2021年 次点

概要

名称Pacific Wings (パシフィック・ウィングス)画像 [外部リンク]
ジャンルシューティング
対応機種NintendoSwitch
発売元Sprakelsoft
開発元Sprakelsoft
発売日2021年02月04日
価 格555円(税込価格)、DL専用
対象年齢IARC:7才以上対象

参考動画

選評

選評1

パシフィック・ウィングス選評

発売日 2021年2月4日
メーカー Sprakelsoft
プラットフォーム Nintendo switch
価格 555円

概要
インディーズゲームでよくあるレトログラフィックを売りにした作品。
しかし本作の出来はレトロスタイルだからの一言で片付けるには限度のある虚無としか言い様がないものだった。

ゲーム説明
1942年のミッドウェイ海戦を舞台とした米軍P-38戦闘機を操作して日本軍の戦闘機を撃墜していく縦スクロールのシューティングゲーム。全20ステージ。
特定の敵を倒すことでパワーアップアイテムが出現し取得することで4段階にショットを強化する事が出来る。
ショットの強化が2段階以上の状態なら被弾しても1段階前の状態に戻るだけのいわゆるプレイヤーストック・ライフ併用制の残機システム。

操作方法
十字キーで移動、Bでショット、+でメニュー、以上。
尚、ショットにオートや連射はない。

問題点
1.あまりにもシンプル過ぎるゲーム性
機体の強化は前方2連射、前方3方向、後方2方向の順に4段階に通常ショットがパワーアップされるのみ。
説明には「機体の武器4種類が強化可能!」と書かれているがそれは4種類と言わない。

機体選択や取得したパワーアップで武装が変わるといったシステムはもちろんボムやオプションも存在しない。

ボスも存在せず、敵以外の破壊可能オブジェクトも数ステージに1回思い出したかのように戦艦の砲台が出てくる以外は存在しない。

説明で「多様な敵機!」と書かれた雑魚10種はそのほとんどが上か横、もしくは「気を付けて」のメッセージと共に下から現れてやる気なく弾を1発発射するのみ。いずれも弾を数発当てればあっさり倒せてしまう程度の耐久性で倒すのにひと工夫いるような敵は存在しない。
配置も雑で適当にそれっぽく置いたとしか思えない。

2.パワーアップの問題点
ショットのパワーアップは4段階だが、4個目以降のパワーアップを取得すると5個目以降のライフになる。
つまりライフが5個以上あれば被弾しても最大強化されたショットは弱体化しない。
そしてライフの上限は15。
序盤で被弾したりパワーアップを取り忘れなければステージ3の頃にはライフが余り出してしまう。

上記だけならばまだシンプル過ぎるシューティングで済んでいたのだがこの問題点のせいで序盤を切り抜ければよほど適当なプレイをしない限り死ぬ要素が無くなり完全にシューティングゲームとして破綻している。

3.1、2の問題点から浮かび上がる虚無過ぎるゲームの実態
上2つで述べた問題点から察せられるようにこの作品のゲーム展開は非常に単調だ。
ボスや弱点を狙わないと倒せない敵というものはいないので前方3方向に弾を撃てるようになれば中央に陣取ってるだけで上と横から来る敵はほぼ完封出来てしまう。
あとは適宜弾を避けつつパワーアップを拾い「気を付けて」のメッセージに合わせて下から来る敵を撃破すればいい。
どうせライフは潤沢にあるので多少被弾しても気に病むことは無い。

確かにどんなヘタクソでも何も考えずに撃ちまくれば敵を全滅させられるゲーム性は最初のうちだけは爽快感があるかもしれない。
しかしこれが20ステージ、30分近く延々続くので早々に爽快感は消え失せあとに残るものは安っぽいショットのSEと指の疲労と虚無感だけだった。

4.スコアの問題点
ゲームオーバーかステージ20をクリアするとスコアボードが表示されるのでスコアアタック的な楽しみ方を想定していたのかもしれないがスコアを競うにしても本作は底が浅い。

クリア時の残り残機ボーナスやボーナスステージ、特殊ボーナスといったものはなく敵を撃破した点数以外でスコアに加算される要素が無いのだ。
本作の敵は完全に出現パターンが決まっているため倒せる敵の数はどうプレイしても同じ。
敵を殲滅するのに特別なテクニックは一切必要ないので少しパターンを覚えれば誰でも(多分)最高得点の96320を出すことが可能。

5.BGM・グラフィック
ゲーム性が終わっていても凝った音楽やグラフィックがあれば評価点になるのがレトロ風ゲームなのだが、本作のBGMはそれっぽいものを選んでこそいるがFM音源やチップチューンでもなんでもないタイトルとゲーム中延々流れるステージBGMの2曲のみ(どうやらincompetech.comというサイトで配布されているフリーBGMらしい)
機体はカプコンの1942丸パクリである。
背景も海と島だけの同じものが全ステージループする。(背景の地味さはある意味原作通りではあるが…)
デモ演出も全くない。
強いて挙げれば走査線のエフェクトの切り替えをする事が出来るがこの内容ではアーケード筐体感を出したところでチープなグラフィックがより見ずらくなるだけだ。
以上のように売りのレトロスタイルも拘りが全く感じられず褒めるところは0。

総括
本作は本当に何も考えずにBボタン連打して出てくる敵を倒すだけのゲームである。

レトロ風ならそれでいいのでは?と思う方もいるかもしれない。
だが考えて欲しい。往年の名作と呼ばれる作品でも例えばグラディウスなら必要な武装をプレイヤーが選んで強化出来るパワーアップシステムによる戦略性。
このゲームの元ネタの1942なら所謂無敵ボムの宙返りでパターンを無視したアドリブ重視の攻略を可能としている等ただ思考停止でボタン連打して敵を倒すゲームに終わらないようSTGゲームは昔から様々な試行錯誤が行われてきたジャンルだ。

それは過去のノミネート作であるガイアブレイカーやRXNですら例外ではなく(成功してたかはともかく)ちゃんとSTGとしてこの作品ならではのコンセプトを考えて作られている。

とは言うものの独自のシステムを突き詰めた結果、見事17年大賞となってしまったRXNの前例を考えればシンプルにシューティングの基本を追求するのも間違いでは無いかもしれない。
しかし本作はパワーアップの雑な調整や全く配置や行動が練られておらず弱すぎる敵の攻撃、底の浅いスコアシステムでシューティングの基本である避ける快感、敵を撃破する気持ちよさ、上達の喜び、スコア稼ぎの奥深さといったものが一切ない。

1942のガワだけ真似てレトロを装ってる本作に対して過去の名作達のグラフィックや音楽の評価は言わずもがなだ。

もし開発者達がレトロを自称すれば適当に作った何も考えずにBを連打して敵を倒す雑なゲームでOKという姿勢で本作を開発しているならそれは先人たちやインディーズで真っ当なレトロ風STGを開発しているクリエイター達に対する冒涜ではないだろうか。

パシフィック・ウィングスにはこの作品ならではのアイデアがなく、レトロ風ゲームとして評価出来る部分がなく、そもそもSTGとして破綻している。
本作が参考にしているものがあるとすればそれは80年代の名作ではなくその三番煎じくらいの海賊版のコピーゲームか何かだろう。
レトロさとチープさは似て非なるものだ。


余談
記事中何度か述べているように本作のグラフィックは見るからにカプコンの1942をパク…影響を受けているが当の19シリーズは2021年2月4日時点でswitchでプレイする手段がなかった。
しかし21年2月18日配信開始の基本無料ソフト「カプコンアーケードスタジアム」にてマイナーチェンジ作品の1943改を除いたACの19シリーズ全作の収録が発表。
この手の復刻系タイトルでは定番の巻き戻し機能やどこでもセーブ、ゲームスピードの変更機能でSTGが苦手な人でも遊びやすいように手が加わった。
単品販売がなく他の作品とセットで購入しなければならないのが難点だが19シリーズ最高傑作とも称される1943は無料タイトルとしてソフトにデフォルトで収録されている。
結果switchで(よく言えば)お手軽な難易度の1942っぽいゲームが安価で遊べるという唯一の存在意義すら配信から僅か2週間の間に失うことに…。合掌。