2016年総評が完成しました。(2017/04/25)

2016年 次点

概要    

名称古き良き時代の冒険譚http://www.daidai-web.com/vita/fybo/fybo_index.html[外部リンク]
ジャンルシミュレーションRPG
対応機種PS4
発売元有限会社だいだい
開発元有限会社だいだい
発売日2016年12月15日
価格1944円(税込価額)(DL専用)
対象年齢CERO:A(全年齢対象)

参考動画    

要点    

主にPCゲームのローカライズを手がけてきた有限会社だいだいが突如PS4/Vitaのマルチプラットフォーム向けに発売した自社製SRPG。
高すぎる難易度を誇る最新のゲーム群に対抗して、初心者でも気軽に最後まで遊べるSRPGを目指して開発したとこのこと。
結果的には誰もがげんなりするような内容へと変貌した模様。

コンセプト    

  • 公式曰く:「ゲームをプレイするのが億劫(おっくう)だと感じているあなたに、やっていただきたいゲーム」
  • ゲームコンセプトは以下の3点:
    • 1つ、ルールはわかりやすくシンプルに。
    • 2つ、小難しい話や鬱展開にはならず。
    • 3つ、誰でも満足感を持ってクリアできる難易度で

戦闘システム    

  • 単純すぎて戦略性の幅のないゲーム性
    ルールは非常に単純明快なのだが、あまりにも奥がないためにどのマップ・どのユニット配置でもほぼ同じ行動を終始とることになる
  • 使用可能な兵種は主人公を除けば「ソルジャー」「ランサー」「ガード」「メイジ」「ヒーラー」の5種しかない
    • どのユニットも敵味方それぞれほぼ同じパラメーター、同一の魔法しか持っておらず、差別化はできていない
    • 主人公や敵ボスとして登場する人間タイプユニットも多少パラメーターの高い通常ユニットでしかなく、基本的な攻略方法はラスボス相手でもほとんど変わらない
  • 攻撃はかならず100%命中する仕様
    • 回避手段はマップ上でランダムに入手できるサポートカード「完全防御」で防ぐか、「反撃禁止」で攻撃をやめさせるかの二択
    • 「防御」コマンド、「回避」スキルなどSRPGなら標準的に存在しているはずの要素が皆無のため、戦闘での選択肢が極端に少ない
  • ダメージ計算が物理攻撃の場合は「攻め手側の攻撃値から受け手側の防御値を引いたもの」、魔法攻撃の場合は「双方のユニットの魔力の差に、魔法の威力を足したもの」
    • 物理の場合、「最低でもかならず1ポイントのダメージが入る」「攻め手が先行、受け手の体力が残っている場合は後攻」
      • 相手の防御が高い場合はダメージが1しか通らず、レベルに差が出た瞬間からダメージがほとんど通らなくなる
    • 魔法の場合、「最低でもかならず1ポイントのダメージが入る」「攻め手のみが一方的に攻撃できる」「1マス余分に攻撃範囲を伸ばせる」
      • 上記の仕様のため、魔法攻撃が圧倒的に有利になる場面が多く、特に狭い通路で構成されるマップでは物理アタッカーは極端に不利になる
      • しかもこちら側が壁越しでメイジを攻撃するにしても、「双方のユニットの魔力の差」によるダメージ計算のおかげでまともにダメージを与えられない始末
      • 対処法としては攻撃魔法は使えないが自らの魔力を高められる高機動型のランサーに魔力バフをかけて突っ込ませるのがベスト
      • 結果的に魔法対策でも似たような戦法でなければ有効な打開策となり得ず、似たり寄ったりなプレイに陥りやすい
  • 単調すぎるマップ
    • マップの種類は「移動できるマス」と「壁」の2種類のみで構成されている
    • パラメーターに変化をもたらす特殊なマスや、一部ユニットのみが通過可能なものなどは一切存在しない
      • 結果、唯一の遠距離攻撃である攻撃魔法を使えるユニットが一方的に有利になるマップが複数存在する
      • 特に終盤では1マス分の狭い通路が入り組んでいるため、魔力を有しないソルジャーやガードの役割が無意味になるケースが目立つ
  • 敵AIの思考パターンがストレス要因に
    • 基本的に敵ユニットは射程内で攻撃が可能になった場合のみに味方ユニットに向かってくる性質
      • 攻撃はかならず100%命中する仕様で、そもそも相手に攻撃を当てる前に近づくこと自体が無駄な一手となってしまうため、CPU側が「先制攻撃が可能になるまで待ち」に徹するのは至極普通の判断といえる
      • ただしそれは、プレイヤーが敵側が先制攻撃が可能になるまでは絶対にアクションを起こさないという仕様でもある
    • 敵ユニットの体力が減った際は、できる限り相手ユニットから距離を取ろうとするため、移動力の低いユニットでの追い打ちがむずかしくなる
      • 加えて敵ヒーラーは積極的に体力回復を行うため、ターン数がやたらと増加しテンポが悪くなる要因にもなっている

SRPGのシステムと演出    

  • 攻撃方法が通常攻撃と魔法攻撃(ファイア)しかない
    • そもそもユニット別の演出もなく、ただ不動の立ち絵一枚で戦闘が表現されるのでとてつもなく地味な絵面となる
    • 魔法もファイア1、ファイア3、ファイア5(ボス限定のファイア10、ラスボス限定のファイア20)しかなく、数字もダメージ計算用の表示でしかない
  • アイテムにあたるサポートカードの名称があまりにも安直で味気ない
    • 「ポイントアップ(自分の行動による値に5を追加)」のようにカードの効果がそのまま名前になった代物が全6種
      • ちなみにポイントアップは比較的マシな部類であり、他は「HP・MP全回復」「サポート不可」といった、もはや名前がそのまま簡単な説明文として通用するレベル
  • BGMが少ない
    • 使用BGM数は10種類にも満たない
    • 自軍ターンで流れるものは2種類だが、違いが分かりにくい上、非常に単調なものである
    • 上記の戦闘テンポの悪さもあって、延々とこのBGMを聞かされる羽目になり、プレイヤーのやる気を削いでいく
  • レベルアップの仕様にも問題がある
    • 経験値が100たまればレベルアップするが、一度でも体力がゼロになると経験値もリセットされる
      • ヒーラーのように攻撃魔法がなく物理攻撃も弱いキャラの場合、バフや回復で経験値を稼ぐか相手の体力をギリギリの1まで減らしてヒーラーに倒させる必要がある
      • ただし、味方への支援行動は全て経験値5しか加算されない仕様であり、レベルが低い状態だと経験値が100溜まる前にMPが尽きることもあり得る
    • マップクリア時に生き残ったユニットの数に応じて、最大3ユニットまで1レベルずつあげることが可能(1ユニット1レベルアップのみ)
      • 一人でもユニットが倒れていると、その分レベルアップができるユニットの数も減る
      • 経験値リセットの観点からも、倒れそうなユニットがいる場合は「撤退」してマップを最初からやり直すのがベターとなる
      • 強調しておくと「撤退」するとマップを最初からやり直しであり、前のステージに戻ってのレベリングは不可能である
      • 「撤退」した際のペナルティーは皆無(撤退回数も敗北数として記録されるだけ)なので、「撤退」+「レベリング」がゲーム内でも推奨されている
      • この仕様のおかげで、全く緊張感はないがストレスのたまるレベリング作業が続くことになる
    • レベルは最大で32、各種パラメータは99までしか上がらないため、敵ユニット相手に無双プレイをすることはできないようになっている
  • 2周目要素の存在が疑問
    • 2周目要素は存在するものの、スコアアタックを意識した作りとなっている
      • 「つよくてニューゲーム」は存在せず、ユニットのレベルは全てリセットされる
      • 結果、周回するたびに全ての作業をもう1度最初からやる羽目になる
    • 追加要素は、主人公が固定から2択になる、加入戦力を選べる、会話パートがカットされる、の3点のみ
      • 追加された女主人公の方が明らかに強く、最速クリアを目指すのなら彼女一択になってしまっている
    • そもそも周回してもクリアまでのターン数と撤退回数を減らすぐらいしかやる事がない
      • しかも取れる戦略自体限られているため、プレイヤーに求められるのは「最適解以外の行動をどこまで減らせるか」だけ

ストーリーの問題    

  • とある国の王位継承試験を王子・王女たち7人で王族の墓と呼ばれるダンジョンで行った
    • 以上
      • それ以外には特に何も語られない上に、本当に試験(似たようなマップでのユニット同士の戦闘)を行っているだけなので、全く変化のない話を最後まで続けている
      • 途中でアクシデントが起きるわけでもなく、最後の相手は現国王みずからが行うという、通常のRPGなら1つのイベントとして扱われるような内容をゲーム一本で終えてしまっている
  • 登場するキャラクターの多くがそもそも王位継承に対し興味がないか不真面目な理由で参加しているため、安っぽい茶番を見せられている気分になる
    • 唯一まともな理由で参戦しているアルゴは早々に退場する
       (自分のように頭の悪い国民が増えないよう、国王になって教育を徹底することが目的)
    • ニートになって仕事をしないで済むようになりたい(姉・ベリー)、嫁が欲しいから(兄・オクス)、毎晩ダンスパーティを開きたいから(姉・ネオン)とロクでもない理由で国王になりたい兄・姉
    • 最後の長男に至っては、「部屋の掃除をしてもらうため」に勝負を仕掛けてくる(そもそも国王の座に興味がない)
  • 「古き良い時代」に合わない現代風な設定
    • 最初に戦うことになる姉リンを倒すと、会話用のアイテム「スマフォ・ストーン」を手渡され、以後はそれで遠距離通話をすることになる
      • 使用時に「もしもし」と会話するなど、あきらかにスマートフォンが元ネタであり、世界観と全く合っていない
    • 嫁を娶ることを目的としている兄オクスが負けた際には、リンが「次元の違う女の子」(原文ママ)を紹介すると言い出し、「それってにじ……」とベリーにツッコまれる
      • エンディングでは、危うく別の次元へ踏み出すところだった語るオクスとの会話で物語が終わっている
      • 「古き良き時代」とタイトルに付けておきながら、なぜか現代のネットスラングを入れるギャグセンス
  • そもそもが「冒険」ではなく「墓場での家族会議」と揶揄される内容
    • 2週目以降は会話パートがカットされるため、その「家族会議」すら無くなる

その他    

  • 一応4k対応だが、元々のグラが全体的にショボいため、せっかくの解像度も立ち絵ぐらいにしか活かされていない
    • その立ち絵も各キャラやユニット毎に一つのみで、キャラの表情差分やユニットの色違いすら無し
    • 表情という概念がないため会話シーンは全て真顔であり、ただでさえ盛り上がりに欠けるストーリーパートを余計単調にしている
  • 唯一の美点はゲームに支障をきたすような致命的なバグの報告がほとんどない事。所謂ストロングスタイルである。

選評    

選評1    

古き良き時代の冒険譚(ふるきよきじだいのぼうけんたん)

有限会社だいだい開発のシミュレーションRPG。
配信開始日は2016年12月15日。
PS4、PSVITAの2機種で同時配信され、価格は税込み1944円。

「全てのプレイヤーが途中で投げ出すことなく、『あぁ、おもしろかった』という思いを抱いたままでゲームを終えていただけるようにする」
という目標から生まれたシミュレーションRPG。
だが実態はテンポの悪さと撤退を中心としたやる気を削ぐ要素の嵐である。

このゲームは七人の王子女が次の王を決めるために王家の墓と呼ばれる地下迷宮の最深部へいち早く向かうのが目的。

王から三体のオトモ(ユニット)をもらい、早速地下に潜ると画面上にはフリーゲームで作られたかのようなマスゲーが表示される。

最初に連れて行くユニットを配置
移動値分で移動
最後に攻撃や回復を選択する

というSRPGの基本に沿ってバトルが流れていく。

SRPGパートのテンポは非情に悪く、一つ一つの動作で牛歩戦術を使ってくるのでかなりの疲労感になる。
更に追い打ちをかけるように通常戦闘とボスステージのマップと戦闘時に流れる計4種類の短調なBGMのような何かがずっと流れ、聞いているプレイヤーが頭痛を訴える程苦痛にさせる。
戦闘に入ると、プレイヤーは戦闘前サポートカードと呼ばれる戦闘支援を使用するか選択でき、選択した後にバトル開始のボタンと共に戦闘が始まる。

戦闘時のダメージ算出は【攻撃側の攻撃力-防御側の防御力】のみの非情にシンプルな計算。
魔法戦闘に持ち込まれた場合は【攻撃側の魔力-防御側の魔力】となっている。
ダメージの下限は1
尚、このゲームには命中率やクリティカルなどの要素はないので目の前で見えてる数字が全てである。
魔法アビリティでの戦闘では反撃不能、にもかかわらず敵側はなぜか攻撃力+5サポートカードを使うなど雑なAI調整。

このゲームの戦闘は基本1枚絵のみで、戦闘時のアニメ等は一切存在しない。

更にこのゲームは1階層ごとの敵の強さの上がり方が大味で、2,3階層レベルが上がらないと格差ができてしまう。
これを解消するために、このゲームでは戦闘時の経験値を持ち越して現在のステージの最初からやり直す【撤退】をし、
他ユニットのレベルが適正値になるまでひたすら作業を繰り返す。
このゲームが撤退ゲーと呼ばれる原因になっている。
撤退は会話中に最初に戦う姉が推奨しているので、恐らく正攻法。

3面ごとに王位継承争いで潜った兄弟たちとの戦闘。
この時の会話が非情に寒く、王になる目的も
6面兄「王になって自分みたいなバカなやつを作らないためにみんなに勉強させる」
9面姉「王になって無職になる」
12面兄「王になってモテたい」

など、滑った発言を連発してくる。

ある程度レベルが上がると一部のユニットが覚えるバフアビリティが強力。
【+5する】だけの単純な効果であるが、このバフは全て累積し、そして残り効果ターンを上書きして残り続ける。
前述の通り単純な数値の差が全てのこのゲームにおいてはかなり重要であり、アビリティを覚える中盤以降はバフ盛りゲーの側面も持つ。

半分の10ステージを超える辺りにもなると周りの敵配置やマップが複雑化、壁を挟んでメイジ等の魔法職ユニットを置くことも多くなる。
魔法職が覚えるファイアは全ての射程が2、壁を貫通して放ってくるのでこの配置はとても厄介。

更に後半になるに連れて敵のターン時に度々【Thinking...】の文字が右下に表示され、1ユニットごとに1~5秒近くの長考プレイをするようになり、
ただでさえ悪いテンポが更に悪くなる。

720 : なまえをいれてください2016/12/18(日) 00:45:35.19 ID:mgsdcseq
クリア後のスタッフロールはなく、いきなりタイトル画面に戻され新しい項目が2つ解禁される。
1つ目の【チャレンジモード】は会話省略しただけのストーリーモードで、3面に登場した姉と別のユニット3体で1からやっていくというもの。
特に別の話が展開するわけでもなく、存在する意味があるのか疑問である。

2つ目の【リザルト】は今までのクリア実績が5つ記録として残り、いつでも閲覧できるモード。この苦行を5回も連続でやるプレイヤーは果たして居るのだろうか。

1900円と一見お手頃な価格だが、これを買う資金があるなら歴代の古き良きゲームに回したほうが得策だろう。


選評2    

古き良き時代の冒険譚・ストーリー、舞台について


あらすじは、とある王国での王位継承についての物語である。
王家の墓と呼ばれるダンジョンの最深部にいち早くたどり着いた王子女が次期国王に選ばれる。


以上である。


山場もなく、最後にどんでん返しが用意されているわけでもなく、ただ主人公ナトリが兄姉と戦い、最後は王に認められて終わるだけ。
しかも、王家の墓では王子女たちは肉体的に傷つかないという設定なのでとくに緊張感もなく、ただ淡々と話が進んでいき、終わる。
そもそも国の規模やら情勢の説明がほとんどないので、この王位継承とやらがどれほど重要なのかもいまいち伝わってこない。
兄妹仲は悪くなく異母設定なども皆無なため、こういった継承問題では半ばお約束的な確執からの戦闘発生などもなく、ただの馴れ合いでしかない。
加えて王子女の大半が不真面目な理由で参加しているため中身のない茶番を見せられている感覚に陥る。

以下、対戦する兄妹たちについて(ネタバレあり):

第六子 リン:最初に対戦する姉。チュートリアルも担当。
神官見習いなのでそもそも王位継承には興味がない。
ゲームクリア後のチャレンジで選択できるもうひと地の主人公…のはずだが、
そもそもチャレンジでは会話シーンが全くないので、全く掘り下げがない。ただの面倒見のいい人。以上


第五子 アルゴ:第二戦で戦うことになる兄。人から好かれるが頭が悪い。
国民が自分のようにバカにならないように教育を徹底したいという、この作品では比較的マシな理由で王位継承に挑んでいる。


第四子 ベリー:第三戦であたるニート姉。
働きたくないという理由で女王になりたい。ただそれだけ
このあたりからストーリーのノリもキャラの発言もどんどん寒くなってくる。


第三子 オクス:脳筋タイプっぽい第四戦の兄。
わりとまともかと思えば、王になって嫁を娶りたいだけ。
要するに女にもてたいとのことだが、ナトリに負けてしまい失望。
リンに別の次元の嫁を紹介してもらい、あやうく二元へと迷い込みそうになる

第二子 ネオン:派手好きで目立ちたがりな第五戦の姉。
毎晩ダンスパーティーを開くために女王になりたい。リンに「それでは太るよ」と諭されてナトリに王位継承権を譲る。
攻撃魔法を放つ際にやたらと長くて中二病な呪文を唱えたがる(ゲーム中にはファイア以外の攻撃魔法なない)


第一子 カル:第6戦目であたるメガネ兄。
最後の相手のはずだが、王位<研究(ゴミ収集)なので、そもそも王位継承には興味がない。
ナトリと戦う理由は王家の墓のメカニズムに興味があることと、負けたら相手の部屋のお掃除を条件としてるため
ちなみに、墓について彼からの解説などは一切出てこない。

国王マグナ: ラスボス。
長子ではなく、兄を差し置いて国王になった身であることが序盤で明かされるが、伏線でもなんでもないどうでもいい設定。
ドラ◯ラムを使ってナトリと対峙するが、なんでドラゴンに変身できるかとかの説明は一切なし。
王政については何の描写もないので、結局何のために王位継承しているのかすらよく分からない。


と、そもそもの王位継承の儀式からして色々とあやふやであり、参加者の動機もいい加減なものが多い。
後半に進むにつれ参加理由がどんどんヒドくなっていくので、物語の重みがますます無くなっていく。
「冒険譚」どころか、墓場での一家団欒を見せられている気分になる。

なお、プレイヤーが使用するユニットはかつて王国に貢献した勇者の魂が宿ったモンスターらしいが、その勇者たちの掘り下げはもちろん無い。

オクスのくだりでも触れられたが、二次嫁や次元の壁のようなスラングまで登場するため、世界観と著しい乖離が感じられる。
他にも遠距離でコミュニケーションをとるために「スマフォ・ストーン」なるアイテムが登場したりと、「古き良き」からかけ離れた設定を見せつけてくる。
ちなみに、最後はこのオクスとの次元の壁についての会話で締められる。

このように短いストーリーに色々と設定をねじ込んではいるものの、何一つしっかりと掘り下げていないどころか、
起承転結のうち「起」と「結」しかないようなお粗末さである。
しかも最後には「彼の治める国はどのようなものになるのでしょうか。それは皆さんのご想像にお任せします。」
という、まかさのぶん投げEND。

オチすらもまともに用意できず、「古き良き」というコンセプトすらもまともに守れていない作品と言わざるを得ない。

選評3    

『古き良き時代の冒険譚』(PS4版)選評

・ゲームの最も基本的なシステムについては選評1がおおむね説明しているため、そちらを参照されたし。
・「無死亡・無撤退」の縛りを設けて一周目(シナリオモード)をクリアした状況で執筆している。
________________________

このゲームは主に

1 戦闘のバランスが悪い
2 プレイヤーが介入できる要素がごく僅か
3 敵の行動パターンが単調

の3つの理由により、プレイヤーからSLG要素における大きな楽しみである「考える楽しみ」を奪い取り、
ひたすらに単なる「レベル上げ単純作業」を強いてくる。

そればかりか

4 UIや演出が劣悪

という問題点をも抱えており、その「単純作業」すら快適に行わせず、プレイを継続しようという意志を削いでくる。
なおかつ、

5 ストーリー性、キャラクター性が希薄

というRPG要素上の欠点も兼ね備えているため、「SRPGである意味が全く無い」と言える。

ではこのゲームは何なのか? 端的にまとめれば
「作業させる気の無い『SIMPLE 2000 THEレベリング作業』」とでも言うべきであろう。

以下、上記の問題点1~5に沿って問題点を述べて行く。
________________________

1 戦闘バランスの悪さ

(I)戦闘方式

本作の戦闘ダメージ計算式は以下の通り。
『 』書きの項目はユニットのパラメータ数値である。

・物理攻撃ダメージ= 攻撃側の『攻撃』-防御側の『防御』
・魔法攻撃ダメージ=(攻撃側の『魔力』+使用スキルの威力)-防御側の『魔力』

攻撃は物理・魔法ともに全て100%命中し、ダメージは最低1。
物理攻撃の射程は1(隣接マスのみ)、魔法攻撃の射程は1~2(隣接マスおよびその隣のマス)である。
攻撃側が必ず先行攻撃し、その攻撃で防御側が倒れなかった場合に防御側の反撃が発生する。
また、魔法による攻撃には一切反撃できない。

攻撃が必中であり、後述する「バフ魔法スキル」「サポートカード」以外にダメージを左右する要素は無い。
そのため、単純に各ユニットの能力値だけがものを言うシステムになっている。

 ………………

(II)兵種・ユニットについて

本作に登場する兵種はわずか6種である。(※クリア後は実質7種)以下に各兵種に対する寸評と共に、
「レベル30」(ラスボスを除く敵の最大レベル)時点での能力値を基準とした評価を述べる。
ステータスは敵・味方共に同じ成長テーブルを用いており、同兵種・同レベルではほぼ同様の数値となる。

なお、成長には多少ランダム性があるため、評価は以下の通り幅を持たせた表記とする。
「A=ステータス90以上 B=70以上 C=50以上 D=30以上 E=30未満」(※最大値は全て99)

・「ソルジャー」HP=B MP=なし 攻撃=A 魔力=D 防御=C 移動=4マス
 物理攻撃に秀でるが防御面が物理・魔法共に脆く、敵が集団行動を好む本作では安定運用しにくい。
 無撤退等、経験値を無駄に出来ないスタイルのプレイでは、中盤で切ることになるだろう。

・「ガード」HP=A MP=なし 攻撃=B 魔力=E 防御=A 移動=3マス
 物理攻撃に関してはほぼ無敵であり、序~中盤の要だが、魔法攻撃には非常に脆い。
 盾役的な能力だが、マップや敵の構成の関係上、盾より独立戦闘部隊としての運用がメイン。

・「ランサー」HP=B MP=D 攻撃=B 魔力=B 防御=D 移動=5マス
       MP消費スキル「魔力5アップ/10アップ」
 魔法防御力にあたる魔力以外が軒並み貧弱で、中盤まではお荷物でしかない。
 ただし後半は「バフ戦法」により主力ユニットとなるため、育成を途中で諦めないことが大切。

・「メイジ」 HP=C MP=B 攻撃=E 魔力=A 防御=D 移動=4マス
       MP消費スキル「ファイア1/3/5」「攻撃力5アップ」
 メインアタッカー兼ランサーバフ係として、最重要の兵種。
 メイジの魔法攻撃の圧倒的優位性は、本作の戦闘における悪バランスの最大要因である。
 
・「ヒーラー」 HP=B MP=B 攻撃=C 魔力=B 防御=C 移動=4マス
       MP消費スキル「ヒール10/20/30」「防御力5アップ」「魔力5アップ」
 回復係としてよりは、防御面のバフ係としての重要性が高い。
 しかし攻撃手段に乏しいため、レベルアップが最も困難。

・「ナトリ(主人公)」HP=B MP=C 攻撃=B 魔力=C 防御=B 移動=4マス
       MP消費スキル「ヒール10/20」「ファイア1/3」
 回復できる前線担当。能力値のバランスが良く、どんな局面にも柔軟に対応できる。
 一応攻撃魔法も使えるが、魔力の関係上ソルジャーとガード以外には撃つだけ無駄。

※2週目以降の「チャレンジモード」では、より魔法型のステータス・スキル構成をした
 第二の主人公「リン」を「ナトリ」の代わりに使用できる。
※主人公以外の各兵種とも、シナリオモード(1周目)終了までの最大加入数は2体。

 ………………

(III)兵種間のバランスおよび戦法について

主人公を除けばたった5兵種しか無く、ダメージ算出法も非常に単純で、
ランダム性もほぼ無いシステムであるにも関わらず、本作の戦闘バランスは良くない。
その原因は主に、兵種間のバランスや、特性調整がうまく機能していないことだと考えられるため、
以下に重要点の考察を挙げる。


(a)「メイジ」の圧倒的優位性

悪バランスの大きな要因は、前項にも挙げたとおり「メイジの魔法攻撃の圧倒的優位性」にある。
本作の魔法はスキル扱いであり、攻撃魔法も回復魔法もバフ魔法も一律に以下のような特性がある

・射程は「1~2マス」
・射程内であれば、壁越し・ユニット越しの間接行使が可能

かつ、物理攻撃とは違ってスキル扱いであるためか、攻撃魔法には「反撃」が発生しない。
(※攻撃魔法所持者に物理攻撃を仕掛けた場合は、物理攻撃による反撃が発生する)

前項の評価で示したとおり、高い魔力を誇るメイジの魔法攻撃は、

・前衛担当の「ソルジャー」「ガード」(および「主人公」)に絶大な攻撃力を発揮する
・「ランサー(自己魔力バフ未使用)」にもある程度のダメージを期待できる
・「ヒーラー」は攻撃を行わないため、実質メイジが対応しがたい兵種は同じく「メイジ」1種のみ

と、そもそも非常に汎用性が高い。
また、機動力の面においても、メイジの移動力は4マスだが、魔法は射程が1~2であり、
実質の攻撃範囲は6マス目まで広がるので、

・ランサー(移動力5)以外の兵種には、射程・機動力上でも全て優位

ということになる。
しかも、たとえ隣接していても、魔法による攻撃であれば反撃を受けることは無いので、
相手を自ターンで倒しきれるなら前衛職との隣接を気にする必要すらない。
パラメータの関係上、ソルジャーのみはメイジを一撃で屠れる可能性が有るものの、
機動力上での優位や、こうした魔法攻撃の特性を考慮すれば、戦術上大きな不利とは言えない。

これらメイジの優越性は、当然彼らが敵に回った場合は大きな脅威となる。
しかも魔力をブーストできるバフ係・ヒーラーと一緒に行動することも多く、
そうなると特に魔力が低い自軍ソルジャー・ガードの2兵種は、大きく立ち回りを制限されることになる。


(b)「ガード」のデザインと実際の運用上のミスマッチ

HPと防御が極端に高く移動力が低いガードは、本作も意識したと思われるSRPGの代表的作品
『ファイアーエムブレム(※以下『FE』)』シリーズにおける「アーマーナイト」や「ジェネラル」のように、
「隘路を塞いで敵を待ち受け、敵の侵攻を阻む」「後衛職を背後に庇い、安全に戦闘や稼ぎを行わせる」
というような、典型的な「盾役」の兵種として設計されたと思われる。
しかし、本作では「盾役」の存在意義そのものが、以下のようなシステムの性質上ひどく薄いのである。

・敵が基本的に、こちらが近づかない限り動かない
・防御力や移動力に影響を与えるような、いわゆる「地形効果」的システムが存在しない
・魔法以外の間接攻撃手段が無く、「盾役の後ろから攻撃する」メリットを享受できるのが主人公とメイジのみ

メイジはそもそも前述の通り強力無比な兵種であり、どんな局面でも比較的楽に経験値を稼げる。
そして、主人公の攻撃魔法は通用する相手が少ないうえ、防御面が魔法・物理とも安定しているため、
盾役をあてにせず前線に回るか、回復魔法を使用するほうが効果的なことが多い。
結局、盾役を積極的に活用したいのは防御的に脆いソルジャーやランサーということになろうが、
物理間接攻撃の手段が無いので、たとえガードを盾にしてもあまり効率のよい立ち回りにはならない。
また、ガードは魔力が非常に低く、中盤以降の「敵の小集団内にほぼ確実にメイジが存在する」という状況になると、
ただでさえ薄い盾としての存在意義がさらに薄くなる。

では、ガードは無用の兵種なのかと言うと、そうではない。
敵集団内にメイジさえ居なければ防御面ではほぼ無敵であり、敵ガード以外には有効なダメージを期待できるため、
「敵集団内に単独で突っ込ませ、出現数の多いソルジャー・ランサーを片付ける」という運用法が存在するからだ。
事実、敵にメイジが少ないゲーム前半ではこの戦法が非常に有効で、ガードは間違いなく「攻撃面」の要である。
だが、これは決して「多様な戦法を試せる」ということではなく、「それが結局手っ取り早い」というだけのことであり、
「攻撃役であるはずのソルジャー・ランサーが、防御型で機動力の無いガードより攻撃面で活躍しにくいシステムだ」
ということの現れでもある。


(c)後半における「ランサー+バフ」法

ランサーは「攻撃・防御があまり高くないが、移動力が高く魔法に強い物理アタッカー」という兵種で、
『FE』における「ペガサスナイト」を彷彿とさせる兵種である。
ただし、ペガサスナイトは物理攻撃・防御面の弱さを「手数の多さ」や「回避率」、飛行ユニットであることを活かした
「他兵種が侵入できない地形の利用」などで補っているが、本作にそのようなフォローシステムは存在しない。
ゆえに、中盤までのランサーはひたすらに「弱いだけ」であり、仮想敵であるはずの敵メイジも出現が少ないため、
育成に非常に苦労させられる。

だが、中盤以降「バフ魔法スキル」を使用できるユニットが充実してくると、事情は一変する。
本作のバフ魔法スキルには以下の特性がある。

・スキル種に応じた、攻撃・魔力・防御のパラメータのいずれかを「+5あるいは+10」する
・パラメータアップの効果は、もとの能力値込みで最大99まで累積する
・效果時間は全て3ターンだが、使用するたびに残りターン数が3に更新される

つまり、3ターン以内に同種のバフ魔法を同ユニットに使用し続ければ、パラメータが高い状態を維持できることになる。
しかもこれは、メイジ・ヒーラーを2人ずつ運用でき、各ユニットの最大MPが高くなる中盤以降では、いとも容易に行える。

(a)の項で述べたように、本作の第一の脅威はメイジであり、しかも中盤以降大量に登場する。
となると素で魔力と機動力が高く、かつ自己バフスキルで更に魔力を上げられるランサーが対メイジ戦で有用になるが、
ついでに貧弱な物理面もバフで簡単に補うことができてしまうため、あっさりと汎用性の高い最強ユニットが誕生する。
「お荷物」ユニットが中盤以降ではメインユニットに化けるので、忍耐が続かずに早期にランサー育成を諦めていた場合、
改めて撤退レベリング等の苦行を行う羽目に陥ると思われる。

無論、このバフ強化法は他の兵種にも有効だが、バフ用のMPも無限に使えるわけではないので、
素の機動力と魔力の面でランサーを対象にするのが最も効率が良い。
メイジの魔法性能が圧倒的すぎ、また強力な魔法攻撃を行うシナリオボスが増えるために、
後半ではこれが「結局手っ取り早い」最適解になってしまっている状況である。

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2 プレイヤーの介入要素の少なさ


(I)多様性に欠ける自軍編制

兵種数は6種のみ、自軍への全加入ユニット数も主人公を除いて最大12ユニットと少ない上、
強制出撃の主人公を除けば、各ステージの出撃ユニット数はわずか7枠。
多様な自軍編制はハナから望むべくもない状況である。
更には先述のような戦闘バランスの偏りのため、おのずと編制は固定されていくことになってしまう。

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(II)単純すぎるシステム

後述するが、本作はシナリオ・キャラクター性の面で見るべき点がほとんど無く、
結果として単純な戦闘だけが、延々忍耐の訓練のように続くゲーム性である。

同レベル帯の味方と敵の能力は多少のランダム幅を除いて同様であるが、2以上レベル差が開くと彼我の能力差が大きくなり、
相手にろくに物理ダメージが通らなくなるので、進行はどんどん苦しくなっていく。
しかし、そんなプレイヤー側の事情にはお構い無しに、敵の平均レベルは1ステージ進むごとにおよそ1~2ずつコンスタントに上昇する。
通常のプレイの仕方では、この敵のレベル上昇に追いついて行くだけの経験値を各ステージ内で稼ぐことは難しいと思われるのだが、
それに対して制作側が準備した対策は「ステージから撤退して再挑戦し、ちまちまレベリングしろ」のほぼ1択である。
何しろ先述の通り、本作の戦闘は各ユニットのパラメータ数値がそのまま物を言うだけのシステムであり、
武器変更・地形效果・回避/命中率・攻撃回数の増減など、他の多くのSRPGに実装されているような、
「ダメージ値や戦闘結果に影響し、プレイヤーが戦術的に利用できる要素」は完全に排除されている。
ゆえに、レベリングで自軍のパラメータを上げる以外には、対策を考えようとしても考える余地自体がそもそも無い。

この脳死ゲーぶりには、大抵のプレイヤーが少しプレイした段階ですぐに気づいてしまうと思われる。
仮に運良く気づかなかったとしても、ステージ2終了の段階でチュートリアル係を担当するキャラが
「次のステージはレベル5推奨。足りなかったら撤退レベリングしてね(※要約)」とわざわざ教えてくれるため、
その段階で大いにげんなりできる。(ちなみに、この段階での自軍の平均レベルは、3あれば立派な方である。)

余談だが、この公式推奨「撤退レベリング」を行わなくても、クリアは可能である。
実際に冒頭にも示したとおり、筆者は初回プレイの段階で「ユニット退却(戦闘不能)回数0」「撤退回数0」でクリアしている。
だが、撤退ありきでプレイした場合に比して、特に奥深さや戦術性を見出だすと言うことも無かったのではないだろうか。
システム上、通常プレイよりも神経を使った部分はおそらく
「限られたステージの中で経験値をいかにちまちま稼ぐか・より効率よく配分するか」ということだけであり、
つまるところは「レベリング効率の向上」だけだったと思われるからである。
さらに余談だが、この条件でクリアしても、イベント・称号・トロフィーの追加等の特別なことは何も起こらない。
スタッフロールが流れるだけ、同じ苦行でも『ガイアブレイカー』のほうがいくらかマシであると言えよう。
これから無撤退プレイをしようという方がもし居るなら、「ただの徒労だから一切お勧め出来ない」と忠告しておきたい。

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(III)サポートカード

単なる固定数値のやりとりでしかない戦闘に、「バフ」と並びプレイヤーが介入できる数少ない要素が「サポートカード」である。
敵味方全員、待機以外の全ての行動ごとに使用タイミングが設定されており、任意で利用することが出来る。
カードは特定のステージの特定ポイントで入手でき、撤退を繰り返すことで何枚でも入手できるが、
どのカードが手に入るかはステージ突入時に、その都度ランダム決定される。
カードには以下の6種が存在し、3ステージごとに対戦する各シナリオボスも使用してくる。

・「ポイントアップ」
  使用した行動の数値を+5する。戦闘行動や回復ならダメージ・回復量が5増える。
  バフスキルならパラメータ上昇量が5増えるので、この使い方が最も有用。

・「魔力戦闘」
  使用した戦闘でのダメージ計算が、魔力基準になる。魔法職が前衛職から身を守りたいときや、
  魔力は高いが攻撃力に乏しいランサー・ヒーラーが前衛職相手に使うのがメインか。

・「HP・MP全回復」
  行動「前」にHP・MPが全回復する。ステージ中、回復魔法以外でHPを回復する唯一の手段。
  MPはこれ以外に回復の方法が無い。ラスボスが使おうとするのが地味に腹立たしい。

・「反撃禁止」
  相手の反撃を行わせない。たぶん一番使いでの無いカード。

・「完全防御」
  戦闘でのダメージを、物理でも魔法でも完全に無効化する。

・「サポート不可」
  相手にサポートカードを使わせない。シナリオボスたちのカード使用がうざったいため、
  最も重要性の高いサポートカードと言える。


強力な效果が揃っているものの、たとえ無撤退プレイの場合でも「絶対に必要」というようなものではなく、無ければ無いで何とでもなる。
と言うより、入手できる種類がランダムであるため、計画的に頼りにできるような代物でもない。
有れば「多少レベリングの手間が省ける」「腹立たしさが多少解消できる」程度にしか感じられなかった。
むしろ特筆すべきは「敵味方全員の行動ごとに」使用の有無を確認されるという点で、敵ターンだろうが味方ターンだろうが、
戦闘しようが、回復しようが、バフしようが、いちいちカードを使用するかどうか確認コマンドが挿入される。
これがそうでなくてさえ悪いプレイテンポを更に悪化させており、少なくとも筆者はカードのメリットよりもストレスの方を強く感じた。

こうしたジャンルのゲームに慣れていないプレイヤーにとっては、確かにこれは「救済策」なのかもしれない。
だが、初心者にも気軽に楽しんでほしいというコンセプトであるなら、肝心の戦闘バランスやプレイ環境そのものをもっと工夫すべきであろう。
しかしこの「サポートカード」は、「全回復」や「完全防御」など、普通のゲームであれば明らかにバランスを崩すような、
強力すぎる效果のアイテムを安易に(しかも、公式推奨の「撤退」ありきならば無制限に)ばらまいているだけだ。
ゲームを改善するための根本的な対策を放棄し、姑息な手段でお茶を濁しているようにしか見えないシステムで、好印象は持てなかった。

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3 敵の行動の単調さ

本作の敵の行動には、最序盤からラスボスに至るまで、ほとんど同じパターンしか見られない。
また、敵は自分自身のHP回復と自分自身へのバフスキル使用を行わない。

「ヒーラー以外」
・移動後に攻撃できる範囲に、ダメージがある程度通る相手がいる場合は移動を始める
・単独で動くことを好まず、できるだけ他ユニットとまとまって移動を始める
・一度移動した後は、手近にいる相手を殴る。手近に相手がいない場合は移動を停止することが多い
・極端にHPが減った場合は、遠くへ逃げていく場合がある

「ヒーラー」
・他のユニットが移動を始め、そのユニットにバフスキルが届く場合、バフを行う
・HPが減っているユニットが手近にいる場合は、回復スキルの使用を優先する
・攻撃行動を行わない

このようなパターンであるため、こちら側が近づいていくか、ステージの初期配置時点で近接している場合以外、積極的には動かない。
待ち伏せや増援の出現、ターン経過で徐々に進撃してくる、等、こちらの備えや戦術性が要求されるような行動もまず取ってこない。
であるから必然的に、プレイヤーが取るべき行動も1-(III)の項で述べたような、ほぼ代わりばえの無い行動だけで良い、ということになる。
そのため戦略的あるいは戦術的に考える必要性に迫られることがまるで無く、ゲーム全編に渡って単純作業のみが続く。

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4 UI、演出の劣悪さ


(I)待ち時間の長さ

まずとにかく、方向キーによるカーソル移動が遅い。
「押しっぱなし操作」を受け付けないため、どうしても連打することになるのだが、これが1マス動かすごとにいちいち拍子でも取っているのかと思うほどに遅い。
左スティックでのカーソル移動は多少速く、押しっぱなしが効くが、こちらも1マスごとに微妙な引っかかりがあり、快適な動作ではない。
そもそもなぜ妙に不便なものを2通りも準備して、いちいち使い分けさせるのか? 全く意味不明で、『大戦略P』や『嵐』でもリスペクトしているのだろうか、と思ってしまうような操作性である。

自ターンでもこの「遅さ」にイライラさせられるが、敵ターンでもユニット間の切り替え時にいちいち同じような待ち時間がかかる。
しかも敵は、たとえ「待機」しか行わないようなユニットでも律儀に1ユニットずつ1~2秒思考時間を取るうえ、
行動を起こすユニットがいる場合は、前述の「サポートカード」の使用確認が挿入される。
マップ上でユニットがアニメーションするような演出なども無く、見ていて間が持つような要素は何も無い。
結果、予想外のことなど何も起こらないような単純なゲーム性であるにも関わらず、ダルい待ち時間中も放置することができず、
ずっと単調な画面から目を放さず、コントローラを握っていなくてはならない。この点は、全編を通して非常に大きなストレス源である。


(II)操作の不親切さ

「ターンの終了」「現況確認」のような、ターン制SLG要素のあるゲームでは最も基本的なコマンドすら、
押しにくい位置にあるoptionsボタンで別画面を呼び出さなければ選択できない。
一応、コンフィグで他ボタンにコマンドを割り振り、ショートカットできるように調整可能ではあるのだが、
ここも妙に不親切で、ロードやセーブ、ユニットの検索など、他にも割り振れるコマンドは多数存在するのに、
肝心の割り振り先のボタンははL1、タッチパッドの右スワイプ、左スワイプの3つしかない。

ユニットの検索性も悪い。
いちいち前項のような操作性に耐えつつカーソルを操作して各ユニットをマップ上で指定し、確認する作業が何しろ非常にダルい。
上記コンフィグで「未行動ユニット/主人公/最小レベルユニット/最小HP」の検索機能のいずれかをショートカットボタンに割り振っておく、
という手はあるものの、数少ないショートカットボタンをどれに割り振るかでまた悩まされる。
そもそも、敵味方合わせて20以上のユニットがマップ上に点在するようなゲームなのに、
なぜ「ユニット一覧」等の全体的な把握・検索のための定番機能を用意していないのだろうか。


(III)バックログの不備

テキストのバックログ機能が搭載されているのはいいのだが、なぜか「1画面で1行ずつ」しか遡れない。
なおかつ、そのログ内に「戦闘時の数値的メッセージ」まで含まれるため、シナリオを振り返る役には全くと言って良いほど立たない。
もっとも、振り返らねばならないほどのシナリオが無いのもまた事実ではあるが。


(IV)音楽の単調さ

BGMの種類が少なく、どれもこれも単調な曲ばかりである。
最も長く聞くことになるステージ中の戦闘音楽に至っては、どれもこれも同じ曲のアレンジである上、
小刻みに鳴るリズム音が耳障りで、「ずっと聞いていると頭痛が起こる」と評したプレイヤーすら存在する。

少しでも快適に本作をプレイしたいなら、BGMをミュートにして、自分好みの音楽を流すのがよいだろう。
実際、筆者はずっと『タクティクスオウガ』のサウンドトラックを流しながらプレイしていた。


(V)表示の不具合

プレイ中、制作側が意図した仕様ではないと思われる挙動が2点ほど見られた。

・テキストの送りボタンを連打していると、前後のテキストが入り混じっておかしな文章になってしまう

・敵ユニットの移動範囲内に敵ガードが存在するとき、そのユニットの移動可能範囲表示がガードのマスで途切れてしまうことがある
 実際は本来の移動力ぶん移動してくるため、表示を信じてしまうと危険である

 例 メ=敵メイジ(移動力4マス) ガ=敵ガード □=敵メイジの移動可能表示

  本来の表示→ □□□□メ□□ガ□
    
  不具合表示→ □□□□メ□□ガ

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5 ストーリー・キャラ性の希薄さ

SRPGというジャンルは、RPG要素として「ストーリーやキャラの魅力」が比較的重要であると思われるのだが、
本作はそのどちらも評価しがたい。

ストーリーのどうしようもなさは選評2がよく語ってくれているため、そちらを参照されたし。
緊張感もなく、しかもくだらない家族同士の漫才が延々続くのみのシナリオで、
しかもそれが2番目のシナリオボス(ステージ6)あたりから予測がつくようになってしまうため、
「ストーリーが気になるからゲームを進めよう」というモチベーションが全く高まらない。
無論、主人公も含め、各シナリオキャラに思い入れや愛着などは湧きようもない。

キャラの演出面でも、

・シナリオキャラ(主人公一家)以外の汎用ユニットはすべてモンスター的なデフォルメキャラ
・シナリオキャラは各人グラフィックは立ち絵一種のみ、演出は目玉が動くだけ
・汎用ユニットは各兵種ごとにグラフィックは立ち絵1種のみ、敵も味方も同グラフィック
・マップ上や戦闘時のアニメーション等は無く、アイコンや静止画が表示されているだけ

というありさまで、シナリオキャラばかりか、戦闘でメインとなる汎用ユニットにも思い入れは湧きにくい。
汎用ユニットの名前は任意で変更できるが、敵との区別の便宜のため、少しでも愛着を持つために、ぜひ変更しておいた方が良い。