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総評
2020年、温かみのある「クソゲー」としてムーブメントまで生み出したファイナルソード。
2021年、近年稀に見るストロングスタイルで大賞をもぎ取ったバランワンダーワールド。
ここ何年か、KOTYに選評が提出される作品の多くは「虚無ゲー」だった。
そんな中、2年連続での「尖ったクソゲー」の大賞受賞。
特に前年のバランは、スレ住民に否応無く「昔のKOTY」を思い起こさせた。
2022年。
スレ住民の肩に「何か」が重くのしかかる。
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1月も半分を過ぎた頃。
前年バランの大賞確実を見届けたスレ住民の一部は、2022スレに活動の場を移した。例年より幾分早いKOTYの幕開けである。
まずスレで話題になったのはゲームではなくテンプレ。
前年度の途中から導入されたIARCを暫定的に対象外とするルールを引き継ぐかどうかでスレは連日大荒れの形相を呈していた。
アセットフリップを弾くのが目的ならもっと良い線引きがあるのでは?
IARCで弾けているなら問題ないのでは?
IARCで戦えるクソゲーが出てきてくればいいのでは?
詳細は割愛するが、「『クソゲー』を通し、アセットフリップを弾く」ための終わりのない論争は夏まで続き、その後も最後まで尾を引き続けることとなった。
夏。
一応の決着がついたスレに、ようやく今年初めての選評が届いた。
そのゲームの名は「メイドインアビス 闇を目指した連星」。
発表の段階からチープなグラフィックとキャラゲーという点で注目されていた作品である。
原作を強くリスペクトし徹底した残酷描写を行った本作のレーティングは堂々のCERO:Z。その描写の緻密さから原作ファンを中心にSNSで高い評価を得ていた本作が何故KOTYの俎上に上がったのか?その理由は「それ以外が粗末」だからだ。
チープなモデルとモーション、ポンコツ味方AIに不親切なUI、原作準拠の理不尽な難易度、あまりにも説明不足のチュートリアル、誰にも感情移入できないストーリー、壊れた攻撃判定とゲームバランス。
⸺だが、KOTYにおける本作は意外な形の幕切れを迎えることとなった。選評の取り下げである。
元々選評には主観が多い等の問題点があったのだが、選評主が質疑応答になかなか返答しないなど問題行動を繰り返し最終的にフェードアウト。
結局後になって本人から取り下げの申し出があり、KOTYスレからアビスは姿を消したのであった。
10月にもなって選評ゼロの振り出しに戻ったKOTYスレ。
「今年は大賞無いんじゃないか」と真面目に言われだしたのはこの頃だろう。
12月27日。
もはや諦めムードも漂わず、いつものようにスル検な話題のレスバトルが繰り広げられている中、果敢にも一件の選評が届いた。
「RPGolf Legends」。これがKOTY2022の唯一の選評となった。
オールドスタイルな2DRPGにゴルフゲームを組み合わせたような異色の作品である本作の特徴は「虚無」。
ゴルフの妖精に頼まれてゴルフ場を開放していくのが本作の主な流れ。開放のためにはゲージを貯める必要があり、ゴルフかバトルをすることが必要になる。
ゴルフモードは基本的には普通のゴルフゲームだが、ボールまで自力で歩く必要がある、NPCも徒歩の速度で移動するため時間がかかるなど細かなストレス要素が多い上、ステージに存在するギミックにバグがあり進行不能になる場合がある。
バトルモードはクラブで殴る基本攻撃とジョブ固有の特殊攻撃やアイテムを使うリアルタイムアクション方式だが、アイテムのクールタイムが非常に長いことや木などのオブジェクトにキャラが隠れて見えなくなる仕様、コインの入手効率が悪いなどの問題があり、基本的に進行としてはゴルフ一本となりがちなゲームバランスになってしまっている。
ストーリーも基本的に頼まれた仕事をこなすことの繰り返しであり単調な作業で、最終的に理由付けはされるがそこまでの盛り上がりがない、ゴルフにちなんだエピソードが特にないなど非常に薄い物だ。
選評主の表現を借りると「出来の悪いRPGとゴルフゲーを足して単に2で割ったゲーム」である本作の選評を以て、KOTY2022は総評のフェーズに移ることになった。
3月。
選評の締め切りから1ヶ月が経ったが、未だに総評は書かれず。
選評はRPGolfしかないのにもかかわらず、だ。
何故か?それは「何か」のせいだ。冒頭の通り住民はかつてのKOTYを思い出した。虚無ゲーではないものがKOTYであるべきだという思いを誰もが薄々と抱いているからこそRPGolfを大賞とする総評が現れず、かと言って選評が来ているのにもかかわらず大賞無しとするのもKOTYとしてどうなのかと総評が現れない。
しかし、虚無を弾こうという流れとこの現状は如実にKOTY2022の結論を表していると言えるだろう。
冒頭に述べたように虚無ではないKOTYを踏まえ、2022においても虚無を退けようと努力をし、虚無しか残らなかった今誰も総評を書かない。
この下敷きを持って虚無を大賞とし最後の最後に信念を曲げる必要がどこにあるだろうか?
よってKOTY2022は⸺
「大賞無し」である。
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「何か」によって良くも悪くも近年にない流れを見せたKOTY2022。
この結果、ひいては信念が正しいのかはわからないが、とにかくKOTY「2022」としては締めくくられた。
全く遊ぶに耐えないようなゲームでもKOTYたる『クソゲー』とそうでないゲームの差とは何か?
KOTY2022は、これまで漠然としたまま放置されてきたその「何か」を改めて考えさせられた一年だと言える。
かつてはほとんどパッケージしかゲームはなく、一年にそれほど数も出ない時代ですべてのゲームを確認することも比較的簡単。当時KOTYは単に「その年のつまらないゲームの中でも一番尖ったものを大賞とする」程度のものだったが、開発環境の未熟さによるバグや大手の向こう見ずな企画などもあり様々なバリエーションに富んだ大賞が生まれた。
対して現在はダウンロード版などでゲームがあふれ全てを確認することはできなくなり、ビッグタイトルは堅実な企画をし、ゲームエンジンの発達でバグは減り、つまらないゲームの殆どが単につまらないだけの「虚無」になってしまった。そうして「尖っていないとKOTYたり得ない」というふうに変容していったのだ。
見てみぬふりをしてきたその変容があまりにも浮き彫りになった本年。
「クソゲーが出ないことは良い事です」
この言葉では、もう締められそうもない。