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2013年 次点
KOTY2012次点作『ヘビーファイア アフガニスタン』の続編として、Xbox360/PS3のマルチで発売された、同タイトルの日本語ローカライズ版。 低価格ながら、本格的なガンシューティングが楽しめると人気の高いレールシューティングゲーム「ヘビーファイア」シリーズの4作目で、今作は現代イランが舞台。 グラフィックや演出の向上を謳い文句に宣伝していたが、それ以外の情報が前作同様にほぼ皆無と、住人達には非常に期待(クソ的な意味で)されていた。 改善点は申し訳程度にあるものの、むしろ改悪と思わせる部分の方が遥かに多く、事前の予想をも上回り、年初からいきなり最強クラスの門番として君臨した。 スレでの呼称は主に「HFS」。前作では唯一の癒しとされた「ふぅあー!」が無くなり、プレイヤーの心を折りにくる難易度になっている。
2012年、それは海外からの初の襲撃という記念すべき年となった。ローカライズ作品としてのありえなさもさることながら、レールシューティングという確立されたゲームシステムさえも色々と破綻させた「ヘビーファイアアフガニスタン」(アフガン)さらには携帯版においても、かのデスクリムゾンにも迫る勢いで注目された問題作の「ヘビーファイアザ・チョーズン・フュー」そして後継者である「ヘビーファイア シャッタードスピア」(HFS)もまた年明け早々からKOTYの門を叩くことになったのである。前作とは明らかに異なる姿で。 「HFS」のシステムは、移動は全て自動で行われ、決められたポイントで射撃を行うレールシューティングとなっている。前作「アフガン」同様、物陰に隠れながらの射撃やリロードは健在であり、グラフィックや演出の向上といった改善がパッケージではうたわれている。が、そのパッケージのメインイメージが3DS版の説明書のイラストを使い回している時点で、反省しているのかがやや疑われる。そしてその疑惑を裏切ることなく、見事にシューティングとしての破綻ぶりを今回も発揮している。しかもより改悪された形で。 これまでのヘビーファイアでは敵が弾丸を命中される直前に赤い「!」が頭上に表示され、敵を倒す優先度が一目で理解できるようになっていた。しかし本作ではこれが廃止され、どの敵も容赦なくヒットを繰り返してくる。しかもダメージ後の無敵時間がない上にルーキーモードでも敵が鬼のような命中率を誇るため、一人でも画面上に敵が残っていればガンガン体力が削られる。これが複数ともなると、あっという間に蜂の巣状態になってしまう。これに加え、隠れる動作を行っても半分以上の場面で隠れきれておらず、敵に捕捉され撃ち続けられる。隠れたと思ったら敵の目の前に立っていたというとんでもない事もしばしば起きる。さっそく戦略性の欠片もなくなっている。ヒット時に画面が揺れるために狙いも定めづらく、連続ダメージが発生した際には画面酔いさえも懸念される。加えてダメージ後に画面に空く穴がくっきりと長時間表示されるので、余計に敵が見えにくくなっている。回復アイテムは前作同様に存在しているが、どういうわけが非常にわかりにくい照り具合になっており、背景にとけ込んでいたり青い照明との区別がつかなかったり、遠くに配置されている場合はうっかり見落としてしまう事も。弾丸やグレネードのアイテムも健在だが、これらは一度取得したあとにチェックポイントを通過すると二度と復活しないため、うっかり先の場面のものをとってしまうと肝心のシーンで無くなっている。リスタートした場合、体力は微量程度に回復はするものの弾数とリロード状況はそのままなので、場合によってはあっさり詰む。ひどい場合は、リスタート直後のシーンでこちらが攻撃可能になる前に敵に一方的に撃たれるため、何も出来ずになくなくリセットしなければならないこともある。また本作ではQTEを失敗するとダメージを受ける仕様となっており、場合によっては問答無用で即死になることがある。お世辞にもQTEでの感度がいいとは言いえないので、ストレスの原因ともなる。さらに、これまでは減点扱いだった味方や人質への射撃が、当たった時点で即ゲームオーバーという仕様に変更されているちょくちょく味方が先行したり突然人質のいる部屋に突撃するため、あっさりミスを誘発してはやり直しを強要され、非常にテンポが悪くなる。こうした仕様のせいで的確な照準の操作が求められるのだが、相変わらずコントローラーのキーコンフィングはなく、通常コントローラーのエイムスピードも調整できない。そのため、Move+モーションコントローラー以外の操作方法ではクリアが困難であり、ベテランモードにいたっては絶望的である。 カスタマイズ画面も相変わらずであり、選択できる武器は4つしかなく、選択しなおす度に全ステータスをリセットする必要がある。持ち込める武器も1つだけで、弾切れを起こしたときに使うハンドガン、特定の場面で自動的に切り替わるスナイパーライフル以外では、自由に武器を切り替える事も出来ない。マルチプレイも前作同様に画面共有であるため、一人が隠れると全員が強制的に隠れる仕様のまま。そのため綿密な連携が必要となってくるのだが、上記の仕様により隠れても意味がない状況が度々発生する。お互いのリロードやカバーのタイミングも派手にずれる上に、自分が隠れる動作を行っていないにも関わらずダメージを受けてしまう理不尽な事態も発生する。プレイする人数が増えれば増えるほど、場の空気がまずくなっていく有様である。 前作よりも向上されたといわれる演出でさえもツッコミ所がたえない。ストーリーは非常に薄く、「米レンジャー部隊がイランで核兵器を確保しようとしたら発射され、国際問題にならないようイラン国内で爆発させる」というとんでも内容であるにもかかわらず、全体的なチープさが否めない。敵も全員モブ扱いなので、最終ステージでもあまり盛り上がらない。加えて毎ミッション前のステージ説明がダラダラと長文を読むだけなので、全く物語が頭に入ってこない。しかも、直前のステージで操作をしていた爆撃機を「運がなかった」の一文で墜落させる始末である。さらにはこの説明部分とゲーム時の音量の差が激しく、バランス調整をいちいちしなければならない。画面の明るさ調整も、相変わらずテレビ本体で行う必要がある。敵のテクスチャー、オプション画面、階級アップ画面等いたるところから「アフガン」からの使い回しもある。メインイラストの件といい、極力努力を惜しむ姿勢が見て取れる。 また、車両の演出にも不自然な点が散見している。重力を無視して唐突に転げ落ちていくジープ、ロケットを撃ち込まれる度にロープで引っ張られているかのような急上昇をするヘリコプター。撃墜時には突然高速回転を起こして市内に落ちていくというシュールな演出が見れる。また人物の描写も非常にお粗末であり、ゴーグルをかけていない兵士の目は瞬き一つしないままである。途中で気絶した兵士を引っ張るQTEでは、常時目が見開いた無表情のおっさんを引きずる事になる。夜間ステージで暗視ゴーグルをかける場面では、使用したとたんに視界が悪くなり、それに気付いたのか直後に無言で外す。他にも細かい演出でのツッコミは多々あり、本当に向上されているのかやや疑わしい所である。 そして今回もローカライズ作品としてやってはいけないことをいくつもやらかしている。今回は日本語音声が収録されているがニュース番組のナレーションそのものなので、戦場の雰囲気と全く合っていない。英語音声も収録はされているものの、オプションでは変更できず、本体の言語設定をいじる必要がある。そのため、英語音声日本語字幕、日本語音声英語字幕といったことができないという、まさかの前年度のデューク様仕様である。説明書は相変わらずの5Pのモノクロで、ほとんどが前作「アフガン」の使い回しという潔さ。値段も当然の如く跳ね上がっており、北米版(約20ドル)とでは二倍以上の差が出ている。 評価点としてはヘリや戦車、チヌーク(爆撃機)等の乗り物に搭乗してのステージが増えており、バリエーションも拡張されている。が、他の同様のジャンルのものと比べると明らかにボリューム不足な上に、ヘリや戦車の動きなどの挙動自体が不自然なものもある。また、どの乗り物もあまりにも一方的に攻撃できてしまうため、緊張感がほとんどない。かと思えば、戦車同士では互いに一撃で沈むオワタ方式になっているあたり、バランス調整がされているのかがやや疑問である。昨年、海外からの初の刺客として多いにスレッドを盛り上げた「アフガン」。その後継者である「HFS」は、続編の名に恥じないダメっぷりを存分に発揮した。よりFPSらしさを求めたためか、警告マークを廃止し敵の命中率を向上させた結果、本作は「動けないFPS」としてより深化(深刻化)したと言えるだろう。唯一の癒しとも言われた「ふぅあー!」すら廃止するあたり、戦争ゲームに優しさは無用と言わんばかりの、ハートマン軍曹並の厳しさすらも感じさせる。そんな「HFS」のサブタイトルを引用して当選評をしめたい:「シャッタードしたいのは、このゲームの方だ」