテンポも悪化、「会話がなくなった」「喧嘩になった」「寝られてしまった」などの報告が相次ぎ、パーティーゲームなのにパーティー持ち込み禁止な危険物と化している。
今年は確率も検証された結果、ルーレットで3が出る確率が際立って高い、「おじゃましマス」で3人目か4人目が被害に遭う確率が7割、など明らかに異常な偏りが検出された。
運勝負の双六ゲームなので、確率がおかしくても勝負にはあまり関係ないのだが、技術力の低さがうかがい知れる話ではある。


前半の日照り状態はどこへやら、終わってみれば候補7作と盛況だった2011年。
さて、本年度の栄えあるKOTYを発表する……その前に、候補作たちが持つ1つの共通点について話をしよう。

お気づきの方も多いだろうが、この7作は全て「シリーズ物の続編」なのである。
これは意外な事ではない。冒頭で述べたように不景気や震災で苦しいこのご時世、オリジナル新作で勝負をかけるのはなかなかに勇気が要る。
知名度があり、購買数も読みやすいシリーズ物が多くなるのは必然とも言える事だ。
だがシリーズ物は、プレイヤーが前作との比較で評価してしまいがちである。
そのゲーム単体ではクソでもないのに、前より劣化したというガッカリ要素のみでクソ呼ばわりされるゲームのなんと多い事か。
実際2011年はいくつもの大作続編がガッカリというだけでKOTYスレに持ち込まれたし、テンプレにも前作との比較を戒める言葉がある。

しかし、だ。そんなガッカリとは限りなく無縁に近いゲームが存在していたのだ。
そう、2011年のKOTYに輝いたのは、『人生ゲーム ハッピーファミリー ご当地ネタ増量仕上げ』である。

今回の7作はいずれも甲乙……いや丙丁つけがたい実力伯仲のクソゲーたちだ。
だが、ゲーム単体のクソさで吟味するとは言っても、シリーズの存在を完璧に頭から消し去れるわけではない。
前作との大きな落差で、クソさをより強く印象づけられてしまっている――そういう事がわずかながらもないのかと問われれば、100%の否定は出来ないだろう。
しかし前作と変わらない人生ゲームは、このような負のシリーズ補正が存在しない。
にも関わらず他の候補たちと互角のクソゲーっぷりを見せているという事は、真にゲーム単体のクソさが高いのは人生ゲームである、と考えるべきだろう。

また、これは脱線した想像に過ぎない話だが、ある種のロマンも感じずにはいられない。
シリーズ物のクソゲーによって、ファンの心は深く傷つけられ、ブランドは汚泥にまみれた。
だが制作者がそれを望んだわけではないはずだ。
そんな事をしても何のメリットもないし、彼らなりに新しい試みを工夫した形跡は見られる。
ただ勘違いや失敗、無能などによってうまくいかなかったのだろう。
しかして、人生ゲームはどうだろうか。
既にクソゲー歴は3年目、当然プレイヤーからの苦情はいくつも届いており、制作者も欠点を把握していて当然だ。
ご当地ネタなどを突っ込んでみても、その程度ではたいして面白くもならないし、そもそも根本的解決にはならない事も明白なはず。
それに、一体誰がこのゲームを買うのだろうか?
前2作のプレイヤーが買うなど考えられない。
買っていなくとも、検索すればKOTY以外にもクソゲー評価のレビューには事欠かない。
去年まで手を出さなかった者が、今作を急に買う可能性も低い。
つまり「今年Wiiを買い、人生ゲームに興味はあるが、事前に評価を調べない人」という非常に限定された層ぐらいしか購入者がいないのだ。
こんな生まれた瞬間から産廃のようなゲームを、不況だ震災だと大変なこの時期に堂々と出してきた、その行動には強い意志を感じざるを得ない。
世間がどうだろうと関係なく、自分はただただ自分の信じるクソゲーを作り続ける……そんな頑固一徹のクソゲー職人の姿がここにはある。

大賞なしかと一時は危ぶまれもしたが、結果を見れば近年まれに見る盛況となった2011年のKOTY。
つまりは不況があろうと災害があろうと、時代がいかに変わろうとも、クソゲーが消えてしまう事はないのだろう。
世の中にゲームがあり、人生の全てをクソゲーに捧げているようなクソゲー求道のマイスター・タカラトミーのような会社がある限りは。

では最後に、この栄えあるクソゲーを世に出したタカラトミーに次の言葉を贈る事で、2011年クソゲーオブザイヤーを締めくくりたい。

「そんな人生は、いいかげんもうやめてください」

総評案24 (code_18)

選手宣誓

わたしはクソゲーの鳥

わたしは自らの金を喰らい

飼い

慣らされる


ハロー、ブラザーズ
諸君がこれを見ている事は
            ココロコワレテ
残念ながら私は既に精神崩壊いるという事になる

今、私の目の前には7台の据え置き機が置いてある
モニターは6台だ
私はこれから同時検証に挑む、それを終わらせなければ解放されない
クソゲーを掴んでしまった悲しみを一緒に笑い飛ばせる仲間が如何にありがたいか
今更になってそれが缶詰中の身に染みる

なに、気にするな
結果から言えばKOTYを決めるという大きな賭けに勝ち、その代わり正気を保つという小さな賭けに負けるだけの事だ
クソゲーを掴まされた悲しみを笑いに転化する、それが私達の唯一にして絶対的な不文律
そのためにはプレイヤーの思惑やメーカーの都合、ましてや自らの正気など微々たるもの
そうだろう?

感傷が過ぎた、本題に戻ろう
老婆心ながら今年のノミネート作について出来るばかりの事柄を記しておこうと思う
200円のコーラでも飲みながら聞いて欲しい


ウィザードリィ 囚われし亡霊の街
このゲームの神髄は手を抜いたバランスと脳細胞に電気を通していない安易な仕様の流用に尽きる
調整を放棄したダメージのハイパーインフレがもたらすのは徹底的な先手必勝であり
レベルキャップの引き上げによりその敵我が不可逆的になった時、プレイヤーは未曾有の地獄に叩き落される
それはコズミック・キューブで低レベル魔方陣を踏んでしまったワードナ以上の絶望感を与えてくるかもしれない
しかしそれに安穏と身を委ねてはいけない
開発の怠惰と仕様が奇跡的に噛み合った結果、更なる深淵がぽっかりとその口を開けているからだ

Piaキャロットへようこそ!!4 〜夏の恋活〜
亡霊がローグタイプの金字塔のカリカチュアであり、とぐろを巻いた巨大な一本グソなら、
このゲームはエロゲー移植の王道を徹底的に裏返した邪道そのものだ
本来エロゲーの移植ではエロを削る代わりに少なくとも辻褄が合うように調整の上、移植先の機体に最適化し、
余裕があるならキャラや特典を追加するものであるが、
それらのプロセスを徹底的に省いたという歴史的暴挙の結果、シナリオ・キャラ・システム・グラフィックの全てがプレイヤーと共に均等にすり潰された
「ガッカリゲー×クソ移植=クソゲー」という単純明快な破壊力もさる事ながら、
更に奥で眠っている原初的な闇に数多の勇者が打ち砕かれ、
狂気の数百恋活<バイト>へと消えて行き、
今ではただ虚無という名のガシャーンが私達の耳に残っている

人生ゲーム ハッピーファミリー ご当地ネタ増量仕上げ
クソゲーには人生もエロも無い、あるのは悲劇だけだという事をこのゲームは嫌というほど教えてくれる
このゲームを決して家族や友達、ましてやボケ老人のような妊婦七ヶ月目やオーナーと一緒にプレイしては・・・いけない?
無事に済む可能性もあるが、逆となる可能性も決して低くはない。友情と愛情、そして家族はこのリスクに見合わない
桃鉄やドカポンのように人間性などという甘っちょろい代物が間在する隙間もこのゲームには一分たりとも存在しない
人生はクソゲーであり、このゲームこそが人生である、しかしクソゲーは人生ではない
人間はいい加減に学べばならない、クソゲーを実体のあるソフトにしようがただ名前を変えようが、
それは相変わらずの忌むべきクソゲーだと

code_18
開発もスタッフも完全な別物であるに係わらず、
同等のゲームが出来ると考えた別のメーカーは頭の中がハッピーに違いない
いくら元の被乗数が大きかろうとも、0をかければそれは0なのだ
ただ版権を買った金が勿体無いという理由で創り出されたのは開発費が勿体無いと叫びたくなる演出ミスであり、
それはこのゲームを他と比べても遜色のない門番へと変貌させた
このゲームを一手に創り出したプロデューサーの心中は今やツイッターでしか推し量る事はできない

グラディエーターバーサス
AIの研究が完成した。よし、次は有料DLCだ!
と誰かが考えたのかどうかは定かではないが、少なくとも止める奴がいなかったのは確かだ
このゲームを一言で現すならば、他にプレイヤーが存在しないMMOパッケージだろうか
PV詐欺に最低の販売前レビュー、果てには公式サイトに対するアンチウィルスソフトの詐欺警告、
この念入りという言葉だけでは表現し得ない、意図と偶然の織り成す奇跡に私は感嘆を漏らさずにはいられない
しかしそれも「駄ゲー−有料DLC=クソゲー」というわかりやすい減算式の前ではただのネタ成分に過ぎない
壁に敵を押し込んで連打するという単純なプレイをする度に私はこう思うのだ
この壁が巨大な野グソだったらさぞ効くだろうと

街ingメーカー4
このゲームのいい所は、実在企業とのタイアップである

ドラゴンボール アルティメットブラスト
確かに誰かが言っただろう、逆に考えるんだ、と
しかし没個性である共通モーションから独特の必殺モーションというセオリーを逆にし、
個性的なモーションを共通のモーションで塗り潰す発想があったとは当の発言者にも思いつかなかったに違いない
20年以上も世界中の少年を湧き上がらせた原作があった、
バトルシステムに定評のあるスタッフがいた、
目の肥えたファンをも唸らせる美麗なグラフィックがあった
ただ街ったをかける人間がいなかった


ではおさらばだ、私は征く
そして征け、クソゲーが君達を街っている

2011年、クソゲーオブザイヤー本戦の開催を今、ここに宣言する


(お好みの実況で再生してください)
2011年クソゲーオブザイヤーのクライマックス、そしてファイナルシーンが近づいております

全世界のクソゲーマーが待ちくたびれた、最低のクソゲーを決める2011年クソゲーオブザイヤー本戦
業界中から選びぬかれた七つのクソゲーが、ようやく出走を迎えます

2011年で一番つまらないのは一体どのゲームか、世界中の被害者が固唾を飲んで見守っています
それではノミネート作品、発売日順で紹介です

1番、亡霊(ウィザードリィ 囚われし亡霊の街)
ウィザードリィからまさかの刺客
フトコロの深いシリーズからノミネートできるクソゲーの実力は如何ほどか
パブリッシャーは携帯の強豪・アクワイア、据え置きでは初めての登場です

2番、pia4(Piaキャロットへようこそ!!4 〜夏の恋活〜)
修羅の国でガッカリゲーと噂の誰得移植
あのSSα<アルファ>が改心した後、後継は我であると言わんばかりのノミネート
ディベロッパーはカクテルソフト、携帯と合わせての二冠を狙わんと気焔を上げています

3番、誤当地(人生ゲーム ハッピーファミリー ご当地ネタ増量仕上げ)
残暑の残る防災日、人生ゲームがやってきた
発売はやはりお前かタカラトミー、性懲りもなくフルプライスでのノミネート

4番、C18 (code_18)
伝説を彷彿とさせるネーミングに、悪夢を思い出させる同ジャンル
父親はご存知infinityシリーズ、でも兄弟のエバーセブンティーンとは赤の他人です
開発は心臓発作を起こしたKIDSから代わってサイバーフロント、ここも赤の他人です

5番、剣投資 (グラディエーターバーサス)
ファミ通と電撃で貫禄の低評価を付けられた人気作品
ドッジやパリィと共に爽快感が無くなった最新作
パブリッシャーは亡霊も作ったアクワイアの一人二役、二作目のノミノートです

6番、待ing(街ingメーカー4)
シリーズ独自の要素を排除して、同人クオリティを実現させた二番人気
開発は新顔のメディアファクトリー、忍耐深く勝機をまっちんぐさせます

7番、UB(ドラゴンボール アルティメットブラスト)
沸点の高いキャラゲーから、QTEを引っさげてのノミノート
開発はまさかの株式会社スパイク、定評があるのにどうしてこうなった

(パーンパカパンパンパン〜)
一番人気はバージョアップ?人生ゲーム誤当地
二番人気は修羅の国代表Pia4
検証の進んだウィザードリィも注目されています

さあ、各作品ゲートインから一斉にスタートしました

一番手はC18が飛び出した、いきなりプロデューサーがツイッター未公開
二番手には商魂たくましい剣投資、味方から魔法で尻を焼かれている
中央一待ing、建物に入れず立ち往生
一歩遅れてUBには海外からの怨嗟が届いている
大きく遅れて亡霊、最強武器が店で売られている
すぐ後ろにpia4、何時の間にかヒロインが孕んでいた
最後尾にはお馴染み誤当地人生ゲーム、五年連続ダカラゴミー

さあ、大けやきを回って最終コーナー
先頭C18、二番手内側から剣投資、外から何故か待ing

そろそろプレイヤーからの怨嗟が聞こえてきました
「帰れー!」「もう来んなー!」「友達返して!」

おおっと、人生ゲーム逃げ出したぁ!
再評価でルーレットが偏っている!イベントが被りまくった!100歳超えのサラリーマン!
速い速い、人生ゲーム、ごぼう抜きで一気に先頭に立った!
しかし止まらない!更にイカサマギャンブル炸裂!
逃げる逃げる、人生ゲーム、これぞ売り逃げを一周して帰ってきた恥知らずの真骨頂!

さあ、全頭誤当地に釣られるようにペースが上がって来ました

まず追走に入ったのは待ing
イベントの微妙さにやる気が起きない!おっと、プレイヤーが暇すぎて離席した!
ホップ!ステップ!七段ジャーーーーンプ!
そしてゲーム性も脱ぎ捨てた!軽い軽い、これぞゲー無の真骨頂!
猛烈なスピードで人生に迫って行く!

おっと、C18の後方にいた剣投資も動く
仕様がPVと違う!説明書とも違う!
爽快感が失われている!代わりに連打をしている!味方が余計な敵を連れて来ている!
マルチプレイヤーが一週間で過疎った!あげくにスタッフがプレイヤーフルボッコ!
剣投資、待ingと併せながら先頭との差を急激に詰めて行きます

pia4も動く、いきなりひらめ顔の攻略キャラが出現した!
アスペ比の調整ができていない!システムが削られている!CGの上下が切られている!
攻略キャラすら削られた!SLGパートに意味がない!その子誰の子オーナーの子!?

C18も負けじとpia4に並んだ!電車の音を響かせている!
晴天の中の雨天コンサート!女子高生の制服コスプレ喫茶!
明るくて暗いお化け屋敷!メガネを外したと思ったら掛けている!
携帯機より劣化した据え置き版!

UBのプレイヤーも立ち上がった!
怒りでスーパーサイヤ人になっている!
連打連打連打!背後に連続エネルギー弾!
しかしグミ打ちは負けフラグだ!

最後方の亡霊はプレイヤーの顔色が怪しくなっている
レベルを上げて物理で殴っている
ダンジョンにメリハリがない!全然WIZをわかっていない!
しかしまだ不満ながらも余裕面、これがシナリオ4をも乗り越えた古強者の貫禄か!?

さあ直線に入りました
各ゲーム、これぞというクソゲー要素を披露してゴールを狙います
先頭争いは御当地・待ing・剣投資、僅かに遅れてpia4とC_18、最後尾にUBと亡霊が続きます

グミ打ちをしていたUB、更に動いた!
ジャ〜ン、ケ〜ン、波ーーーーーー!
原作者お約束の噴射光線だ!
怒涛の幼児退加速で一気に先頭に並んだあああああ!

しかし誤当地も負けていない!
4人のプレイヤーが飛び降りてゲームを持ち上げた!八本の足でUBに並ぶ!
テンポが悪い!急激にストレスが溜まって行く!人間関係が壊れて行く!
これが人生!?これぞパーティゲーム!
購入者だけでは飽きたらずに周囲へと被害を広げている!

剣投資、必殺のアクドイワフォーム!
駄ゲー−有料DLC=クソゲー!あまりの締め付けに観客席からブーイングが飛んでいる!
おおっと、その中で約一名が泣いている!6000円を返してと叫んでいる!
前代未聞のガチャガチャDLC!必要な宝石が全く出ない!

ここでpia4のプレイヤーが発狂した!何時の間にか正気を失っている!
積み重ねられたストレスが一気に爆発した!数百恋活<バイト>の手記が積み重ねられて行く!
pia4速い!苦痛が強い!狂気と涙のサバンナストライク!グミ打ちで荒れた会場がサバンナで再生されて行く!
時間を飛ばしながら位置を前に進めている!エロを抜いて追加なし!シナリオが意味不明になっている!

ああっと、C18君、跳ね飛ばされた!
しかし飛行ユニットで空を飛んだ!
よし、次はタイムマシンだ!

ここで亡霊も前に出た!
最終ダンジョンで即死した!レベルを上げても先手が取れない!
まともにやったら500時間!裏技使っても60時間!
アイテムコンプリートも不可能となっている!我々の業界でも拷問です!
しかも何かを呟いている!
「近いぞ…私とともにくるのだKOTY!慌てて逃げても遅いわ!!」
トレボーの亡霊と化して先頭に追いついた!

ゴールまで残る300メートル!
ドキッ!クソゲーだらけのプレイ大会!前代未聞の全頭併せ馬!
各ゲーム一歩たりとも譲りません!果たして鬼火はどのゲームに灯るのか!?

おっと、ここで遥か上空から何かが飛来した!
あれは何だ!?鳥だ!UFOだ!ガンバスターだ!
違う!飛んでいたプレイヤーだ!Shout now!

住人がマネキンと化している!施設が大幅に削られている!
究極!まっちんぐキィイイイイイイイク!
入った―!何時の間にか先頭に並んでいた待ingを競馬道に叩きつけながら更に加速!
全クソゲーへの怨念を受けて待ing、金っ、時間っ、返―――――おや、何か聞こえますね


「娘よ、あれを使うぞ!」
「よくってよ!」

『スーパー!』

「浅草寺!」「スカイタワー!」

『キイイイイイイイイイック!』


                               ヽ`
                              ´
                               ´.
                           __,,:::========:::,,__
                        ...‐''゙ .  ` ´ ´、 ゝ   ''‐...
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  ;;;;;;゙゙゙゙゙            /                           ゙:                ゙゙゙゙゙;;;;;;
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実力伯仲のクソゲー勝負、泥沼と化した選評会
嗚呼、最後は必殺技

確定しました、大賞code_18、フィニッシュ技は浅草寺<スカイタワー>キックが入りました
2011年クソゲーオブザイヤーでした、また来年にお会いしましょう
金と時間を返してください、二度とやりたくありません、さようなら

総評案25 (Wizardry 囚われし亡霊の街)

2011年。KOTYスレは微睡んでいた。
いくつかのゲームが持ち込まれるも、議論の結果「クソゲーに非ず」という結論となり
ノミネートに足るクソゲーは現れなかったのだ。
その微睡みは長く、スレが目覚めるのは九月も終わりにさしかかってからのこととなる。

眠りを破ったのはサイバーフロント発売、XBOX360『code_18』(通称「C18」)である。
今作はタイムスリップを題材としたADV『infinity』シリーズの七年ぶりとなる新作である。
このシリーズは『Ever17』をはじめ、優良なSFシナリオで知られる。
しかし会社の倒産、版権の委譲などを経た本作には、以前のスタッフはほとんど残っていない。
シリーズファンは発売前よりその事を危惧していたが、その不安は想像以上のものとなった。
当然のように存在する誤字脱字の嵐。ずれまくる音声と文章。見切れているキャラの立ち絵。
なぜか遅い立ち絵の表示。正常に作動しないことのあるスキップ。
そしてあらゆる盛り上がりを阻害する演出ミス。
一度電車に乗ったら最後、家の中でも部室の中でも鳴り響く電車の轟音。
「台風が止んでライブを再開する」シーンではいつまでも嵐が吹き荒れる。
「眼鏡を外したヒロインとキスする」シーンではヒロインが眼鏡をかけたまま。
「学園祭のコスプレ喫茶」にはいつも通りの学生服のヒロイン。
極めつけが物語のクライマックスで「スカイタワー」の背景に夕暮れの浅草寺。
数え上げればキリがないこれらのミスが、物語への没入感を限りなく下げてくる。
そして肝心の物語自体も、以前のような大胆なアイデアや緻密な伏線回収は望むべくもない。
未来から送られてくる謎のメール「code」を放置し、ただ学園祭を満喫するだけの展開が四周も続き
最終ルートにてようやくcodeの謎に迫ったかと思えば矛盾だらけで伏線放置。
四周目までまったく届かなかったcodeが終盤になって立て続けに届いたかと思えば
(そのせいで実績が連続で解除されすぎてフリーズすることがあるのはご愛嬌のうち……か?)
18通あるというcodeの18通目が来ないままに終わり、
しかし関係ないところでそれに関する実績は解除されるので
codeとはなんだったのか最後までわからないというお粗末さ。
キャラの攻略順も周回ごとに完全固定され、選択肢もかぎりなく少ないためゲーム性もかぎりなく薄い。
さらに選択肢からバッドエンドが長いため、選択肢前のセーブデータを残し忘れると
一周目の最初からやりなおすハメになるという凶悪な仕様も忘れられない。
なお、本作は同日にPSP版も発売しているが、PSP版にはクイックセーブ・ロードが搭載され、
やり直しも周回ごとからできるため、このような危惧はない。
キャラが見切れていることもなく、こまごまとした部分がまともになっているため
根本的な部分のクソさは変わらないが、XBOX360版に比べると幾分かマシになっている。
つまりXBOX360版は同日発売の携帯機の劣化版ということになる。前代未聞の椿事であろう。
物語を楽しむことしかできないADVなのに、あらゆる要素が物語を邪魔してくる。しかも物語自体もまったく面白くない。
ADVとして救いようのない正統派のクソといえるだろう。
発売日にプロデューサーがツイッターアカウントを非公開にしてユーザーの前から姿を消したのもむべなるかな、だ。

その後およそ二ヶ月、ヒマをもてあましたスレ住人は「C18マン」や「浅草寺<スカイタワー>キック」などで戯れ
このまま「C18」が大賞かとも思われたが、無論そんなに甘くはなかった。
11月も終わりにさしかかり、世の人々が寒さを知るころ、スレ住人は真の寒さを思い知ることになる。
D3パブリッシャー発売、PS3/XBOX360『街ingメーカー4』(通称「待」)の登場である。
街ingメーカーシリーズは街作りをするシム系SLGであり、その特色は作った街を歩き、住人と話せることにある。
そして住人の話から不満を察し、それを解消して街を発展させていくのだ。
しかし今作では街を歩くことはできるものの、住人との会話は激減。
テンプレセリフを話すばかりで、街の発展に役立つような意見を聞くことなどできない。
さらに設置することのできる施設も激減。
以前はあった小・中・高・大の学校の区分が謎の「総合学園」に統合されるなど
あらゆる施設が減少・簡略化され、街づくりの楽しみが大きく制限された。
やる事といえば現実時間で約10分に一度もらえるポイントを使って建物を建て
なにもやることがないのでそのまま10分待ち、また建物を建てる。これだけである。
一応、街のどこかにあらわれる星をとることでポイントが手に入るが
どこにあらわれるかわからないうえに、とれない場所にあらわれることもあり、
しかもとったところでポイントは雀の涙である。
結局、昼と夜とで切り替わる二種のBGMを聞き流しながら、10分に一度建物をつくり
あとは待ちつづけるしかない。
箱庭ゲームとして眺めるにもグラフィックは前世代レベルであり、見て楽しいものでもない。
ついでに操作性もひどく悪く、ロード時間も長い。

なにもすることも考えることもなく待ちつづけるその時間は、ただひたすらに寒々しい。
今作は「〜〜ができないからつまらない」ではなく「なにもできないからクソゲー」という
まさに虚無を体現した存在であり、やはり正統派のクソゲーである。
定価7140円にも関わらずクリアまでわずか6時間というボリュームは
今作にかぎってはむしろ救いと言えるだろう。

そして「待」と同日、いま一人、不毛な争いに身を投じる戦士がいた。
アクワイア発売、PS3『グラディエイターバーサス』(通称「剣投資」)
剣奴の世界を舞台としたアクションゲーム『剣闘士』シリーズの最新作だ。
今作は舞台を中世ファンタジーに移し、魔法の概念を取り入れた意欲作となっている。
その意欲の結果、なんとも残念なことになった。
多彩なアクションが売りであったシリーズだが、本作では魔法を生かすためか
はたまた単なる手抜きか、アクションは極端に少なくなっている。
好評だったパリィ(弾き)やドッヂ(寸前回避)もなくなり、ジャンプやダッシュすらできず、
結果として正面に立ってごり押しで殴りあうことになった。
いちおう、さまざまな部位破壊を狙う、などの戦術もあるが
なにも考えずに同じ技を連発するのがもっとも簡単かつ効率がよく
一部の技を使えば問題なくクリアできるため、他の戦術は趣味の縛りプレイの領域である。
動き自体ももっさりとしており、爽快感とはほど遠く単純にアクションとしての出来が悪い。
それをマイナスの方向へ助長するのが、劣悪なAIである。
本作は3VS3の戦いとなっており、味方の二体はCPU操作となる。このCPUが頭が悪すぎるのだ。
プレイヤーのコンボに割り込み邪魔をし、引き離した敵を連れてくるタイマンを邪魔することはしょっちゅうだ。
さらに新要素の魔法によって背後からプレイヤーを撃つ援護ならぬ援誤も多発。
やれることが極端に少ないうえに、それすらも気持ちよくできないという仕上がりである。
またせっかくのオンラインプレイも発売初日から過疎っているうえ、
開発者たちが自慢のキャラとテクで初心者狩りに勤しむという心温まる光景がそこかしこで見られた。
キャラメイクも公式で一万通り以上を謳っているが、実際はすべて組み合わせてもその半分以下。
しかもほとんどが頭部に関するメイキングなうえ、普段は兜をつけるため確認できることも少ない。
戦闘中に確認できる差異は肌の色三種類くらいのものだろう。
キャラの保持数もたった二人と少なく、アイテム所持数も極端に少ない。
この基本システムの不満を解消するのに必要なのがDLC、すなわちリアルマネーであり、
少しでもユーザーを搾取しようという姿勢が感じ取れる。
さらにプレイヤー強化に必要なアイテム「宝石」もDLCで販売されており
その方式は完全ランダムという、ソーシャルゲームで悪評高いいわゆるガチャ方式である。
しかも一番必要な種類の宝石のみ極端に入手確率が低く、射幸心を煽ることに余念がない。
「これでは剣闘士ではなく剣投資だ」「おれたちはメーカーの奴隷扱いか」
とプレイヤーが主人公と同じ気持ちになれたのは皮肉な成果であろうか。
公式サイトがウイルスバスターに「オンライン詐欺に関係している兆候があります」と警告されたのは
呆れるを越して微笑ましくすらある。
戦うことしかできないのに戦いたくなくなる、アクションの基本を負の方向に徹底したストロングスタイルのクソゲーの誕生であった。

しかし12月、「戦いならオラに任せろ」と一人の超戦士が我々の前に立ちはだかった。
バンダイナムコ発売、PS3/XBOX360『ドラゴンボール アルティメットブラスト』(通称「UB」)
国民的漫画を原作としたご存知格闘アクションシリーズの最新作である。
過去にはクソゲーを輩出したこともある同シリーズではあるが
近年では原作テイストを再現したポリゴンモデルの評判が良く、アクションとしての評判もわるくない。
今作もまた最新作にふさわしい最高品質のグラフィックを備えている。
よって、本来ならばこの天下一クソゲー会ではチャパ王のごとく予選敗退となるはずの存在であった。
それがなぜ本選にまで残ってしまったのか……
答えはゲームシステムの簡略化にある。
ちびっ子たちへの配慮であろうか、今作の戦いはシンプルなものとなっている。
攻撃、移動、回避、なにをするにしてもすぐにQTE(選択肢つきムービー)に突入するのだ。
QTEの選択肢は常に二択であり、読み合いも戦術も存在せずすべてを運に任せるしかない。
これにたまに連打勝負が加わるという、ジャンケンと同レベルかそれ以下のゲーム性しかないのだ。
格闘ゲームは極めたもの同士の間では高度なジャンケンになるというが、今作は最初から最後まで
初心者からやりこみプレイヤーまでジャンケン以下にしかならない。
まさに格闘アクションのアルティメットというべき無内容さなのだ。
さらに戦闘演出もなぜか全キャラ共通のため、すぐに見飽きることになる。

餃子や悟天や青年悟飯などのメインキャラが削られ、ギニュー特戦隊からグルトだけがはぶられ、
セルも四形態まとめて1キャラにされ、しかしなぜか汚い花火(キュイ)はいるなど、キャラ選出にも疑問が残る。
しかも原作再現ムービーでは非登場キャラのシーンが飛ばされるためつぎはぎ状態となってしまっており
ファングッズとしての満足度は非常に低いと言わざるを得ない。
オリジナルキャラクターを育てるアバターモードは、キャラメイク要素が極端にうすく、
性別は男性に限定され体型も三種のみと、剣投資にいらない対抗心を燃やしているとしか思えない出来だ。
修行内容も上記の二択ジャンケン戦闘をくりかえすだけの完全作業であり、
せっかく修行してもハズレが大量に紛れ込んでいるという精神攻撃も備えている。
それでいてフルコンプにかかる時間は数十時間と、精神と時の部屋に入っていても勘弁してもらいたい無駄なボリュームである。

アルティメットに簡略化した結果、ゲームであるかどうかすら定かでなくなった本作は
原作が少年漫画の王者であるのとおなじくらい、クソゲーの王道を歩んでいると言えよう。

かくして四タイトルが出揃い、いよいよ決戦の火蓋が落とされるかと思われた。
しかし年末、我々の前におぞましい姿をあらわしたのは、年始より潜む亡霊であった。
アクワイア発売、PS3『ウィザードリィ 囚われし亡霊の街』(通称「亡霊」)
ネットワーク配信専用ソフト(のちにパッケージ版も発売)として発売された本作は
RPGの起源の一つと言われる名作シリーズの新作である。
シリーズの「ルネッサンス」を掲げた本作は、初期Wizのシンプルなコンセプトを継承した作品になっている。
すなわち、キャラを作り、ダンジョンに潜り、アイテムを集め、最深部のボスを倒す。
ストーリーもグラフィックも切り捨ててただそれだけに特化した究極のハック&スラッシュ。
死亡時にキャラロストの可能性までも含めたシビアなゲームバランスの生み出すスリル。
それがWizardryだ。
そのすべてが、今作にはない。
レバーを引いて道をあける以外の仕掛けがないひたすら単調なダンジョン。
敵も味方も火力だけがインフレしてすべてが一撃必殺となっている先手必勝の大雑把過ぎる戦闘バランス。
店売り武器が最強のうえ、アイテムリストに載っているアイテムがどうやっても手に入らず
レアアイテムをDLC課金で売るという収集欲を著しく減退させるアイテムの仕様。
唐突にセーブ不能になるバグや壁が消失して謎空間に突入するというバグ、
多発する処理オチに、命中率が一定値を越えると0になる仕様。(これらはパッチで緩和されたが完治はせず)
当然のようにストーリーやグラフィックもWizらしい簡略化されたものであり
要するにあらゆる部分で手抜きばかりが目につくいいかげんな出来であったのだ。
それでいて「かゆ、うま」「上から来るぞ!気をつけろ!」などの
くだらないパロディはしっかりと仕込んでよりこちらを苛立たせるのは忘れない。

しかしこの亡霊の真の恐ろしさはその先にある。
三十年の歴史を誇り、シビアなゲーム性で鳴らしたWizのユーザーは、実によく訓練されていた。
このような悲惨な状況にあってすら「まあWizだから」と苦笑いしてプレイしていたのだ。
だが発売より二ヶ月後、最終シナリオであるシナリオ3が配信されたとき、
そのよく訓練された最古参兵たちがなんと悲鳴をあげたのだ。
なぜか? それは圧倒的なゲームバランスの崩壊である。
今作はシナリオ3に入るとレベル制限が99から299へ上昇し、それに合わせて敵のステータスも上昇する。
しかしWizはシステムの仕様上、いくらレベルをあげたところでHPくらいしか上がるものがない。
しかるに敵は他のステータスも遠慮なく上昇させてくるのだ。
これに上記の火力偏重バランスを加えるとどうなるか?
味方の理論上最速キャラをはるかに上回る速さを誇る敵が、出会い頭に先制攻撃でこちらを全滅させてくるのである。
この遭遇即全滅の危険性ははじめから高いが、ダンジョン深部に行くほど上昇し
最深部3フロアにいたっては100%に達する。あらゆる雑魚との遭遇がすでに敗北なのだ。

一応、エンカウント防止アイテムを使うか、どこでもセーブ&ロードを利用して、
セーブ&ロードをくりかえして敵に出会わないように移動すれば、クリアすること自体はできる。
ちなみにラスボス自体は弱いので問題ない。
いずれにせよ、戦闘とアイテム収集しかないゲームから戦闘を放棄することになる。
なお、通常プレイで数百時間、裏技使用で60時間ほどはレベル上げに励めば
敵の攻撃に1ターン耐えうるHPを手に入れられるが、現実的ではないだろう。
歴戦の古強者たちを「*クソゲーのなかにいる*」と硬直させた本作がクソゲーでないなら
一体なにをクソゲーと呼べばよいのか? 
アクワイア、堂々と本年度二本目のノミネートである。

おぞましい亡霊の姿に硬直する我々の前に、修羅の国の魔物も雪の下から姿をあらわした。
PIACCI発売、XBOX360『Piaキャロットへようこそ!!4 〜夏の恋活(バイト)〜』(通称「Pia4」)
夏のバイトを題材にした作品を二月に出すというドジッ子ぶりをみせた本作が
十ヶ月の時を経てその神秘のベールを脱いだのだ。
今作は2009年に発売された18禁PCゲームの移植となる恋愛SLGである。
移植にあたり当然18禁要素を抜いたが、その抜き方が問題であった。
エロシーン前後のやりとりまでごそっと抜いてまったくフォローしなかったため
意味不明な超展開をむかえるシナリオが連発したのだ。
「一緒にゲームをしていたらいつのまにか彼女になっているヒロイン」
「喧嘩して仲直りしたと思ったら一線を越えたことになっていた実妹」
「仲良くしていると思ったらいつのまにか妊娠している従妹」
などなど、あらゆる時間と空間を超越した展開は、プレイヤーの正気を次第に奪っていく。
しかも超能力者のごとく行間を読みまくって理解したところで、そこにあるのは新しいところのなにもない陳腐な三文ドラマだ。
そもそも移植前から「エロ以外は微妙」と言われる作品からエロを抜いたのだ。まともなできのはずがない。ついでにキャラも一人減らされている。

システム面をみても、まずSLGとして成立していない。
仕事を選んでステータスを上げていくのだが、全能力をあげる「デリバリー」だけを毎回選べば
なんの問題もなくすべてがMAXに到達する。
別の仕事を選んだことによって出現するイベントはまったく存在しない。
ゲーム性は皆無で、ただ毎回選ぶ手間が面倒くさいだけだ。
おまけにとろいアニメーションをスキップすることもできずに見せられることになり
テンポを阻害しプレイ時間を無駄にのばす純然たるイライラ要素となっている。
ちなみにステータスはエンディング分岐にのみ影響する。
これが足りないとストーリー上で相手とHしてようが妊娠させてようがラブラブだろうが
なんのフォローもなく強制バッドエンドとなり、「この一ヶ月はなんだったんだろう」と妹にぼやいて終わる。
場合によっては一線を越えた妹相手にもそうのたまう主人公の姿は狂気としか呼びようがない。

ギャルゲーの命であるグラフィックも、原画氏の良さを殺したひらめ顔ヒロインなどによって最悪の印象を与える。
シリーズ初代から登場する人気キャラまでひらめ顔にしてシリーズファンに喧嘩を売り、原画氏の評判を下げることに余念がない。
背景も異次元パースの廊下や謎の首吊り着ぐるみなどが連発してじわじわとこちらの精神を蝕み、
気がつけば陸上競技場という名のサバンナをすら受け入れるようになってしまっている。

もともと異様にながいうえにファイル数が増えるほどさらに長くなるセーブ・ロード時間。
既読が未読に、未読が既読に判定される事態が多発するスキップ機能。
頻発するフリーズと処理オチなど、インターフェイスも底辺で
劣化移植の限界に挑戦しているとしか思えない仕上がりである。
いちいちイラッとする主人公の不快な言動も相まり、とにかく苦痛を感じるプレイ感を提供してくれる。
選評者がサブテキストとして残したプレイ手記はその苦痛の詳細を伝え、狂気に陥っていく様を克明に伝えてくれている。
その量、txtデータで実に130KB。
参考までに青空文庫で無料配布されている太宰治の『人間失格』が150KBである。
この『ゲーム失格』はそれに肉薄する量だ。興味のある者には一読をおススメする。
ゲームを失格したものがクソゲーでないわけがなく
修羅の国からきた化け物がさらに研鑽を重ねた本作はまぎれもないクソゲーである。

かくして年も明け、いよいよこの化け物たちによる熾烈な争いが繰り広げられるかと思われた。
だがKOTYも人生も終わってみなければわからない……
そうもはや恒例行事と化した彼奴が9月から潜んでいたのだ。
タカラトミー発売、Wii『人生ゲーム ハッピーファミリー ご当地ネタ増量仕上げ』(通称「誤当地」)』
人生ゲームシリーズ、まさかというか当然というか三年連続のノミネートとなる。
今作は元となるボードゲーム版同様のテーブルゲーム。つまり多人数対戦のすごろくである。
基本的には前年次点となった『人生ゲーム ハッピーファミリー』のマイナーチェンジ版だ。
「なんだそれなら今年も次点止まりだろう」そう思うのは自然な成り行きだが、ちょっと待って欲しい。
ここで我々は謝罪をせねばならない。
なにに?前年度の検証が不十分であったことにだ。
元々、前作は09年次点であった『人生ゲーム』に比べ、価格こそ六倍だが内容はよくなった。
15ターンで強制終了ではなくなったしイベントも増えた。
よって09年次点の前作には劣り、大賞の器ではない。そう判断されたのだ。
しかし今年、マイナーチェンジ版である「誤当地」を検証するにつれ、前年の不明を認めざるを得なくなってしまったのだ。

一枚しかないマップ、二種類しかないBGMあたりはもう驚くにあたいしない。
異様に少なく、1プレイで何ループもするイベントはひたすら退屈で苦痛であり
ステータス変動ごとにいちいち見せられるアニメーションはテンポを極限にまで悪くする。
たった10人しかいないキャラをプレイヤーから子供からモブにまで使いまわす手抜き感はすさまじく、
駄菓子屋のおばちゃんが少女の姿であったり百歳越えのじいさんがサラリーマン姿であったりなどは失笑するしかない。
ゲーム性としても終盤インフレが激しすぎて前半の意味がまるでなく、あげく強制参加のギャンブルでほとんどの勝負が決まる有様。
しかもゴールしても総資産発表すらない。
資産ではなく幸福度で勝負を決める新モードも用意しておきながら
CPUはひたすら金だけを集めるというお粗末なAIも見逃せない。
最悪なのはゲーム進行の調整なのか、ルーレットの出目が極端に3に偏り、
そのためなのか妨害マスでの被害が三番手四番手に偏るという、パーティーゲームにあってはならない不公平仕様である。

今作によって追加されたご当地イベントによって少しはマシになっているかといえば、それでもイベント数は少なく焼け石に水。
しかもそのご当地イベントも「長野県ではカラオケで絶対に県歌を歌う」
「広島の熊野筆をくしゃみを出すのに使える」「加賀友禅の小物入れは入れ歯いれにピッタリ」など
誤謬・誇張・おちょくりが散見され、郷土愛を逆撫でするような出来となっている。

これらのすべてが合わさり、一人でやってもひたすら退屈、
みんなでやったら空気が冷め切って険悪になりかねないという
およそパーティーゲームとして踏み越えてはならないラインを完全に踏み越えてしまっているのだ。
1プレイには二人でも数時間、四人なら当然もっとかかり、
15ターンで強制的に終わる09年の『人生ゲーム』の方が、時間を無駄にしないし
同じイベントのループと誤当地イベントでイライラしない分マシなんじゃないかとすら囁かれはじめた。
これらの要素が去年から論じられていれば、前年大賞『ラストリベリオン』をもおびやかしていただろう。
我々の不明を恥じるとともに、人生ゲーム、文句なしに三年連続ノミネート達成である。
ちなみにタカラトミーとしては前人未到の五年連続ノミネートとなることもお忘れなく。


かくして7本のノミネート作は出揃った。
当初は不作を嘆かれながら、結果としては08年に匹敵する7作。
しかもいずれもが別ベクトルのクソさを誇るため甲乙つけがたく、審議は難航を極めた。
あまりにもクソの方向性が違うため、比べようがないのだ。
実際、「つまらなさ」「不快さ」「苦痛」「手抜き具合」においてはいずれも劣らぬ
どこに出しても恥ずかしい立派なクソゲーたちである。
しかしKOTY大賞の不名誉を受けるのはたった一つ。
苦渋の決断の末に我々が選んだ大賞は……


『ウィザードリィ 囚われし亡霊の街』である。


まったく同程度の退屈・苦痛・不快を兼ね備えた7作から本作が選ばれた理由は
「加速するクソさ」からくる「無駄にした時間の長さ」である。
人が無駄にしたときに悔しいのはまず「金」そして「時間」であろう。
よって「長時間遊べてしまうクソゲー」という矛盾を孕みかねない存在こそが、もっとも忌むべき存在であろう。
今作のプレイ時間は単純に長い。シナリオ3クリアまでの所要タイムは100時間は余裕。
人によっては200時間300時間も当たり前で、なにせトロフィーには500時間プレイで取得のものもある。
他のゲームはせいぜい数時間から数十時間。文字通り、桁が違うのだ。
「ゲームなんてそもそもなんでも時間の無駄じゃん」
そういう意見もあろう。
しかし今作を含めたすべてのクソゲーに言えることがある。
「つまらないならやめればいいじゃん」「苦痛を味わってまでやるものじゃない」「電源切れ」
そう。クソゲーなんてやめてしまえばそれまでなのだ。
しかしここであらわれる厄介な存在が「遊べてしまうクソゲー」なのだ。
例えば07年に君臨した伝説のクソゲー『四八(仮)』もまた、長時間遊べてしまうクソゲーである。
ご存知の通り、四八は徹頭徹尾、不快さとくだらなさに満ちた最強のクソゲーだ。
しかし当時、2chの攻略スレをはじめ、このゲームを何十時間とプレイし続けるものたちは少なからず存在した。
筆者もそんな人間の一人であり、当時の攻略スレの悪夢は昨日のことのように思いだせる。
救いのないクソだと理解しつつ「それでも……それでもコンプすれば……」と
幾十時間の攻略に明け暮れる彼らを待っていたのは、絶対にコンプリート不可能という惨事であった。
強者たちはそこではじめて心が折れた。完膚なきまでに粉々に砕け散った。時間の無駄を知った。
亡霊において行われたのは極めてそれに近い、いや下手すればそれよりも悪辣な時間の無駄である。
それを可能としたのが「加速するクソさ」だ。

今作もはじめた瞬間からクソではある。とはいえ他のノミネート作より最初はマシと言えるかもしれない。
クソではあるが、しかしユーザーの多くがよく調教されたWizプレイヤーであるゆえか
「ひっでぇなぁ」と苦笑いしながら、それでも黙々とダンジョンに潜っていける程度ではあるのだから。
そしてただでさえひどいバランスがどんどん悪化していくのに対して
まるで我慢大会のように意地になって「まだ……まだいける……」とついていったのだ。
ここでさらに厄介なのはシナリオ分売方式だ。
シナリオ1配信から約一ヵ月後にシナリオ2。そこからさらに約一ヵ月後にシナリオ3と配信されたわけだが
当然クリアしても「じゃあ次のシナリオ配信までレベル上げとアイテム集めでもしとくか」となる。
こうして二ヶ月かけて数十時間あるいは数百時間の苦行すれすれのマゾプレイが行われ
その果てに登場するのがシナリオ3である。
いままでのプレイすべてを嘲笑うような圧倒的なゲームバランスの崩壊。
熱湯コマーシャルのつもりでいたら溶鉱炉だった、とでも言おうか。
「殺す気か!」が「殺す気だ……」になったとき、それでも残るのはマゾですらない。ただの自殺志願者であろう。
もう投げ出したい。でもいままでの膨大なプレイ時間を考えるといまさら投げ出せない……
もはや自分の度量を大きく逸脱した残虐プレイに、どれほどのプレイヤーが涙したことか。
せめてクリアしたい。レアアイテムだけでも手に入れたい。最強武器知りたい。アイテムコンプリートしたい。
そう思って続行したユーザーの前にあらわれるのは、遭・即・滅の正攻法クリア不能のバランス。
苦労して手に入れたレアアイテムが課金配信され「そうか……おれのあの苦労は200円か……」という徒労感。
結局、最後まで店売り武器が最強という脱力感。
どれだけ必死になってもアイテムコンプリート不可という仕様の放置。
ユーザーに対する嫌がらせはシナリオ3にいたって全方位的に完成し
まるでそれまでの苦労すべてを否定され、嘲笑されたような感覚を味わうのだ。
後に残るのはしみじみとした「ああ……本当に……本当に時間を無駄にしたんだな……」
という寂莫たる虚無感だけである。

途中までは遊べたんだからいいじゃないか、という意見もあろう。
だが楽しく遊んでいたわけではない。苦行と思いながらも耐えていたのだ。
その先にあるものを信じて。ギリギリ遊べなくもないから、ついうっかり耐えてしまったのだ。
それが取り返しつかないほどになってから、すべて否定されるのだ。
これほど残酷な仕打ちがあろうか?
素人にとっては最初から危険であり、よく訓練されたファンはより危険という、まさにクソゲー界に出現した底なし沼。
人の住まう領域から虚無へとつづく深い深い縦穴……それが『ウィザードリィ 囚われし亡霊の街』なのだ。
その失った時間のあまりの重さに「あれはクソだったね」と苦い思い出とすることもできず
プレイヤーたちは亡霊のごとき目つきでその後の生を過ごすしかない……
すべてが連鎖してつながる完璧な罠で多数の人生を無駄にさせた亡霊に
謹んで2011年KOTY大賞の不名誉を授けることとする。

今年もまた、多くの怒りと悲しみが生まれた。
一時はクソゲーの出ない幸福な年とまで謳われた本年は、結果的にはクソにまみれた散々なものとなった。
ノミネート作品がすべてシリーズ物という事態のため、信じられるシリーズを失った人たちの悲しみはひとしおであろう。
この悪評よ。人々に届いているか。
怒りよ。メーカーに届いているか。
悲しみと鎮魂をこめ、地に堕ちたシリーズたちの復活を祈った儀式をもって、今年の締めくくりとしたい。
願わくば、儀式の結果に幸あらんことを……



ささやき ― えいしょう ― いのり ― ねんじろ!

総評案26 (Piaキャロットへようこそ!!4)

2011年、クソゲーはなかなか現れなかった。
昨年は年始から居座り続けた「ラストリベリオン」が見事大賞を掻っ攫って行ったが、
今年は秋も半ばに差し掛かるまで「KOTY級」のクソゲーは姿を見せなかったのだ。

ひたすら雑談と「クソゲーとは呼べないモノ」を持ってくる方々の相手だけで48スレも消費し、
「クソゲー乞いの踊り」や「面白雑談ベスト5を決めよう」などというレスも貼られ、
「このまま今年はクソゲー無しで平和に終わるかもしれないな」という意見まで出始めた頃、
黙示録にもあるような七つの災いがKOTYスレに襲いかかったのだ。

最初に現れたのはサイバーフロント製作の『code_18』。
ノベルゲーの最高峰として名高い「Ever17」を擁する「infinity」シリーズの最新作である。
…が、過去作品のメインスタッフは1人として関わっておらず、
本作のプロデューサーは過去作でデバッガーをやっていただけの人物である事が知られると、
本スレでは発売前から葬式が始まっていた。なお、このPは発売と同時に雲隠れする事になる。

シナリオ設定は名作「STEINS;GATE」をパク……もといインスパイアしたような内容になっており、
Dメー……ではなく「code」という未来から送られてくる謎の短文メールを中心に、何度も同じ時間をループしながら物語が展開する。
しかし実際のシナリオ内容はお粗末と表現するしかないようなものであり、
4周目までは基本的に「学園祭と家族不和をダシにしてそれぞれの女の子と仲良くなる」という似通った内容で、ゲームの本筋は全く進展しない。
これだけなら単なる駄〜凡ゲーで済みそうな所であるが、演出面の問題が当ゲームをクソゲーへと押し下げたのだ。

電車を降りたにも関わらず学校から家まで鳴り続ける電車の効果音から始まり、
夜なのに昼の背景(逆も有り)、「真っ暗」と表現される明るい教室、分身する立ち絵など、
ゲーム内世界は製作者の意図とは全く違った意味で時空間が歪んでいる。
何の前触れも無くキャラが自室にワープアウトしてきたり、突然自分が別の空間にワープする事もあるが、
極めつけは、ヒロインとスカイタワーの上で心を通わせるシーンの途中いきなり背景が浅草寺になる場面だ。
シナリオの前後に「浅草寺」という単語やそれを想起させるような文章は一切無く、
しかも主人公たちはワープアウト後もまるでスカイタワーにまだ居るかのような会話を繰り広げる。
演出面のミスは他にも多数あり、その悉くが感動場面を全力で叩き潰しにかかってくる。新手の自虐かと思える程だ。

シナリオの前後不整合や誤字脱字・既読スキップ周りのバグ等、所謂クソADVに必要な要素は「さも当然」と言わんばかりにしっかり完備。
ゲーム終盤、「code」が連続で送られてきて1ボタン押すごとに実績解除される場面ではボタンを連打するとフリーズする事があり、
次世代機の盲点を突いた新たなクソ要素の開拓にも成功している。
また本作は他の普遍的なギャルゲーと違って攻略対象キャラは周回数によって固定であり、
BADルートに突入後セーブしようものなら、もうそのセーブデータではオープニングからプレイしなおすしかない。
同日発売のPSP版にはこれら不親切な仕様やミスについて一部改善点が見られ、
このXbox360版は「携帯機から据置機への、同日発売劣化移植」という前代未聞の快挙を成し遂げた。

クソゲー飢饉で存在意義を失いかけていたKOTYスレは『code_18』の登場によって良くも悪くも息を吹き返し、
本作にはかつて世間を震撼させたクソゲーを彷彿とさせる「c18(しーじゅうはち)」という略称が与えられ、
c18マンという新規レギュラーAAが定着するなど大いに盛り上がった。
まさに、c18とその選評者は2011KOTYスレにとって最大の功労者であったと言えるだろう。


先駆者に続くように11月23日、双子の悪魔が産声を上げた。
2本のうちまずスレへ選評が届けられたのは『街ingメーカー4』
住民との会話や買い物、建物への訪問を挟みながら街づくりをする事によって、
他の都市作成SLGとの差別化を図ってきた『街ingメーカー』シリーズの最新作である。
だが本作ではそれらのアドバンテージを全て捨て去った結果、「劣化シムシティ」と呼ぶのもおこがましい何かになっていたのだ…。

まず会話だが、住民は「寿司に行きます」等どうでもいい独り事を勝手に呟くのみ。
建物に入る事も出来ず、住民にはガン無視され、まるで自分が幽霊になった後の世界を見ているようだ。

設置できる建物の種類も少なく、また電気水道などのインフラや、税率の調整といった概念も無い。
だが建物を設置するにはポイントが必要であり、建物一つあたりの必要ポイント量はすぐにインフレを起こす。
ポイントはゲーム内時間で1日(現実時間で10分)に1度振り込まれるが、中盤以降は1・2件建てるだけで深刻な不足を招くようになり、
次にポイントが振り込まれる時間までプレイヤーはひたすら待ち続けなければいけない。時間加速やスキップと言った機能は無い。
一応、住民の不満を解決すると若干のポイントを得るチャンスがあるのだが、
獲得するための労力と得られるポイント量が全く吊り合っておらず、結局10分待つ方が効率が良いという結論になる。
ゲームクリアまでのプレイ時間は6〜10時間程で、その大半がこうした待ち時間で占められているため、
『待ing』と呼ばれ始めるまでさほど日数はかからなかった。

他の都市作成SLGに有るような要素を徹底的に排除し、BGMも指3本で数え切れる程にまで削り、
建てる・眺める・潰す以外に出来る事を無くしたこの新たなる「ゲー無」は
年始に入り他の候補作が本格的な検証に入り、追加選評や反論が渦巻く中、
唯一「選評でクソ要素について過不足なく伝えられている」と不動の貫録を見せ付け
最後までスレ住人達を畏れ慄かせた姿は頑固一徹、絶対に流れないクソであった。


『待』の選評2が届けられた翌日、双子の片割れもようやくスレに姿を見せた。
古代ローマの剣闘士達が戦いを繰り広げる「剣闘士」シリーズの最新作『グラディエーターバーサス』である。

「10000通り以上の組み合わせ!」と大々的に謳われているキャラメイクだが、プレイヤーはここでいきなり出鼻を挫かれる事になる。
「種族」の違い以外は殆どが「これは別のパーツと一体何が違うんだ…?」と間違い探しをしなければいけないほど微小な差異であり、
しかも髪型などパーツの一部は全種族間で使い回しである。

戦闘も殆ど変化のないステージで、あまり変わり映えのしない敵を、一体誰なのかの説明すら無いNPCの味方と共に
連打かゴリ押しでボコるかボコられるかという程度の内容で戦術性は狭い。
魔法は味方にも当たる仕様なのだが味方の当たり判定だけ異様な広範囲となっており、
「正面の敵に向けて撃ったはずが、何故か背後の味方に直撃した」といった現象が平然と起こりうる。
この味方には貧弱なAIが搭載されているため、最悪を極めた場合
「敵に装備品を提供し、そのままプレイヤーにその敵達を押しつけ、さらに背後からプレイヤーに魔法を当ててくる」という
一体どっちが敵なのかわからないような動きをするのだ。
さらにアップデートで魔法の強化修正が為された事によって味方への「怒り」は「殺意」へと強化修正され、
実際に味方へわざと魔法をぶっ放し、ストレス発散を図るプレイヤーまで現れた。
役立たずの味方に愛想を尽かし、オンラインによる協力プレイに活路を見出そうとしても
オン人数は本スレでの売却報告に反比例するかの如く急速な勢いで過疎化し、気付けばもう誰も残っていなかった…。

本作を語る上で欠かせないのがDLC(ダウンロードコンテンツ)の存在だ。
フルプライス作品なのに無料ネットゲームの課金システムを参考にしたのか、
キャラスロット・アイテムBOX・ステータスやスキルの再設定権等は全て有料である。
また装備品強化の手順を非常に面倒な手順にした上で、強化に必要な素材をガチャ形式で販売した揚句
当該ページで「ライバルに差を付けろ!」とプレイヤー同士の課金合戦を煽り、
プレイヤーから1円でも多く絞り取ろうという気概を露骨に出しすぎたせいなのかどうかは知らないが、
公式HPにウィルスバスターが反応し「オンライン詐欺に関係している兆候があります。」と表示される事件が発生し、
本スレ住人・KOTYスレ住人の両方を爆笑させた。

このような搾取体制から、KOTYスレでは装備にリアルマネーをかけるゲーム…
即ち「剣投資」と呼ばれるようになり、年始までは大賞最有力候補とされていた。
なお、製品版の6割程の事が出来てしまう無料体験版が配布されているので、
2009年の1000円人生に代わる新たな「入門用クソゲー」としてクソゲー初心者達を優しく出迎えてくれるだろう。
ウンコの6割を浴びせかけられた上で「残りの4割は有料です」と言われても誰も金は出さないと思うが。


12月に入りこれら3種のクソゲーから大賞が選ばれるのだろうかと思った矢先、思わぬ大物の気をスレ住人達は感じ取った。
日本人なら知らない人などいない超有名作品が原作の『ドラゴンボール アルティメットブラスト』(UB)が襲来したのである。
先行発売された海外版の評価が散々だった事からDBファン達は怯んだものの、「サイヤ人は戦闘種族だ!なめるなよー!!」という心意気で
PS3版だけで45000本も購入し、そして購入者の多くは「くそったれー!!!!」と怒りのあまり超サイヤ人に変身する事になった…。

原作アニメも「かめはめ波1発で1話終わった」というテンポの悪さが話題にされる事があったが、本作はその点までしっかり再現。
攻撃・移動・防御・必殺技…ありとあらゆる行動の度にQTE(ボタン入力付きムービー)が挿入され、
毎回操作不能時間と、運まかせの2択ジャンケンor連打作業を要求されるのだ。
もちろんジャンケンはほぼ運まかせであり、プレイヤーの技術は一切要求されない。
またQTEの演出は全キャラ共通なので、数十分のプレイで見飽きてしまう。
登場人物を主役脇役関係なく無作為に削除した結果、ブツ切り感の強いストーリーになっており
途中の展開を大胆に端折った挙句「フリーザ様に元気玉当てたらクリリンが爆発した」という超展開も散見される。

「自分だけの超戦士を作り出そう!」と銘打たれたアバターモードは『剣投資』同様パーツ数が非常に少なく、
極薄のストーリーの中で前述のジャンケン戦闘を繰り返すだけの代物であった。
また、作成キャラを強化するにもまた戦闘を何回、何十回と繰り返さねばならず、
修行を受けているのはキャラではなく自分自身なのではないかという錯覚に陥ってしまう。

せめてオンの対人戦なら…!と思いきやこちらも劣悪を極めており、
「相手が途中で切断するとこちらはフリーズし、しかもこっちも切断回数が増えて-100ポイントされる」という
ランクマッチシステムを全否定するかのような仕様になっていた。

PVで「地球のみんな!オラに現金わけてくれ!!」と叫んだ通り世界中のゲームプレイヤーから現金を徴収し、
被害者数は今期KOTYの中でも断トツである。
これだけでは「もうだめだ…(シリーズは)おしまいだ……」と嘆くだけのゲームだったが、後日「キャラが分裂するバグ」が発見され、
最後の最後でちょっとだけ微笑ましい一面を見せてくれた。


「これで今年発売のクソゲーは全部だな」と油断しきっていたスレ住人が「*おおっと*」と驚きの声をあげたのは年も暮れようとしていた頃。
『ウィザードリィ 囚われし亡霊の街』という年始から潜んでいたトラップに引っかかってしまったのである。
ウィザードリィと言えば超高難易度RPGの代名詞とも呼べる物であり、
それを購入するプレイヤーもまたシリーズに慣らされた歴戦の勇士揃いであったため、
「wizはこういうゲームだから」と言って購入者達は自らテレポータの中に消えて行ったのだ。

本作は2000円でシナリオ1が、追加800円ずつでシナリオ2・3をプレイできる流れになっているが、
まずシナリオ1・2の時点で「これはおかしい…」というプレイヤーからの*ささやき*が聞こえ始めていた。
ダンジョンゲーなのにレバーを操作して扉を開ける以外はトラップくらいしか見るべきものが無く、しかも頻繁に処理落ちするのでまともに歩く事さえできない。
「絶対に入手できないアイテム」を紛れ込ませてアイテムリストをコンプ不可にしたり、
トレジャーハンター系ゲームでもあるのに最強装備が店売り品だったりと、wizシリーズに対する認識を疑う様な点が多々ある。
セーブができなくなる・ダンジョンが描画されず画面が真っ黒になる等のバグにはさすがにプレイヤーも「なんとかしろよ!」と*えいしょう*し、
一応セーブバグについては発生頻度が下がる修正が施されたものの、公式はこのバグの存在を一切認めようとしなかった。

だが、本作においてこれらはまだ些細な問題だった。
「新しいwizを楽しみたい!」というプレイヤーの*いのり*を粉砕したのは、「史上最悪」の戦闘バランスである。
もともとウィザードリィシリーズは「強敵とのスリリングな戦い」が持ち味であり、また、それが高難易度たらしめていたのだが、
本作は「ただ敵が強ければいいんだろ?」と言わんばかりに調整を怠り、
プレイヤーキャラはいくらレベルをあげてもHP以外のステータスは雀の涙程しか上昇しないのに対し、
敵のステータスはこちらのレベルに合わせてひたすら上昇の一途を辿る為「レベルを上げたら物理で殴られる」ゲームと化していた。
ドラクエで例えるなら「アリアハン周辺でさまようよろいが出現するようなもの」と言えば、どれだけ当ゲームのバランスがブッ壊れているかおわかりいただけるだろうか。
さらにシナリオ3でのレベルキャップ解放と共に敵ステータスのインフレ率は跳ね上がり、「敵と会ったら即全滅」が当たり前になった。

1キャラあたり100時間(裏技で10時間)かけて6人居る自キャラのレベルを全員分カンストさせても「即全壊」が「即半壊」になる程度で、
エンカウント阻止アイテムがDLCとして販売されているのを見て「まさかこの敵の強さは…」と疑念を持ったプレイヤーも多く、
これを使用しない攻略法は「敵と出会わないように*ねんじろ!*」「数歩歩いたらセーブ・ロードを繰り返せ!」と言う他無い。
苦労して辿り着いた先に居るラスボスはアッサリ倒せてしまう弱さであり、プレイヤーはクリアの達成感すら与えられなかった。

シナリオ2・3はそれぞれ1ヶ月ずつ空けて配信されたため
シナリオ1で殺され、シナリオ2で*はいになった*プレイヤー達もめげずに次シナリオ配信までの間レベル上げやアイテム収集に時間を注いだが、
ついにシナリオ3で*まいそうされました*と表示されてしまった。

「500時間プレイのトロフィーがある」「キャラの強化に600時間」とプレイヤー達を*くそのなかにいる*状態にした時間では本作が史上最長であり、
ゴールの見えない「クソのダンジョン」に迷い込んだプレイヤーの多くがお陀仏となった。
DLソフトなので実態が存在せず、まるで心霊写真のようにしばらく後になってから発見された点からも、
本作はあらゆる意味で「亡霊」な作品だったと言えるだろう。


そして見慣れたアイツが恥も外聞も無く再びやってきた。
『人生ゲーム ハッピーファミリー ご当地ネタ増量仕上げ』である。

このゲームについて紹介する前に、まず昨年の「ハッピーファミリー」の評価に誤りがあった点について報告しよう。
前作は「ちょっとの追加要素に過大な値上げをして販売した」という点がクローズアップされていたが、
一応追加要素そのものはプラスである点、さらにその前年の1000円人生より内容が増えている点も考慮され、ロクに検証も行われないまま次点扱いとなっていた。
しかし本格的な検証の結果これは過小評価であり、前年王者と互角の戦いができる兵であった事が判明したのだ。

タイトルの通り、本作の前作からの変更点は「47都道府県のご当地イベントが追加された」という以外に一切無い。
相変わらず選べるキャラはデフォルトの10人+Miiであり、NPCや子供のグラフィックも使い回し。
ゲーム中に流れるBGMは全2種類で、しかも片方は1000円人生の使い回し。被りまくるイベントもそのまんま。
事あるごとに1〜4歩しか進めないミニマップに移動して進行を遅れさせ、
幸福度を競うモードでもお金しか集めようとしないCPUもまったく変更や改善は見られない。
終盤の「賭け」で激烈にインフレするので道中のマスは殆ど意味を見出せず、
ゲームクリア後も順位が発表されるだけで最終資産は表示されない。

追加された「ご当地イベント」も、「せっかくだから●●県名物の○○を食べた!おいし〜い!」という種類の物が目立ち、
ご当地の名産品を蔑ろに扱ったり、酷い時には「長野県民は必ずカラオケで県民歌を歌う」と嘘情報まで平然と収録している。
地域や内容について間違い・勘違いが含まれる物もあり、このまったくプラスになっていない追加要素はスレ住人を唸らせ、「誤当地」という呼び名が定着した。

だがタカラトミーがせっかく汚名挽回を狙って再販売したものだ、これだけではあるまい。
スレ住人がそう思い込んで検証しているうちに、「ルーレットの出目が偏っている」事が発覚した。
1〜8まであるルーレットはやたら3ばかりが出る仕様であると証明され、
プレイヤーは足枷と足手纏いが付いた状態でクソの沼地を歩かされていたことが判明したのだ。
この乱数の偏りはランダムでキャラの1人を巻き添えにする「おじゃましマス」にも適用されているようで、3番目(と4番目)のキャラが割を食う結果となっている。
「人生は産まれた時からある程度決まっている」という製作者からのメッセージなのだろうか…。

非常につまらなく、進行も遅く、さらには特定のプレイヤーが不利なこれらの仕様のせいか
「このゲームが原因で夫婦喧嘩になった」「一緒にプレイした友達や同僚の仲がギスギスしだした」というレビューもあり、
一体誰がこのゲームで「ハッピー」になったのかと考えると首を傾げざるを得ない。
1人でプレイすると100万のクソパワーだが、複数人でプレイすると400万にも1200万にもなるというウォーズマンのような創意工夫は、
「俺達の人生はタカラトミー製じゃないだけマシだな」と、多くのスレ住人達の希望の星となった。
5年連続6本目のノミネートとなるタカラトミー。盤外戦になるが同社はiphoneでも人生ゲームを配信しており、こちらの評価も最低レベルだ。
自社ブランドを全力で破壊する理由は一体何なのだろうか。


さて、彩り豊かでそれぞれベクトルの違うクソゲーを6本紹介してきたところで、最後の7本目…今年の大賞を発表しよう。
激動の2011年、ゲーム最底辺の座に就いたのは

『Piaキャロットへようこそ!!4 〜夏の恋活(バイト)〜』

このソフトを大賞として掲げた理由は「1本のパッケージに内包された、糞の種類の豊富さ」による。
一言に「糞要素」と言っても、その内容は様々だ。
例えば同じ事の繰り返しによる作業感だったり、純粋なつまらなさ・内容の薄さだったり、理不尽さだったり…
本作にはそれら全てのクソ要素がギッシリと詰め込まれているのだ。

本作は修羅の国で「クソエロゲー」という評価だった作品から「エロ」を抜き取ってXbox360へ移植した代物である。
移植前の作品が某エロゲーレビューサイトで「戦極姫」と同レベルの点数を叩きだしていた辺りからも、そのポテンシャルが窺えるだろう。
大体の移植エロゲーはエロを抜いた分、追加シナリオ・追加キャラ・フォローのための文章など入れて辻褄を合せるものだが
本作は抜き取られた部分に関してほぼ完全にノータッチ。
追加キャラどころか攻略ルートを1つ削除し、さらにPC版に無かった処理落ち・フリーズバグを搭載。
過去に携帯版KOTYでクソゲーを完全移植して大賞に輝いた「めざせ!甲子園」という作品があったが、
本作は「クソゲーを劣化移植」するという完璧な意味での誰得商品である。

では、具体的な内容を紹介しよう。まずはシステムから。
「バイトをしてパラメータを上げたり、移動やキャラ選択で会話しに行く」SLGパートと
「実際に女の子と会話をして、選択肢を決めながらストーリーを追う」ADVパートがあるが、
SLGパートがADVパートを殺しにかかって…と言うより両方とも最初から死んでいるような物なのでオーバーキルになっている。
「移動とキャラ選択」は合わせて1日に計3回行えるが、それを1キャラにつきゲーム内時間で約1ヶ月間選択し続けなければならない。
ルート確定前はともかくとして、ルート確定後もひたすらこの作業である。
「移動」出来る場所もゲーム開始からオールクリアまで一切イベントが発生しないダミーが半分を占め、
慣れないうちはキャラの判別すら困難なミニアイコンや、異常なモッサリ感の操作系統も相まって
誤った場所・キャラを選んでしまうのは日常茶飯事。
挙句ロードし直そうにもやけにロード画面の読み込みが遅く、しかもセーブデータが増えるほどに待ち時間が増加し、最大で20〜30秒程固まる始末。
なお、プレイ中にセーブデータを整理・削除する手段は存在しない。

パラメータは「不要」「不要未満。邪魔」という声の通り本編シナリオのイベントには一切関与しておらず、
パラメータが足りない場合、攻略対象と恋人関係になっていようが肉体関係を持っていようが主人公は全てを忘却したかのように
「何しに来たかわからん一ヶ月だった。仕事してた事しか記憶にねぇや(要約)」と発言し、問答無用でBADENDへと直行する。
一応、仕事として「デリバリー」を選択し続けていれば仕事関係のパラメータは満遍なく上がり簡単にMAXになるのだが、
キャラによっては「決められた日に決められた仕事を選択しないとBADEND」というイベントがノーヒントで配置されている場合もあるため油断はできない。
攻略サイトでも見ない限りはセーブとロードを繰り返しつつ、イベントが発生しないかどうかを確かめる作業を繰り返さなければならないのだ。
SLGパートは単なる「総プレイ時間の引き伸ばし」以外の何物でもなく、完全に無価値であると言わざるを得ない。
ADV側もとりあえず誤字脱字・既読未読判定の不具合・オートモードのバグなど、クソADVに必要な要素は全て揃っている。

次に絵。
元々4:3の比率で描かれていた絵の上下をカットして無理矢理16:9の比率に合わせているので、絵についても劣化移植と言える。
立ち絵についても「ヒラメ顔」と称される一部キャラが画面内を縦横無尽に動き回るので
メッセーウィンドウから上は見たくなくなる。
背景も悉く低クオリティであり、それらのほぼ全てが遠近も比率も狂っているため、騙し絵の世界に迷い込んだのかと錯覚する事がある。
また、予算をケチったのか拡大等を駆使して使い回されており、「寮の屋上の背景」を「公園の湖の背景」に使い回すという無茶までやってのけた。
中でも「陸上競技場の背景」はそういった作画技術以前の問題で「サバンナ」と表現され、スレ住人達の笑いを大いに誘った。
一枚絵のイベントCGの方はPC版の公式サイトで7割方が無料公開されており、
そもそも(後述するが)感動したり思い出に残ったりするようなシーンが無いためわざわざ見返す価値すら無い。どうでもいいが回想モードも無い。
一応移植に伴い何枚か追加CGもあったが、それらの殆どは立ち絵と大して変わらないような代物だったり、背景を使い回していたりとやる気が感じられない。

最後に肝心要のシナリオ。
読み物としてのゲームで楽しさを求める場合「感情移入」が大きな要素となるだろう。
殊に恋愛ゲームにおいては、プレイヤーは主人公となって選択肢で意思決定し、2次元のキャラ達との疑似恋愛をする事によってより大きな楽しみや喜びを得られるものだ。
だが本作の主人公はあるプレイヤーから「金髪の丘サーファー」と例えられる程のウザさをシナリオ中で発揮しており、
謎の口癖や支離滅裂な思考回路で感情移入を阻害し、挙句ストーカー行為まで平然と行って終始プレイヤーを苦しめ続け、
惑星アトリーム出身の某氏とタメを張るウザさは「死ね」ではなくより能動的な「殺したい」という感情へと発展した。
「主人公は元陸上選手で、怪我が元で走れなくなったけどもう一度陸上に復帰したい」というメインテーマは存在するのだが
走る走る言いながら結局走らなかったり、走ったとしても陸上には復帰せずそのまま投げっぱなしになるシナリオが殆どな一方で
泳ぎに関しては水泳選手並の持久力と力強さを見せるシーンが意味無く存在する。「丘サーファー」ではなく「海ランナー」とでも呼ぶべきか。

主人公が如何に最低の屑でもヒロインのシナリオが良ければ許されると思いきや、決してそんな事は無かった。
前述したがエロを抜いた分に対する補填・フォロー等が無いままに「男女の関係になった」という事実だけが残るシナリオのため、
何の描写も説明も無かったくせにいわゆる「事後の会話」をする主人公とヒロインを見ていると謎のNTR感を覚える事ができる。
エロ以外でも「時系列」や「伏線」をさも当然と言わんばかりにすっ飛ばしてプレイヤー置いてけぼりの超展開を見せたかと思えば、
今度は記憶障害かと言わんばかりに以前の展開を忘却する事も。
時系列の方は何の説明も無く巻き戻っていることすらあり、
そこまでの流れをしっかり読み、記憶していた者は混乱の淵へと叩きこまれる。

個別のルートも「駄作」「酷い」「酷過ぎる」の3種類でしか評価できないものであり、
キャラ付けも「適当に萌えそうな語尾」と「適当に萌えそうな設定」を適当に混ぜたようなものばかり。
しかも設定の方は一度使ったらもう二度とシナリオ中で活かされない物が大半だ。
イベント内容も「湖で溺れている子供を助けた→抱いて!」
「トラックに轢かれそうになっている父親を助けたら娘との交際を許してくれた」など既視感バリバリの内容に加え、
「格ゲーしてたら何故か彼女ヅラされるようになった」「告白とか無かったのに気付いたらもう男女の関係になってるぽい」と
今までに見た事も無いようなクソシナリオも完備。特に後者は(プレイヤーの)身に覚えの無い子供まで宿す。
基本的には頭の残念なキャラ達がどうでもいい茶番を繰り返すだけの展開で1ルート終わるごとにうんざりした気分になり、
「読めば読むほど粗が出るので読まない方が妥当」「一番萌えられたのは購入前に公式サイトのキャラ紹介を見てる時だった」と存在価値をも否定されるに至った。
「ADV+SLGゲーム」なのに「ADV部分もSLG部分も不要」とされた本作は、「ギャルゲーとしてゲー無」という新たな礎をここに打ち立てたのだ。

ここまでに書いたとおり、

c18の「クソシナリオ・クソ演出・クソインターフェース・劣化移植」
待の「ゲー無」
投資の「殺意」
UBの「作業感・キャラ削除・イベントぶつ切り」
亡霊の「理不尽なゲームオーバー」
誤当地の「前作もクソゲーだったのに再販売」
そして、全てのゲームから露骨に感じられる「製作者の手抜き」

これら全てを内包し、さらに様々な種類のクソを散りばめた本作は「クソの百味ビーンズ」と呼ぶべきだろう。
細かい事を気にせず適当にプレイ…つまり手に取って臭いを嗅ぐ程度であればクソさはわかりづらいが、
いざ本格的に楽しんでみようと口に入れ、さらに咀嚼・吟味すると最大級の破壊力を発揮する上級者向けのクソゲーであり、
「完食」はかの四八(仮)コンプ時の負担でさえ凌ぐ物であった。
「クソシナリオ」という大枠でさえもルートやイベントの度に「これは人糞の中でも血便だな」「こっちは下痢便か」と言ったような
それぞれカテゴリの違った味を堪能する事が出来、今までのクソゲーにあった「浴びせられるクソ」ではなく「味わうクソ」という新たな概念をスレにもたらした。



今年は7本ものクソゲーが誕生したが、歴代KOTY大賞のように一発で「これが大賞だな!」と万人を納得させられるような要素に欠け、
「どれが最もクソか?」という審議は難航を極めた。
だがこれは決して今年度のクソゲーが過去と比べてクソ度が低いという意味ではない。
過去を「クソゲー!!w」とするならば今年度は「クソゲー……」と評するような作品ばかりであり、
ネタにして笑う事すらできず、「クソゲーハンターですら跨いで通る」ような救いようの無いクソゲーが跳梁跋扈する年であったのだ。

だが初心に帰って初期KOTYの「クソゲーを掴んでしまった人たちの怒りや悲しみを笑いに昇華する」という観念を思い出せば、
各購入者の鎮魂に全てのエネルギーを注ぐのがこのスレの役割であり、また、こんな不謹慎な祭典を大真面目に続けている我々の責務ではないだろうか?
クソゲーの臭いを察知したら、なけなしの銭を支払って自らも被害者の側へと周り、しかし決して挫けることなく、
他の被害者を笑顔にするのがこのスレに常駐するクソゲーハンター達であり、今年も充分にその役目を果たしたと言えるだろう。

私は忘れない。
予約購入の上、ネタバレ防止のために外部情報を一切断って四八(仮)をプレイし、無理に「良ゲー」と思いこもうとしていたあの時の事を。
私は忘れない。
四八(仮)がKOTY2007に選ばれたと聞いて、精神救済(ココロスクワレ)た気持ちになったあの時の事を。
絶対に忘れない。
それまでの3年の間に買ったゲーム全部がKOTY入りを果たしてるのを見て鼻水噴いた瞬間を。

今年のクソゲーはその全てが「過去に人気を博したシリーズの最新作」であり、それに胡坐をかいて手を抜き、努力を怠った結果が御覧の有様であった。
シリーズファンが激怒し、滂沱し、今後のシリーズ展開に付いて絶望する姿を尻眼に
誠意ある対応もせず、無視・責任転嫁・雲隠れと本当に社会人であるのか疑ってしまうような点も見られた。
二度とこのようなクソゲーが発売されない事を願い、全ての開発・販売会社に以下の言葉を贈ることでKOTY2011を締めくくろうと思う。


「恋活(バイト)感覚でゲーム作らないでください。」

総評案27 (Wizardry 囚われし亡霊の街)

2011年のクソゲーオブザイヤーは、上半期のうちにノミネートが受理された作品が現れず
クソゲー日照りが危惧されましたが、終わってみれば、発売日順に
『Wizardry 囚われし亡霊の街』
『Piaキャロットへようこそ!!4 〜夏の恋活〜』
『人生ゲーム ハッピーファミリー ご当地ネタ増量仕上げ』
『code_18』
『グラディエーターバーサス』
『街ingメーカー4』
『ドラゴンボール アルティメットブラスト』
の7作品がノミネートと、予期せぬ豊穣に恵まれました。
この総評で、各ノミネート作品を振り返りつつ、大賞を発表したいと思います。
長くなりますが、最後までお付き合いくださいませ。

1.『Wizardry 囚われし亡霊の街』(2011年1月27日発売、発売元:アクワイア)
Wizardryはコンピュータ・ロールプレイングゲームの古典的名作で、米国のSir-Techから発売された本家シリーズのほか、
版権を得て日本で製作された、和製Wizardryと呼ぶべき外伝的作品も多数派生しました。
『Wizardry 囚われし亡霊の街』は、アクワイアを含む数社が立ち上げた【Wizardry Renaissance】のラインナップ作品に当たり、
3つのシナリオが順次ダウンロード販売の形で発売されました。
発売当初のセーブ不能バグも修正パッチで緩和され、良く訓練されたWizardryファン達は溢れんばかりの愛を原動力に、
少々の処理落ちやレスポンスの悪さをものともせずにシナリオを進めていきました。
実は、
戦闘はダメージが極度のインフレを起こしバランス崩壊、
最強武器はあらかじめ店で売られていて探し甲斐が無い、
ダンジョンはスイッチでシャッターを開けて進むの繰り返しで極めて単調、
と、シナリオ1からすでに惨憺たる有様でしたが、まだ、クリアすれば良い思い出に変えることができました。
しかし、シナリオ3の雑魚敵達は歴戦の勇者を尽く葬り去る火力を、愛でも乗り越えられない絶望を見せ付けました。
プレイヤー達は、敵が落とすかDLCで買うかして雑魚敵との遭遇を回避するアイテムを手に入れ、奥の弱っちいボスを粉砕するか、
あるいは数百時間、裏技で短縮しても数十時間かかるレベル上げをして抵抗を試みるかしました。
戦闘バランスはいつしか「完全崩壊」とささやかれるようになり、ノミネートと相成りました。

2.『Piaキャロットへようこそ!!4 〜夏の恋活〜』(2011年2月24日発売、発売元:PIACCI)
Piaキャロットへようこそ!!はMS-DOSの時代より続く18禁PCゲームのシリーズで、
PC版の他、コンシューマーゲーム機への移植や、アニメなどへの進出も果たしています。
『Piaキャロットへようこそ!!4 〜夏の恋活〜』は2009年に発売されたPC版からの移植版です。
PC版の時点で既に18禁要素以外は散々な評価を受けていましたが、
コンシューマー移植の際に18禁要素はすっかり削除されてしまいました。
残ったのは、
削除されたシーンの前後が繋がらなくなってしまったシナリオ、
中に木が生えていて「サバンナ」と形容する方がふさわしい陸上競技場などの狂ったグラフィック、
デリバリーさえ選択していれば事が足り、存在する意味が無いSLGパート、
と、散々な部分ばかり。とどめに、
セーブデータが増えると呼び出しに数十秒かかるようになるセーブ・ロード画面
まで加わり、存在意義を全く失ってノミネートされました。
この総評では、本作のシナリオへの言及は避けますが、興味のある方は、
ある勇者の手で書かれスレッドに投下された130キロバイト超のプレイ記がありますので一読してみると良いでしょう。

3.『人生ゲーム ハッピーファミリー ご当地ネタ増量仕上げ』(2011年9月1日発売、発売元:タカラトミー)
人生ゲームは米国のMilton Bradleyから発売された後、日本で人気を得てシリーズ化され、以後約50年間に渡り愛され続けるボードゲームのロングセラーです。
ボードゲーム版の他、コンピューターゲーム版の人生ゲームも多数発売されていますが、出来の良いものもあれば悪いものもあり、
近年では残念ながら2009年『人生ゲーム』(WiiWare版)、2010年『人生ゲーム ハッピーファミリー』と、2本立て続けにクソゲーオブザイヤーにノミネートされ、ともに次点となっています。
『人生ゲーム ハッピーファミリー ご当地ネタ増量仕上げ』はパッケージ裏の記載にあるとおり『人生ゲーム ハッピーファミリー』のバージョンアップ版になります。
バージョンアップと言えば聞こえが良いのですが、その実、人生ゲームのイベントが発生すべきマスにご当地ネタを無理に詰め込んだせいで、人生ゲームなのかご当地物ボードゲームなのかはっきりしない仕上がりです。
前作の悪いところに全く手を入れずにフルプライスで発売された本作も先の2作品に続きノミネートされ、
人生ゲームはもはやクソゲーオブザイヤーの風物詩となった感すらあります。
旧機種の作品にあったカードやミニゲームを廃し、自分の手番を待ってルーレットを回すばかりのゲームとなっているものの、
ルーレットの出目は偏り、
総資産を競うわくわくモードでは積み上げてきた人生より最後の賭けルーレットが物を言い、
ハピネスを競うプライスレスモードではCPUが目的を無視して金稼ぎに走り、
ご当地ネタには誤情報が散見され、
と、皆で盛り上がるどころではなく、プレイヤーの人間関係にひびが入ったとの報告すら寄せられる有様で、ノミネートも納得の出来です。

4.『code_18』(2011年9月29日発売、発売元:サイバーフロント)
ファミコンの性能限界に挑戦したシューティングゲーム『サマーカーニバル'92 烈火』(発売元:ナグザット)や、
コンピューターゲーム版人生ゲームの中でも評価の高い『DX人生ゲームII』(発売元」:タカラ)など、開発会社としては知る人ぞ知るメーカーであり、
会社と同名のブランドを下げて『Ever17』を頂点とするinfinityシリーズを発売し、ギャルゲーマーの間で高い評価を受けたメーカーでもあった
キッド(KID)という会社がありました。会社のほうは残念ながら潰れてしまいましたが、ブランドのみサイバーフロントに受け継がれ現在に至ります。
『code_18』は、サイバーフロントにブランドが移ったのちに、infinityシリーズの新作として開発・発売された作品です。
以前のシリーズ作品に携わっていたスタッフがほとんど抜け、残ったのはプロデューサーに据えられた元デバッガー程度、という体制のもと、
メッセージ送りや立ち絵表示のレスポンスは悪く、文章は誤字脱字脱文の数々、さらには人物名やテキストがウインドウからはみ出すなど、
かつての名シリーズの面影を感じさせない不出来なシステムが生み出されました。
5人いるヒロインに対応した5ルートがあるかと思いきや、決まった順に各ヒロインのルートを辿る実質一本道で、
何人めからでも、バッドエンドになったら、セーブデータが無い限り一人めのヒロインからやりなおし。
それでも、シナリオや演出が良ければ救われるのですが、
一人めのヒロインの両親が和解するシーンで、ヒロインの父親が立ち絵の目のあたりから見切れていたり、
三人目のヒロインとスカイタワーの展望台から街を眺めるシーンで突如、背景が浅草寺になったり、
四人目のヒロインとキスするシーンで、邪魔な眼鏡を外した旨の文の後、眼鏡をしたままのイベント絵で何回もキスしたり、
などと、おかしみすら感じさせるおかしさで感動を台無しにし、失笑と共にノミネートされました。
特にスカイタワーのシーンは専用のAAが作られるなど、スレッドを大いに賑わしました。

5.『グラディエーターバーサス』(2011年11月23日発売、発売元:アクワイア)
ここで述べるグラディエーターは、アカデミー作品賞を受賞した『グラディエーター』とは直接の関係はありません。
古代ローマ帝国の剣闘士をモチーフとした、PS2時代の名作『グラディエーター ロード トゥ フリーダム』より続くシリーズのことです。
『グラディエーターバーサス』は、シリーズのなれの果てで、ゲーム誌『電撃Playstation』において事実上の最低評価Dを獲得した作品です。
攻撃を寸前で回避するドッジ、攻撃を弾き敵の体勢を崩すパリィといった、過去作を名作たらしめた微妙なアクションがことごとく排除され、
魔法などグラディエーターの世界を無視した要素が導入された末に、味方からの魔法誤射に怯えつつ攻撃を連打する大味な作品に変貌しました。
加えて、
少なめに設定されたキャラクター作成数限界やアイテム所持数限界、
宝石アイテムと金を多量に要求される武器防具強化、
宝石アイテムを失う危険が常に付きまとう宝石合成、
通常手に入るはずの方法で入手できないラスボスの装備、
など、
仕様のいたらなさ、まずさを感じる部分を補うように、ことごとく有料のDLCが用意されていて、課金のためにわざと手を抜いたと疑われても仕方の無い出来です。
ウイルスバスターが「オンライン詐欺に関係している兆候があります。」と警鐘を鳴らしたエピソードも、ノミネートに華を添えています。

6.『街ingメーカー4』(2011年11月23日発売、発売元:ディースリー・パブリッシャー)
街ingメーカー(まっちんぐめーかー)は、プレイヤーが開発した街で、個性ある住民とのコミュニケーションをとることによって街を発展させてゆくシステムに特長があったシミュレーションゲームです。
『街ingメーカー4』では上記の特長が省かれてしまい、住民たちは定型メッセージをつぶやく無個性な通行人に成り下がりました。
結果、建物を設置して眺めるだけのゲームとなったうえ、建物設置に必要なポイントも枯渇が早く、
プレイ時間の大半が、ゲーム内の一日が終わってポイントが再補充されるまでの空虚な待ち時間になりました。
実在企業とのタイアップテナントは多いのですが、通常の建物の種類が妙に少なく、
例えば学校の場合、小中高校の区別など一切無く、総合学園という建物でひとくくりされてしまったりと、バリエーションに欠けます。
選評で十二分に説明しつくせる乏しい内容で、シリーズ経験の有無を問わずプレイヤーに安定した虚無感を与えノミネートされました。
記述は薄くなりましたが、語るところが無いのが最大の問題と言えましょう。

7.『ドラゴンボール アルティメットブラスト』(2011年12月8日発売、発売元:バンダイナムコゲームス)
『ドラゴンボール』は、単行本の発行部数が全世界で3億5000万部を突破し、今なお世界有数の人気を誇る、鳥山明の漫画です。
アニメ化などメディアミックスも盛んに行われ、原作漫画の他、アニメの設定も取り入れたゲームも多数製作されています。
.『ドラゴンボール アルティメットブラスト』は、数ある『ドラゴンボール』ゲームのうち、着実に進化を遂げ評価を上げてきた
『ドラゴンボール レイジングブラスト2』の次回作に当たる作品でしたが、敷居を低くする方向に大幅な進化を遂げてしまった結果、
頻繁に挿入されるQTEを中心とする過度に簡略化されたシステムに豹変しました。
ことあるごとにQTEが挿入されてゲームの流れを断ち、全キャラクター共通のQTE演出のせいで、キャラクターの個性まで簡略化されてしまいました。
キャラクターは個性だけではなく、頭数まで省略され、
ギニュー特戦隊にグルドだけいなかったり、
クウラは出ないのにメタルクウラがボスとしていきなり登場したり、
悟天や少年トランクスが出てこなかったり、
と、抜けが目立つ上、登場しないキャラクターが活躍するシーンがカットされてストーリーモードも歯抜け状態になり、
ガッカリの一言では済まされない一線を踏み越えてノミネートに至りました。

今回、大賞の選考に当たり、単純な方法を採用しました。「総評執筆者が全ノミネート作品をプレイして比較する」という方法です。
その結果、『Wizardry 囚われし亡霊の街』を大賞に選びました。
実は、当総評の執筆段階において、総評執筆者のプレイ進行度はシナリオ1クリアの段階に留まっているのですが、この時点で既に
・単調なダンジョン内を、スイッチを捜して彷徨う膨大かつ空虚な探索時間
・高威力の攻撃を連打して勝負がつく、単調かつバランスの崩壊した戦闘
・ストレスの原因となる、妙に遅いレスポンスや使いづらいUI
・完治していないセーブ不能バグや、基本的に静止画であるにも関わらず処理落ちするダンジョン
といった面で十分に、他のノミネート作品と互角以上に勝負できる実力を見せており、
戦闘バランスが完全崩壊する、とされるシナリオ3の検証を待たずして大賞を決定しました。
選考は難航しませんでした。今回のノミネート作品はすべて横並びのように感じられましたが、
いざ蓋を開けてみれば化け物が一体紛れ込んでいただけのことでした。

2011年のクソゲーオブザイヤーは、ノミネートされた7作品全てがシリーズタイトルと、完全新規タイトルのノミネートがない年になりました。
シリーズ化されている作品はもともと人気の出た作品であり、人気を下支えする面白さを見込むことの出来る、謂わば安牌のはずでした。
完全新規タイトルが減少する一方でシリーズタイトルのクソゲー化が相次ぐ現状に、ゲーム業界の暗い未来が案ぜられてなりません。

ここまで、長い文章にお付き合いいただきありがとうございました。気の利いた締めの言葉は思いつけませんので、
代わりにお気に入りの戯曲の台詞を改変して締めとしたいと思います。
"Kuso-ges everywhere-now and to come-I absolve you all. Amen!"
(「すべてのクソゲーよ、私はお前たちすべてを赦そう、アーメン」)