2009年 総評

2009年 総評案1

2009年 総評案2

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このページは、2009年度KOTY総評の案を集めるページです。総評の審議に役立てば幸いです。
書き方テンプレートは編集ページにコメントアウトで掲載します。

総評案6 人生ゲーム大賞Ver

世界に不況の風が吹き続ける2009年。
世が荒れればクソゲーが生まれる。
今年も2007年の四八(仮)や2008年のメジャー2に肩を並べる何かが来るのではないか、
年末の魔物があるのではないかという期待をもって幕を開ける。

その期待は開幕してわずか二ヶ月後に確信へと変わる。
3月3日。『人生ゲーム(Wiiwere版)』(タカラトミー)の登場だ。
元々はすでに発売している『人生ゲームDX』の簡易版という位置づけだが、
機能を削った結果、ゲームとして全く機能しなくなってしまったゲーム(?)だ。

人生を追体験するはずのゲームなのに結婚も出産もなく同じ所を回り続ける
マップが1つしかなく、イベントはテキストが流れるだけ。
何処に止まってもお金が増減するだけで相手を妨害したり、
自分が酷い目に遭うマスもないので一緒に遊んでいる人間と盛り上がることもできない。
プレイヤーができることは「ルーレットを回す」「ルーレットの替わりに滅多に手に入らないカードで指定マス進む」
「分岐点でどっちに進んでも大して変わらないルートを選ぶ」の3つだけ。

17秒ほどでループするBGMと相まって数ターンもすれば飽きる。
15ターン制限があるのに5ターンもすれば飽きるという内容の薄さで、
あとは制限まで、プレイヤーはルーレットを回すだけの作業者となる。
そのゲーム性の無さはプレイヤーに「操作しないと動かない環境ソフト」と言わしめた。
そしてWiiwereという新しい流通方式は、このゲームを売ることも安く買いたたくことも
フリスビーとして遊ぶことも許さないという、完全な「ゲー無」として登場したのだ。

続いて31日。同じくフリスビーとして遊べないWiiware用ゲーム
『Let’s 全力ヒッチハイク!!!!!!!!!』(日本一ソフトウェア)が乗り込んできた。
「中華料理店で食事をしていると 何の脈絡もなく恐竜とUFOが現れ暴れ出したので
逃げ出したら、その料理店の店主が包丁を持って追いかけてきた。
店主からヒッチハイクして逃げよう」という、全裸で突っ込み待ちなストーリー。
「マジハンパネェ」「冗談はよし子ちゃん」「事実は小説よりも木なり」と、
センスのないオヤジギャグが、繰り返される。
もちろんパターン数は多くないので延々同じギャグを繰り返されてイラッと来る安心設計。
ギャグのネタ以外も「!」が連打されたり語尾が「ナリ」だったりと無理して笑わそうと
している寒さがWiiリモコンを持つ手を震わせる。
キャラのデザインもすさまじく適当で、「パンを豆腐に変えたリアルアンパンマン」と
表現する人間まで居たくらいの出来。
その上、当然のようにWiiリモコンの認識も悪く、話も面白くない。
イライラが蓄積され、Wiiリモコンを投げ捨てたくなる出来映えだった。

Wiiの猛攻はまだまだ続く。
5月28日には『黄金の絆』(ジャレコ)が斬りかかる。
ジャレコ社長自らクソゲーと公言するそれは、最大40秒のロード時間でわらわらと現れる
棒立ちの敵を切り続ける作業ゲーだった。
しかも、相手の攻撃がヒットしたときに無敵時間がないため一撃喰らうとそのまま殴られ
続けたり、雑魚と全く同じ姿で、数倍強い雑魚も混じっていて全く気が抜けない。
主人公の十倍近いサイズのボスも居るが、それは皆同じ体型でディテールが違うだけ。
相手の攻撃方法も攻略法も同じというものだった。
更に攻略法も大半は足を切り続ける事で費やされ、
これではどんなにど迫力なボスも脛や股間しか見えない。
もちろんそれはラスボスたる魔王も同じで、脛を切られ、転び、爪を振るうだけだ。
正直、これなら主人公が居なくても投石機などで普通に倒せてしまいそうなくらい弱いのに、
それを剣でチマチマと数十分切り続けなければならない。
その駄目さ加減に、「ある業界では「クソ」の事を隠語で「黄金」と呼ぶらしい」という
名言を残した。

その破壊力に『ヒッチハイク』は道を譲り、『人生』と『絆』の一騎打ちの様相を見せ始める。

しかし、ここから冬の時代が始まる。
それもそのはず。並のクソゲーでは「『人生』と『絆』をやってこい」の一言で一蹴され、
「ゲームとして成立する」だけで選外に放り込まれる。
そんな流れにより、普段だったらノミネートしてもおかしくない幾多のゲームが
『人生』と『絆』に破れていった。

それは年末の魔物に期待する声気持ちをより一層強くしていく。
年末の魔物なら何とかしてくれる。
そうスレ住人が思い続けたとき、一つのクソゲーがスレに舞い降りた。
それは世間が年末商戦に入り始めた11月12日。
『戦極姫〜戦乱に舞う乙女達〜』(システムソフト・アルファー)である。
これは、同社のSLG『天下統一シリーズ』を改造。武将を女の子にして
キャッキャウフフを楽しむエロゲーを更に改造してギャルゲーにしたものである。
元々バグに定評のあるエロゲーからの移植だった上、開発が過去の資産を改悪して
食いつぶしていると評判のメーカーだったため、多少のバグや理不尽な仕様は
折り込み済みで向かったファンだったのだが、蓋を開ければ想像を上回るバグの嵐だった。
曰く「お金が減ったはずなのに増えていた」
曰く「石高がある数値まで上がっていると、少し徴兵しただけで住民感情が一気に下がる」
曰く「城に入ったら二度と出てこられなくなるブラックホール城が出来る」
曰く「相手をほとんど全滅させて撤退させたのに、そのターンの内に兵力が全快して別の城に攻めてくる」

ポルナレフが何人いても足りないぐらい、何が起こったのか分からない現象の数々に
スレは沸き立った。

もちろんありがちな「違うキャラの立ち絵が表示される」「死んだはずの武将が
イベントシーンで顔を出す」「CG差分がずれて表示される」というバグも装備。
バグ以外にも「追加ヒロインがいるのにシナリオが無い」「CGがコンプリート出来ない」
ことまで発覚。「エロシーンをカットしたため話が繋がらない」「捕まえた武将が
ランダムで切腹するので攻略したいヒロインが気がつくと切腹している」という
ギャルゲーとしてもどうかという充実ぶりで、ゲーム本体が遊べないならと、
本スレではバグの洗い出しと、原因を探すデバッグ大会が繰り広げられる有様だった。

ここまで酷いと、「これが最後の戦極姫とは思えない」という心理が働き、
過去の作品の洗い出し作業が始まる。
そもそもこの会社は、2009年だけでもコンシューマー用8本だけでなく
PC用も数多く出している乱造メーカーであり、同じようなソフトが存在すると考えることは
当然の流れだった。
そこで発見されたのが、『人生』や『ヒッチハイク』と同じ3月に発売され、
埋もれていた『戦国天下統一』(システムソフトアルファー)である。
このゲームは『姫』と同じくSLG『天下統一シリーズ』の流れを汲んでいるが、
『姫』と違い、システムが不評の『天下統一?』をベースにしていて、
ファンの中からも何故それをベースにするのか疑問の声が大きかった。
しかもそのシステムを更に劣化させてやってきたのだ。
『姫』に比べてバグは少ないものの「メニューを開くだけでロードが入るだけでなく、
メニューの階層を進むだけでもロード」「自分の城だけをリスト化することもできない」
「相手の思考が長い」「海路があれば北陸から九州までワープする」等の仕様の悪さが際だち、
中には「俸禄を上げると、怒って出奔する」「どんな城も1ターンで落ちる」
「同盟も1ターンで破棄られる」というバグだか仕様だか分からないシステムに、
戦国の世は何も信じられないことを痛感させられる。
更に、総勢3500人も登場する武将のうち固有の顔グラフィックが描かれているのは2,300人しかおらず
その他の武将の大半が同じ顔に割り振られている「モ武将」のインパクトにスレは騒然となった。

そして、気がつけば年が終わり、
2009年は『人生』『絆』『姫』『天下』の4本がノミネートされることになった。

全てを削った『人生』
メーカーがクソゲーとして世に出した『絆』
バグの嵐『姫』
ゲームバランスが劣化しきった『天下』

それぞれ何処に出しても恥ずかしい立派なクソゲーというのは論を待たないが、
その頂点を極めたのは『人生ゲーム(Wiiwere版)』であった。

『姫』『天下』『絆』、どれもやっていて楽しくない一級品のクソである。
しかし、『人生』はスタート5分で飽き、10分で投げたくなるクソという点で、
他の追従を許さなかった。
また、技術もあり一度はまともな『人生ゲームDX』を作っておきながら、
「わざわざ人とお金を使ってクソにする」という離れ業をやってのけたことも大きな理由だ。
「安いため被害が少ない」という反対意見もあったが、クソゲーオブザイヤーはゲームが
純粋にクソかどうかを争うものなのだ。仮に全て借り物や貰い物だとして並べてみるとどうだろう?
誰かと一緒にプレイしても、他人のプレイを後ろで見ていても、楽しめる要素が皆無という点は特筆に値する。

他人の不幸は蜜の味というがその蜜も楽しめないというのは過去に類を見ないのではないだろうか。
バグやおかしなゲームバランスといった派手なクソさに頼らないで、
クソの本質に純粋に迫ったからこそたどり着いた境地と言えよう。

確かに『姫』のバグや『天下』のゲームバランスも圧倒的で『人生』を越えるものがある。
両者――特に『姫』は素晴らしいクソゲーだ。
おそらく、過去のクソゲーオブザイヤー受賞作と並べたチャンピオンシップに出場させても
優勝を狙える作品なのは間違いない。
しかし、どちらかと言えば「端からもだえ苦しむプレイヤーを見ている分には楽しめるクソゲー」
であり、友人に叩き付ける分には最高に面白いアイテムと言わざるをえない。
もし、『人生』に笑える要素――例えば、グラフィックが8bit時代風だったとか、
バグッたりフリーズしたりして友人と「何これ」と笑える要素があれば、
その分野では追従を許さない『姫』が切り払っていただろう。
その笑いの要素を捨てて全く楽しめないクソゲーを作ったことが『人生』の勝因であり、
バグで攻めた『姫』が勝てない領域に辿りゆく唯一の方法だったといえよう。

さて、今年一年を振り返り、これらのクソゲーを並べてみると、
「わざわざクソゲーを作ろうと思って作った作品が並んだ」というのが感想だ。
年々レベルが上がり「普通にいいものを作りたくて作ったけれど色々あってクソゲー化した」
といったレベルでは勝負にならない。
そんなハイレベルな年だった。

ゲームが売れる限りクソゲーは作られていく。
おそらく2010年もハイレベルなクソゲーたちが生まれ、
素晴らしい勝負を見せてくれることだろう。

最後にヒルティの言葉を借りて、この総評を締めくくりたい。
「人生のおいて最も絶えがたいことは
クソゲーが続くことではなく、クソ一つ無い良ゲーが続くことである」

総評案7 戦極姫大賞Ver

2007年四八ショック。それに続く昨年の七英雄の登場により、KOTY界は新時代の到来を否
応なく刻みつけられ、続く2009年、スレ住民は自らの肥えた目に大いなる不安抱きながら
幕を明けた。
その不安を証明するかのように、英雄達の偉業は小粒のクソゲー達の前に立ちはだかった。
1月、2月とノミネート作もないまま静かな二ヶ月が経過した。
このまま、穏やかな春、いや、穏やかな一年が過ぎるのだろうか。そんな気分が漂い始め
た、3月3日。2009年の春一番は吹き始めた。

最初の風は、Wiiware版『人生ゲーム』、送り出したのは昨年の覇者『タカラトミー』で
ある。
元はもはや説明不要の殿堂入りボードゲームであり、過去にも何度かゲーム化されており、
本作も前年に発売された『人生ゲームWiiEX』の機能限定体験版である。いや、そのはず
であったのだが。
『人生ゲーム』の名と1000Wiiポイントの値ごろ感より、外れはないだろうとの「安心感」
からか、ダウンロードは10万を超えた。だが、そんな「安心感」は開始後わずか20分で
「虚無」へと変わってしまう。
周回マップは20マス程度と雑誌の付録よりも狭く、しかも、わずか15ターンで強制終了さ
れる。

立って半畳寝て一畳。人の一生などは、狭い場所を亀のごとく這い蹲って回っているだけ
なのだ。あたかも、そう嘲笑っているかのようなシステムである。
それに加え、この人生には何もない。イベントマスはわずか3種類。転職もなく結婚もな
く、声も名前も自分で変えられない。イベントはテキストのみで、思い出のシーンを脳裏
に描くことすらできない。バックではわずか15秒で繰り返される単調なBGMが、走馬燈のよ
うに走り巡る。そんな中で、ハンバーグを焦がして3000万を失い、ランニングをして1000
万を手に入れるなど、金遣いだけが異常に勇ましい。
わずか15ターン20分が異常に長く、あたかも長くて短い人生を象徴しているかのごとくで
ある。
本来体験版とは、ゲームの一部の魅力を体験させるものである。だが、本作は体験版とす
ることで、虚無ゲームと化すという新たなる進化を遂げた。変わらず続くタカラトミーの
斬新な発想にはまさに感服するしかない。

その後、動きの乏しいまま梅雨を迎えようとしていた5月末、新たなるクソの色の煌めき
が現れた。
クソゲー界の古豪ジャレコが送りだした、アクションRPG『黄金の絆』である。
ファミ通レビューで5444という低得点をたたき出し、発売前から公式サイトのソースに
他社の有名作品の名を仕込んで検索ヒットさせようとするなど、臭うがごとき香ばしさか
ら期待を集めていたが、中身もやはり、『黄金(=クソ)』の名にふさわしい出来であった。
戦いの前に自己を見つめよとばかりにロードは長く、最長40秒にも至る。メニューを開く
際にもロードが入り、アクションゲームでありながら、テンポを崩すことこの上ない。

戦闘では同じような敵キャラが棒立ちのまま押しよせ、チープな効果も相まって単調な
作業感に満ちあふれる。それでありながら、かのデス様のように無敵時間がなく、さらに
雑魚の中に異常に同じ容姿でやたら強い敵が混じっているなど、悪い意味で気が抜けない。
このポリシーは、ボス戦においても貫かれ、隠しボスを含めて5体いるデカボスはすべて
「一部が違う同じ何か」であり動作もほとんど同じである。当然、攻略方法も同じで、ひ
たすらに足を殴りつづけるという単調作業である。ここまで統一されると、むしろ、感心
するほどだ。
本作は、その後、社長がファミ通紙上で自作をクソゲー認定するなど、事後の対応も黄金
の香ばしさを漂わせ続けた。しかも、露悪的な態度で話題を取ろうとした捨て身の策も
見事に滑っているあたり、古豪ジャレコの復活を彷彿をさせるものであった。

『黄金の絆』の後、めぼしい作品もないまま時が過ぎ、秋もすっかり深まり、スレ住民の
最期の期待は、年末の魔物のみとなっていた。
その期待に応えたのは、PCシュミレーションゲーム界の重鎮、システムテストアルファ
(通称:SSα)の放つシュミレーションギャルゲーム『戦極姫−戦乱に舞う乙女達−』、
および、戦国SLG『戦国天下統一』である。
年明けから、据え置き・携帯の双方に幾多の過去作リメイクゲームをことごとくクソゲー
レベルで放ってきたSSαであるが、とうとうその矢がスレ住民の胸に突き刺さったのである。

まずは、『戦国天下統一』から行こう。
本作は、SSαの前進であるシステムソフトが作ったPC-98の名作SLG『天下統一』の正統
続編シリーズである。元々の発売は、3月であったが、あたかも戦国の忍者「草」のごと
く、選外に埋伏していた作品が、姫と呼応するかのように蜂起したのだ。
『戦国天下統一』は、すべてが苦行に彩られたクソゲーである。
操作性という概念に喧嘩を売っているとしか思えず、コマンドはひたすらに深く、遠く、
何をするにもトップメニューから幾つも階層を掘り下げなければならない。しかもその度
にロードが入る。COMの思考も数が多く頻繁で重く、無駄にフェーズが多いため1ターンが
ひたすらに長い。全国マップはカーソル位置を記憶してくれず、とにかく、どこへゆくに
も何をやるにも苦痛が伴う。

ビジュアル面においても同様である。1000人を超える武将を擁しながら、一般武将の顔は
基本的に一種類しかなく、しかも、歯を剥き出しでこちらを睨んでいる憎らしげなもので
ある。これは「顔面統一」「モ武将」と言われるほどであり、しかも、大名家によっては、
当主以外、数十人もの同じ顔がずらりと並ぶ。
この中でプレイをするのは、賽の河原でただただ小石を積んでゆくかのように辛い作業で
ある。
しかも、理不尽なことに、遠方の敵大名が広大で長い航路を無視して攻めてくる、配下の
武将は常に俸禄の不平を言い、仕官した武将はそのターンの内に出奔するなどの多くの
クソ仕様のため、苦行に耐え積み上げた石はあっさりと崩されてしまう。
まことに、プレイヤーの心を折るゲームであった。

さて、次に、SSαの二の矢、クソゲー戦国時代に華々しく降臨した『戦極姫−戦乱に舞う
乙女達−』である。
本作の特徴といえば、バグにつきる。
むろん、仕様面がクソでないわけではない。本作は、元々はPCエロゲーの移植であり、さ
らに、シュミレーション部分は上記『天下統一』を元とした、萌えと名作SLGを融合させた
作品である。と、言えば聞こえはいいが、実態は、単にご飯つぶでくっつけただけである。
AVGとSLGはまったく整合が取れておらず、ギャルゲーにも関わらずお目当てのギャルは
イベントも起きないうちに無惨に切腹する。さらに、複数の絵師が各自の持ち味を十分に
発揮しているため、絵の統一性はまったくない。シナリオも、抜いたエロを補完していな
いために、不自然にスカスカしている。特殊な乱数システムのため、コマンドの成功可否は
武将の能力に関わらず実行する順番で決まる。と、かなりのものだ。
だが、そんなクソ仕様が可愛く感じるほど本作はバグで満ちている。それは、あたかもバグ
でバグ洗うほどだ。

すべてがFになると軍資金がマイナスから65535に変わるという、本当にPC-98時代を彷彿と
させる軍資金バグはまだ可愛い方であり、石高が一定値を超えると徴兵の際に住民感情が
一気に下がるようになる徴兵バグは、喜ばしいはずの豊作イベントを一揆の恐怖へと変え
る。それを尻目に隣でCPUは大量徴兵を繰り返す。人の生死も当てにならず、死んだ仲間
武将は敵武将として登場し、かつての配下は旧主に忠誠を誓うかのように操作不能となる。
肝心の萌えキャラも、頭が分裂したり三人に分身するなどやり放題である。
その中でも、とりわけ恐ろしいのは、ブラックホール城である。
降伏した大名の当時の当主を仲間にし、その大名家に新規の武将が現れると、出現した城は
ブラックホールと化す。ここに移動すると、その武将は二度と出てこれない。さらに当主だ
と、何もできなくなり、詰む。

ごらんの有様のため、毎ターン数回のセーブが必須であり、乱数の順番調整やバグだか
チートだか分からないほど強い鉄砲隊を駆使し、バグでバグを制するような戦いをしな
くてはとうてい天下は望めない。頻発するバグを回避するためには、バグの解析と検証を
必要とし、その様は、あたかも有償デバッグと呼ばれるほどであった。
そうして、地方を制して天下望める頃には、数少ないイベントは終了し、他のキャラは死に
絶え、城を落とす作業が延々と続く。
さらにユーザーの心を折る事件は続く。バグが出尽くしていない12月、パッチも修正版
配布の話も無いままに、PC版での次回作『戦極姫2』の発売が発表されたのだ。バグ解析
の過程で発生した次回作のものの疑わしきデータが発見されていたこともあり、
「本当にα版かよ!」との声が殺到、萌えのためなら水火も辞さない強者達もついに力尽き
たのであった。

2009のKOTYは、虚無の人生、手抜きの絆、苦行の戦国、バグの姫の四者が争うこととなっ
た。その中でも、『人生ゲーム』、『戦国天下統一』、『戦極姫』の三者が激戦を繰り返
した。
その中で、KOTYの座に君臨したのは、『戦極姫−戦乱に舞う乙女達−』である。
元々の仕様のクソさに加え、エロをバグに置き換えたというほどのバグの量は総評発表
段階ですら出尽くさないではと言われ、さらには、そのバグにもめげず有償デバッグを
繰り返し、スレ住民ですらあきれるほど萌えに命をかけていた本スレ住民の心すら砕く
メーカー対応といい、まさに、クソゲー戦国時代に君臨する姫の名にふさわしいもので
あった。
『人生ゲーム』の健闘も光ったが、虚無さの地味が災いしてか、『戦極姫』には今一歩
及ばないという状況であった。また、『戦国天下統一』は同じSSαの作品ということで
『戦極姫』の従者のような扱いになってしまったのが惜しまれるところある。

2009年は華々しさはないが、確実にユーザーにダメージを加える、ある意味、正統派クソ
ゲーが揃った年であった。すべてをクリアすれば、輪廻の向こうに何かがみえるかのよう
であり、「クソゲーは苦行である」ということを再認識させた、『人生ゲーム』、『黄金
の絆』、『戦国天下統一』、『戦極姫』の四魔貴族の名は永く残ることであろう。
また、SSαというPCクソゲー界の雄がCS界に乗り込んで来た年としても記念されるべき年
となった。

最後に、システムソフト・アルファがせめてシステムソフト・ベータになることを祈って、
戦国の武将、山中鹿之助の言葉をもって締めたい。

「クソゲーよ、願わくは我に七難八苦を与えたまえ!」

総評案8 人生ゲーム大賞Ver

『四八ショック』が伝説となった2007年。『七英雄』が嵐を呼んだ 2008年。

時は過ぎ、世界を席巻したそれらクソゲー達は、いずこかへとその姿を消した。そして、2009年クソゲー界は、四分五裂の時代を迎える。
それぞれの道を極めた四つのクソゲー達が、新たな試練として現れたのである。後に、【四つの難行】と称される、未曾有のクソゲー達だ。
達人の域に達したその実力は凄まじく、クソゲー耐性の高い住民たちですら天を仰ぐ程である。

そして──
その頂点を極めたクソゲー達との戦いが幕を開けた。

──

消し去ることのできないクソゲー達の記憶。前年、前々年の興奮冷めやまぬ中、誰の目にも映らぬ無色の驚異が、糞を塗りこみながら全てを「虚無」に変えていた。
Wiiware用ソフトとして発売された『人生ゲーム』である。ボードゲームの定番と言われる『人生ゲーム』がクソゲーになどなるわけがない。そう高を括っていた住民たちの
常識をも「無」に帰す出来であった。

【第壱の難行:無の境地】
「虚無」が、全てをのみ込む世界。期待していた楽しみを奪っていき、全ての感情を「無」へと変えるゲーム。

マップは一つしか「無」いし、イベントも文字だけしか「無」い。お前に個性は必要ないと言いたかったのか、キャラのボイスは全て共通で一種類しか「無」い。
ゲームを盛り上げる要素であったはずの、転職・結婚・出産といったイベントなども「無」い。唯一残された、遊び要素に思えたカードは、殆どその意味を為さず、
「カードマス」、「ランドマークマス」だけしか「無」い。求めて「無」い「儚き人生」を演出し、強制的にゲームを終了して15ターン目までしか遊べ「無」い。
ただルーレットを回し、増減するお金を見ることしかでき「無」い。

それら全て仕様であり、バグですら「無」いという。ゲームの中身だけではなく、Playerの気持ちや時間も「無」にする。待っているのは、ただの茫然自失である。
続けても、続けても、何も「無」いだけ、まさに虚無を極めたクソゲーであった。

その後、『人生ゲーム』が、Wiiware売り上げランキング上位に居座ることになるのだが、そんな由々しき事態に手も足も出ないまま、続出する被害者を眺めるだけという、
空しい時期を過ごすこととなった。変化が起きたのは五月末、住民たちの気力を奪う次なる試練が舞い降りた。ファミ通レビューで、5444という低得点を採った
A・RPG『黄金の絆』である。

──

【第弐の難行:往返徒労】
無意味な緊張感と全体的なしょぼさが、全ての努力を徒労へと変えるゲーム。

発売前から、公式サイトのソースに、他社のヒット作の名前を仕込むといった、 ネットマナーすら理解していない香ばしさ。最大 “40秒” ともいわれる、長いロード時間に、
開くだけで、数秒読み込むメニュー画面。しかも、街でしか開けないため、戦闘時に装備やアイテムの入れ替えができない。
そして、そんな糞仕様など吹き飛ばすかの如く、プロデューサーは語る。

「バトルシステムについては、なかなかうまくできた」

極端に向上する雑魚敵の攻撃力に怯え、しょぼいエフェクトと効果音で戦闘の爽快さを奪う。 さらに、敵からダメージを受けた直後、無敵状態ではないので、
理不尽なハメ殺しにあう始末。ゲームの “ウリ” である巨大ボスも、たった5体しか存在せず、体形や攻撃モーションもみな同じ。単調な攻撃しかしてこないため、ラスボスですら、
倒したところで達成感がない。

──まるでセンスのない冗談だった。
他にも、ジャレコの社長自らクソゲーと認めたことや、CM曲が「ぼくたちの失敗」であるなど、自虐ネタへの心遣いは抜かりない。
肝心のゲーム内容が手抜きなのは、開発にかけた四億円の使い道を間違えたのであろう。

発売前から、見えている地雷と呼ばれ、華やかなバグになど頼らない仕様の糞さと手抜きのみで攻める。その男らしさは、正統派クソゲーとしての地位を確固たるものとした。
続けても、続けても、しょぼいだけ、まさに手抜きを極めたクソゲーであった。

──

「虚無」と「しょぼさ」に蹂躙された上半期。そして、ここから安寧の時期へと入る。 全ての試練は過ぎ去り、このまま何事もなく年越しを迎えるかのように思われた。
だが、永遠にも思われた長き安寧を打ち砕くかのよう、年末の魔物が重い腰を上げたのだ。システムソフトアルファーから発売されたPCエロゲーからの移植作品。
「戦極姫−戦乱に舞う乙女達−」である。実力は計り知れず、どんな強者をも一撃で闇に葬り去るという。その驚異の力が試練となって襲い掛かってきたのだ。

──

【第参の難行:悲痛絶望】
無限に発生するバグが、悲痛な叫びとなり、やがて絶望へと誘う。エロを無くした分、バグを増やしたゲーム。

滅ぼしたはずの大名が何故か復活。しかも、自勢力城を乗っ取り操作不能。死んだ仲間武将が、突然敵武将として出現し、その配下だった自軍武将が、途端に操作不能。
仲間武将が、いつの間にか操作不能になって寝返り、自軍を投入したら、敵味方共に消滅。しかも、主人公投入でゲーム続行不能状態というオマケ付き。
他にも、軍資金が突然増えたり、住民感情が突然急降下したり、イベントが発生しなかったり、立ち絵が分裂したりするなど、数え切れない量の凄まじいバグをはらんでいる。
バグ回避のため、1ターンごとにセーブしなければならない程である。

だがしかし、このゲームのクソゲーとしての本質はバグではない。エロがなくなった分のシナリオを補足していないため、内容が薄くつまらないのだ。
悲痛の思いでバグを乗り越え、やっと到達したシナリオがつまらない 。その現実を突き付けられた時、人は絶望するのである。

そもそも、SLGとギャルゲーの相性がよくない。気に入ったキャラを攻略しようとしたら、勝手に切腹したり、他武将に殺されるなど、そのキャラへの想いが、強ければ、強いほど、

ダメージとして、Playerへ跳ね返ってくるのだ。ギャルゲーの良い要素をSLGの要素で殺す。本末転倒である。そんな悲痛絶望に堪え、それでも愛するキャラたちに萌えようと、
強者達が奮闘する中、PCゲー『戦極姫2』の発売が、発表された。

そこで、一つの疑惑が浮かび上がる。
「CS版は、『戦極姫2』開発のため実施された、有料デバッグなのでは?」

・発売して一ヶ月もたっていないこと。
・PC版のエロシーンの音声データが、そのまま残っていること。
・『戦極姫2』で、初めて実装されると思われるデータやイベントのCGがある。

ここから、導き出された答え──
そう、CS版購入者は、金を払ってデバッグするという理不尽な扱いを受けたのだ。その傍若無人な開発の行為に、クソゲー耐性の高い住民たちもついに心が折れた。
その後、CGリストが仕様で、コンプ不可であることが発覚、それが止めとなった・・・ 。悲痛と絶望に堪え忍び、頑張ったところで意味がない。
続けても、続けても、バグがあるだけ、まさにバグを極めたクソゲーであった。

──

「戦極姫」が注目を浴びる中、長きに渡り沈黙を守リ続けてきた一人の若武者いた。SLG「戦国天下統一」である。
遅れてきた難行とも称され、発売当初は他作品に紛れ、その本性を隠していたが、開発が「戦極姫」と同じシステムソフトアルファーであることから、一躍、脚光を浴び、
再評価へと至ったのだ。そして、この再評価で明かされる驚くべき実態の数々。

7ヶ月という時を超えて、眠れる獅子が、今、目覚める。

──

【第四の難行:艱難辛苦】
Playerの心を一つ、また一つと折っていき、無限の苦しみを与える苦行。このゲームは何をやるにしても “辛い” 。

CPUの思考頻度が高いくせに長い。それがまずストレスになり、それに加え、血気盛んなのか、同盟を組んだのに、即効、裏切って宣戦布告してくるのだ。思わず切れそうになる。
もちろん、内政フェーズも苦行である。 知りたい情報があっても、敵軍はおろか自軍の情報すら、数段階のコマンドを選択しないと辿り着けない。しかも、コマンドを一つ選んだり、

表示キャラを変更するたび、必ずロードが発生する念の入れよう。そして、給料をいくら上げても納得しない貪欲な部下達。しかも、すぐ出奔してPlayerの神経を逆撫でる。
カーソル初期位置が記憶できないことや、武将の情報画面が、果てしなく見辛いこともジワジワとくる。

顔グラは、超有名武将以外、全てモブ武将で顔面が同じ。「戦国顔面統一」と言われる程である。Player達の顔面まで苦笑で統一する、その仕様は見事であった。
また、合戦にいたっては、意味を為さない兵力差でゲームバランスを崩し、 九州の城からいきなり次元を超えて東北の城に攻めてくるなど、海上に移動距離という概念がない、
異次元マップで混乱を誘う。 また、城レベルを上げても簡単に落ちるため意味がなく、手に入れた城と同じくらい自軍の城も奪われる。これでは、領地拡大ではなく単なる移動だ。
顔面は統一されてるのに、天下は一向に統一できない。結局、何を統一させたかったのか疑問である。
続けても、続けても、辛いだけ、まさに苦行を極めたクソゲーであった。

──

昨年の「七英雄」に続き、【四つの難行】と称される、四作品で大賞を争った2009。

【第壱の難行:無の境地】
虚無を極めたらクソゲーになった『人生ゲーム』。

【第弐の難行:往返徒労】
手抜きを極めたらクソゲーになった『黄金の絆』。

【第参の難行:悲痛絶望】
バグを極めたらクソゲーになった『戦極姫−戦乱に舞う乙女達−』。

【第四の難行:艱難辛苦】
苦行を極めたらクソゲーになった『戦国天下統一』。

この四作品は、それぞれ糞の方向性こそ違うが、その道を極めた猛者たちである。もちろん、決してクソゲーをつくるために極めたのではない。極めた結果がクソゲーなのだ。
結果「無価値」。この争いは、どちらが “より” ゲームとして「無価値」かを競う、まさに頂上決戦と言えよう。

果たして、
その決戦を制したのは──

ダウンロード型クソゲーとして新たな型を築き、Wiiware用ソフトにしてテーブルゲームの定番『人生ゲーム』であった。
『人生ゲーム』の糞さは何も「無」いことであることから、『戦極姫−戦乱に舞う乙女達−』に比べ、インパクトが弱いのではないかとの声もあり、受賞が危ぶまれていた。

では何故、何も「無」いだけの『人生ゲーム』が受賞できたのであろう。本来であれば、価値の「無」いクソゲーを四つ並べて、どれが一番糞かと聞かれても、返答に困るところだが、
何処に焦点を当てるかで、その答えが出たのだ。「無価値」の質である。

『黄金の絆』
開発に三年の歳月と四億円をかけて挑んだ壮大な釣り。A・RPGとしての基本的な機能は有しているものの、余りにもひどすぎる糞仕様と手抜きの結果「無価値」。

『戦極姫−戦乱に舞う乙女達−』
ギャルゲーの要素と歴史SLGの要素を有していたが、その相性の悪さとバグが全てを破たんさせた結果「無価値」。

『戦国天下統一』
名作歴史戦略SLGの後継として体裁だけは保っているが、糞仕様による苦行に次ぐ、苦行の結果「無価値」。

ここで注目したいのは、これら三作品が、あくまで遊べる要素のあるゲームをつくろうとしていたことである。遊べるゲームを目指したが、それぞれの理由で破綻してしまい、
結果として「無価値」になってしまったのである。

つまり、価値は「無」くとも、遊べるゲームであろうとする “意志” はあったのだ。敢えて言うならば、それがクソゲーとしての「最後の良心」。

では、『人生ゲーム』はどうだろう。前述の通り、『人生ゲーム』の糞たる所以は、何も「無」いことである。そもそも、シリーズものである『人生ゲーム』の安価版として販売され、
安価だからという理由で、機能を制限していったのだから、何も「無」いのは当たり前である。
つまりは、
遊べる要素が、「無」いことを、目指し、
遊べる要素が、「無」いことで、破綻したのである。

──こんなひどい話はない。
ある意味、最初から「無価値」を目指していたとも言える。当然、結果も「無価値」。度肝を抜かれるとはこのことだ。
その余りの何も「無」さに、1,000円すら惜しい。しかも、ダウンロードゲームなので、フリスビーになることも「無」い。流れるBGMも “15秒” で無限に、ループし続ける。
クソゲーとはいえ、大抵 “音楽だけは” 良いと称される作品も多いが、このゲームではそれすらも「無」い。

ただルーレットを回して眺めるだけ。

移動のために回す。入手する金額を決めるために回す。入手する経験値を決めるために回す。それだけである。
もはや、「グラだけは綺麗」だとか、「バグがなければ良ゲー」だとか、そんなことはどうでもいい。そういう次元の話ではない。

「これは、本当にゲームなのか?」
自問自答を繰り返し、辿り着く結果が「無価値」。

ルーレットを回して眺めるだけ。これの何処に価値を見出せというのだ。喜びも「無」ければ、楽しみも「無」い。悲しみも「無」ければ、怒りも「無」い。ひたすら、無表情で
ルーレットを回すその姿は、さながら、煩悩を捨て【無の境地】へと至る修行僧のようではないか。「ただ純粋に無価値」「紛う方無き真実の無価値」を地で行くその様は圧巻である。

「無」いことへの追及。

そのこだわりが、受賞へと至る、唯一にして最大の決め手となったのである。

──

【無】から始まり、【往返徒労】を味わい、【悲痛絶望】に堪え、【艱難辛苦】の苦行を乗り越え、やがて辿り着く【境地】。

【悟り】──それ即ち【無】。

数多の難行を乗り越えてきたというのに、人は、また「無」に還るという・・・。『人生』は、まるで『ゲーム』のようだと、そんな皮肉が込められているのであろうか。まさに、クソゲー「無」間地獄。
2009年は、『人生』とは、そもそも何なのかを考えさせられる、そんな年であったのでは「無」いでしょうか。それでは最後に、2009年クソゲーオブザイヤーをこの故事ことわざで、締め括りたいと思う。

(ゲームを買うとき、クソゲーかどうか)「迷わぬ者に悟り無し」

総評案9 戦極姫大賞Ver

クソゲーオブザイヤー
去年までに何作のクソゲーがノミネートされ、
そしてゲームというジャンルの最底辺クソゲーオブザイヤー「大賞」
を獲得してきただろうか。
2007年「四八(仮)」
そのバグ、クソ仕様、そしてメーカー対応、スレ住人達の選評基準さえ変えたその地雷の威力は伝説となった
2008年「メジャーWii パーフェクトクローザー」
ゲームとして世に出てはいけないバグの多さとクソ仕様でスレを大いにわかせた名作(笑)である
さらに子供達が大好きな漫画「MAJOR」のゲームでお年玉をドブに捨てさせたドリフ×タカラトミーの非情さも特筆すべきであった。
そして2009年・・・・・
去年の七英雄伝説から一年、スレ住人達は去年の豊作ぶりに今年は
相当の数と質を兼ね備えたモノがでてこない限り飽和状態に陥ってしまうのではないか・・・・
そんな不安が囁かれていた。
実際3月のある日まではめぼしいゲームも上がらず飽和状態に陥っていた。
スレ住人達がすっかり飽和状態になりきっていた3月3日のことである

2007年大賞受賞でクソゲーメーカーの名を欲しいままにした「タカラトミー」から
「人生ゲーム(Wiiware版)」
が投下された。
1000円という不況の中嬉しい価格で、しかも人生ゲームというクソであるはずがないブランドで配信され、
数多くの被害者を出した。
これが飽和しきったかっさかさのスレに潤いを与えた。
過去の人生ゲームではあり得ないマップの種類(一種)、イベントはテキストのみ、15ターン目に強制終了。
さらにイベントではハンバーグを焦がすと3000万円没収などクソとしか言いようのないイベントが連発。
さらにBGMが1ループ19秒、wiiではおなじみのMiiが使えない、等抜け目の無い仕様となっていた。

マップ、イベント、強制終了、BGM、キャラ

これらのクソ仕様がスレ住人達をわかせたのであった。
スレも今年1発目の投下に活気づき、ここからが本番とばかりに身構えた。
そんな状況の中スレ住人をさらに活気づかせるクソゲー
「戦国天下統一」(システムソフトアルファー)
というマイナータイトルが投下された。

このタイトルは、かなりマイナーであったためか、スレ住人達から選評が来なく選外扱いが続いたが、
後に紹介する「戦極姫〜戦乱に舞う乙女達〜」同(システムソフトアルファー)の登場により脚光を浴びることとなった。

「戦国天下統一」はPCからの移植作品で最初は頻繁なロード、出来の悪いCPU、システムの出来の悪さ等クソゲーの基礎を実装。
給料を最大まで上げても文句を言うクソ家臣や遠隔地にいる大名がワープして突然本州に上陸してくるトンデモ仕様付き。顔グラフィックは有名武将以外すべて同じようなモノで
「天下統一」をもじった「顔面統一」という名言を生み出したことも特筆すべきであろう。
さらに日に日に明らかになるバグの数はバグ要素のまとめが成されるほどだった。

今年はwiiwareが悪い意味で調子がよく非常に豊作で「人生ゲーム(Wiiware版)」に続き
「Let’s 全力ヒッチハイク!!!!!!!!!」(日本一ソフトウェア)
がこれまた人生と同じ1000円で投下された。
まず評価されたのがキャラクターのひどさである。
「GOLDEN EGGS」の絵をそのまま劣化させたようなキャラであった。
これは個人的な意見だが、見ているとモッコス邪像を思い出してしまう。
次に評価されたのは、意味不明な電波シナリオである。
その内容は、「中華料理店で食事をしているといきなり恐竜とUFO登場し 逃げ出したら、その料理店の親父が包丁を持って追いかけてきた。
だから、ヒッチハイクして逃げよう!」(wiki抜粋)
というあまりにも常人には理解しがたい電波ぶり。

それからタイトルを見ただけでは何をするか分からないであろうこのゲームはキャラクターに合わせてリモコンを振るだけ
という何とも1000円の価値のない内容。
しかもリモコン感度が異様に悪く、何度も振らせられる。
おまけのすごろくは手抜き感MAXでとってつけたような内容。
あるスレ住人はこのゲームを「本当に誰も買おうとしない、まるでモリマンのAV」と例えて賞賛していた。

それからしばらく選評が来るも選外が続き、あとはやはり年末しかないのかというムードに成っていたが、5月末、
ファミ通レビューで5・4・4・4という低得点をたたき出し、満を持して投下された。
「黄金の絆」(ジャレコ)
初日販売数1200本、累計本数2000本という超大作(笑)ARPGである。
かねてより噂になっていた公式サイトのソース、他社のヒット作の名前を盛り込むという意地汚さ。
まずはプレイヤーを40秒という鬼のロード地獄にご招待。
売りだった超巨大ボスは4体しか登場せず、極端な敵攻撃力上昇により、不条理なたこ殴りをされ、ゲームオーバー。
しかもコンティニューは存在せず、いちいちメニューに戻らなくてはならない。もちろん長いロード付きで。
ゲームだけではない、ジャレコ社長もこのゲームのノミネートに大きく関与しているといえるだろう。
この社長、自分のところで販売したゲームを自らクソゲーと認め、開発期間は3年、開発費は4億円とあかした。
社長の快進撃は終わらない、開発元のタウンファクトリーを「クソ開発会社」と発言しジャレコ崩壊プロジェクトなる意味不明なジャレコ自体のホット(笑)な情報を提供。
ジャレコ社長はゲームメーカー中もっとも痛い社長となった。

例年通り今年も年末には魔物が住んでいた。
「戦国天下統一」というハイレベルなクソゲーをたたき出しつつまたもや移植作品を投げつけてきたのはシステムソフト・アルファーである。
エロゲーから殴り込んできたそれは大いにスレ住人達を沸かせることとなった。
「戦極姫〜戦乱に舞う乙女達〜」(システムソフト・アルファー)
の投下である。
このゲーム、バグの量が異様であった。
それはもう「戦国天下統一」の比じゃないくらいの量でバグの底なし沼状態。
攻略wikiでもまとめられているが、未だに新しいバグが発見され続けており、プレイヤーは日々バグにおびえながらのプレイを強いられる仕様。
ここでバグの一例を紹介しておこう。
軍資金がマイナスになると上「F」が軍資金の表示に現れすべてFに成ると何故か軍資金が65535が湧いてくる。
死んだはずの味方の武将がいきなり敵武将として出現、配下にいた自軍の武将が操作不能に陥り、
放置しているとそのうち敵側に寝返り、主人公含む自軍を投入するとなぜか寝返った敵武将、主人公もろとも自軍消滅。城に主人公はいることになっているが、
兵士補充と銃補充ぐらいしか自軍に命令できなくなって続行不可能。(進行不能バグ)
とまぁこの程度氷山の一角である
そのためプレイヤーは1ターンごとにセーブ、移植前のバグを確認し、バグを踏まないようにするなどの独自防衛策を展開しつつ攻略している模様。
そんな商品未満の状態にもかかわらずメーカーはバグに関する告知等の対応を一切していない。
バグの底なし沼+クソなメーカー対応で何が生まれるか?もちろんクソゲーしか生まれない。
バグによるバグのためのゲームである。
最早このゲームはプレイヤーに向けられたモノではないのではないだろうか。
バグのためのゲームを生み出してくれたシステムソフトアルファーには敬意を払いこれからも超クソゲーメーカーとして邁進していって欲しいモノである。

それではこの辺で大賞を発表させていただこう。
2009年クソゲーオブザイヤー大賞は、「戦極姫〜戦乱に舞う乙女達〜」に贈りたいと思う。
たぐいまれなるバグの質と量、そして種類を兼ね備えたゲームをありがとう。
そしてここにその多大な功績を称え大賞を贈ろう。

今年は
人生ゲーム(Wiiware版)(タカラトミー)
戦国天下統一(システムソフトアルファー)
Let’s 全力ヒッチハイク!!!!!!!!!(日本一ソフトウェア)
黄金の絆(ジャレコ)
戦極姫〜戦乱に舞う乙女達〜(システムソフト・アルファー)
という5本の大作クソゲーが世に送り出され、その被害者が出た。
特に被害者が多いという意味では、人生ゲームが一番だが、それよりもバグの多さが勝ったといったところだろうか。

この5本のソフトに敬意を払い総評を終わらせていただきたい。

最後に一言 システムソフトアルファーさん、来年も期待していますよ(笑)

総評案10 戦極姫大賞ver.

執筆者より:使えそうな部分があれば、自由にもってってください。

2007年『四八ショック』、2008年『クソゲー七英雄』。
2年続けてクソゲーの炎がKOTYを襲った。
以前ならノミネートしたであろうクソゲーは、ことごとく選外に追いやられ、
もはや住人を満足させるクソゲーは滅亡したかに思えた。
だが、奴ら(クソゲー)は滅びてなどいなかったのだ。

最初にKOTYのルーレットを回したのは、前年覇者であり、玩具老舗メーカーでもある
タカラトミーの送る『人生ゲーム』。
以前発売したパッケージ版を焼き直し、Wiiウェアとして1000円で販売したものだが、
ゴールのない周回マップが1つだけ、プレイヤーの分身であるMiiは使えない、
イベントはテキストのみ、20秒足らずで延々ループするBGM、
おまけに15ターン終了固定と、体験版以下の内容にスレは沸き立つ。
購入前に調べないと内容が知らされないため、名前だけで購入する人が後を絶たず、
総評執筆時もWiiウェア人気ソフトの欄(ランキング)に居座り続けている。
簡単に手に入り即座にクソさが分かり、用が済めばデータを消せば済むということで
「クソゲー入門用」としてスレ新参者にお薦めの一品でもある。

続いて『Let’s 全力ヒッチハイク!!!!!!!!!』がKOTYへたどり着く。
突っ込みどころしかないストーリーにいい加減に描かれたグラフィック
そして寒いだけのギャグでスレを凍りつかせたが
大賞レベルには及ばず去っていくこととなった。

そのほかにも、いくつかゲームの名前があがったが、住民を満足させることはできず、
ことごとく選外に送り込まれた、大賞レベルのクソゲーも野に伏していたようだが、
それらのゲームの影に隠れ、発見されるのは年末を待つこととなる。

失望するスレに、FC初期からの老舗ジャレコから「黄金(クソ)」が投げ込まれる。
その名も『黄金の絆』。
金のシャチホコを映したり半裸の金粉男女が抱き合ったりする、
あるいみ衝撃的なTVCMを流し、公式サイトに関係のない有名ゲームの名を仕込み、
2ちゃんねる風掲示板が設置され荒れる。ファミ通レビューでは広告を出した割には
5444という低得点を叩き出し、いやがおうにもスレ住人の期待は高まる。
そして発売日には期待通り…いや、期待以上の光景を目の当たりにする。
頻繁なロードは最長で40秒という長さで、メニューを開けるのは町のみで、
それにも読み込みが発生。モンスターは結構な数が同時に出現するが、
大半が棒立ち状態で、キャラクターオーバーで透明化することも。
大量のモンスターの中に容姿は全く同じで攻撃力が激増したものが混ぜられているため、
攻撃を食らうと無敵時間のない仕様と相まって意味を履き違えた緊張感を味あわせられる。
最大のウリである巨大ボスが4体(+隠し1)なのはいいとしても、
体形や攻撃モーションがみな同様、攻略手順もほぼ同様、
ムダに体力が高いため長時間の単純作業と化している。
社長が開発会社をクソ開発会社呼ばわりし、クソゲーと認めるなど
ゲーム外でも話題を提供。まごうことなき「黄金」であった。

しかしこの後、年末までスレに朗報が届くことはなかった。
前年のリベンジか?とスレだけではなくゲーム系サイトでも話題となった
『ジャンラインアール』は普通の麻雀ゲームで空振りに終わり、
いくつかのゲームの名が挙がるも軽く選外送りとなった。

  『願わくは我に七難八苦(クソゲー)を与えたまえ』

…住人がそう願ったのか、その願いが届いたのか、PCソフト老舗の生まれ変わり、
システムソフト・アルファーが、下手な鉄砲も数うちゃ当たるといわんばかりに
据置・携帯の両方にクソゲーを乱射していたのだ。そしてその一本がスレに命中。
その名は『戦極姫〜戦乱に舞う乙女達〜』
PCエロゲーからの移植で、元のゲームにもバグがあり、住人も覚悟して臨んだはずが、
「エロをなくした分バグを増やしました」とでもいいたいのか、
予想をはるかに上回るバグに苦しめられることとなる。

戦で効果音が鳴らなかったり、セーブするときに画面が揺れたり、
AVGパートで立ち絵が他のキャラに入れ替わったり、分身したり、
軍資金がマイナスになると6万ぐらいになったり、行動ポイントが無くても徴兵できたり、
強制的に軍備フェイズを飛ばされてしまったり、
国マップの城・街道経路が間違ってるのはまだいいほうで
敵地に攻め込み敵兵を撤退させたはずが、戦闘中に減った兵士数が回復し、
ついでに遠方の城に攻め込んできたりする。
なぜか石高の数値にこだわりがあり、気に入らないと徴兵の際に住民感情が
とたんに悪化したり、移動すると最後、そこから移動できなくなる
通称「ブラックホール城」が発生するため、気が抜けない。
(滅ぼしたはずの武将が復活し、城を乗っ取られたのか、
そこにいた自軍武将が移動できなくなるパターンもある)
毎ターンセーブしブラックホール城に重要キャラが移動していないか確認し、バグを回避し、
あるときはバグを利用しゲームを「楽しんでいた」猛者達も、ついに心折れる時が来た。
発売して一月もたたず、PCでPS2版とPSP版両方の新キャラのシナリオが入った
新作が発売されるとの情報が入ったのだ。それだけなら良くあることなのだが、
ディスク内にPC版Hシーン関係で使用した音声や効果音のデータが見つかり、
さらには新作で使用するであろう兵科をしめすアイコンまで見つかってしまった。
自虐的に「有償デバッグ」と言っていただけのはずが、本当にデバックさせられたのか?との
疑念を抱かせ、怒りを買うには十分であった。

連発されたクソゲーの中から、大賞候補を発見する。
春ごろから野に伏していた『戦国天下統一』。
武将一覧では超有名武将以外のモ武将は同じような顔が並び、
タイトルは「顔面統一」だったかなと思いたくなり、
コマンド毎の読み込み時間、目的の城を選ぶことが困難なマップにイライラさせられ、
戦力差より乱数が重要と戦略ゲームとしてはお粗末な仕様、
同盟を結んでも翌ターンには攻め込まれることもある、堅城が強襲であっさり陥落、
東北の敵武将が九州の自国へワープして攻めてくる、軍縮したのか突然兵が減る、
給料を上げすぎると文句を言い、忠誠心などないのかすぐ出奔する部下など、
トンデモ現象続出に住人は喜び、また放置していたことを素直に詫びた。

ひたすら無を追求した『人生ゲーム』
手抜きと社長の痛さの『黄金の絆』
苦行とトンデモ仕様の『戦国天下統一』
バグてんこ盛りの『戦極姫〜戦乱に舞う乙女達〜』
甲乙つけ難い4本のクソゲーが集い、大賞決定は困難を極めるかと予想された。
しかし、意外にもあっさり決着がつくことになる。

まず、すべてのクソ要素が他3本に劣っている『黄金の絆』が脱落、
『戦国天下統一』は同門の姫に譲ったのか大賞に押す声が少ない。
『人生ゲーム』は無を追求したばかりに、総評のネタまで削ってしまい
臣下に裏切られた君主のごとく、無残に散ることとなる。
戦わずして『戦極姫〜戦乱に舞う乙女達〜』が2009年KOTYに輝くことになった。
展開に恵まれた観もあるが、クソゲー戦国時代を生き延びる運も実力のうち、
恥じることは無い。

本年はソース盗用、昨年発売のゲームだがオンライン専用なのに6ヶ月あまりでサービス終了、
不具合を認めディスク交換には至ったが、それまでの対応が非常に悪いなど、
あえて名前は挙げないが、メーカーのモラルが問われる行動・作品が目立った。
スレ的にはKOTYを狙って作られたのではと思われるクソゲーに恵まれ、
昨年に劣らず充実した1年となった。
「人生」「絆」「戦国」「姫」の4本は、昨年の七英雄に匹敵する四魔貴族といえよう。
特に「人生」の、名前と低価格で被害者を増大させた偉業には頭が下がる、
大河ドラマで話題になった直江兼続の言葉を借りるなら、
「わしはこんなゲームかいとうなかった! 」という購入者の声が聞こえてきそうである。

最後に、「姫」「戦国」をはじめとするクソゲーを乱射し、
2010年も各機種に沢山のゲームを送り出そうとするシステムソフト・アルファーに
以下の言葉を贈り、2009年のクソゲーオブザイヤーを締めくくろう。

  「システムソフト・ベーターになるのはまだですか?」

総評案11 戦極姫大賞ver.

「ジャンライン」vs「メジャーWii パーフェクトクローザー」の激戦冷めやらぬまま
明けた2009年のクソゲーオブザイヤーは、まるでその興奮を冷ますかのような沈黙を
しばらく続けていた。多少のゲーム内容では「クソゲー」と言えない「四八(仮)」
ショックの影響が続いていたこともあったのだろう。旗揚げしつつも大勢力の前に
滅亡していく国人・豪族のように、いくつもの作品が提示されいくつもの作品が消えていった。

そんな中で春先に現れた「人生ゲームWii(Wiiware版)」は、新興勢力として異彩を放っていた。
2008年11月に発売された「人生ゲームWiiEX」の機能を限定し、フルプライスから
1000円へと一見するとお手軽にプレイすることが出来るゲームとして投入された
このゲーム。元が人気ゲームである上、その安価からか一時はWiiwareのランキングで
何度も1位に輝くほどであった。

だが、それは多くの人を誘い込む地獄の始まりだった。
行き着いた先は「虚無」という、本当の意味での落とし穴であったのだ。
普通の人生ゲームなら、仲間を集めて様々なイベントを楽しみ賑やかに競い合うはず。
しかし、本作は「楽しさ」を全否定したあまりにも斬新すぎるゲームと化していた。
イベントは、文字のみの進行だったり直感的でなく盛り上がにくい。しかも理不尽。
そのせいで、賑やかにプレイしようとしても盛り上がりどころが無い。
理解が追いつく前に金が増え金が減り、文字だけで運命が左右され、
多様性の全く無いBGMを聴きながら小さな盤面をグルグルと歩き、
一人15回ルーレットを回すだけで「いい人生を送れましたか?」と言葉をかけられる。
15ターンまでプレイ可能という短さも意味はない。むしろ、その15ターンを味わうこと
さえ苦痛なほどの「虚しさ」という新要素が搭載されているのだ。
「開けてみてのお楽しみ」とも言えるダウンロードゲームという新機軸に、
タカラトミーは敢然とブラックホールを投下したのだった。

同じ月、そのWiiwareに傾奇者が颯爽と姿を現した。
日本一ソフトウェアが放った「Let's 全力ヒッチハイク!!!!!!!!!」は、
「全力で体感したいアクション」と銘打っておきながら、その実体感するのは手先だけ。
ヒッチハイクをするのにリモコンを振ってその再現度で点数を決めるのだが、
画面内で踊り狂うプレイヤーキャラはローポリ頭にヘンテコなリアル風の顔を
貼り付けたもので、背景も走ってくる車もまるで書き割りのように簡素。
見た目もシンプルすぎる上にゲーム内容も非常にシンプル。ただ車を止め、
ふしぎな踊りを眺めるだけ。しかも肝心な判定の感度が悪いなど、
同じくダウンロード販売ゲームの魔物として多くのスレ住人を震え上がらせた。

時を同じくして、ひっそりと産まれたあるソフトが頂点を狙い始めたことも気付かずに……

春が終わり梅雨を迎えようかという時期に、また覇王を目指す者が現れた。
ジャレコが世に放ったソフト「黄金の絆」。このソフトハウスは色々と"狙った"
演出やプロモーションをしてくるが、本作も例に漏れず様々な地雷を潜ませていた。
街に入ればロード。メニューを開こうとすればロード。ロード。ロード。ロード……
頻発する上に長いロードはARPGにとって重要な爽快感を奪い、それをかいくぐり
戦闘をしても、攻撃後は無防備になってしまい敵に狙われやすく、時折潜む強敵には
なぶり殺される。それにも耐えてボス戦に臨めば、最初は楽しめてもその後に萎える
展開が待ち受ける。出てくるボスが皆、ほとんど変わらないのだ。ラスボスも、
隠しボスでさえも。弱点やモーションだけでなく、体型すらも……ある意味ゲームの
目玉とも言えるボスが、だ。
全力を注いで制作し、楽しませなければいけないのが「ゲーム」のはずなのに、
メーカーが楽しんだのはプロモーションと自虐行為。あらゆる面で勘違いした挙げ句、
社長自ら「クソゲー」と言い放つ本作ではあるが、その影で数千の猛者が
悔恨の涙を流して討ち死にしたのを忘れてはならない。

それから春が過ぎて夏が過ぎ、秋を迎えるも新たなクソゲーは姿を現さなかった。
「人生」「全力」「絆」という三國志もかくやという壁の前に「普通のゲーム」
「遊べるゲーム」とことごとく敗れ去り、このまま三者の争いにもつれ込むのか
という声が出始めた立冬、"彼女"は待ったとばかりに敢然と立ち上がった。
システムソフト・アルファーが制作した「戦極姫〜戦乱に舞う乙女達〜」である。

一見すれば、戦国時代を舞台にしたギャルゲー。ギャルゲーといえば基本ADVであり、
いくらシナリオが電波であってもシステムが安定していれば遊べるゲームということで
ノミネートされることが少ない、ある意味"鉄板"なジャンルであるが、
本作は戦国SLG要素を組み込むことでとてつもない化け物へと進化していった。
PCの名作「天下統一ADVANCE」をベースとし、名だたる武将を女の子へと性転換させ、
主人公がプレイヤー大名ともに乱世の覇者を目指すのが目的のはずなのに、敵大名だけ
ではなくシナリオやシステムすらもプレイヤーの前に立ちはだかってきたのだ。
PS2版向けに新規ルートを搭載している一方、元々が年齢制限付ゲームで
あったことからそれにあたるシナリオを削除しているのだが、一般的な移植ゲームで
見られる削除分の補完シナリオなどは搭載せず、ある程度イベントを進行させてしまうと
あとはただ淡々と天下を統一していくだけというボリューム不足に陥ってしまっている。
その上、削除分のシナリオにはヒロインたちとの交流も含まれているため、
恋愛要素では唐突さを感じ、もう既にゲーム上からは退場しているはずの武将も現れたりして
シナリオ・フラグ両面で整合性が取られていないという異常な事態が発覚した。
新規シナリオも「ライターの好み」で書かれ一部キャラ偏重に陥ってしまっているのだが、
そのシナリオ以上にシステムがゲーム性をより破滅的なものに仕立て上げてしまっていた。

残金が0になったと思ったら65535前後に激増。豊作後に少し徴兵をしただけで
住民の感情が ドン底になり一揆発生。敵城を攻めて潰走させたはずなのに、
その敵軍団が攻める前の 状態のまま攻め込んでくる。立ち絵と文章が合致していない。
それどころか表情差分の 座標がズレて表示され二重顔になる。死んだはずの武将がイベントに出てくる。
挙げ句の果てには、味方になった大名武将の血縁・一門武将によって突如システムに
無いはずの御家再興が発生し、間違ってその城に踏み込んだ武将は二度と出られない……
愛する大名との天下統一に心躍らせたプレイヤーは幾名もその罠にハマり、阿鼻叫喚の
地獄へと誘われた。他にも列挙しきれないバグやフラグミスは数多くあり、人生ゲームが
虚無のブラックホールなら、本作は魔物が尽きることのないパンドラの箱と言えるだろう。

そして「戦極姫」の評価に合わせ、春先に産まれたある戦国ゲームがここに来て乱を起こした。
同じくシステムソフト・アルファー制作の「戦国天下統一」が再評価され始めたのだ。
本作はPC版「天下統一V」を移植したゲームで、三千人強の登場武将と顔グラフィック、
六百以上の城、"美麗"な画像といった要素をウリにして世に出した作品なのだが、
本作も「戦極姫」に比肩しうる曲者であった。
まずシステムだが、頻発するアクセスやコマンドの煩雑さ、情報の見づらさが本来
シミュレーションゲームにおいて要求されるはずの快適さを奪い、プレイヤーのやる気を
ボディーブローのように削いでいく。CPUのターンで長考など当たり前。所属武将の
俸禄を上げても忠誠は上がりにくく、気付いたときには出奔。そのくせ登場武将が多いのに、
情報が見づらく把握しきれない。他家との外交でも組んだはずの同盟は紙くず同然で、
自家の武将を増やそうにも条件は不明瞭な上、戦闘ではほとんど味方になってくれない。

やることが多いのにそれをこなすにも煩雑な処理を自分で行わなければならず、
「三千人強の登場武将」「六百以上の城」が逆に足を引っ張っているという始末。
プレイする年代に本来支配しているはずが無い城を支配している大名がいることなど、
このゲームにおいては些細すぎる事象なのである。
もう一つのウリであるグラフィックも、顔グラフィックにおいては有名武将以外
「兜の部品以外表情みんな同じ」というモブのごとき顔グラが使用されている。
どんな表情をしているんだろうと情報を開いてみても、ある程度有名な武将でもモブ顔。
かと思えば史実で井伊直虎や甲斐姫ぐらいしか思い浮かばない姫武将用のグラフィックが
「姫用」と「武将用」とで用意されていたりと、本来注ぐべき力を間違った場所に
注いでしまっているという始末。戦闘に目を向けてみれば、主要ユニットの戦闘シーンが
拡大されると、通常グラフィックが拡大されただけなので地形も兵士もディザだらけと
脱力することこの上ない。
その戦闘でも、小田原城などの天下の名城も強襲すれば即陥落したり、海を渡れば
遠隔地でもワープのように侵攻できてしまったりと様々な地図・パラメーターが有名無実化
してしまっている。この状態で全国六百の城を統一しろというのだから、苦行という他無い。
いくらオアシスを探し歩いても、最初から一つも存在しない砂漠のように。

2009年のKOTYは、三國志の如き戦いかと思えば「戦極姫」が参戦し、それに合わせて
「戦国天下統一」という伏兵が出現したりと最終的には五つの勢力による混戦へと陥った。
その最中で、本年のKOTYを勝ち取ったのは――

『戦極姫〜戦乱に舞う乙女達〜』である。

バグやミスの多い本作は、新世代機やPCであればパッチでアップデートすることは
可能かもしれない。だが、PS2ではパッチを当ててアップデートすることは出来ない。
確かにシステムソフト・アルファーはPCゲームを制作しているメーカーではあるが、
あくまでも本作はPS2版であり、デバッグやテストプレイを重ね完成させなければ
ならないはずなのに、未完成版と言える状態のまま発売するという失態を犯してしまった。
スケジュールについては一部スタッフからも「依頼から納期まで一週間」という
発言があり、最後まで破綻したままマスターアップしたのだろう。さらに、現状に対して
ダンマリを決め込むどころか「PC版で1月(当時。現時点では2月)に2を発売する」
という告知を行うなど、火に油を注ぐかのような行為まで行われた。
「パンドラの箱の中に最後に残っていたのは希望……ではなく『戦極姫2』の広告でした」
……本当に、笑うだけでは済まされないシャレである。
よって、本年は「戦極姫〜戦乱に舞う乙女達〜」へKOTYの称号を贈呈したい。

最後に、名高き戦国大名であった武田信玄公の遺言を引用・改変して総評を締めたい。

「システムソフト・アルファーよ。
 明日こそ、βへの旗(フラグ)を立てよ」

(了)

総評案12 戦極姫大賞ver.

2008年のKOTYは「七英雄」と呼ばれた七つのクソゲー勢力によるバトルロワイヤルであった。
中でも、『メジャーWii パーフェクトクローザー』派と『ジャンライン』派の頂上決戦は熾烈を極め、
年明けから38日間、寝る間も惜しんで審議に明け暮れたKOTYスレは、決着と共に焦土と化していた。
だが、戦いを見届けたKOTYスレの住人が最初に気づいたのは、自らの内なる不穏な疼きだった。

「七英雄に勝るクソゲーが今年、現れることなどあるのだろうか……」

2月の終戦から一ヶ月が経過し、ひな祭りに世間が沸く3月3日、焼け野原に一輪の異様な花が咲いた。
前年度覇者を擁するタカラトミーが連覇を期して植えた種子『人生ゲーム』が開花したのである。
人生ゲームといえば、日本で40年以上愛され続けている、言わずと知れた不朽のボードゲームである。
だが、前年発売の『人生ゲームWii EX』の機能縮小版としてWiiWareでダウンロード販売された本作は、
一言で言うと「虚無」であった。予め用意された主人公と8つの職業を選ぶ以外のカスタマイズは一切できず、
「人生は同じことの繰り返し」とでも言わんばかりにマップはわずか20マスで1周し、BGMも1ループ19秒。
なおどちらも1種類のみしか無い。ミニゲームは全て削除され、数少ないイベントも一切画像が表示されない。
実際のゲーム内容は、目押し可能なルーレットで得た給料を「ハンバーグを焦がしたので3000万円没収」されるなど、
全体的に投げやり感にあふれており、「人生はクソゲー」という製作者達の深遠なメッセージを汲まざるを得ない。
なお、本作はこのような出来にもかかわらず、約1000円という低価格と「人生ゲーム」の安心のブランド性もあって
発売週から長くランキングに居座り続け、一説には10万人以上とされる相当数の被害者を出してしまった。

それから4月にかけて、厳しい審査の中で6本の選外送りが続き、漸く新たな息吹が生まれたのは5月。
経営状態の危ういジャレコから、新緑の芽吹きを祝福せんとばかりに送り出された『黄金の絆』である。
最大40秒のロードが頻繁に起こることを理由にファミ通で堅実な低得点(5 4 4 4)を得たこのアクションRPGは、
被ダメージ後の無敵時間が無く、敵に囲まれるとハメ殺されるという点で『デスクリムゾン』によく似ている。
ゲームバランスという概念は存在せず、レベル上げ無しでノーダメージで倒せる棒立ちの雑魚の群れに
時折「全く同じ姿で攻撃力が数倍の変異体」が混じっており、わけもわからず瞬殺されてタイトル画面送りになる。
売り文句の巨大ボスはラスボス含め5体いるが、実際は容姿や攻撃方法に至るまでほぼ全て使い回しであった。
また、製作者サイドの奇行も目立った。CMでは本編と全く関連性の無い映像に「ぼくたちの失敗」という曲を流し、
社長にいたっては本作を「クソゲー」と公言し、あまつさえ開発会社に責任転嫁し罵倒する始末。
公式サイトは「ハード・業界板」住人の遊び場として2ちゃんねる風の掲示板を提供する一方で、
「ドラゴンクエスト」、「モンハン」等の単語をHTML内に埋め込む掟破りの検索エンジン対策が露見した。
かつて『燃えろ!!プロ野球』で鳴らした古豪は見事、傍若無人の復活劇を成し遂げたと言えよう。

しかし、その後に続くものは無かった。恐れていた「日照り」がKOTYスレを襲ったのである。
旱魃は苛烈を極め、ノミネート境界線上の候補を何とかしてもっと再評価できないかとする議論もあった。
中でも、『Let’s 全力ヒッチハイク!!!!!!!!!』は今なおノミネートと選外の狭間で揺れている。
『人生ゲーム』と『黄金の絆』の間の時期に日本一ソフトウェアからWiiWareとして発売された本作は、
一言で言えば「バカゲーを作ろうとして失敗した意味不明ゲー」という目も当てられない悲惨なものである。
リモコン感度の格別の悪さや、ゲーム性やグラフィックにありありと見える手抜き感も低評価に拍車を掛けていた。
だが、約1000円という低価格と決定打の無さゆえ、『人生』と『黄金』の二強には一歩譲っていた。

11月、僥倖は唐突に訪れる。視界を覆う砂の海から、幻と見紛う一隻の巨大な「黒船」が現れたのである。
『戦極姫〜戦乱に舞う乙女達〜』、恋愛ADVと歴史戦略SLGを組み合わせたゲームである。
本作は昨年のエロゲー界KOTYにおいて『魔法少女アイ参』と覇権を争った問題作の移植版であり、
「修羅の国」からコンシューマ界を制圧すべく、PS2,PSPへの同時侵攻が突如発表されたのであった。
思いも寄らぬ黒船来襲に戦慄するKOTYスレであったが、「魔物」を待ち焦がれていたことも事実。
発売と同時に多くの勇者達が特攻し、想像を遥かに越えた凄惨な全貌が瞬く間に明らかにされていった。
まずは《仕様》。軍資金は0を下回ると上限値65536に化け、鉄砲の数が兵数を上回ると無敵の部隊が誕生する。
また、住民感情が石高の下数桁のみに呼応するため、数百万石の名君も徴兵のたびに一揆に脅かされる。
続いて《バグ》。武将が分裂増殖合体したり、見覚えのない武将がいつの間にか自軍に紛れ込むほか、
・敵の城を攻め落とすと、倒したばかりの敵が復活して、武将が出払った状態のこちらの城に攻めてくる。
・侵攻経路の無い自分の領地のど真ん中の城に、どこからともなく独立勢力が攻めてきて、勝手に全滅する。
・入ると二度と出られない通称「ブラックホール城」が全国各地に出現し、いつの間にか味方武将が巻き込まれている。
等、時空の乱れと怨念の入り混じった恐ろしい怪奇現象が次々とプレイヤーに襲いかかる。
《シナリオ》は移植に際して大人の都合で省略された結果、ヒロインとの恋愛過程が異様なまでに淡白になった。
また、その余波かフラグ管理も随所で破綻しており、新規追加キャラを仲間にする方法や固有イベントが存在しない。
《ヒロイン》達も「台詞と表示されるキャラが違う」、「台詞が文字化けしている」、「気付くと切腹していた」、
「バグ怖さにこまめにセーブしていたら、いつの間にかブラックホール城に飲み込まれていた」等、
もはや「愛などいらぬ!」とばかりに全力で嫌がらせの限りを尽くし、プレイヤーのやる気を根こそぎ奪い去る。
なお、これらのバグを確実に回避してクリアするためには乱数解析の知識と数百回のセーブ&ロードが必須となる。

一方、『戦極姫』の衝撃を受けて、その「兄」と言うべき、同じ会社が手がけた作品にも注目が集まっていた。
その名は『戦国天下統一』。三月に発売され、早い段階から潜在能力を指摘されていたがノミネートは免れていた。
いざ蓋を開けると、そこには今まで親しまれてきた「歴史戦略SLG」とは全く違う伏魔殿が広がっていた。
操作性は極悪の一語に尽き、一つの情報を見るのに何度も迂回させられ、その都度ロードが発生する。
攻城の際にはこれらの情報を一切参照できず、CPUのターンでは十数秒の長考が全国各地で群発する。
グラフィックについても全体的に異常なまでの安普請であり、PS初期の水準にも満たない殺風景な戦闘画面や
有名武将以外は全員兜と色を変えただけのモブ扱い(通称「モ武将」)の「顔面統一」仕様が精神的苦痛となる。
だが特筆すべきは、やり過ぎ感漂う過酷なゲームバランスである。《政略面》では同盟国が何の脈絡もなく裏切り、
忠臣なるものは存在せず、武将は皆いくら給料を上げても貪欲に不平を述べ、隙あらば出奔を企てる。
《戦略面》では数十倍の戦力差が「疲労度」の概念一つで覆され、弓兵や銃兵が騎馬兵の突撃に傷一つ負わず、
説明書に一切説明の無い「強襲」コマンドは小田原城をはじめとする天下の堅城をわずか1ターンで陥落させる。
また、海上移動には航路や距離の概念が存在せず、東北の武将が九州の城に急襲してくることも日常茶飯事である。
かくして、『戦国天下統一』、『戦極姫』と連続で核地雷を世に出した「システムソフト・アルファー」(SSα)は、
かつて歴史ゲームでKOEIと並び称された『天下統一』ブランドを完全に食い潰し、一躍その名をクソゲー界に轟かせた。

さて、以上粒ぞろいの四作品の紹介を終えたところで、今年度のKOTYを発表することとしよう。
混戦を制し、見事栄冠を勝ち獲ったソフト……それは『戦極姫〜戦乱に舞う乙女達〜』である。
まず、内容の希薄さはもちろんのこと、悪夢のようなバグの数々が強烈な印象を与えたことが挙げられる。
中でも、コンシューマ移植にあたって新たに発生し、猛威をふるった「ブラックホール城」バグの存在には、
「ブラックホール爆弾」と呼ばれたかつての宿敵『魔法少女アイ参』との数奇な運命を感じざるを得ない。
だが、最終的な決め手となったのは発売元であるSSαの、人の道を外れた極悪非道の姿勢であろう。
データ解析により未使用のCGや大人の都合で消されたはずの音声が発見され、SSα側の真意に不信感が募る中、
マイナー改訂版の『戦極姫2』発売が突如発表され、本作が製品未満のα版であったことが正式に判明した。
それまで「有償デバッグ」を自称し、辛抱強く攻略に取り組んでいた本スレ住人もこれには心を折られ、
KOTYスレもまた、アイディアファクトリーも真っ青の最低限の顧客すら踏みにじる搾取体制に戦慄が走った。
移植に際して新たに敏腕萌え絵師を雇い、初週のみで1万人以上の犠牲者を釣り上げたことも忘れてはならない。

2009年もまた、2008年と同じく偉大なる前年の英雄達の威光にどこか怯えながら幕を開けた。
待つべきか、妥協すべきか。意欲作を軒並み選外送りにする日々の中で、皆が「魔物」に焦がれていた。
結果としてノミネートした四者……虚無を極めた『人生ゲーム』、古えの魔王ジャレコの再臨『黄金の絆』、
覇道の宿命を抱き転生を果たした『戦極姫』、過去の栄光の堕落を象徴する『戦国天下統一』は、
前年の「七英雄」に変わる「四魔貴族」として、混迷極まる次代を担う役目を立派に果たしたと言えよう。
七英雄によって焦土と化したこの不毛な大地においても、気づけば新たな生命が逞しく根を張っていた。
クソゲー界は常に流転し、絶え間なく生まれ変わっているのである。

今年度のクソゲーを統括するならば、ゲームをする上での「苦痛」が鍵となっていたと言えるだろう。
幾多もの試練に耐えてクソゲーをやり遂げ、そのクソさについて情報を発信し続けた『戦極姫』スレ住人並びに、
厳しい戦いを終えたばかりの全ての勇者達へ、あらん限りの賛辞を送らねばなるまい。
見事栄冠に輝いた『戦極姫』のOPテーマソングの中から、以下の一節を引用してKOTY 2009の結びとしたい。

「こころ
        折れても 
                 離さぬように……」

総評案13 戦極姫大賞Ver

2008年のKOTYは、「七英雄」と呼ばれる七大クソゲーによるバトルロワイヤルであった。
特に、『メジャーWii パーフェクトクローザー』と『ジャンライン』の頂上決戦は
年が明けてなお一ヶ月以上に渡って繰り広げられ、決着が付いた時にはKOTYスレは焦土と化していた。
だが、戦いを終えたばかりで疲れきっているはずのスレ住人達の胸には、早くも去年と全く同じ不安が芽生え始めていた。

「七英雄と肩を並べるようなクソゲーが今年、現れることなどあるのだろうか……」

2月の終戦から一ヶ月、ひな祭りに世間が沸く3月3日、焼け野原に小さな春が訪れた。
連覇を狙うタカラトミーが、WiiWareにてダウンロード販売し始めた『人生ゲーム』(通称『人生』)である。
本作は前年発売の『人生ゲームWii EX』の機能縮小版として発売され、価格は1000Wiiポイント(1000円相当)。
人生ゲームと言えば、40年以上前の発売から常にパーティーを盛り上げてきた安心の「ブランド」である。
だが、本作は「人生ゲーム」から「人生」と「ゲーム」を取り除いた《虚無ゲー》、否、《ゲー無》であった。
なんと今回の人生ゲームは、ミニゲームやお邪魔カードなどのパーティー要素が全て削除され、
主人公の名前を決めることもできず、子供時代、結婚、転職などの人生を彩る要素も一切無い。
マップはわずか20マスで一周し、BGMは20秒足らずでループする。その上どちらも一種類しかない。
イベントは文字が表示されるだけで、その内容も「ハンバーグが焦げたので3000万円没収」など投げやり感に満ちている。
もはやゲームと言うより「苦行」に等しく、本来短すぎるはずの15ターンでの強制エンディングすら救済措置に感じられる。
また、本作には実体が無いため、売ったり投げ捨てたりして怒りを発散することもできず、ただひたすら虚無感が残るのみである。
ともあれ、本作は低価格とブランドを武器に、長期に及んでWiiWare売上げランキング1位に居座り続け、
「クソゲーはさらなるクソゲーに生まれ変わり、ダウンロード専用ソフトという新天地でも生き残る」
という新たな脅威を世に知らしめた。

前年覇者が早くも名乗りを上げ、まずまずの滑り出しとなったが、スレ住民はまだ安心していなかった。
前々年の「四八ショック」、前年の「七英雄」によって目の肥えたKOTYスレでは、例年に無く厳しい審査が続いていた。

6本の選外送りが続いたのち、ようやく新緑が芽吹いたのは5月。
ジャレコが放った渾身の3DアクションRPG『黄金の絆』(通称『絆』)の登場であった。
かつて『燃えろ!!プロ野球』で名を馳せた古豪の復活を、ファミ通編集部も誠実な低得点(5 4 4 4)で歓迎している。
主な内容は、「最大40秒のロードの嵐に耐えつつ、棒立ちの雑魚の群れをノーダメージで殺戮してゆく」というものだが、
時折「他の雑魚と全く見分けが付かない、攻撃力が異常な変異体」が混じっており、HP全快状態からでも一撃で撲殺される。
単調な作業から一転していきなりタイトル画面に戻されるゲームバランスはさすがジャレコと言ったところか。
「売り」である巨大モンスターはラスボス・隠しボス含めて5体いるが、
実際はどれも色違いのそっくりさんであり、行動パターンから死に際の演出に至るまでほぼ全て使い回しである。
また、製作者サイドの奇行もスレに話題を提供し続けた。
CMは名古屋城の金のシャチホコをバックに、「ぼくたちの失敗」という曲を流すだけの意味不明なもので、
社長にいたっては何度も自社作品を「クソゲー」とこき下ろし、あまつさえ「あのクソ開発会社め!」と責任転嫁する始末。
公式サイトはなぜか2ch風の掲示板を設置し、「ゲーム業界・ハード板」住人などの遊び場を提供する一方で、
HTML内に「ドラゴンクエスト」、「モンハン」等の単語をこっそり埋め込み、Google等の検索結果の操作を企んでいた。
冗談では済まされない経営状態にも関わらず、全力疾走をやめないジャレコの姿勢には惜しみない喝采が送られた。

しかし、その後に続くものは無かった。
KOTYスレが最も恐れていた「日照り」の到来であった。
日照りは厳しく、ノミネートと選外の境界にある候補を何とかして再評価できないかとする議論もあった。
中でも、『Let’s 全力ヒッチハイク!!!!!!!!!』を推す声は多かった。
日本一ソフトウェアから、『人生』と同じくWiiWareとして発売された本作は、
一言で言えば「バカゲーを作ろうとして完全に滑ってしまった意味不明ゲー」である。
道行く車を止めるためにポーズを取らされるのだが、リモコン感度が異常に悪いため何度もゲームオーバーにさせられ、
とってつけたようなすごろくパートのゲーム性や手抜き感漂うグラフィックも評価を下げる。
だが、1000Wiiポイントという低価格と決定打の無さゆえ、『人生』と『絆』の二強には一歩譲っていた。

11月、半年間の日照りで兵糧の尽きかけたKOTYスレに、「黒船」は唐突に訪れた。
『戦極姫〜戦乱に舞う乙女達〜』(通称『姫』、『戦極姫』)。
萌えキャラ化した戦国武将達と恋愛しながら天下統一を目指す「本格戦国シミュレーション恋愛アドベンチャー」である。
本作品は、もともと昨年エロゲー板のKOTYにノミネートされた問題作であり、
PS2,PSPへの同時移植は、修羅の国であるエロゲー業界からコンシューマ業界のKOTYに侵攻が開始された歴史的瞬間であった。
思いも寄らぬ来訪者にKOTYスレは戦慄したが、「魔物」を渇望していたことも事実である。
発売と同時に多くの勇者達が特攻し、想像を遥かに越える全貌を瞬く間に明らかにしていった。
まず《歴史SLG》としてはどうだろうか。
メーカー自身が本作の魅力として「奥深い戦略」を豪語するだけあって、
0を下回ると上限値65536に化ける「軍資金」や、
兵数が欠けて鉄砲が余るとなぜか無敵の部隊が誕生する「軍備フェイズ」、
一度でも行うと住民感情が一揆寸前まで悪化しかねない「徴兵」コマンドなど、確かに常人には理解できない概念が多い。
メーカーは認めていないが、何者かの怨念の仕業としか思えない怪奇現象が数多く存在するのも特徴である。
武将が分裂増殖合体したり、見覚えのない武将がいつの間にか自軍に紛れ込んだりするのは瑣末なことに過ぎず、
「敵軍の武将を説得で引き抜いたが、次のターンには居場所がどこにも見当たらない地縛霊と化していた」
「敵の城を攻め落としたら、倒した直後に敵が復活して、ガラ空きになった自陣に攻めてきた」
「自陣のど真ん中の城にどこからともなく独立勢力が攻めてきて、勝手に全滅していった」
などの報告が攻略スレに相次いでいる。
また、いつの間にか自陣の城に見知らぬ武将が住み着いていることがあるが、
そのような城は入ったが最後、もう二度と外に出ることはできないため、「ブラックホール城」と呼ばれており、
中盤以降全国各地に出現し、知らぬ間に味方武将が巻き込まれているという悲劇が多発する。
続いて《恋愛AVG》としての評価を紹介しよう。
シナリオは移植に際して(大人の都合で)大幅にカットされており、
プレイヤーに全く説明の無いまま、主人公とヒロインがいつの間にか男女の仲になっている。
フラグ管理も随所で破綻しており、新たに追加された萌え武将を仲間にする方法が未だに見つかっていない。
ヒロインである戦国武将達は原画家の変更によって魅力を増したが、美しい花にはトゲがつきものである。
「イベント中にいきなり全く違うキャラの絵になってしまった」
「台詞が文字化けしていて何を言っているのか分からない」
「顔の上にバグった顔が重なっていて、ズレた部分がヅラにしか見えない」
「ブラックホール城に飲み込まれていたのに気付かず、セーブしてしまった」
など、嫌がらせのような現象が多発し、数多くのプレイヤーのやる気を根こそぎ奪い去っていった。
なお、これらのバグに加えてゲームバランスも崩壊しており、乱数調整と数百回のセーブ&ロードなしではクリアすら難しい。

さらに、『姫』の衝撃と前後して、同じ会社から出た別の作品が注目を集め始めていた。
その名は『戦国天下統一』。三月に発売され、早い段階からノミネートの可能性を指摘されていた歴史SLGである。
特に理由もなく敬遠されていた本作であるが、些細なきっかけからメスが入り、とんでもない伏兵だった事が判明した。
操作性は「極悪」と言うほかなく、城攻めの画面では必要なデータをほとんど参照できず、
一つの情報を見るために何度もたらい回しにされ、そのたびに数秒のロードが発生する。
加えて敵勢力は日本全国で十数秒の長考を頻繁に行い、その間プレイヤーが操作不能な時間は数分にも及ぶ。
グラフィックについても異常なまでに低品質であり、特に戦闘画面はPS初期の水準にも満たず、
「3500人以上」と謳われた武将も、有名武将以外は兜と色を変えただけのモブ扱い(通称「モ武将」)という「顔面統一」仕様。
だが特筆すべきは、あまりにも過酷なゲームバランスであろう。
《政略面》では、同盟国が何の脈絡もなく裏切り、
政略結婚で他国の姫が嫁いできても次のターンには勝手に出家され、
武将は皆いくら給料を上げても貪欲に不満を述べ、隙あらば出奔を企てる。
《戦略面》では、数十倍の戦力差が「疲労度」の概念一つで覆され、
軽装なはずの弓兵や鉄砲兵が騎馬兵の突撃に傷一つ負わないなど、今までの常識を根本から覆している。
また、説明書を読んでもほとんど効果が分からない種々のコマンドの中に「強襲」というものがあり、
これを使えば小田原城をはじめとする天下の堅城がわずか1ターンで陥落する。
海上移動には「航路」や「距離」の概念が存在せず、東北の武将が九州の城を急襲することも平然と起こりうる。
かくして、『戦国天下統一』、『姫』と連続で核地雷を世に出した「システムソフト・アルファー」(SSα)は、
かつて歴史ゲームで『信長の野望』と並び称された『天下統一』ブランドを完全に食い潰し、一躍その名をKOTYスレに轟かせた。

以上、候補作を紹介し終えたところで、今年度のKOTYを発表することとしよう。
混戦を征し、見事栄冠を勝ち取ったソフト……それは『戦極姫〜戦乱に舞う乙女達〜』である。
受賞理由としては完成度の低さはもちろんのこと、強烈に記憶に残る悪夢のようなバグの数々が挙げられる。
だが、発売元であるSSαの極悪非道な搾取体制も付け加えておかねばなるまい。
次々と明るみになってゆくバグについて、サポートや釈明を一切行おうとしないメーカー側の良識が問われる中、
SSαは本作のバージョンアップ版と見られる『戦極姫2』をエロゲーとして発売することを突如発表し、
かたや製品未満のβ版、否、α版とでも言うべきコンシューマ版を掴まされた購入者達からは断末魔の悲鳴が上がった。
また、データ解析で見つかった不適切な音声や未使用CGは、「完全版」の発売が既定路線だった可能性を示唆していた。
これには、それまで仏のように寛大な心で「有料デバッグ」に取り組んでいた『姫』スレ住人達もついに堪忍袋の緒が切れ、
KOTYスレもまた、最低限のファンすら平然と踏みにじったSSαのやり方に驚愕させられた。
なお、時同じくして携帯ゲーム機版KOTYでは、並みいる強敵を抑えてPSP版『戦極姫』が大賞に決定しており、
ここに、姉妹作によるKOTY二部門制覇という偉業が達成されたことを特記しておく。
両機種合わせて初週のみで1万人以上も生まれたとされる本作の被害者には合掌せざるを得ない。

2009年もまた、2008年と同じく不安に満ちた幕開けであった。
待つべきか、妥協すべきか……
意欲作を軒並み「選外」送りにする日々の中で、誰もが心の奥底で「魔物」の到来を待ちかねていた。
そうした中で厳選された4作品……
虚無を極めた『人生ゲーム』、
古えの魔王ジャレコの再臨『黄金の絆』、
覇道の宿命を抱き転生を果たした『戦極姫〜戦乱に舞う乙女達〜』、
過去の栄光の堕落を象徴する『戦国天下統一』は、
前年の「七英雄」に代わる「四魔貴族」として、混迷する新世代の旗手を立派に務めたと言えよう。
七英雄によって焦土と化したこの不毛な大地においても、気づけば新たな生命がたくましく根を張っていたのである。

最後に、見事栄冠に輝いた『戦極姫』の販売元であり、
今年度のKOTYスレに最も話題を提供した「システムソフト・アルファー」に、
スレ住民からのメッセージを贈ることでKOTY 2009を締めくくることとする。

「α版のまま売るのは社名だけにしてください」