名称 | Tear ー終わりとはじまりの雫ー | |
ジャンル | VRヴィジュアルノベルアドベンチャー | |
対応機種 | PS4 | |
発売元 | (株)ロッキンハート | |
開発元 | (株)ロッキンハート | |
発売日 | 2017年10月20日 | |
価格 | 1620円(税込価額)(DL専用) | |
対象年齢 | CERO:C(15歳以上対象) |
PV
Tear ー終わりとはじまりの雫ー 選評
『Tear ー終わりとはじまりの雫ー』は株式会社ロッキンハートより発売されたPS4用ダウンロード専用タイトルであり、ミステリーとして有名な”ファティマ第三の預言の謎”を軸に展開されるノベルゲームとなっている。
YouTubeにて公開されたティザームービーの説明文にあるURLが間違っており公式サイトにアクセスできない、PSVR対応だったものが直前に対応中止となるなど発売前からある意味話題の本作であったが、発売後に明らかになったゲームの内容は我々の予想を遥かに超えていた。
まずプレイをし始めて最初に目に飛び込んでくるのは、ヒロインを母としそのまま眠り続けるエンディング、ヒロインを推しアイドルとしてデビューさせた後に何者かに殺されるエンディング、肩もみをしたヒロインにバリツで殺されるエンディングである。
バリツという言葉の意味すら分からぬまま殺されるが、これらのエンディングは全て選択肢を1つ間違えるだけで飛んでしまうバッドエンドであり、これがプレイ開始十数分で立て続けに展開されることになる。
普通のプレイヤーはプレイ開始直後にここで大いに戸惑うことになるが、これから先に展開されるストーリーの奇天烈さに比べるとまだまだ序章の始まりと言ったところなのが本作の恐ろしいところであろう。
遥か昔に発見され、人々に過去や未来のビジョンを見せることのできるオーパーツ”Tear”を用いて自分の過去や世界の真相に迫っていくというのが本作の大まかなストーリーの流れである。
登場人物の心理や目の前で何が展開されているのかがさっぱり分からない展開に目をつむるとしても、一応最初のノーマルエンディングまではかろうじで作品としての体はできている。
問題はノーマルエンディング後の話で、ここからは登場人物の視点や時間、現実か仮想現実かも定かではない状況で物語が展開されていく。
ヒロインの物語中の話が展開されたかと思えば次のエピソードでは10年前の別のキャラクターの視点が描かれ、その次のエピソードではさらに昔の別のキャラクターの視点が描かれると言った具合である。
5W1Hが1つも分からない疑問符しか付かないまま物語は展開され、気づけば意味がさっぱり理解できないままエンディングを迎えているのが本作である。
この物語の意味不明さに拍車をかけているのがライターの技量の無さだろう。
数字やアルファベットの半角と全角の規則が一定ではなかったり、句点が付いている文章と付いていない文章の差が分からなかったりとにかく読みづらいのだ。
物語中では「話はじめる」と全編に渡って書かれているが、”話”は名詞であり正しくは動詞の”話し”である。
ズギューーーーン、ドカーーーーッ、ゴゴッゴゴゴ、ズッガーーーンと言った擬音で示される戦闘描写もここまで来るとコミカルで笑えてしまう。
文章を読んでも画面上で何が起きているのか理解できないほどの描写力の無さが、ただでさえ難解なストーリーをさらに意味不明なものへと昇華している。
さらに、ライターと開発陣との距離感の遠さも本作から感じられる。
画面上では本の形状をしている”Tear”を文章ではスマートフォンとしているシーンが代表例だが、他にも文章と画面上の演出が異なっていたり、キャラクターの立ち絵が間違っていたりするシーンが見受けられる。
誤字や脱字も非常に多い本作だが、初見プレイ時でもいくつも気づくことのできるこれらのミスを誰も指摘しなかったのだろうか。
表示できる文字数の限界を知らされていなかったのか、テキストウィンドウから名前がはみ出してしまっているシーンがあることも相互のコミュニケーション不足が原因と言わざるを得ないだろう。
Tearのシステム面についても語っておかなければならない。
まず、Tearには任意セーブというものが存在しない。セーブはエピソードが終わるごとに自動セーブされるものだけである。
そもそもタイトル画面ではゲームスタートしか選択することはできない。オプション設定はプレイが始まってからようやく設定できるといった具合だ。
バックログの仕様も極めて特殊で、現在地の一歩手前からログを見返すことができるのではなく、常に一番最初のメッセージまでバックログが遡ってしまう。
現在地近くのログを見たいのならここからスクロールする必要があるのだが、文章が長いエピソードだとバックログを見るだけで処理落ちが発生し、最初から現在地のログまでスクロールするのに30秒近くかかってしまう。
前述した通りTearはただでさえ意味不明な展開が続くのでバックログを見返したいことが多いが、このバックログの仕様も相まってそもそもログを見返そうとも思わなくなる仕様となっている。
本作にはVRシーンというTearの作り出した仮想現実の中で歩き回るミニゲームのようなものもあるのだが、ボタン操作を変更するオプションなどは用意されていないため非常に操作しづらい。
元はPSVRに対応させたシーンだということもあるのだろうが、コントローラでは目的の対象物を見つけるだけでも視点を右往左往する羽目になる。
21世紀に、しかも最新世代のPS4で発売されたことがもはやファティマの奇跡と言っていい本作だが、これがわずか1620円で楽しめる。
これを高いと思うかは人それぞれだが、全CG3枚(うち2枚が差分)に4~5時間でコンプリートできる本作を、興味のある方は是非買って絶望していただきたい。未知との遭遇があなたを待っている。