概要
名称 | テトリス アルティメット | |
ジャンル | パズル |
対応機種 | PS4/Xbox One |
発売元 | ユービーアイソフト |
開発元 | ユービーアイソフト |
発売日 | PS4:2015年6月10日/Xbox One:2015年6月13日 |
価格 | 2400円(税別) |
対象年齢 | CERO:A(全年齢対象) |
参考動画
PV
要点
『テトリスアルティメット』は、テトリス生誕30周年を記念して作られたXbox One/PlayStation 4向けの新作テトリスである。
だが、テトリスユーザからの評判は散々であり、特に上級プレイヤーからの評価が芳しくない。その理由は以下の通りである。
- テトリスとしての挙動がおかしい。
- プレイしていると次のブロックが落ちるまでの猶予時間が消える「時間消失バグ」が発生し、理不尽に殺される。
- 対戦相手のAIが挙動不審だったり、試合放棄したりする。
- オンラインモードがバグりまくっている。
- 相手が死んでいるのに試合が続行されたり、相手が死んでいないのに試合が終了する。
- ブロックが高速でチカチカ点滅したりと怪現象が起きる。
- これらを修正しないまま、ニコ生のメーカー公式チャンネルで実況した結果、
全17試合中の15試合でバグるという前代未聞の放送事故が起きた。(「クソゲー公式生実況」)
- 演出や操作性が全体的に酷い。
- 無駄に壮大で、操作の切れ目がわかりづらいグラフィックエフェクト、無駄に鬱曲なBGMなどの悪趣味が目立つ。
これらの惨状を見て、ついたあだ名は『テトリヌ』。テニヌ的なアレである。
「公認テトリス」について
テトリスは現在、テトリスのライセンスを得て発売された「公認テトリス」とそうでないものに分かれる。本作は公式にライセンス認可を受けた公認テトリスである。
テトリスのライセンスはテトリス発明者のアレクセイ・パジトノフを擁する版権管理会社(ここでは便宜的に「テトカン*1」とする)によって管理されている。
- テトカンの認可を受けたテトリスは、ゲーム機1種類につき1作品しか通常は発売されない。この方針は1999年に策定されたが、あまり一般には知られていない。
- 公認テトリスはテトリス公式のロゴが使われているのですぐに認識できる。なお、Android、iOS等もゲーム機の一つとして考えられている。
- 理由は不明だが『ぷよぷよテトリス』は例外であり、既にテトリス他作品が出ているゲーム機でも公認テトリスとして発売されている。
テトリスの「ガイドライン」
テトカンの認可を受けるためには、テトカンの定めるテトリスの仕様(通称「ガイドライン」、俗称「ワールドルール」)に準拠している必要がある。
- ガイドラインが策定される以前は、セガテトリスと任天堂テトリスでそれぞれ操作性・ブロックの挙動が違うと言った点が問題になることがあり、その点では公式サイド自ら仕様の統一に乗り出したことは妥当であると言える。だが、ガイドラインが策定されたことでメーカー側で操作性に工夫を加えることが難しくなった面もあり、賛否両論である。
- 余談ではあるが、現在の公認テトリスでは伝統的な4段消しよりもT字ブロックを回転させて狭い隙間に埋め込むテクニックの方が獲得スコアが高く設定されている。
- ガイドラインにおけるテトリスの挙動はかなり詳細に定義されており、おそらくプログラムレベルで具体的な指示・監修があるものと推測される。
問題点
大きく分けて、オンライン部分とオフライン部分に分かれる。
「クソゲー公式生実況」も含めてオンライン部分の問題点が非常に印象的だったため、当初はオン対戦を中心に選評が提出された。しかし、オン対戦はテトリスを遊ぶ上で必須の要素ではないため、質疑応答段階で保留となった。
その後、年明けに挙動や演出などのオフライン部分の検証を集中的に進めたところ、こちらでもバグだらけの奇怪な光景が次々と明るみに出たことで晴れて次点入りを果たした。
オンラインモードの問題点
一言で言うと対戦画面がバグりまくっている。
この理由については、「画面の同期が適切に取れておらず、段々とズレていくため」、と推測されている。以下、解説する。
画面の同期ズレ
元来、オンライン対戦においては、ネットワーク通信を経由してお互いの操作が相手に伝わるまでに必ず「タイムラグ」がある。そのため、相手の操作内容を単純に自分のゲーム機で再現しようとしても、おかしなことになる。
話をわかりやすくするために、次のような例を考えてみよう。
- AさんとBさんは離れたところに住んでおり、回線が遅い状況で格闘ゲームのオンライン対戦をしている。
- Aさんがコントローラに入力した操作内容がBさんのゲーム機に到達するまで、1秒かかるとする。
- ある日の12時0分0秒に、Aさんが飛び道具の必殺技を入力したとする。
すると、そのまま操作内容を伝えると以下の矛盾が生じる。
Aさん側の画面:
12時0分0秒に飛び道具が出る。Bさんが飛び道具の存在に気が付いて操作できるのは1秒後であり、よけられずに被弾する。
Bさん側の画面:
Aさんからのコマンド入力が送られてきた後、
12時0分1秒に飛び道具が出る。Bさんがジャンプ操作を入力すればすぐに画面に反映され、問題なくよけられる。
このように、操作内容を送り合ってお互いのゲーム機で再現するだけでは結果が食い違ってしまう。この状態は、対戦相手と自分との間で「(画面の)同期が取れていない」と言える。
この問題を解決するためには、
- 自分と相手の間にある中間サーバで操作結果を算出してからお互いに返すようにするなど、
誤差が出ないように操作結果の整合性を保証する。
- リアルタイムに操作結果の誤差を修正する。
など、何らかの方式で誤差に対して対策する必要がある。
実際に起きるバグ
ところが、『テトアル』はそれが出来ておらず、自分と相手の画面で、ブロックの積み状況がどんどん齟齬が生じていく。その結果、
- 「自分の画面で相手が死んでいるのに相手の操作内容が延々と送られてきて試合が終わらない(ゾンビ)」
- 「自分の画面で相手が死んでいないのにいきなり勝負が終わる(TKO)」
などの矛盾が生じてしまう。
一方で、オン対戦にあたって何も画面を是正していないわけではないらしく、一人プレイでは起こりえない中途半端な形で操作が画面に反映されることもある。
消えたはずのブロックが高速で復活と消滅を繰り返す「踏み台昇降」バグ、
ブロックが消えるときの点滅エフェクトがずっと続く「エレクトリカルパレード」バグ等。
- この問題はソフトの設計上の問題であり、サーバの増強ではバグの発生を(改善はできるが)根絶できないと推察される。
- なお、オンラインバグが報告された時期から現在まで、ソフトのアップデートは確認されていない。
- このバグは通信ラグによる操作内容のズレが積み重なることで発生するため、通信ラグが問題にならない速度で操作すれば回避できると考えられる。一方、操作が速い人はズレが発生しやすくなる傾向がある。
- 後述のクソゲー公式生実況に出演したプレイヤーは「対戦テトリス宇宙一」と目されるほどの実力者であり、操作速度に関しても普通のプレイヤーよりもずっと速い。そして当日の対戦ではそんな彼に勝利するようなプレイヤーも参戦している。そのためにバグの発生率が高くなったと推測することもできる。
クソゲー公式生実況
上記のようなバグ報告が散見される中、ニコ生のユービーアイソフトの公式チャンネルにおいてプロモーション番組が放送された。その結果、1時間の放送時間内で、17試合中、15試合が何らかの形でバグるという前代未聞の放送事故が起きた。
- キャストは以下の3人。
司会進行:お笑い芸人「エレキコミック」の今立氏
解説役:ユービーアイソフトの女性スタッフ
ゲスト:テトリス上級プレイヤーの「HBM」氏
- 起きたバグは下記の通り(冒頭のオフライン対戦は除く)。
試合 | 発生した主なバグ |
1試合目 | ゾンビ |
2試合目 | ゾンビ、エレクトリカルパレード |
3試合目 | エレクトリカルパレード |
4試合目 | 何も発生せず |
5試合目 | ゾンビ |
6試合目 | TKO |
7試合目 | ゾンビ |
8試合目 | エレクトリカルパレード、ゾンビ |
9試合目 | ゾンビ、エレクトリカルパレード |
10試合目 | 何も発生せず |
11試合目 | TKO |
12試合目 | エレクトリカルパレード、TKO |
13試合目 | エレクトリカルパレード、ゾンビ |
14試合目 | エレクトリカルパレード、ゾンビ |
15試合目 | エレクトリカルパレード、ゾンビ、踏み台昇降 |
16試合目 | ゾンビ |
17試合目 | エレクトリカルパレード、ゾンビ、踏み台昇降 |
- 視聴者と対戦して本作を楽しさを知ってもらおうという趣旨で放映された。
- ある意味で非常に楽しい放送になった。実際、放映中に買った視聴者の存在が確認されている。
- 上記のようなヤバさであったのにも関わらず、出演者3人は終始ツッコミを交えながら明るく盛り上げ続けた。その様子はクソゲーの苦しみを笑いに変えるというKOTYスレの理念に通じるものがあり、スレ内では好評を博した。
- 女性スタッフによれば、メーカー側も当時このバグの存在を認識していたとのこと。また、この放送事故映像を(海外の)開発陣に送りつけるという趣旨の発言をした。
画面同期ズレ以外の問題
- オンラインスコアボードの上位に「0秒でタイムアタックをクリアした」などの不正記録が鎮座している。
- 一方で、自分のスコアは正常に登録されないという報告もある。プレイヤーのモチベーションはダダ下がりである。
- 発売時には、操作ラグや画面が止まる問題が報告されていた。ただ、その後の検証ではあまり報告されなかった。これは通信速度やサーバの処理速度に依拠する部分であり、プレイヤー数の減少やサーバ増強などの要因である程度軽減したものと考えられる。(ソフトウェア設計に根本的な問題がある画面の同期ズレ問題とは逆に、サーバ側で何らかの処理をしているために起きている)
- また、Xbox One版では国内対戦のみで隔離されているのか、野良対戦を試みても一切相手が見つからない。画面上では「試合開始まであと23時間48分10秒(画像)」などといった見積もり時間が表示される。
- オン対戦がそもそもできないのは同じくユービーアイソフトから出ている『エアコン』でも報告されていた。
オフラインでプレイした際の問題点
大きく分けて下記の3点である。
- ブロックの挙動がおかしい。
- AIの挙動がおかしい。
- 演出が不快。
ブロックの挙動について
先にも述べた通り、ガイドラインに準拠しているため基本的な動作に瑕疵はない、と思われていたが……
時間消失バグ
プレイの中盤から終盤に差し掛かって、下記の通り操作と操作の間の猶予時間が消失するバグが起きる。(解説動画)
- ラインをそろえてから次のブロックが落ちるまでの時間。
- ブロックを置いてから次のブロックが落ちるまでの時間。
- 通常「1.」については0.5秒、「2.」については0.5秒~0.2秒程度の時間が保証されている。それが、操作終了の次の瞬間になぜか次のブロックが落ちている。プレイ終盤では一つのミスが命取りになるため、これが起きると一気に状況が悪くなる。
- プレイヤーが気が付いた時にはダメージを受けているため、ジョジョ5部ラスボスのスタンドになぞらえて「キンクリバグ」とも呼ばれる。
- Lv28以上で「2.」のバグが起きた場合、「次のブロックが落ちる猶予がなくなるだけではなく、そのブロックが落ちた瞬間固定される」。つまり、一つのブロックを固定すると、身に覚えのないブロックがおまけで一つ固定される、という2つ同時にブロックが置かれる状態になる。
- テトリスの落下速度が人間の反射速度を超え始めると、このバグが起きた際に対応できなくなる。人間の反射速度は0.3秒程度と言われており、Lv10~12程度でテトリスの落下時間が0.3秒を割るため、このバグへの対応が難しくなる。
- プレイヤースキルをどう考えるかにもよるが、検証者はテトリス中級者以上のプレイヤーはこのバグの実害を受けると述べている。参考までに、公式ガイドラインにおける一人テトリスのクリア認定レベルはLv15で、本作における最上級者認定レベルはLv28である。
AIの挙動について
本作では各モードを最大4人で遊ぶことができ、対戦相手としてAI(コンピュータ)が選べる。AIは強さ順に4種類用意されている。
- 特に個性のようなものは設定されていないため、4人同時対戦しても対戦相手として成立するのは実力の近いAI一人だけである。
- AIの挙動がおかしい。(解説動画)
- 意味不明な挙動を見せる最強AI「マスターテトリボット」師匠
- コンピュータが揃って操作をやめてしまう「試合放棄」バグ
「マスターテトリボット」師匠
実際の挙動については上記解説動画参照。
秒間20連打という高橋名人も真っ青の操作速度でプレイヤーを蹂躙する。ただし、自分もその操作速度に思考が追い付かないのか、3,4分で勝手に自滅する。
「試合放棄」バグ
実際の挙動については上記解説動画参照。
4人でアルティメットバトルをしているとき、誰かが死んだ瞬間に残ったAIが一斉に操作をやめてしまうことがある。
- それなりの頻度で発生する。10分に1回発生したり、2試合連続で発生したりする。
演出について
宇宙空間をイメージしたようなグラフィックと、神秘的なBGMによって演出されている。のだが……
グラフィック面の問題点
- ブロックが消える演出が長ったらしい。ラインをそろえると光が発生してブロックが消えるのだが、これを計測するとエフェクトが終了するまで1秒近くかかっている。
- 一方で、ラインが消えてから次のブロックが降ってくるまでは0.5秒である。つまり、エフェクトが終わらず、光っている最中に次のブロックが降ってくるため、非常にタイミングが取りづらい。
- 前述の「猶予時間消失」バグが発生していない時も、この仕様のせいで次のブロックがいつの間にか落ちているように感じる時がある。
- その他、起動時に表示されるロゴのアニメーションが妙にもっさりしており、処理落ちしている疑惑がある。
サウンド面の問題点
BGMとSE(効果音)の両方とも評判が悪い。
- BGMがモードごとに固定の1曲しかない。ゲーム全体を見てもメニュー、耐久系モード、対戦系モードの全3曲。
- 曲調が、妙に神妙というか鬱っぽいため拒否反応を示すユーザーが多い。
海外掲示板を見ても「super depressing(すごく鬱だ)」、「it really sucks(最悪だ)」などの辛辣な意見が散見される。
- SEが全般的に風呂で録音したのかとでもいうレベルで残響がかかっている。プレイしていると長時間聞くことになるため、耳障りになることがある。
- 半分くらいまで積みあがると心拍音を模したSEで不安を煽ってくる。まだ早いだろという段階でもお構いなく始まるので非常にうっとうしい上、複数プレイヤーでプレイしているとバグってリズムがおかしくなったり、相手が死ぬと止まらなくなったりする。
選評
選評1
まず、テトリスアルティメットを起動してすぐ目に入る、処理落ちしているUBIロゴが、クソゲーの始まりである(1)。
少しコンフィグが複雑で、いろいろな項目が設定しにくく、設定を変更するのが面倒ではあるが、従来からの一人用モード(4)は大して悪い印象ではない。
BGMも悪くはないが、メニュー用とマラソン用、それ以外のモード用の合計3曲しかなく、空気を読まない効果音のせいで、とても怖い雰囲気を醸し出している。
単体では良いものが揃っているのだが、組み合わせて、ゲームとしてプレイした時の雰囲気が最悪だと感じる。
据え置き機であるはずなのだが、先に発売した3DS版(海外のみ)(2)(3)と比較しても劣る部分が多々ある。
すぐに分かる点では、3DS版はコンマ以下3桁まで表示・保存される、一人用のタイムアタックモード(スプリント)の記録は、PS4版においては、秒までしか表示・記録されない。
たとえば、3DS版では52.765秒という記録が表示・保存される場合、PS4版ではそれは52秒にしかならない。
また、オンラインモードでは、フレンド同士での対戦が不可能であるどころか、マッチングが単純にアクセス順の接続になっているようだ。
3DS版では設定可能な対戦人数の設定が、PS4版では不可能である仕様と、対戦終了後からの合流が可能であることをあわせ、いわゆるタイマンの対戦が他のプレイヤーに阻害されることを意味する。
さらに、3DS版と比較すると、コンフィグでの設定項目が少ない、もしくは設定項目自体が存在しないという点が挙げられる。
ゲームをプレイする以前の、全体的な不満点としては、
翻訳が意味不明である点がある。例えばゲームプレイで中断し、メニューに戻る部分のメッセージが「やめる」と「キャンセル」で、どちらを選べばよいのかすぐには判断できない。
チュートリアルも、翻訳の結果を一度でも確認したとは思えないものとなっている。
例えば、「おばけ屋敷、地すべり、時間切れ」の項目では、「時間切れ」の項目の横に、不自然に数字が表示されている。
また、日本語とアルファベット混じりのフォントがとてもダサい。「T-Spinミニ」の表示がゲームのフォントと合っておらず、SF風の雰囲気を壊している。
音楽の評価も悪いが、グラフィックも無駄に凝っている割には、移植が雑であるし、雰囲気も良いものとは言いがたい。
フォントの不満点は、「達成度」の「賞」(後述のバッチ)で顕著だ。
「アニバーサリー」の説明は、文字を小さくして1行におさめており、しかも、説明の不自然な空白が目立っている。
翻訳の段階で、2行に分けて表示することを検討しなかったのだろうか。
また、コントローラにイヤホンを刺してプレイすると、音割れが発生する。
適切に音量設定ができたと思っていても、BGMにノイズが乗ってしまう。
これは致命的だが、プレイ中であっても、ゲームがエラー終了し、落ちることがある。
しかし幸いなことに、この発生頻度は、PS4版ではそこまで高くない。
つぎに、ゲーム部分の欠点を挙げてみる。
ライン消去時のエフェクトがあまりにも壮大すぎるため処理落ちし、次に出現するブロックの操作に影響が出てしまう。
ゲーム内の称号のひとつ、ブラックベルトの称号の獲得には、エンドレスモードのレベル28に達する必要があるが、
このレベルでは、操作の猶予時間が0.2秒を下回る、高い難易度であり、こういった部分を乗り越えなければならない。
しかしながら、エンドレスモードの後半レベルでは、この処理落ちのため、ブロックの出現から固定まで何も操作が効かないことがあり、難易度が極端に上がってしまっている。
また、この現象は、特に後述の複数人でのプレイで顕著で、オンラインプレイでは更に処理落ちが酷くなる。
BGMが全体で3曲(メニュー用とマラソン用、マラソン以外のゲーム用)しかなく(4)、そのすべてがコロブチカのアレンジであり、更にアレンジがつまらない。
操作に関して、ブロックが横滑りしてしまうことが多く、意図した場所に置くには慣れが必要なことがある。
ところで、PS4のコントローラにはLEDライトがついていることをご存知だろうか?
このゲームではそれを使用しており、コントローラが、出現したブロックの色に変化し、点灯する。
これは裏を返せば、素早くブロックを積み上げると色の変化も素早くなるわけで、通常の設定のままプレイすれば、燦々と輝くエレクトリカルパレードがコントローラで発生することになってしまう。
この現象は、「テレビを見るときは、部屋を明るくして、画面から離れて見る」という常識を思い出させてくれるだろう。
つづいて、複数人(またはコンピュータ)とのプレイの説明に移るが、
相手がラインを消去するときの処理落ちが自分にも降りかかり、すでに入力したはずの操作が反映されなかったり(6)、
ハンディキャップ欄があるにもかかわらず、コンピュータのハンディキャップを設定できなかったりするなど、多くの問題点がある。
また、コンピュータと対戦をするための操作が直感的ではなく、同じ強さのコンピュータを重複して選択することもできず、さらには、コンピュータにはハンディキャップを設定することも不可能である。
最後のオンラインモードの説明をする前に、バッチやランキングなど、ゲームのモチベーションの維持に役立つ機能を紹介する。
タイムアタックモード(スプリント)で1分を切ると取得できるバッチなど一部のバッチは、正常にゲームの結果が反映されず、バッチを取得できないことがあり、
自分より上位ランクのプレイヤーを倒すと取得できるバッチなど一部のバッチは、自分が最上位ランクになってしまうなどの条件を満たすと取得できない。
また、タイムアタックモードのランキングは、0秒や1秒など通常ではありえない記録で埋め尽くされており、正常にプレイしてもタイムが記録されないだけでなく、
不正なスコアは平然と登録されている点(8)も、ユーザからの不満になっている。
最後に、オンラインモードだが、これが過去最低のクオリティだと断言できる。
まずプレイして気づくのは、数秒ごとにゲーム進行が止まり、操作ができなくなる親切設計(9)だろう。処理落ちがひどく、これを意識せず、普通にプレイするのは不可能だろう。
少しすれば、他プレイヤーのライン消去のエフェクトが、通常であればブロックの表示→消滅を一度だけ行うのだが、
表示→消滅を繰り返し、ちかちかと点滅する電飾(エレクトロニック・イルミネーション)に出会うことができるはずだ。
しかも、一度始まったが最後、この現象は1ゲームが終わるまでは、基本的にそのまま継続される。
一見するとフィールドが埋まり、死んでいるように見えるプレイヤーがブロックを積み続け、外の空気を吸いに行ったと表現される白タオル(もちろん同期ずれが原因)にも、すぐに気付かされるだろう。
こういった同期ずれが発生する原因は、処理落ちのときに、相手から送られてくる情報を正しく処理できていないことで、その間に受け取った情報が反映されないことが原因と推測される。
また、通常のゲームであれば、相手の入力を受け取るだけでなく、一定時間ごとに画面の情報を同期するといったことが行われるが、そういったことも行われていないと考えられる。
そのため、一定の技量に達している人同士の対戦であれば、プレイしているうちの一人を除いて全員が諦めるまで、
前述の処理落ちと、若干ではあるが相手から送られてくる攻撃という邪魔の入るマラソンを続けなければならない。
対戦を始めたはずが、気づけば一人用のトレーニングモードを延々とプレイすることになってしまう。
さらに、アイテムモードでは「雨あられ」というアイテムがあるが、白タオルの状態の時にこれを使うと、大音量のギーという音が流れ、永遠に「雨あられ」が降り注ぐため、ゲームの進行が止まってしまう。
この状態になってしまうと、もはや勝敗を決めることすらできない。
オンライン対戦から切断するか、ホームから「アプリケーションを終了する」を選択する他ない。
このように、オンラインモードは特に問題が山積みである。
しかもこれらはまれに起こる程度ではなく、「よく」発生する。
これらの問題点のうちの幾つかは、公式に認められており、日本版の発売時点で修正(Fixed)とされているが、実際には改善されておらず、またそれ以降アップデートはされていない。(10)
これらはユービーアイソフトの公式ニコ生を視聴すれば(7)、火を見るより明らかだろう。
これが、アルティメット、つまり「究極」を体現したゲームだというのは、お分かりいただけただろうか?
脚注
(1) 2015年6月11日の日本バージョンをもとに作成。
(2) 海外版はスケジュールが遅れ2014年夏発売予定だったのが、実際には2015年春の発売だった。日本版は2015年6月10日にリリース。
ただし、起動時のロゴでは2014年に発売するつもりであったのか、それとも修正を忘れたのか、理由は不明だが、1985-2014と表示されている。
クレジットから確認すると、製作が2015年になっているため、なぜオープニングのロゴだけが2014年になっているのかは不明である。
一人が1ヶ月も関われば容易に作成可能なゲームが、4人のエンジニアの力を集結した上で、なぜ数ヶ月以上遅れたのかは謎である。
(3) 3DS版はPS4,XB1より後の発売だと発表されたが、実際にはスケジュールがずれたため先に発売された。
(4) 海外版ではタイトル前のクレジットの音量が大きすぎたため音が割れていた。2015年6月10日のパッチで修正。
(4) このゲームでは一部のモードでオンラインを介した対戦、協力プレイ、協力対戦が可能(5)。
(5) 海外版ではリリース時はすべてのモードで対戦、協力プレイ、協力対戦が可能だった。(1)のパッチでラインが揃っても消えない、
ひとつのブロックを一時的に保存するホールドに2つのブロックを保存する、ブロックが地形を乗り越えて落下するなどの大きな不具合のあったバトル、
バトルアルティメットモードの協力プレイ、チーム対戦がモードごと削除された。
(6) コンピュータ3つとスプリントなどで対戦し、○ボタンと×ボタンを交互に連打すれば容易に確認できる。
(7) lv227294261 現在はタイムシフト期間終了のため視聴不可。
(8) 現在は削除されているが、日本版がリリースされる前のバージョンではマイナス1秒という記録が存在した。これは非常に哲学的である。
(9) ソフトドロップ時に顕著。下ボタンを押し続けているのに落下が一瞬止まるなどの現象が発生する。止まっている間、移動はもちろん回転も不可能。
(10) それ以降、ほぼ同じシステムを使用しているSteam版の発売などもあり、アップデートの機会はあったと推測できるが、アップデートはされていない。
また、Steam版はPS4版よりも頻繁にエラーが発生し、ゲームのプログラムが異常終了する。
検証報告
テトリスアルティメットについて感じたことを一言で言うと、
「非常に操作感が悪いエセ本格派志向テトリス」です。
本作は、テトリス総本山(ザ・テトリスカンパニーおよびその親会社のBPS)の
ライセンス提供を受けた「公認テトリス」の一つです。
テトリス総本山が定めている公式ガイドライン(ワールドルール)では
プログラムそのものに近い仕様があらかじめ定義されており、本作もそれに倣っています。
したがって、本作の基本的な挙動やルールに瑕疵は見当たりませんが、
それは当然のことであり、プラス評価にはつながらないと考えます。
テトリスには耐久系・早解き系・バトル系などのモードがありますが、
ここでは、テトリスのオーソドックスな遊び方は耐久系のモード
(徐々に上がる速度(レベル)に対応し続けるモード)であると想定します。
これは、公式ガイドラインで「マラソン」モード、「エンドレス」などと言われているものです。
こういったモードでプレイしていると、
本作は非常にプレイしにくく、頓死することも多く、ストレスが溜まります。
比較のためにぷよテトを購入してプレイし始めてからは、本作のおかしさについて確信を得るようになりましたが、
なかなか言葉で伝えることができませんでした。
60fpsで録画して両者を比較することで初めて原因の一端が分かったので、以下に報告をまとめます。
◎耐久系モードの問題点1:エフェクトによるプレイ感覚の攪乱
本作の最大の不満点が、エフェクトが異様に壮大であることで攪乱され、
操作の切れ目が非常に分かりづらい・テンポが悪いことです。
まず前提として、本作をプレイした際の「実感」をお伝えします。
本作をプレイしていると、
Lv12~Lv13以降はライン消失エフェクトが短くなって、
エフェクト中にテトリスの落下がめり込んでいるように感じます。
(実際、この報告の初稿ではそのように書いていました)
しかし、実際にビデオ検証したところ、次のことが分かりました。
・「ライン消失」の時間自体はLv上昇に関係なく、
「ライン消失24フレーム」+「ブロックが落ちるまでの6フレーム」で固定である。
・「ライン消失エフェクト」は50フレーム以上あり、
ブロックが消えた後も光の粒子が発生して長々と画面に居座っている。
そういうわけで、本作においては
ラインの消失と、次のブロックが落ち始めるタイミングと、ライン消失エフェクトの終わるタイミングが
てんでバラバラです。
これにより、低レベルから高レベルまで通しでプレイしていると、
体感的にはあたかも落下がライン消失に追いついたように、
あるいはライン消失エフェクト中の操作猶予が妙に短くなったように攪乱されて感じるわけです。
また、レベルが上がったりブロックが積み上がったりした状態では
エフェクト真っ盛りの30~40フレームでライン周辺が激しく光っているところに
ブロックが落ちており、非常に見づらく感じていた理由が分かりました。
なお、ラインをそろえてから次のブロックの落下が30フレームと言うのはぷよテトと比べると2/3であり、短めです。
これ自体が問題なのではありませんが、一見壮大なエフェクトに見えて実は時間は短いというミスマッチがあるので
プレイ感覚が変なことになっています。
本作は、エンドレスモードであればマラソンモードの上限レベルを超えてどんどんレベルが上昇していきます。
しかしながら、上記の問題からライン消失と次のブロック落下のテンポがつかみづらく、
ラインをそろえて一呼吸ついたところで次のブロックが既に落下し終わっている、という状況が発生しやすくなります。
テトアルの本スレで
> 11 :なまえをいれてください:2014/12/21(日) 13:30:04.02 ID:D9qWOI8g
> 時々ラインを揃えたときの消去演出と次のブロックが降り始めるまでの猶予がなくなることがあるよな
> レベルが上がると発生しやすくなる
> エンドレスは大体これで殺される
という書き込みがありましたが、個人的見解ではこれはバグではなく、
上記の仕様によって引き起こされる体感なのではないかと思います。
(初期段階でそういったバグがあった可能性もあります)
◎耐久系モードの問題点2:操作性の悪さ
もう一つの問題点として、本作の操作性は非常に悪いと感じます。
真っ先にわかることとしては、カーソル移動がものすごく遅いです。
ビデオ検証したところ、具体的な数値が判明しました。
ぷよテトがカーソル入れっぱなしで2フレームで1マス移動するのに対して、
本作は1マス移動するのに8フレームかかります。
つまり、ぷよテトと比べて移動が4倍遅いといえます。
十字キー連打で移動すると多少速くなりますが、それでも平均6フレームかかっていました。
ちなみに、ワールドルールのLv15の落下速度は縦方向1フレーム約2.3マスですので、
テトアルの横移動速度に比べて18倍の差があります。
また、高難度のテトリスをプレイ可能にするためには、操作性に工夫が必要です。
よく知られているものとしてはアリカのテトリス ザ・グランドマスター(TGM)シリーズにおける
「テトリミノ出現前に回転ができるシステム(IRS)」などがあり、
一見無茶にしか思えない難度は練り込まれた操作性の上に立脚しています。
参考: https://www.youtube.com/watch?v=YWZHhjQQtxQ
それに対してテトアルの場合、操作性の工夫はほとんど見られません。
初期設定ではテトリミノのNEXTボックスは一つしか表示されませんし、
(公認テトリスでは普通NEXTボックスは複数表示される。本作の場合、4人対戦向けUIの制限と思われる)
テトリミノ出現前に回転させておく機能などは存在しません。
上述の通り異様にカーソルの動きが遅い問題もありますし、
さらに、操作が暴発しやすいのかバグなのか、着地後の操作猶予時間が不安定な印象も受けます。
したがって、高難度になればなるほどストレスが溜まっていきます。
上述のようなエフェクトの攪乱問題や操作性の悪さがどの程度から問題になるかについてですが、
「マラソン」モード(10段につきLvが1上がるゲームをLv15の10段目まで続ける)の
最後の方(Lv12,13くらいから先)では既に問題になっていると考えます。
というのも、マラソンモードをぷよテトと本作でビデオ検証した結果、
フレーム単位で落下速度が同じであることが確認できましたが、
明らかに本作の方が難度が高いのです。(窒息はしないものの、不定期にミスドロップが起き、それをリカバーしにくい)
◎音楽について
音楽については、選評者さんはあまり大きく取り上げていないのですが、
個人的にはかなりの悪印象を受けました。
まず、BGMはモードにつき固定であり、選択できません。
長時間プレイ前提のマラソン・エンドレスモードのBGMが不安感を煽る陰鬱なものであり、
他サイトでも少なからず同じ批判が散見されます。
SEについては何かあるたびにいちいち反響全開でビィーン・ピィーンと響き、非常に耳障りであると感じました。
それと、個人的な意見ですが、
ちょっと積み上がると心拍音を模したSEでドックン・ドックンと煽ってくるのも悪趣味に感じます。
BGMと相まって耐久系モードはホラーゲームのような雰囲気になっており、演出意図が全くわかりませんが、
少なくとも耐久モードで長時間プレイするにあたって適切であるとは思えませんでした。
◎オン機能について(Xbox One版)
オンに関して評価を加えようと思いましたが、
このゲーム、そもそもオンが一切繋がらなかったです。
プレイヤー人口が少ないなどの問題も考えましたが、
自分としてはそれよりもマッチングのアルゴリズムに疑問があります。
(24時間近い待機を命じられることも多々あり、また、進捗表示が1秒進んで1秒戻るのを瞬間的に繰り返す)
これのためにルーターを買い替えたり、無線と有線を両方試したりしましたが、
てんでダメです。他ゲーでの通信は問題ありません。
以上から、本作側に問題があると結論させていただきます。
なお、マッチングに関わる設定をこちらで指定することはできません。
PS4版は選評者さんの情報によるとバグが頻発するとあり、
Xbox One版は当方の検証では全くつながらず、
本作のオンは死んでいると言えるのではないでしょうか。
◎耐久系以外のゲームモードの問題点
ここまでで耐久系のモードを中心に見解を述べてきましたが、
耐久系以外のモードについても説明します。
まず、このゲームには6つのモード(マラソン・エンドレス・スプリント・ウルトラ・バトル・バトルアルティメット)があり、
それぞれでオンとオフの切り替えができるようになっていますが、
上記の通りオンは死んでいるので、
ざっくり言えばゲーム内容の半分は死んでいるといえます。
耐久系以外のモードをオフでプレイするとどうなるのかと言うと、端的に言って面白みがないです。
複数人でプレイするモードに関しては、CPUに「強さ」のみが設定されていて個性がないので
4人プレイしても自分と互角に戦ってくれるCPU一人以外は空気です。
自分が強すぎて全員相手にならない場合は対戦する意味が全くありません。
また、アルティメットバトルは突然10段近く積みあがったりして不可解な負け方をすることがあり、
対人でやいのやいの言いながらプレイするパーティプレイならともかく、
無機物相手にやっているとフラストレーションのみが溜まります
なお、バトル系や早解き系のモードをやるに当たっては操作を早める必要がありますが、
上で述べた操作性の悪さが致命的になっているように感じました。
◎総括
以上から、本作についての当方の意見をまとめます。
まず、テトリスの根幹をなす耐久系のモードに関しては
本格派っぽく高難度志向で作られているものの、
それに見合った操作性やプレイ感覚が考慮されていない、あべこべなゲームに思えました。
これにより、
初心者~中級者にとっては妙に操作が重く、グラフィックやサウンドによる不快感も重なる駄ゲーで、
上級者にとっては、高難度に挑戦すると操作性の悪さで半強制的にゲームオーバーになるクソゲーである、
といえるのではないでしょうか。
帯に短したすきに長しで、どの層からも歓迎されないのではないでしょうか。
一方で、耐久系以外のモード(早解き系・バトル系)については、
操作性の悪さ、オンの死にっぷり、CPU戦の退屈さが複合しており、プラス評価の材料にはならないと考えます。
一応、ゲームの一部分に限定すれば遊べなくはないのですが、
ブロック崩しの「鬼帝」でも初期ステージは遊べると言われていたように、
それを短所を覆すような評価点にするのは違うかなぁと思います。
また、本作のエンドレスモードでは鬼帝と違って「クリア」の概念がないので憔悴させられることはないかもしれませんが
誤操作にイラつかされる点や、最終的に無理ゲーの壁にぶち当たる点は
少し似ていると思いました。
(もっとも、鬼帝の場合は死にゲーを狙って作ったようなうすら寒さが悪評の重点を占めていましたが)
以上から、当方としては、本作はクソゲーとしての閾値を超えていると感じました。
クソゲーではあるとして、
それよりも肝心なのは2015年のオブザイヤーの俎上に載せるかどうかについてですが、
もともとアジトよりもこちらの方が先に話題作入りしているはずですし、
何よりPS4版のオンのカオスさにはきらめくものがあるので、
土俵入りさせてもよいのではないかと思いました。
以上で報告を終わります。お読みいただきありがとうございました。