名称 | ヘビーファイア アフガニスタン | |
ジャンル | レールシューティング | |
対応機種 | PlayStation3 | |
発売元 | ハムスター | |
開発元 | Teyon | |
発売日 | 2012年8月16日 | |
価格 | 5,980円 (税込) | |
対象年齢 | CERO:C(15歳以上対象) |
北米にてPS3・Wii・PCのトリプルマルチで発売された同タイトルの日本語ローカライズ版。よく間違われるがFPSではなくレールシューティングである。
低価格ながら本格的なガンシューティングが楽しめるということで人気の高い「ヘビーファイア」シリーズの3作目で、今作は現代アフガニスタンが舞台。
その北米エリアでWiiwareのDL数一位を記録したと言う、正直住人的には『人生ゲーム(Wiiware版)』の経験からして全く当てにならない実績を掲げて堂々販売。
一応グラフィックは次世代機として申し分ない出来だったが、その他の部分で何一つ褒めるべき所が無く、レビュアー達から揃って最悪の評価をつけられる結果に。
スレでの呼称は主に「アフガン」。他にゲーム内で主人公が叫ぶスラング「ふぅあー!(通称)」がその可笑しさから住人達の心を掴み、挨拶などに幅広く使われている。
8月16日。
そのゲームは突如日本のゲーム市場に登場した。
「北米で人気のレール・ガンシューティング」のキャッチフレーズで海外から殴り込みをかけたその作品は
戦場をモチーフにしたゲームに慣れたプレイヤー達に衝撃を与えた。
ヘビーファイアアフガニスタン。
北米市場では主にWiiwareで配信され
低価格ながらも本格的なシューティングが楽しめることで知られるシリーズの一作である。
最新作に当たる本作はwii/PS3/PCのマルチ用に開発され
ローカライズの形でPS3版のみが日本で発売されている。
その一見ハードそうな内容を思わせるパッケージデザインと
シリーズでWiiWareNOAエリアで1位を記録した実績から
本格的なシューティングゲームを連想したユーザーも多いかもしれない。
だがふたを開けてみれば、そこには不満とストレスが混在する美しいまでのクソっぷりが待ち受けていた。
まずはインタフェースである。
Move操作を要求するゲームであるにもかかわらず
キャリブレーション(タイムクライシス等にあるガンコンの調整に相当するもの)がゲーム開始前にないのである。
そのため、テレビやEyeの設置箇所によっては照準が派手にぶれることあり
コントローラーと照準の動きがバラバラのままゲームスタートすることになる。
加えて、キャリブレーションを行うためには「設定画面>コントローラー>照準設定」と選ぶ必要があるのだが
メニュー画面のボタンがやたらと小さく、正しい照準でも狙いづらいのである。
万一キャリブレーションを行わずにプレイを始めた場合
頻繁に画面の3分の1にMoveが感知できないとの警告が表示され
プレイの妨げになる(プレイ進行自体は止まらない)。
狂った照準で狙いづらいメニューバーを選択するという過酷な試練がゲーム開始前から用意されているとは
さすがは本格的な戦争ゲームである。
なおこの事は、わずか5Pの取扱説明書(オールモノクロ)には当然のごとく記載されていない。
困難な設定を乗り越えて到達した戦場で待ち受けているのは
美麗なグラフィックと躍動感あるカメラワークで映し出されるヘリの内部。
兵士の視点からロープで戦地に投下
戦車や戦友とともに戦場へとかり出す姿に心躍らされるのもつかの間
銃撃とともにシュールな光景が一気に広がる。
シームレスにシューティング画面に切り替わるとカメラはぴたりと止まり
ロボットのようなもっさりした動きで敵が迫ってくる。
意味も無くローリングし、至近距離であさっての方向に乱射するなど
まるで初期のレールシューティングのようなモーションを行う。
華麗なグラフィックの中での一連の敵の動作は
とてつもない違和感を覚えさせてくれる。
さらにサウンドエフェクトもひどく、まるでサイレンサーを付けているかのような軽い射撃音である。
ヒット時の音声もあってないようなものであり
遠くの敵はあまりにも離れすぎているため当たったかどうかすら確認できない
(照準器という便利なものが付いている気もするが、たぶん気のせいだろう)
加えて敵からのダメージも画面に小さく穴が開くだけであり、被弾したことに気付かないこともままある。
こうしたプレイ中のしょぼさは終盤まで続き、迫力のデモシーンと相まってとてつもないグダグダ感を演出している。
終盤で入手するロケットランチャーの爆発音でさえ
ポップコーンの仕上がりのような音である(命中する位置によっては、音さえしない)。
操作中に心の支えとなるのは、テンションが上がった時の主人公の「ふぅあー!」ぐらいだろうか。
(一応、最終的に得られる軽機関銃の連射音は比較的まとも、ただしヒット音は・・・・)
初見では残念な演出に隠れがちではあるが
レールシューティングとしてのゲーム性にも問題がある。
敵の命中率が著しく悪い序盤はよいものの
中盤から突如敵の命中率が向上しライフを奪う弾丸が頻繁に飛んでくるようになる。
そこでこのゲームにおけるレールシューティングとしてのあるまじき仕様が露呈する。
まず第一に、ダメージ後の無敵時間がまったくない。
画面上に致命弾を撃つ敵が複数いれば、そのまま連続でダメージが入ることになる。
しかも、これらの敵の中には画面の両端から同時に致命弾を撃ってくる場合もあり
こうなると隠れる以外の選択肢はないが、隠れることができないシーンもある。
加えて、隠れる動作中にも敵がこちらを捕捉し狙ってくる場合もある。
グレネードを投げることも出来るが、モーションが非常に遅く
画面上の敵全てを一掃できるわけではないので所詮は焼け石に水である。
一人称や三人称視点のシューティング(FPS/TPS)のように自ら移動を行うゲームでならよくある仕様だが
レールシューティングである本作では勝手が違う。
基本的に全ての移動は自動的に行われるため安全地帯の確保が出来ず
ほぼ確実にダメージが入る場面に遭遇することになる。
(複数プレイの場合、個別の敵に対処すればかろうじてダメージ回避は可能かもしれないが
3〜4人同時に致命弾を撃ってくる場合もあるので全員の意思疎通が不可欠)
しかも、リトライしてもダメージ残量はチェックポイント通過時のままなので、場合によっては詰むことになる。
FPSと間違えて購入し憤るユーザーの声もあるが、開発側がFPSと間違えて作ったのではないかと疑いたくもなる。
この他にもプレイヤーにストレスをかける不親切な部分やツッコミどころが数多く存在する。
まず総ステージ数であるが、パッケージでは20以上の多彩なミッションと書かれてある。
しかし実際は12ミッションがそれぞれ二つの難易度で遊べるだけである。
一本一本はレールシューティングとしては平均的な長さだが
なぜか途中にどうみてもチュートリアル用の射的ミッションが2つも挟まれる(これをカウントすると14ミッション)
ヘリや戦車でのミッション、人質救出もあるとうたわれているが、それぞれ一本ずつしかない。
しかも人質は全員殺害しても、全員救出扱いである(ポイントは減るが)
2つある難易度も、どちらも敵が基本的に1撃で倒れ(車や戦車もあるが、こちらも難易度による違いがあまりない)
配置にも差が無く、細かい違いとしてはアイテムの配置や敵の命中率の若干の向上ぐらいが挙げられる。
唯一明快なのが、ステージの明暗の違いである。
逆光や影がさらに強調され、敵がほとんど見えなくなるのである。
ただでさえルーキーモードでも逆光や影で非常に見えづらい敵が
大勢いたにもかかわらず、その数が増えるのである。
だが、はっきり言って探す手間が増えるだけの、ただの手抜きである。
これでステージ数を倍にしているというのであるから、立派な水増しと言えよう。
ステージ自体もルート分岐が無く、全て決められた道をただ進むだけの一本道である。
途中、幾度かMoveによるQTEが発生するが、これによる分岐は当然ない。
「倒れてくる鉄塔を避ける」「爆弾を回避する」等のQTEを失敗しても演出は変わらず
ただボーナスポイントが加算されないだけである。
成功する度に主人公が叫ぶ「ふぅあー!」がただむなしく響くだけである。
加えて、はしごを上るモーションもMoveで行うが
こちらは何度も上方向にMoveを押し上げることになり、めんどくさい作業でしかない。
武器の強化要素も一応はあるが
戦争ゲームにしてはカスタマイズの幅が非常に狭く
弾薬とグレネードの増加、HPの増強とメイン武器の種類の追加(最大4つ)しかない。
しかも武器の切り替えはこのカスタマイズ画面でしか出来ず
別の武器に変えるためには全てのステータスを毎回リセットする必要がある。
プレイ中にはメイン武器(マシンガン系)とハンドガン(カスタマイズ不可)を交互に使うが
交換はメインが弾切れを起こした時だけとなる。
しかも弾薬補填アイテムを拾ったときには
自動的にメイン武器のリロードが始まるため、敵の弾幕に晒されるリスクを伴う。
余談ではあるが、画面上に表示される自分の武器のせいで
敵が隠れてしまう場面もあるので、探すときには注意する必要がある。
一応オンライン対応ではあるもののあくまでもランキングの反映のみであり
Coopプレイはオフライン限定となっている。
最大4人まで同時にプレイできるとのことだが
ノーダメージを目指す以外に同じ画面の前で4人同時に遊ぶ価値があるかははなはだ疑問である。
元々海外で発売されたこのゲームはローカライズ化に伴い日本用に翻訳されているが
日本語音声は収録されていない。
追加されているのは字幕のみであるが
画面の中央に何行もの文章が並べられるとは誰が想像しただろうか。
フォントも読みやすいとは到底言えず
場面によっては逆光により全く文字が見えないシーンもある。
酷いときには敵との銃撃戦中に指令が表示され、見事に敵を覆い隠すのである。
上記のMoveの認識が出来ない表示と同時に表示されると
画面半分が見えないことにもなりかねないのである。
このように数々の不満点、不親切な要素をたぶんに含み
内容も充実しているとは言いがたいにも関わらず
値段はなんとフルプライス(約6000円)である。
しかも元々の価格は19.90ドルであり
ローカライズによる画面を見えづらくする字幕が追加されての値段である。
派手なPVにだまされ、本格的なFPSと勘違いして突撃した兵士達に同情したい気分にもなる。
だがこのゲームは、レールシューティングとしての理不尽さと値段に釣り合わない内容を通じて
戦争のむなしさを我々に伝えてくれているのかもしれない。
そんなゲームを輸入しローカライズで
さらに不満点を追加したハムスター(ゲーム会社)には敬礼ととも最大のふぅあー!を送りたい。