名称 | 大戦略PERFECT〜戦場の覇者〜 | |
ジャンル | 戦略シミュレーションゲーム | |
対応機種 | PS3 | |
発売元 | システムソフト・アルファー | |
開発元 | システムソフト・アルファー | |
発売日 | 2014年2月6日 | |
価格 | 通常版6800円(税込) 限定版8800円(税込) | |
対象年齢 | CERO:B(12歳以上対象) |
2月6日、システムソフト・アルファーより発売された「大戦略PERFECT〜戦場の覇者〜」
本作品は、2010年に覇王鬼帝と熾烈な争いを繰り広げ、惜しくも敗れたPSP版の移植である(公式サイトにはPSP版の移植であるとは一切かかれていないが)
2年3ヶ月以上、回数にして10度も更なるクオリティアップの為に延期を続け、公式サイトで
『シミュレーションゲームとしてありとあらゆる用途に対応できる機能を、「完璧に」備えています。』
『ビジュアル面も、ハードウェアの機能を最大限に生かしたフル3D表現による大迫力の「戦闘シーン」』
『往年のシミュレーションゲームファンの方から初めて購入される方まで、全ての方にご満足いただける内容となっております。』
と断言するほどの自信作である。
では、『大戦略を「完璧」なものにするというコンセプトのもとに開発された作品』がいかに完璧かを紹介する。
※『』内は公式より引用
※選評者はPSP版は未プレイ。
また、通常版と200ページのフルカラー限定公式攻略本のついた限定版がでているが、選評者は通常版を購入したので、限定版の内容については不明
○大戦略パーフェクトというゲーム
『「大戦略」は戦場の地形が「ヘックス」という六角形のマスで区切られており、
その戦場上に配置されている自軍の兵器を、将棋やチェスのように敵陣営と自陣営が交互に動かして攻撃や相手の建物を占領する、ターン制のシミュレーションゲームです。』
※公式から引用
『元はPCで発売された大戦略パーフェクト系の移植版であり、
最近の大戦略の特色であった連続するステージをクリアしていくキャンペーンが主体ではなく、色々なマップを集めたシングルマップ集であるのが特徴。
通常のキャンペーンもあるが、シャッフルキャンペーンという特殊なものを除けば数は2つと飽くまでもオマケである。
また、好きなユニットを集めて「マイ部隊」を編成し、オリジナル部隊として各マップを転戦して鍛えていったり、
細かいパラメータまで変えられるユニットエディタや、マップエディタなどの付属ツールも充実している。
どうせまともなゲームバランスにできた事など一度もないSSαである。調整はユーザーにやらせてしまおうと言うのは、ある意味英断であると言えるかもしれない。
例によって例のごとく宇宙マップやファンタジーマップなど、誰が喜ぶのか疑わしい妙なマップが数多く収録されている。
登場生産タイプも日米など主要国に加えてイラクやヨルダン、果ては北朝鮮など20カ国に及ぶ。』
※携帯版の選評1から引用
○OP
所々戦車のキャタピラやヘリのローターが動いてなかったり、船がプラモだったり、シャギったりぼやけたりするが、細かいところを見なければPS2中期〜後期の出来なので悪くない。
戦略ゲームのOPとしては十分である。
○説明書
全65ページ(内3ページがメモ)。
画面の見方や、各フェイズ・各モード・各行動・エディターの説明が詳細に書かれている。少なくともチラシではない。
だが、プレイを始めてみて直にダメさに気付くだろう。
この説明書、大雑把な目次しかないので調べたい項目がどこに書いてあるのかわからないのだ。
目次には、基本操作・メインメニュー・ゲームの基本・画面の見方・戦場マップでの基本ルール程度しか書いていないため、調べたい項目を探すのに非常に苦労する。
いや、苦労するだけならいいのだ。
恐ろしい事に、ゲームでもっとも見るであろうユニットの情報画面の説明が書かれていないのである。
一応、各項目の説明は各エディタでの編集機能にバラバラに書かれているのだが、まさかゲーム画面の説明がエディタでの編集機能に書かれているなど思いもしないだろう。
故に始めると、夜間30%とかステルス3とか隠蔽2とかECM3ってなんだ?疲労度はどうやって下げるの?デメリットは?回避力の地上だけ2つ書かれてるんだけど何故?
特性に書いてある全とか攻撃に書いてある直とか移動の○とかメガってなによ?
と、疑問にぶち当たるたびに説明書をひっくり返す作業を強いられるであろう。
他にも様々な情報がエディタでの編集機能で説明されており、不便極まりない。
尚、当然、ゲーム画面で項目の説明をしてくれるなんて親切な機能はついていない。
なぜ、最終ページのメモを索引にしなかったのか、なぜ他は丁寧に書いているのによりにもよってユニットの情報画面の説明をしないのか?
○ゲーム内容
大きく分けて、プレイモードと本作の売りであるエディタに分かれる。
まずはプレイモードの説明から行う
●チュートリアル
まずは公式では『初心者の方でも安心してプレイに臨める』と謡うわりには説明書の各モード説明に一切説明がないチュートリアルから説明する
このモードは歩兵のガーランド軍曹と元特殊部隊のメアリー中佐が楽しく掛け合いながら基礎を教えてくれるのだが、まずは結論から言おう。
このモードは存在する価値がない。教えてくれることが少な過ぎる上に的外れなのである。
このモードで説明してくれる事は、移動・攻撃・索敵・首都占領・司令部破壊・地雷撤去のみである。
移動・攻撃・索敵はいい。大戦略、というかSLGの基本中の基本だ。改めて説明するものかという気もするが初心者をターゲットにしているのだから仕方ない。
首都占領もわかる。これは大戦略独自の勝利条件であり、やはり大事だ。
だが司令部破壊及び地雷撤去に関して言えば正直、微妙である。
司令部破壊は重要であるが後述する初心者用のシンプルモードでは司令部が無い事から解るように中級者用。
地雷撤去にいたっては、数ある行動の中の1行動、それもかなりレアな行動に入り何故これが出てきたかは正直疑問である。
いや、説明しないより説明したほうがいいのは事実であるが、それより先に説明しなくてはいけない事は山ほどある。
(例:兵器の種類や各ターンの説明。迎撃や、補給や、搭載や、空挺の方法について)
説明書を見れば解決する、省いたのは大戦略のお約束だから説明しなかったなんて言い訳は通用しない。
説明書を見ればOKならチュートリアルなぞ必要ないし、移動・攻撃・索敵・首都占領の説明をしている以上、これが大戦略どころかSLGのガチ初心者に向けられたのは明白だからである。
要は、経験者には当たり前過ぎて不必要・非経験者には教える事が少なくてやっぱり不必要なモードになっているのである。
どうにもこうにも作りかけの気がしてならない。2年半の延期では足りなかったのだろうか?
存在自体が不必要な事に比べれば瑣末であるが、軍曹と中佐の掛け合いは説明書で3行で書いてあることを数分に引き渡す為殆ど無駄話。
(内容は声優さんの熱演もあり面白い。ただし、泣いても笑っても2人の表情が変わらないので不気味)
首都占領では普通にやると敵が突っ込んできて、それを迎撃すると敵全滅でクリアになってしまう(占領の方法を実践できない)
等といった、細かいクソ仕様も完備している。
ただし、存在自体が不要なチュートリアルであるがたった一つ良点がある。
メアリー中佐の立ち絵と喋り方がエロくて素晴らしいのだ!
個人的にはここが本作の最高評価ポイントである。
●シンプル・ノーマル・ハード・戦略モード
ノーマルは従来の大戦略のモードであり、ハードは難易度上昇。
戦略はノーマルに物資の概念を加えルールも一部それに合わせたものに変更されている。
シンプルは大戦略初心者用のモードでルールや生産などが簡略化されており、ステージも順番にやっていけば各行動の使い方や兵科の優劣などがわかるようになっている。
シンプルは(扱うルールが少ないからか)よく出来ている。
ただし、射撃を行うとバクってカーソル移動しか出来なくなりリセットするしかなくなるのは流石SSαといったところか。
いずれのモードでもマイ部隊というクリア時のユニットを次のマップに引き継げる(ただし、出撃にはお金がかかる)機能もある。
マイ部隊情報のみオートセーブなので上述した射撃バグを起こすと折角育てたマイ部隊が消えるので注意しよう。
共通するクソ要素としてとにかくシステム関係が非常に不親切である。
ユニットのアイコンは兵科ごとに統一されていてアイコンを見ただけでは高価な強いユニットなのか安価な弱いユニットなのか解らない。
更に、敵味方が同じ向きで色も違わないのでパット見どれが敵でどれが味方かわからない。
一応、申しわけ程度にユニットの外周に勢力の色がつくのだが、マップの色や迎撃範囲と同色の場合は溶け込んで解らなくなる。
なんか移動範囲が変だなと思ったら敵が紛れ込んでいてZOC(敵ユニットの周囲1マスは行動不能)が発生したなんて事が良くあるので困る。
GB版でも出来たユニット毎のアイコンの特色付けがなぜPS3でできないのか?2年半の延期では足りなかったのだろうか?
また、大戦略は、1スタック内で高空・低空・地上などと階層わけされているのであるが最上位の階層のユニットしか表示されないので、低空や高空にユニットがいると地上のユニットは見えない。
一応下に何かいるという印はでるのだが、一々確認しなければいけないし、敵味方あわせて100機以上のユニットが集結する大規模な戦闘ともなると見落とす事も多くなる。
後方の輸送ヘリの下にいた長距離ロケット砲に奇襲を喰らって前線半壊なんて事がままあるので困る。
また情報の確認が面倒さも直っていない。
PSP版の航空機の燃料を調べるだけで『ユニット選んで□押して小窓開いて、△押して詳細出して、高度が違ったら○ボタンでその地形の一覧開いてそこから目的のユニット選んで…分かったら小窓を閉じる。』が直ってない。
また、それだけ苦労して開いた部隊の情報パネルの武器情報が足りていない。
射程や弾数が書いてあるのはいいのだが、その武器の地形適性が載っていない。つまり、その武器が対地なのか対空なのかわからない。
兵科である程度は推測がつくものの所詮は推測であり、そもそも普通に複数の攻撃手段を持つ兵科は存在する(対地・対空ミサイルを持つ戦闘機とか)ので、結局兵器一覧で調べる事になる。
ここもPSP版から直っていない。2年半の延期では足りなかったのだろうか?
キャンセルボタンが画面によって違う。
□だったり×だったり、セレクトやスタートだったり。
後述するキーレスポンスの悪さの関係上、基本ボタンは連打する為戻り過ぎたり、折角閉じたのにマタ開いたりたりといった悲劇が。
L1R1で建造物や未使用部隊の検索は出来るのはいいが、 A→B→C→D→…の順に検索するだけでBからAに戻れない。
なお、L2R2は未使用である。わりふれよ。
○エディタ
マップ・生産タイプ・ルール・地形・兵科・キャンペーン・部隊機数比率をエディタすることが出来、使いこなせれば色々と変更可能。
また、生産タイプは登録すればシンプルとチュートリアル以外で使用可能。
ただし、折角兵科エディタ作成したオリジナル兵器はマイ部隊に組み込み不可能という、お互いの仕様がお互いの長所を打ち消しあうという謎のバランスはPSP版から修正されていない。
2年半の延期では足りなかったのだろうか?
また多様に設定できるのはいいのだが、それ専用の操作があるわけではないのでひたすら共通の使いづらい操作で百項目以上の項目を設定しなければならない。
特に本作のウリである兵器エディタでは、値の設定を+1か-1でしかできない。
ボタンを押しっぱなしにすることで操作できる桁数は10単位、100単位と増えていくのだが、20以上上昇(下降)しないと桁が上がらず、
(0で+を押しっぱにすると、1〜19まで+1刻みで増えて、19〜209まで10刻みで増え、209〜は100刻みで増える)
1度ボタンを離したらまた+1刻みに戻るので、3桁の燃料・5桁の価格は設定したい値にするのに非常に苦労する。
更新結果を破棄して抜けることが出来ない為、エラーがあるとエラーを解消するまで兵器エディト画面から抜けられないのも辛い。
また、ここではキャンセルや値の増減や種類を変えるのに割り振られるボタンが画面によって違うのもクソ要素であろう。
◎最大のクソ要素UI
一番のクソ要素である。とにかく、キーレスポンスが非常に悪い。
前述したが、決定やキャンセルは一度押しただけは反応しない事が多いので連打が基本である。
特に恐ろしい事にカーソル移動はスレの有志の検証によると、『十字キーを入れっぱなしにすると1マス移動したのち約0.83秒止まってから動き出す』のだ。
つまり、十字キーを入れるたびに1秒近く待たされる事になる。
ただの1秒と侮るなかれ。
大戦略というゲームは、各戦場の様子を確認する為にカーソルを多く動かすゲームであり、その度に1秒止まるのだ。
その度にラグってプレイヤーの精神力を確実に削いでくる。
ちなみに、R3でマップをスクロールできるが、マップ端から端まで1秒もかからず駆け抜けるため、マップの端が見たい以外では役にたたない。
なお、L3は未使用なのでカーソル移動できたりしない。割り振れよ。
未使用ユニットに飛べる行動ターンはまだ楽だが、それでもスタックされると階層が下にいるユニットが何か解らないクソ仕様のせいで、ユニットを動かす前に敵のスタックを一つ一つ確認しなければいけない。
調べる際はクソなUIに上で書いた情報の確認が面倒さと、結局武器の確認をするには一覧から開かなくてはいけない情報の不十分さと、キャンセルの相違という援軍が加わりプレイヤーの気力を殺しに来る。
そもそもユニットを移動させる為に移動先を選択する度にラグが襲ってくるのだ。連打をすればラグは回避できるが、代わりに指は疲れる。
それをユニット数繰り返す。これでようやく1ターンが終わりだ。敵の行動が終わったら次のターンが始まるぞ。
ちなみに、プレイスタイルにもよるが部隊数は序盤をのぞき30を下回る事はなく、ターンもシンプルの序盤をのぞき20ターン以下で終わる事はない。
生産ターンにいたっては、戦場が広がり複数戦線ができて生産も複数拠点でするようになると、限られた資金を有効活用するために各戦場を何度も見なければならずその度にラグに襲われプレイヤーの精神はストレスで病んでいく。。
生産資金の有効活用という大戦略の楽しみを味わう度に、クソUIも同時に味わって結果見事に楽しみが殺されてしまうのだ。
エディタも同様である。
項目を設定するたびに、1ユニットを選ぶたびに、ルールを設定する度に、マップを一つ配置するたびに、ラグと反応の悪い決定やキャンセルに割り振られるボタンの違いが襲い掛かってきて、ストレスは二次曲線状に上がりプレイやーの目から光が消えていく。
正直に言おう、選評者は本作独自の要素であるエディタはクソUIのおかげで2分で弄る気がうせた。
選評を書くためにせめてオリジナル兵器で構成されたオリジナル部隊同士を戦わせるオリジナルマップを作ろうとしたが、1時間で限界に達し断念した。
つまり、大戦略としての面白さや、今作の目玉を味わう度に同時にストレスが増えていく。
これでは、面白さを満喫する前にストレスでおなか一杯だ。
○ドラ
・公式が謡う『フル3D表現による大迫力の「戦闘シーン」』の出来はPSレベル。特に空を仰いで固まる兵士は失笑者である。いくらSLGにグラは重要じゃないといっても限度があろう
・公式が『高速CPUにより高速かつ高性能なAI』『まるで人間と対戦しているかのような歯ごたえのあるプレイ』と自信満々なAIは首都を放っておいてどこかに遊びに行ったり、
拠点に部隊が別々に迫っている状態で、片方の部隊が射程内に入ると拠点を放り出して全力で射程内の部隊に向うなんてお茶目なプレイをする。公式が想定する人間は何歳だ?8歳ぐらいか?
・説明書の基本操作を見てみよう。L2R2・R3が未使用である。また、PSPにはL2R2はなく、アナログスティックは一つだけである。
つまり、近作はPSP版からバグを取っただけの手抜き移植である。
大戦略PのPはポータブルのPだったんだよ!
●結論
PSP版で続発した致命的なバグを殆ど消した(それでもシンプル限定とはいえ残っているのだが)のは素直に褒めるべき。
また(PSPとPS3の性能差であろうが)CPUの長い思考時間はなくなっている。
ただし、そこで力を尽きたのが他の欠点やバグは殆どそのまま丸ごと移植してしまった。
今作では確かにゲーム性は破綻していない。楽しめる箇所がある。
だがそのせいで、クソの山の中に楽しさがあるせいで、その楽しさを味わおうと、もしかしたらそのうちもっと楽しくなるんじゃないかと、クソの山を進んでしまう。
これが最初からつまらなければ、以前のようにバグゲーならば直に投げ捨てている。だが、そうでないからプレイし続け僅かな楽しさと同時に大量のクソを味わってしまう。
某アゴの長い人が言った『焼かれながらも人はそこに希望があればついてくる』を地でいくのが今作なのだ。
だが、遊べるのは大戦略というゲームがもつ楽しさであって今作の楽しさではない。なら、大戦略の楽しさが味わいたいのなら旧作をやればいいのである。そうすればクソは味あわないで大戦略の楽しさだけを味わえる。
選評者の持っているGB版ですら、今作と同じ程度の思考時間で、今作よりは快適なUIだし、アイコンだけでユニットの特徴が出ているので安い兵器と高い兵器の区別はつくし、敵味方で左右反転しているので間違わない。
今作は確かにバグという一撃必殺の刃を失った。
だが、クソなUIに代表される多数の遅効性の致死毒を隠し持っていた大戦略パーフェクトは、バグという武器を失っても尚KOTYに相応しいと思いここに推薦する。