2016年 次点

概要

名称Project Root
ジャンル全方位シューティング
対応機種PS4
発売元クロスファンクション
開発元OPQAM
発売日2016年3月25日
価格1079円 (税込価額)
対象年齢CERO:A (全年齢対象)

参考動画

選評

選評1

2016年春、パナマのとある法律事務所から膨大な量の機密文章が流出し、
世界の名だたる裕福層の税金逃れが発覚した。これがいわゆる「パナマ文章」である。
この世界を揺るがす大事件の裏で、
南米より生まれしとあるゲームが人知れず日本に上陸していた。
それが『Project root』である。
約1000円という価格競争力で日本のゲーム市場に殴り込みをかけたこのゲームは、
その安さにも関わらずプレイヤーの期待を遥かに下回る出来だった。

※開発OPQAM
 価格1079円

システム
当ゲームは全方位のシューティングゲームで、ファミコンの名作「バンゲリングベイ」が想起される。
これに「ドラゴンスピリット」の対地攻撃の概念を組み合わせたようなゲームである。
そして、8つのステージ※が「イージー」「ノーマル」「ハード」、三つの難易度でプレイ可能である。
また、当ゲームは被弾したら自機が即座に無くなるのではなく、被弾することでライフバーが徐々に減っていきライフバーが底をつくことで残機が没収される。
ステージをクリアすることでポイントが溜まり、そのポイントを消費することで、機動性、防御性、攻撃力などが強化できる。
以上を踏まえたうえでプロジェクトルートの実態を紐解いていこう。

※チュートリアルは除く
何故かこれも難易度ごとにあるが、内容は全く変わらない

取りあえず押さえておきたいのは、このゲームに目立ったバグや、
明らかに不可解な仕様といった致命的な欠陥は存在しないということである。
要するにゲームとしてはよく纏まっており、遊ぶことになんら支障はない。
だが、その一方で価格以外は何一つ褒めるべき点を持ち合わせていないという側面も持っている。
どういうことかというと、全方面でぬかりなく及第点以下の品質しか持ち合わせていないのである。

ストーリー?
まずはその個性的な「キャラクターの外見」について触れておこう。
このゲームの主な登場人物は、見る角度によって老け込み方が変わる主人公「ランス」と、
見た目がほぼオッサンのヒロイン「シンチ」の二人である。
主にこの二人の画像による紙芝居でストーリーが説明されていくのだが、画像枚数が驚くほど少なく、
出撃前の紙芝居に用意された画像はランスとシンチが一枚ずつ……つまりたったの二枚である。
プレイヤーはこの二枚の画像によるバタ臭い単調な紙芝居を最後まで見るハメになる。
エンディングすらも数枚の画像による紙芝居で片付けられ、
ボタンを押したら途端に八年もの月日が経過するという南米流の演出には舌を巻かされる。
ちなみにエンディング用に書き下ろされた画像は一枚だけである。

そのほかプレイ中にも会話でストーリーが補完されていくが、
それらは画面右下の小さなウィンドウで展開されるためなかなか注意が向かず、ストーリーが頭に入ってこない。
いつの間にか、見知らぬオッサン※が驚いていたり、誰かを処刑していたりするが、プレイヤーにとっては対岸の紙芝居にすぎない。
だが、くだらない茶番でプレイヤーの視界を妨げないという点ではむしろプラスに評価すべきだろう。
ストーリー全般に言えることだが、音声が無い上に演出という概念を導入していないので、全く感情移入できないという点ではマイナス評価だろう。

※ニコラス・ガウス 敵組織の保安隊で「死神」の二つ名を持つ。
エンディングで生死が曖昧にされる

画面
全方位のシューティングゲームなのにも関わらず自機が画面の下に固定されている。
このため自機の背後が完全な死角となり、プレイヤーは画面外からの攻撃に晒される。
また、ステージがそこそこ広いにも関わらず、マップ及びミニマップが存在しない。
レーダーはあるので一応目標がある方角だけは分かるようになっているが、
その他障害物や壁の類は近寄るまで存在を知ることが出来ない。

敵?
地上の敵と空中の敵が存在するが、とりわけ厄介な攻撃に絞って記述する。

誘導ミサイル
非常に優秀な追尾性を持つ。
誘導ミサイルはプレイヤーの死角を存分に利用し、自機の脇を潜り抜けた後、
画面外で水泳選手張りのクイックターンを決めて自機の背後を襲う。
このため「背後に敵がいると思ったら避けたはずの誘導弾だった」という現象が度々発生する。

追尾弾
こちらは威力が高い上に持続時間がやたら長く、呪縛霊のように延々とプレイヤーを追い回す。
一帯の敵を全滅させたのにも関わらず、倒した敵の弾から数秒間逃げ惑う姿はなかなか他では見られない光景だろう。

これらが通常のばら撒き弾に混じって四方八方からプレイヤーを襲うため、弾を避け切るのは至難の業。
そもそも自機の辺り判定が妙に大きい上に、最初は自機のスピードも遅いので囲まれたら生き残るのは難しい。

というより敵そのものがかなりしつこく、「敵など知るか」とスルーしようものなら道中で出会った敵が大所帯で自機に群がってくる。
運が悪ければそのまま壁に追い詰められてライフバーはたちまち底をつく。
そもそも機体の速度が未熟なうちは、逃げようにもあっという間に追いつかれ、
自機に横付けされてゼロ距離砲火をくらうことになる

自機の攻撃について
ちなみに前者の誘導ミサイルを撃つ敵の大半は地上の敵なのだが、ここに難易度を上げるひと工夫がある。
それは、対地攻撃のショボさである。
先述した通り、このゲームは地上の敵と空中の敵をそれぞれ別の武装で倒す必要がある。
対地攻撃は自機から少し離れた所に青い光弾を投擲するのだが、この対地攻撃の攻撃範囲が針の先のように狭い。
大きい敵を倒すときはともかく、小さな敵にこれを当てるには自機を小刻みに動かして着弾地点を調整する必要がある。
プレイヤーは弾の雨をかいくぐりながら二階から目薬をさしまくることになるのである。

自機の攻撃について?
このゲームでは通常のショットを強化することが出来る。
……のだが、他のSTGのように攻撃範囲や攻撃力が劇的に変わるわけではなく、ショット一発一発の弾が微妙に太くなるだけである。
見栄えが殆ど変わらないばかりか、広範囲に拡散したり、敵を貫通したりすることもない。
このゲームの強化は目で確認するものではなく、体感でそこはかとなく察するものである、ということをここに記しておこう。
当然、攻撃範囲は変わらない上に対地攻撃の効率が悪いので大勢の敵を相手にした時に火力で押し負けてしまうのである。

この欠陥を補うべく「特殊武器」という概念が当ゲームには備わっている。
これは敵を倒すことで3〜5発(特定の項目にポイントを振ると増える)手に入るいわばボムのようなもので、次のようなものがある。
 ・敵を追尾するも、撃ちもらしも多い誘導弾。
 ・グラフィックが誘導弾と全く同じでファイバー状に拡散するロケット弾。
 ・有効時間が妙に短いレーザー兵器。
 ・画面上の弾を消す電磁パルス。
 
など、かゆい所に手が届かない仕様となっている。
こんなもので無いよりましなので、それなりにお世話にことになる。
この他、運が良ければ敵が残機1upや回復アイテム、またはバリアを落とすので、
そちらのほうが遥かに攻略の助けになろう。

まとめ?

 ・敵が強い
 ・死角が多い
 ・自機の火力は低い
 ・自機の攻撃が当たりづらい
 ・大勢の敵を相手にするのは難しい
 ・敵は回復アイテムや1upを落とす
 
 こうした事情が重なった結果、
 敵が有用なアイテムを落とすことを祈りつつ、孤立している敵を片っ端から殲滅し、
 纏まった敵は外周から徐々に戦力を削っていく、などの地味な戦法を取らざるをえなくなるだろう。
 敵が1upをどれだけ落とすかで攻略の成功率が大きく変わるのも致し方ない。
 それを見越してか、最終面では無限沸きする敵が低確率で1upを落とすことが判明しており、
 最終面では無限に沸いてくる敵を淡々と狩って残機を増やしまくり、
 有無を言わせぬ物量で押し切るのが最善手とされている。

 ちなみに無限沸きする敵自体はどこにでも登場するのだが、このゲームには時間制限が無いので延々とスコアを稼ぐことが可能で、
 スコアアタックのシステムが完全に崩壊していることも補足しておこう。

ただ難しいというだけなら他のSTGでも事情は同じなのだが、その難易度にたいする対応の仕方に問題がある。
敵の苛烈にして美しい弾幕を華麗に掻い潜り、敵に一撃必殺の痛打を与える、といった爽快感は皆無で、
先ほど述べた通りプレイヤーは敵の戦力を地道に削りアイテムの引きをたのんでゴリ押しするなどの地味な戦法を取らざるを得ない。
敵や弾のバリエーションも少なく、基本的には似たようなことを延々とやらされる。
しかも1ステージごとの攻略時間は大体平均で20分と異様に長く、その間に何十回とループする単調なBGMが苦痛に拍車をかけている。
五時間プレイすると「忍耐」というトロフィーが解放されるが、攻略にはまさに並外れた忍耐力が要求されるのである。

ただし、機体の性能を上げればそこそこ快適には遊ぶことができる。
また、初見でもそれなりにゲームを進行させることは出来るので全体的に見ればゲームバランス事態は悪くないと思われる。
が、そもそも根本的に面白くないので機体を強化し終えるまでモチベーションが続かない可能性は大いにある。
その証拠に4月11日※の時点でステージ2をクリアした人間が二割しかなく、イージーで全ステージをクリアした人間に至っては5%にとどまっている。
殆どのトロフィーが「レア」以上なのは特筆すべきだろう。

※発売日は3月25日

行けども行けどもプレイしていて目新しいものが無く、漠然とした退屈の果てに単調な紙芝居が待っている。
故に、プレイヤーは感情の起伏を殆ど生じさせることなくこのゲームをプレイし終えることになるだろう。
このゲームは全てにおいて驚くほど低い水準でまとまっている……裏を返せば、このゲームには革新性というものが全くない。
全くもって新しいことをやろうとしなかった。……その一点においては無謀な冒険をやらかして便器に散っていったクソゲー達に劣っているのかもしれない。

付録
トロフィーの取得率 2016/4/11 22:31
ステージ1をクリアする 54.9%
ステージ2をクリアする 22.5%
ステージ3をクリアする 14.8%
ステージ4をクリアする 12.0%
ステージ5をクリアする 10.9%
ステージ6をクリアする 8.7%
ステージ7をクリアする 7.1% 
イージーでゲームクリア 4.9%
ノーマルでゲームクリア 0.5%
ハードでゲームクリア 0.5%
忍耐(五時間プレイ) 8.7%