名称 | ドラゴンボール アルティメットブラスト |
ジャンル | 3D対戦アクション |
対応機種 | PlayStation3 / Xbox 360 |
発売元 | バンダイナムコゲームス |
開発元 | |
発売日 | 2011年12月8日 |
価格 | 7,330円(税込) |
対象年齢 | CERO:A(全年齢) |
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鳥山明氏による漫画『ドラゴンボール』(以降『DB』表記)は国民的な人気を持ち、それ故数多くのゲームが作られている。
特に2000年前後に起きた再ブームからは毎年最低一本は発売され、
ファンやゲーム関係者にとってはもはや風物詩のようなものである。
その乱発は「金を稼ぐための姑息な手段だ」と批判されることもあるが、
作を重ねるごとに演出やシステムが洗練されるため、そして「年に一度のお祭り」的な雰囲気のために概ね受け入れられている。
だが、着実に洗練されてきたはずのDBゲーム最新作が、
よもやクソゲー界の風物詩「年末の魔物」と化す日が来ようとは……。
ドラゴンボール アルティメットブラスト(バンダイナムコゲームス)/PS3/Xbox360/7330円
以降「UB」とする。ちなみに正式な題名は全てアルファベット表記である。
このゲームのジャンルは「3D対戦アクション」。
原作やアニメに出てきたキャラを自分で操作し、まるでアニメさながらの大迫力の戦いを繰り広げることができる。
空を裂き地を砕くエネルギー波、超スピードで叩き込まれる打撃は見る者の胸を熱くするだろう。
そしてストーリーモードでは、新たに描きおこされた『Z』のリメイクアニメが流れる。
OPも新規アニメで、DBの世界を2Dでも味わうことができる。
さらに「アバターモード」というものがある。俗に言うキャラクリエイトで、
アバターを使ったIFストーリーまで用意してある。
以上、良かったところ終わり。
大雑把に見れば良点ばかりだ。しかし、ズームインするとその欠点が見えてくる。
「アニメさながらの大迫力バトル」……確かにその通り。
演出的な面では、DBゲームで一、二を争うくらい力が入っている。
しかし、ゲーム性までアニメと同レベルにしてしまうのはどうだろうか。
攻撃には連続で出せる「ラッシュ」と、出が遅いがガードを崩せる「スマッシュ」の二種類がある。
ラッシュ攻撃を三回当てると時間が停止し、QTE「ストライクムーブ」が発生する。
ストライクムーブ発生中、ボタンを押すとさらにダメージを与えられる。
この時、やられてる側もボタンを押せる。相手と同じボタンを押せば、追撃を回避し逆にダメージを与えられる。
要するにジャンケンである。手は二択だが。
この二択ジャンケンに攻撃側が勝利した場合、さらに追撃QTEが発生。
これも二択ジャンケンだが、勝利した手によって攻撃手段が変わるので駆け引きポイントになっている。
……この追撃QTEの演出、凝ったのが災いしてイチイチ長い。
しかも「ストライクムーブを出さない」という選択肢はなく、ラッシュを三回当てたら必ずQTEに突入。
追撃QTEを出さないことはできるが、ダメージ効率が悪すぎてプレイ時間がいたずらに伸びるだけだろう。
一応、QTEであるため三回ほどボタン入力を求められるが、特にシビアでもなく出来て当たり前の難易度。
そのためただコントローラーを持ってるだけの時間が長く頻繁に起きるのである。
UBのQTEはこれだけではない。
キャラ間が一定の距離になると、間合いを離すための(詰めるための)QTEが発生する。
これまた二択ジャンケン。しかも追撃QTEのような駆け引き要素も無く、本当にただの二択である。
当然長い演出と共に操作不能時間が生まれる。
発生が任意であることが救いだが、間合いを調節するためだけに小芝居を見せられるのはなかなか辛い。
まだある。
吹っ飛ばされた後、ボタンを連打することで地面に激突する前に復帰することができる。
復帰に成功するとまたもやQTE。
表示されるボタンをタイミング良く押すと、追撃して来た相手にカウンターをお見舞いできる。
これは頻度が少ない。そもそも復帰できることが少ない。
まだあるんだな、これが。
必殺技でもQTEに突入する。
攻撃側が必殺技を撃った後、防御側は防御、回避、撃ち返しの三種の行動を選べる。
防御の場合、無条件でダメージ減少。
回避の場合、二択ジャンケンQTEに成功すればダメージ0だが、失敗すると増加する。
撃ち返しの場合、こちらも必殺技で反撃する。DBで良くある技と技がぶつかり合う状態になり、
ボタン連打QTEに突入。勝った方は通常よりも高いダメージを与えられる。
御覧の通り、戦闘要素の殆どがQTEに繋がっている。
攻撃したらQTE、喰らったらQTE、距離詰めようとしたらQTE……。
何かをしようとする度に長い演出が入り操作が中断され、非常にテンポが悪い。
まるでゲーム画面でなくアニメを見てるかのような気さえしてくる。
過去、DBゲームは幾度となく「アニメのような」を謳い文句にしてきたが、
これほどまでにアニメに近づけたゲームはUBが初めてだろう。勿論悪い意味で。
ここまで読んだ方の中には、操作不能時間が長くても演出が良かったら……と思った方もいるだろう。
安心してほしい。全然そんなことはない。
何故なら「QTE演出は全キャラ共通」だからである。
悟空も、べジータも、ピッコロも、フリーザも、参戦キャラ中最弱である栽培マンも、最強の超4ゴジータも、
みんな同じように動いてくれる。
そのためプレイヤーは似たような映像を何回も何回も見せられることになり、
どんなに凝った演出でもすぐに飽きてしまう。
一応追撃QTEは数パターン用意されているが、本当に数パターンだけ。
ハッキリ言って焼け石に水だ。
テンポと飽き以外のQTEの弊害についても書こう。
まず、上述のように演出が共通であること。
キャラゲーにおいて「そのキャラらしい個性」は、多少ゲームがお粗末でも
それさえ出来てれば称賛される場合もあるほど重要な要素だ。
UBはそれが全然出来ていない。
演出が共通なので誰を使っても同じ、そのキャラへの愛着が湧いてこない。
「殴りあってビームを撃つだけの漫画」と揶揄されることもあるDBだが、
何故完全にその通りのゲームにしてしまったのだろうか。
ピッコロの腕が伸びるなど特殊なモーションも無いし、戦闘はQTE以外やることないし……。
キャラの個性と言えるものは、各キャラ数種類ある必殺技とパンチやキックなどの細かいモーション、
攻撃力や防御力の数値、そしてアピールである。が、何度も繰り返されるQTEの前には焼け石に水二号でしかない。
大きな個性である必殺技も、違うのは演出だけで威力や消費以外の性能差など無い。
その演出さえも似たり寄ったりで、余計に既視感が煽られる。焼け石に水三号。
また、QTEの大半がジャンケンであることも問題。
結局は運が物を言うのだ。
強敵に勝てても「運が良かった」から。
腕を磨く楽しさや、相手との駆け引きなどとは無縁である。
追撃QTEは「攻撃手段が変わるので駆け引きポイントになっている」と書いたが、
結局ジャンケンはジャンケンでしかない。焼け石に水四号。
知り合い同士ならともかく、顔の見えない他人との「俺次チョキ出すぜ」に一体どれほどの効果があるのか……。
初心者としては常に勝てる可能性があるのは良いかもしれない。
QTEを抜きにしたゲームバランスも悪い。
「気力ゲージ」というものがあり、一部の行動はこれを消費する。
気力は任意でチャージできる他に、被ダメージで下がり与ダメージで上がる。
さらに必殺技を撃つためのゲージが別にあり、こちらも与ダメージで上がる。
つまり攻撃を当てた方はゲージがガンガン増えて、喰らった方は減る。結果かなりの格差ができてしまうのだ。
しかも気力が無いと一部の行動ができないため、吹っ飛ばされた後の復帰ができない、
必殺技を防御も出来ず無防備に喰らってしまうなど体力的な格差も加速していく。
試合開始後、ジャンケンに一回勝っただけで殆ど勝負が決まってしまった……というのも珍しくない。
ジャンケンという公平で一発逆転的なイメージがありながら、
その実態は「有利な方が有利なまま終わる」という格差社会の象徴のようなバランスなのだった。
おまけに一度喰らったら死ぬまで喰らい続けるハメ技もいくつか確認されている。
「演出が凝っている」と何度か書いたが、その演出も首を傾げる部分がある。
追撃QTEや必殺技で地面が大きく破壊されたのに、ムービーが終わるとなんともない、
試合開始前のイントロ動作も全キャラ共通で高速移動しながら殴り合うだけ、
栽培マンの自爆で地球規模の爆発が起きる、など。
真ん中と下はネタとして面白いと見る向きもある。
戦闘以外でも糞要素はある。
まず、登場キャラクターについて。
総数は34キャラ(変身形態除く)で、数字だけ見れば少なくはない。
しかし、DBという遠大な物語においてはまだまだ足りないと言わざるを得ない。
そして登場キャラがサイヤ人編〜人造人間編に明らかに偏っている。
フリーザ編で中ボス的存在だったギニュー特戦隊が四人(グルドがいない)、数話しか出てないキュイ、
人造人間が16〜20号まで全部、やられ役の栽培マンやセルジュニア。
微妙にマニアックなキャラがいる一方で、
ブウ編からは魔人ブウ(善、悪、純粋で実質三体)とゴテンクスとベジットだけだったり
GTからは超一星龍と超4ゴジータのみだったりと、極端に人数が少ない編があるのはいただけない。
微妙な人選の弊害はストーリーモードにも出ている。
前述の通りブウ編からはブウと合体キャラだけ。悟天や少年トランクスは出てこない。
この二人を筆頭に、ブウ編が初登場でブウ編を語るうえで欠かせないキャラの大半が非参戦。
それらの重要キャラが登場するはずの場面は大胆に端折られ、かなりブツ切りのストーリーになってしまっている。
GTに至ってはラスボスと主人公最強形態のみ。ストーリーもへったくれもない。
誰を使っても同じなゲームシステムではあるが、ストーリーのためにせめて人数だけは揃えて欲しかった。
他にもクウラがストーリー限定キャラだったりと、どうにも片手落ち感が否めない。
ストーリーと言えば、要所要所で流れるリメイクアニメも売りの一つ。
これのクオリティ自体は良く、評判は上々。
しかし名場面でしか流れないため、ストーリーのブツ切り感を加速してしまっている。
アニメ以外の作りはお粗末の一言。
ポリゴンデモであるが、殆ど棒立ちで会話するだけ。カメラワークの工夫も殆ど無い。
キャラがいないブウ編などは勿論、キャラが揃っている他編でもブツ切りのダイジェストで済まされる。
フリーザ編を例に上げると、悟空が元気玉を放ったあと即フリーザが復活するなど。
原作では倒したと思って油断するシーンがあったのだが……。
細かい台詞も結構端折られている。まあ、全部収録してたらキリが無いのは分かるが。
また、システムを戦闘と共用してるため、敵の必殺技から仲間を庇うシーンなどでは
キャラAとBの交代演出が行われてしまい、気分が台無しになってしまう。
そして会話シーンは戦闘中に唐突に挿入され、操作不能時間がさらに増加してテンポが悪い。
しかもスキップの仕様が不親切で、スタートボタンを押す→○を押すの二手順が必要。
それだけならまだしも、なんと全スキップが不可能なのだ。
キャラAの台詞をスキップするとキャラBの台詞が始まる、といった具合。
このスキップの仕様もテンポを悪くしイライラを募らせる要因になっている。
ストーリーモード限定で巨大キャラとの戦いがある。
これも売りの一つらしいが、相変わらずQTEばかりで微妙な出来である。
攻撃チャンスがさらに限定されるので、やらされてる感が非常に強い。
しかも太陽拳を何度も喰らう大猿べジータなど妙な部分がある。
さらに目玉要素として、アバターがある。
パーツを組み合わせて自分好みのキャラを作成し、IFストーリーを楽しむ……というもの。
これだけなら非常に面白そうなのだが、自由度の低さが足を引っ張ってしまった。
人種はサイヤ人固定、選べる体型が軽量、標準、重量の三種類しかない、女性は作れないなどの不満がある。
一応服や声などは十個前後のパターンがあるが、それでも少ないとの声が多い。
IFストーリーも名前だけでストーリーらしいものは無く、ほぼ戦闘を繰り返すだけの単調なものであった。
長くなったので、今一度箇条書きで纏めよう。
・何をするにもQTEに引っ掛かり、操作が中断されるのでテンポが悪い
・そのQTEも大半がジャンケンで運要素が強すぎ。上手くなる楽しみが無い
・有利な方が有利なまま終わる劣悪なゲームバランス
・演出が良くても、全キャラ同じ演出だからすぐに飽きる
・全キャラ同じ演出なのでキャラの個性が無い
・それなのにキャラ数すら揃ってない
・そのせいでストーリーがブツ切りダイジェスト
・ストーリーモードの質自体も低い
・アバターモードは自由度が低すぎて楽しめない
UBについて、関係者は「前作が難しいという声があったので簡単操作にした」と語った。
そして「キャラになりきる」こともこのゲームの売りの一つである。
「簡単操作」と「キャラのなりきり」、その交差点で生まれたUBだが。
簡単操作が優先されすぎたようで、QTEの連発により「なりきり」が阻害されている。
基本的に画面の指示通りにボタンを押せば良いのだから、「やってる」と言うより「やらされてる」のだ。
ずっと上の方で「アニメに近いゲーム」と書いたが、
所々ボタンを押さなければならないせいで、アニメと同じには見れない。
例えるなら「チャプターが終わるごとに再生ナビに戻るDVDを観賞してる」ようなものだろうか。
ゲームにもなりきれず、アニメにもなりきれない。
そのせいでキャラにもなりきれない。
「なりきり」が売りのゲームでありながら、いや、そうであるからこそか、
UBは何物にもなれなかったのである。
それでは、UBのPVの最後を飾った台詞でこのテキストの最後も締めようと思う。
「地球のみんな! オラに現金わけてくれ!!」